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レポが放置されたままになっているが(苦笑)
今年(2005年)一年を振り返ってみて
最も印象深かったライヴと言えば
ジェフ・ベックの来日公演であった事は
間違いない。 ゲットした席が殊の外良かったというのもあるが あの全身全霊が込めれたジェフ・ベックのみ 許される”唯一無比のトーン”はベックライヴ初参戦の 私の五官を打ち抜いたのだった。 さて、生ベックを初めて体験した私だったが、実の処 初めてという感じはしなかった。 デジャブ(既視感)を体験しているとでも言えば いいのか。そう感じさせたのにも訳があった。 日頃から親しくさせて頂いている大先輩、キンジさんが されているジェフ・ベックのトリビュート・バンド 「A.N.Other」。このバンドの存在が私にとっては大きかったのである。 「A.N.Other」は今までトリビュート・バンドの祭典 ART ROCK NIGHTや数々の大物外タレがステージに立った 事でも有名な名古屋市公会堂で開催した「Rock Legend 2004」 で見てきたが、ジェフ・ベックをマニアックに 寸部の違いなくコピーするテクニックに毎回驚かされる ばかりあった。 その「A.N.Other」が結成5周年を迎え記念のライヴを開く という。当然、駆けつけなければいけない。 ただ、唯一、気がかりな事は会場が平針の MEMORY POPS という自分にとって”未踏の地”であった事である。 今回、最近ライヴを一緒にする事の多い友人と参加であったが その友人が先乗りしてくれたお陰で道に迷いながらもなんとか 開演10分前に滑り込みセーフで入場。友人が用意してくれた のはステージ正面のほぼ最前列に位置するテーブルであった。 私が到着した時点で場内は5周年を一緒に祝おうと集まった 面々で既に一杯で、人々の熱気でヒートアップ。先程まで 冷えた外気に晒されていた私には気分の悪くなる程の暑さでも あった。止めどもなく額から噴き出す汗をハンカチで 拭う事に余念がない中、時計を見れば既に開演時間を迎えて いた。 ライヴは予定時間きっかりに始まった。 客席から一段ほど高くなったステージにはドラムを中心に 奥まった下手にキーボード、ドラム横にはベースアンプ。 上手にはマーシャルのアンプと2台のストラトキャスターが メンバーを静かに迎えた。 この時、手狭なステージの為、(ホールのような控え室も無く) ステージへは客席を横切っていく形になるのだが、場内の あちこちから声援を背に受けてステージに上がるアットホーム な雰囲気は私にとっては逆に新鮮であった。 (後のゲストボーカルの方々も同じように客席から登場する のだが、観客から一転して演奏者に変わるというのも乙なものである) 肝心のライヴの内容だが隣の友人が 「始まりはやっぱりこの曲なのか」 と叫んだとおり7月の本家、ジェフ・ベックの来日公演(特に大阪公演) を再現するというファンには堪らない内容であった。 本家でも意表を突いたオープニング「Beck's Bolero」から「You Never Know」そして名曲「哀しみの恋人達(Cause We've Ended As Lovers)」と見事に再現していくメンバーの力量はただただ感嘆するばかり。 そしてここから本家をも凌ぐ豪華ゲストタイムが始まった。 近年、本家においてはベック自身のバースデイ・ライヴ などゲストが登場してというのもあったが、ゲストボーカル10人 というのは既にこの時点で本家を超越していたと言えた。 おまけにゴージャスな女性コーラス隊も加わるとなれば尚更である。 ティナ・ターナーとの競演作「Steel Claw」をRosebud RIEさんが、「Rollin' And Tumblin'」を前述した「Rock Legend 2004」においてもボーカルを取っておられたちほさんが、それぞれ力強く美しくそしてSexyに声を響かせていった。 しかし「Morning Dew」ではそれまでの場内を包んだ妖艶な雰囲気をジェラシーさんのボン・スコットばりのシャウトが一発で切り裂いた。実に破壊力のある声である。 第一部のゲストコーナーが終了すれば再び、来日公演の忠実な再現が待っていた。 「Behind The Veil」「Two Rivers」「Star Cycle」 ... ギターのキンジさんがベックばりにフィンガーピッキングとアーミング で絶妙なトーンを繰り出せば、キーボードのhamayanさんも 素晴らしいテクニックでそれに応える。もちろんベースの 竹内さん、ドラムのKAZUさんのプレイも巧みである。 5年という月日で培われた4人のコンビネーションが遺憾なく 発揮された瞬間の連続に観客は酔いしれるばかりであった。 15分の休憩の後、ステージにはバンドメンバーの他、再び 黒のSexyな衣装で身を包んだお姉さま方がずらりと並んでいた。 第二部はゲストタイムからスタートである。 おおにち。さんが「Love Is The Light」でゴスペルをルーツとするハスキーな声を響かせれば、よこ☆さんは「The Winner Takes It All」でキンジさんのギターとソロで見事に絡む。十年に一度という衣装のミカミカさんは「I'd Die For This Dance」を熱唱。コーラス隊のバックアップがよりいっそう曲を盛り上げた。 ゲストタイムの後はドラムソロをイントロに聞き慣れたメロディ が場内を満たす。「Led Boots」は「A.N.Other」にとっても定番の曲である。 「Diamond Dust」を挟んで三度目のゲストタイムは"Jimi Hendlix":タイムでもあった。 色々なバンドで活動されているMANNTAさんがメタリックな「Hey Joe」を、(初めて拝見する)ジュンさんは「Manic Depression」をそれぞれ激しく歌い継がれていく様は来日公演のJIMMY HALLよりもずっと力強いものであった。 二人の男性陣ゲストがステージを捌けるとキンジさんが先ほどまでの熱気を冷ますかのように静かに弾き始める。 「Goodbye Pork Pie Hat」「Brush With The Blues」をメドレーで渋く決めると次にお馴染み「Blue Wind」の特徴あるリフが響き渡った。 hamayanさんの指が縦横無尽に鍵盤を駆け回れば、キンジさんもギターで応酬する。だがこの勝敗は間違いなくキーボード−hamayanさんに軍配があがりそうだ。 それだけキーボードプレイは壮烈であったのだ。 「Blue Wind」にて本編終了だった来日公演。 「A.N.Other」は間髪入れずに"アンコール"予定曲まで雪崩こんでいった。 「Going Down」。 来日公演では各会場でMissタッピング・Jennifer Battenが飛び入りゲストで参加しベックファンを大いに喜ばせたこの曲を「A.N.Other」も同じようにゲストを用意していた。それもギタリストとボーカリストという豪華二本立て、二枚仕立て...(笑) その注目のゲストはボーカルにAKIRA@WHATSさん、ギターにakiさんという布陣であった。 「Going Down」という曲はしばしばジャム・セッションで取り上げられる事の多い曲であるが私にとっては初期G3での演奏が印象深い。 当時のメンバー(Joe Satriani、Steve Vai、Eric Johnson) での来日は結局、叶わなかったがCDやVIDEO、DVDに刻み込まれたライヴ でも最後のセッションでこの曲を披露していた。 然もこの時、Eric Johnsonはヴィンテージ・ストラトを封印し珍しくGibson ES335を携えてステージに登場しているのだ。 今、ステージ上のゲストギタリストakiさんも同じくES335を構えているという状況は果たして偶然なのだろうか? 私はあの頃のG3を追体験しているかのような錯覚さえ覚えた。 AKIRA@WHATSさんが迫力のある太い声とブルースハープを披露 し、akiさんがES335独特の太くて甘いトーンでブルーズフレーズを奏でる。本家とは趣を異にしていたが、コレはこれで充分良いものであった。 「People Get Ready」では頼んでおいたゲストボーカルの方が出演出来ないというアクシデントにも見舞われたが、そこはそれ、客席には「A.N.Other」と縁のあるボーカリストが多数いらっしゃるという事で代わりにキンジさんが客席からボーカルを選出。 かってこの曲を唄った事のあるちほさんとAKIRA@WHATSさんが連続登板でステージに戻ってこられた。このような致命的なアクシデントに対しフレキシブルに対応する処などは決して本家では真似できないものである。 戸惑いながらもちほさん、AKIRA@WHATSさんはきっちりと自分の役目 をこなしキンジさんのギターも"想定外"の展開に余裕で応えた。 来日公演を見た人なら判ると思うが、「People Get Ready」の後 本家ジェフ・ベックはサプライズな演奏を披露し喝采を浴びている。 来日公演において白眉な瞬間であった「Somewhere Over The Rainbow」の演奏にあの現場にいた者なら誰もが心奪われたに違いないだろう。 完全再現を目指している「A.N.Other」もこの曲に挑戦したのは言うまでもない。 そしてステージ上にはキンジさんとhamayanさんお二人だけが残った。 いよいよ"あの瞬間"の再現が始まろうとしているのだ。 hamayanさんの奏でるメロディに乗ってキンジさんのギターが 絶妙なトーンを醸し出す。それはもう見事としか言いようがない。 まるでジェフ・ベックの生霊が乗り移ったかのようなキンジさん の演奏に私は神々しさまで感じてしまう程であった。 だが、至福の時間は短い。 「A.N.Other結成5周年記念」ライヴはこの曲をもって幕を 閉じた。「Beck's Bolero」から「Somewhere Over The Rainbow」 へ−来日公演の再現は見事成し遂げられたのである。 ステージ上には再びキンジさん、hamayanさん、竹内さん、 KAZUさんが勢揃いし我々観客に感謝のご挨拶。 休憩を挟んで2時間以上の長丁場にさすがに疲れの色は隠せ なかったが、それでもメンバーそれぞれの横顔には 一つの事をやり遂げた満足感が滲み出ていたのだった。 |
SET LIST | |
1 | Beck's Bolero |
2 | You Never Know |
3 | Cause We've Ended as Lovers |
4 | Steel Claw (Tina Turner) |
5 | Rollin' and Tumblin |
6 | Mornig Dew |
7 | Behind The Veil |
8 | Two Rivers |
9 | Star Cycle |
10 | Big Block |
11 | Scatterbrain |
12 | Love is The Light (Beverley Craven) |
13 | The Winner Takes It All (Beverley Craven) |
14 | I'd Die for This Dance |
15 | Led Boots |
16 | Diamond Dust |
17 | Hey Joe (Jimi Hendlix) |
18 | Manic Depression (Jimi Hendlix) |
19 | Goodbye Pork Pie Hat (short version) |
20 | Brush With The Blues |
21 | Blue Wind |
22 | Going Down |
23 | People Get Ready |
24 | Over The Rainbow |