ERIC CLAPTON
PILGRIM Japan Tour








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 平成11年11月11日。1が6つ並ぶ日。

 TVでは朝からそんな話題ばかりで盛り上がっていたが 本日はそんなことより、自分にとって6年ぶりに見るエリック・クラプトンのライヴであるということの方が重要であった。



 思い切って今日は午後休を取り、ライヴに備えた。
 会場は愛知県体育館。自分にとってライヴでは初めての会場だ。
 これで名古屋市内の主な会場は全て制覇したことになる。
 開演PM7:00に合わせ自宅をPM5:20ぐらいに出発、地下鉄に乗ると退社時間と重なり、栄に近づくほど乗降客が増え始める。
 PM6:20ぐらいに 県体がある市役所駅に到着、やはりここで降りる人が多い。ほとんどが県体方向の出口に向かって歩いていく。
 駅構内から外に出て、名古屋城敷地内にある体育館までは少しばかり距離がある。歩いていくと駐車場の横を通ることになるがそこで、数ヶ月前やっと日本でも正式に発売が開始されたNew ビートルを2台も見かけた。これは今回のクラプトンのジャパンツアーを ビートルの発売元ファルクスワーゲン ジャパンが後援していることによるところがあると思われる。いわゆる今回もバブル期から始まった悪しき”冠コンサート”である。


 やがて 見えてきた名古屋城のお堀を渡ると、愛知県体育館は目の前だ。ひときわ出入り口付近は賑わっており、そこだけ照明が明るい。
 会場の向かい側には パンフ、Tシャツなどを売る物販のテントが併設されており売り子の声が聞こえる。また別の売り子の拡声器の声によれば「パンフなどは コンサート終演後には販売しません。開演前にお求め下さい」とアナウンスしている為、私はパンフを買う為、まずは物販のテントを目指す。

 −それにしても終演後には販売しないとは どういうこと?−

 物販のテントではパンフ、Tシャツ、シール、携帯ストラップ等を売っていたが全てUDOのホームページで予告されていたものばかり。変わりばえしない為 予定通り3000円のパンフのみ購入。このパンフ、多少値がはることもあって凝った袋に入っていてなかなかgoodであった。
 パンフ購入後は 早速チケットを係員に見せ、荷物チェックの後会場入り。
 会場入りの際、色々チラシを手渡されるのだが今回はチラシに混じってギターピックが配られた。ピックには「フォルクス ワーゲン」のロゴが印刷されていたがこんな気の利いたものは今まライヴ歴50数回にして初めてのことだ。
 こういう良いこともあるなら”冠コンサート”も大歓迎とあっさり認めてしまう。(情けない!)
 狭いロビーは混みまくっているので とりあえず客席を探してみようとアリーナ席に入ってみた。
 今回アリーナ9列目39番という比較的良い席を「CBCロックハウス」でゲットできたので楽しみにしていたが、実際にその席にたどり着くと思いのほか ステージ中央に近くライヴに関しては満足できる席だった。(やや ベースのネイザン寄りではあったが)そして席に着き ステージに目をやれば 凝ったセットも何もないごくシンプルなものでアンプ、ドラムセット、マイクスタンド、PAしか存在しないステージはクラプトンらしいものだ。
 また客層にしても 会社帰りのサラリーマン、OL 、10代後半の若者と多種多様であったがやはり落ち着いたファンが多い。ただ最前列近くを例のファルクスワーゲン ジャパン招待者のいかにも場違いな客が占めていることが気に掛かる。
 開演時間7:00が近くなるにつれ、会社帰りの客がどんどん増え始める。ステージではギターテクなどのローディが動き回っているが今回、照明に関して新たな発見があった。
 照明などは 現在では(大規模なコンサートなどでは特に)バリライトなど 全てコンピュータ制御されているようだが、今回のライヴは ステージ上のライトが全て人が手動でその場で操作していた。ゆえに開演直前にステージ10〜15メートル上のセットに5、6人が登りライトをセッティングしはじめたが 誰か墜落するのではないかとヒヤヒヤし、大規模なライヴな割に手作りな感じがして結構驚いた。


 開演時間前あたりから SE代わりに流れていたブルーズが1曲終わる度に自然に拍手が沸き上がり、いまか今かとライヴの開始を観客が待ち望んでいることが肌に伝わってくる。そんなことが2回ほどあったろうか、会場が暗転し、いきなり聞こえはじめるドラムンベースっぽいリズム。
 やがてステージ下手から(正しくはステージ右側の楽屋につながる階段の入り口)メンバーが現れる。その中で白い半袖シャツとゆったり系のストレートジーンズで 銀縁の眼鏡の男がステージ中央のマイクの前にギターを持って立つ。
 それがロック界、真のカリスマ エリック・クラプトン その人であった。
 クラプトンはおもむろにギターを取るといつものように弾きはじめる。でもそれが何かの曲かというわけではなく、1曲目につなげる為の指の準備運動、イントロという感じであろうか。何小節か弾き終わったところで聞き慣れたフレーズが聞こえはじめる。
 その注目の1曲目は 予想通り「MY FATHER'S EYES」であった。
アルバム「PILGRIM」の中でもメインテーマ的なこの曲もライヴで聴くと、より大きな広がりが感じられ 当然のことながらギターソロはCDよりも長く、かつ激しい。
 また ケイティとテッサのコーラスも心地良く聞こえる。
 2曲目「PILGRIM」もCDで聴くよりも相当アレンジしているようだった。(基本的には同じであるが)クラプトンが歌うメロディライン(節回し)が相当違う。
 ここでもギターソロではかなりオリジナルとかけ離れたフレーズを弾きまくっていた。
 3曲目は「RIVER OF TEARS」。かなりゆったりめで 伴奏もアルペジオ中心でより歌に重点を置いた曲であったが、エンディングのギターソロからもの凄かった。
 この部分だけは全く違った曲であると言っても過言はないくらい弾きまくっており この曲が終わって 多くの溜息と「涙がでそうだ」という感嘆な声があちこちから聞こえて来たぐらいだ。個人的に言ってこの曲が今回のライヴのハイライトであったと思う。
 4曲目「GOING DOWN SLOW」。これまたアルバム「PILGRIM」からの曲。
 短いイントロがあり、サビの部分のコーラスがアレンジされていた。
 4曲続けて最新アルバムからの曲をもってくるあたり、クラプトンにとって「PILGRIM」というアルバムが今までの作品群に比べ大きな意味を持つことが感じられた。
 5曲目は「HOOCHIE COOHIE MAN」。ここで一息、前作「FROM THE CRADLE」からのブルーズナンバー。オリジナルのMUDDY WATERS を彷彿とさせるギタープレイと歌。クラプトン自身 自ら宝物と称したこの曲を今まで何度演奏したことだろうか?と僕はこの曲を聴きながらそんなことが頭をかすめた。
 6曲目「RECONSIDER BABY」も「FROM THE CRADLE」からの選曲。CDで聴くよりも幾分かスローテンポだ。イントロから激しくはないが、ギター弾きまくり。そして クラプトンの声も絶好調という感じ。Japan Tour 前に風邪をひいたというのが信じられない。
 7曲目は「PILGRIM」CDから「SHE'S GONE」。激しいイントロのギターソロからギターリフになだれ込んではじまったこの曲でも合間とエンディングでは熱く激しいギターソロを展開。まさに弾きまくり。クラプトンが非常にノッテいることが窺える。
 クラプトンのお馴染みの「ドウモ」の声と共にこの「SHE'S GONE」を終えた後は機材チェンジ。
 恒例となったアコースティック・セットの始まりである。
 用意された椅子に座ってクラプトンはここでいきなり ドブロギターを持ち出して歌いはじめたのがなんと ロバート・ジョンソン「RAMBLING ON MY MIND」。意表をついていただけに新鮮だった。演奏するクラプトンの姿には まさにロバート・ジョンソンがのり移ったかのようだったと書くのは大袈裟ではないはず。
 衝撃的な始まりのアコースティック・セットの2曲目は多分 会場の大部分の人が待っていた「TEARS IN HEAVEN」。最初の1小節を弾いただけで歓声がわく。しかし、他の会場のように演奏中、奇声があがるようなこともなく 観客もじっくり聴くという感じで良かった。個人的にはあまり好きな曲ではないが、ここでもクラプトンが歌うメロディライン(節回し)を変えたりして今まで聴いた中では最高であらためて「いい曲だな」と再認識した。
 そして 次は驚きの「BELL BOTTOM BLUES」。この曲をアコギでやるなんて考えてもみなかったので驚いた。素晴らしいの一言に尽きる。「RIVER OF TEARS」に続いて今回のライヴのハイライトであったと思う。
 アコースティック・セット最後は クラプトン、アンディ、ネイザン3人によるジャムセッションによりスタート。特にここではネイザンが素晴らしかった。そのジャムセッションが お馴染みのイントロにつながり「CHANGE THE WORLD」が始まった。
 個人的にはクラプトンのアンプラグド作品の中では 結構好きな曲であったので楽しみにしていたが(本当は MTVのベイビー・フェイスとのアンプラグドセッションのようにエレキで弾き まくってほしかったけど) ここでもマーチンを使ったギターソロは冴えまくっていた。
 最後の「CHANGE THE WORLD」のコーラスの部分では 大歓声、曲が終わっても拍手が鳴りやまなかった。
 この「CHANGE THE WORLD」でいったんアコースティック・セットは終了。スタッフがエレキ・セットの為に忙しく走り回る。
 エレキ・セットにチェンジしてからの12曲目は「GIN HOUSE」。(ライヴ中は何の曲か知らなかった)
 はじめてアンディ・フェアザロウがボーカルを取る曲だった。クラプトンはバッキングとギターソロを取る。そしてアンディも結構高い声も出て 歌えるのだなあと再認識。
 アンディと言えば 昔見た「Ronnie Lane the ARMS concert」というライヴビデオに もっと若く今から想像できないロックンローラー然とした姿が映っていたことを思い出す。
 この曲では当時のその姿がかい間見えたような感じだった。
 そして続く13曲目は「COCAINE」。最初はゆっくりと弱く、小さい音でリフらしきものを弾きはじめるがそれが次第に大きく そして印象的なリフが聞こえはじめた瞬間、ずっと座っていた観客(自分も含め)もやっと立ち上がる。でもまだ全ての人が立つわけではない。(この曲で立たなくてどうする!!)
 お馴染みの「♪ COCAINE 〜」のところで みな拳を振り上げる。
 嵐のような曲が終わってブルーズが始まるとまた みな席につく。そのブルーズとはお馴染みの「HAVE YOU EVER LOVED A WOMAN」だった。お馴染みの(でもオリジナルとかなりかけ離れた)長めのスローなギターソロよるイントロから力の入った演奏と 絶好調な歌。これまた素晴らしい。クラプトンにはこのような曲が本当に良く似合う。
 15曲目の「BADGE」からは もう黄金のレパートーリー・リレーという感じでライヴが終演にむかっていることが判る。この「BADGE」もライヴではお馴染みの名曲で クリームのアルバム「GOOBYE CREAM」に収められた ジョージ・ハリスン参加の名曲だ。ライヴの定番中の定番という曲なので慣れたものという感じだった。
 16曲目はしっとりとしたアルペジオから入り、それがすぐ「WONDERFUL TONIGHT」のイントロであることがわかる。やがて クラプトンがチョーキング(ベンディング)を用いたメロディラインを弾きはじめて「おおー」という歓声がわき上がる。いつもながらのロマンティックな名曲だ。 曲の中間部では ケイティ・キースーンのスキャット(?)が披露され素晴らしかった。この曲が女性に人気なのが良く判る。
 でも「BADGE」、「WONDERFUL TONIGHT」とジョージ・ハリスン-パティ・ボイドがらみの曲が続くのは偶然だろうか。その偶然は次の決定的な曲まで続いたのだった..。

 「WONDERFUL TONIGHT」が感動的に終わった後、引き続き何やらフレーズを弾き始めるクラプトン。
 取り立てて曲というほどでもなく、これもあきらかに次の曲へのイントロという感じがする。
 でも このフレーズとギターの音色から言って次の曲は もしかして....。
 と思ったら 超がつくほどの有名なギターリフが聞こえてきて今回最高の大歓声。そして一斉に立ち上がる客。そう、始まった曲は待ちに待った「LAYLA」だった。
 自分にとっても、他の客にとっても6年ぶりのエレキで聞く「LAYLA」は最高だった。(前回、前々回のライヴともに「アンプラグド」の影響で この曲がエレキで演奏されることはなかった。)

 −やはり この曲はアコギよりもエレキでしょう−

 そのうち曲が終盤にかかり キーボード(ピアノ)の印象的なフレーズが聞こえてから再び歓声と拍手が沸き上がる。(ちなみにこのキーボードが他のメンバーに比べ あまりうまくない−下手だということで掲示板等で叩かれてました。確かに音は悪かったし、一部では曲の雰囲気を壊してました。)
 そして感動の中、曲はエンディングをむかえ第一部のライヴが終了した。



 クラプトン以下、メンバーがステージを去った後も すぐにアンコールを求める拍手が沸き上がりクラプトンの登場を待ち望む。約5分ぐらいそのような状態が続き再びバンドのメンバーはステージに戻ってきた。
 ブラッキーシグネイチャーモデルをおもむろに手に取りクラプトンが弾き始めた これまた有名なギターリフ。曲のイントロとしてスライドを絡ませながらリフを弾いた時点で 大歓声。すぐにこの曲がクリームの名曲「SUNSHINE OF YOUR LOVE」だとわかる。自分でもよくこの曲を弾いている為、自然に指が動く。ギターソロの部分は いつものようにインプロヴァイズされたもので 今まで聞いたことがないフレーズがブラッキーから弾き出される。やっぱりこれも歴史に残るRockの名曲です。


 結局、アンコールはこの1曲で終了し テッサが観客に投げキッスをしたり、ネイザンがピックを客席に投げたりしながらメンバーはステージを降り本日の熱いライヴは終了した。





 今回、このレポートでは何度となく”弾きまくり”と書いたが、アンプラグド以降、ヒットする曲はアコースティカルな曲ばかりで匿名ユニット TDFではテクノ系にいったり、アルバム「PILGRIM」ではその TDFで組んだクライミー・フィッシャーと再び絡んでドラムンベースに挑戦したりとギタリスト エリック クラプトンとしてあまり脚光を浴びることが無かった為、今回のようにギターを全面に出した(まあ、この人のライヴはそれが当たり前なのだが)ライヴだと感動してしまう。
 特にあまり弾いている印象がないアルバム「PILGRIM」からの曲が”弾きまくり”という感じに変わってしまっていることはうれしい誤算だった。このような事からもクラプトンにとってこの「PILGRIM」というアルバムが 今までの作品群の中で特別なものであることがひしひしと感じられ21世紀になってもギターを弾き続け、歌い続けるぞとわれわれ観客に印象づけた素晴らしいライヴだった。





SET LIST
1MY FATHER'S EYES
2PILGRIM
3RIVER OF TEARS
4GOING DOWN SLOW
5HOOCHIE COOHIE MAN
6RECONSIDER BABY
7SHE'S GONE
8RAMBLING ON MY MIND (acoustic set)
9TEARS IN HEAVEN (acoustic set)
10BELL BOTTOM BLUES (acoustic set)
11CHANGE THE WORLD (acoustic set)
12GIN HOUSE (Andy on Vocal)
13COCAINE
14HAVE YOU EVER LOVED A WOMAN                   
15BADGE
16WONDERFUL TONIGHT
17LAYLA
・・・Encore ・・・
18SUNSHINE OF YOUR LOVE











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