〜少女時代〜

椿の木が並び立つ小道を散歩した時のこと。
ふと目にした薄暗い木陰に、その身を隠すようにして咲いている花を見つけた。
その面(おもて)は心持ちうつむき加減で、頬を染めてはにかむ少女の姿を思わせた。

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あでやかな大輪の花を咲かせているにも関わらず、彼女はまだみずからの「華」に 気付いていないかのようだ。
ただ、今までと同じように、つぼみのままの貞淑とつつしみを守り、膨らむ期待と わずかの不安を織り交ぜながら、この木陰で未来の夢を描いている。

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彼女もやがてみずからの「華」を知る時が来るだろう。
その時彼女がみていた夢は、線香花火が燃え尽きるが如く、ほんの一瞬 きらめいて、次の瞬間ぽとりと地面に吸い込まれていくに違いない。
咲いたばかりの花の下には、そんな−はかないけれどきらきらしい−夢の 墓標が埋っている。