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来日40周年。20回目の来日。− そして、この来日公演中に通算200回目の来日公演(初日・武道館公演)を行ったエリック・クラプトン。 自分は1988年のデビュー25周年記念ライヴを手始めに、90年の「ジャーニーマン ツアー」、91年 ジョージ・ハリスンとの伝説的公演、93年、99年、2001年、2003年の日本限定 「Just For You」ツアー、2006年のデレク・トラックスを伴ったDerek & The Dominos再結成的なライヴ、2011年のスティーヴ・ウィンウッドとの饗宴...と名古屋で行われるライヴにはほぼ必ず足を運んできた。(97年の公演は残念ながらだったが)そう、よく考えたら、今回は自分にとって10回目のクラプトン公演なのである。しかも、最後の来日公演(になるだろう)とクラプトン自身が語っていただけあって今回は開演前から色々、思う処があった。 ”最後の来日公演”というのが呼び水になったのだろうか。 会場である愛知県体育館の前では、アリーナ席に入る為の行列や物販テントに群がる人の波、とにかく人だらけ。いつものクラプトンのライヴと少し違うぞ−そんな気持ちにさせたのだった。 それは会場に入っても変わる事はなかった。 アリーナだけでなく、スタンド席も立錐の余地もないほどの客の入り。 当日券も出なかったというぐらいだから、チケットは早々に売り切れていたという事でもあった。 アンディ・フェアウェザー・ロウの曲がSE代わりに流れていた場内に開演を告げるアナウンスに変わると俄然、客席の空気が変わり始めた。 開演を急かす掛け声や、拍手が大きくなりそれが最高潮となった19時13分。 特徴的なピアノのメロディーが響き渡った。横浜公演からオープニングソングとなった「Pretending」。この曲がトップを飾ったのは個人的な記憶では1990年の「Journey Man」ツアー以来である。大変、懐かしいし、気分も高揚する。そう思ったファンも多かったのだろう。 曲が始まるやいなや、アリーナの前の列からどんどんと立ち上がる人が目立ち、それに釣られて後方も立ち上がり、その結果、アリーナがほぼオールスタンディングとなった。1曲目からオールスタンディングは、ここ最近のクラプトンのライヴでは非常に珍しい。一体、何年ぶりなんだというぐらい記憶があやふやだ。 2曲目「Key To The Highway」、3曲目「Tell The Truth」とここ最近のクラプトンのライヴでお馴染みの曲が並ぶ。特に今回はクリス・ステイントンとポール・キャラックというキーボード二人を擁した事もあり、キーボードが脚光を浴びるシーンが多く、そのキーボード・ソロの後にはお待ちかねのクラプトンのソロが用意されていた。 クラプトンは定番の「Hoochie Coochie Man」で力強いボーカルを聞かせた後に披露されたのは「Honest Man」という耳慣れない曲。しかも、ボーカルを取るのはキーボードのポール・キャラックだ。 聞いていると、確かに味の有るボーカルで巧い。それもその筈で、80年代、ジェネシスのマイク・ラザフォードのグループ「マイク&ザ・メカニックス」で、ボーカルを取っていた人で有る事を帰宅後、調べてようやく判った。巧くて当たり前だったのである。 この曲でのクラプトンは完全にバンドの一ギタリストという訳目を楽しそうに演じていたのも印象に残るものであった。 6曲目はちょっとしたコード・カッティングから始まった。 「ああ、これは?」 やがて始まる、印象的なメロディライン。すぐにこれが「Wonderful Tonight」のイントロと判ると場内から歓声が上がった。 しかし、なんとも性急で高速な「Wonderful Tonight」に私は戸惑いを感じずにはいられなかった。「Wonderful Tonight」のロマンチックな歌詞の内容には従来のゆったりとしたテンポがどうしてもしっくりとくるからである。 あっという間に、余韻に浸ることなく終わった「Wonderful Tonight」の後は「I Shot The Sheriff」であった。どうやら「After Midnight」と日替わりで披露されていたようだったが、横浜公演から「I Shot The Sheriff」に固定されているようだった。 これには願ったり叶ったり。というのも「I Shot The Sheriff」でクラプトンの爆発的なプレイが聞かれる事が多い為である。ここ10年ぐらいの来日公演で何度もそんなプレイを目前としてきた。今回もハイポジションにおけるラン奏法、速弾き、スムーズなフィンガリング.....体感的にその時間は短かったが、ロックギタリストとしての矜持が試される。そんな瞬間だったと思う。 その後は、いまやクラプトンのお馴染みとなったアンプラグドタイム。 立ち上がって見ていた観客は一斉に、席についた。 「Driftin' Blues」「Nobody Knows You When You're Down & Out」「Alabama Women Blues」と割合、渋い曲を披露つつ此処ではブルーズギタリストとしての姿をアピールしていたが、やはり「Layla」のアンプラグドVerのイントロが聞こえるや大歓声があがり、演奏に手拍子が続いた。20年前のアンプラグドのヒットでこのVerも今やスタンダードになった事を痛感することになったが、しかし昔から聴き続けた、特にこの曲でクラプトンを知ったと云っても過言ではない私にはエレキVerで聞きたかったという残念な気持ちも残った。 続く「Tears in Heaven」の登場でも、ヒット曲という事もあり大きな歓声に包まれた。 だが、今宵の「Tears in Heaven」はちょっと違っていた。バックの演奏はレゲエ調にアレンジされ、ソロはキーボードがペダルスティール音で奏でられた。今まで聞いた中では一番、異質な「Tears in Heaven」だったと思う。 ステージが暗転、スタッフがエレキセットへ転換する中、ドラムとベースがリズムを刻む。ギターを背負ったクラプトンが徐ろにメロディを奏でる。「How Long」はこうして始まったのだった。ボーカルは再び、ポール・キャラックである。クラプトンはバンドのギタリストとして、またコーラスとして嬉々と参加していたのが印象的だった。 「ACE」というバンド(ポール・キャラック参加)のヒット曲でもあるこの曲。どことなく前回のスティーヴ・ウィンウッドとの共演を思い出させるものであった。 「Before You Accuse Me」で再び、オールスタンディング状態となった客席をブギー色で塗り固めていく。そしてここで大活躍したのが、クリス・ステイントンとポール・キャラックの鍵盤組。互いに長めのソロを取らせ後、クラプトンのギターが火を吹いた。 TBXトーンコントロールとミッドブースターを効かせ、クラプトンのライヴではかってないほどの歪んだ音が場内を包み込む。 「一体、何が始まるんだ?」と一瞬、不穏な空気も流れたが、慣れ親しんだギターリフが始まるとこれが「Crossroads」であるとすぐに判った。クリス・ステイントンの鍵盤ソロを挟むなど新機軸もみせながら、次曲もロバート・ジョンソンの壮大なスローブルーズ「Little Queen of Spades」。 ここでもふんだんにクリス・ステイントンの鍵盤ソロを含みながらクランチで響かせるクラプトンのギターを思う存分、堪能出来たのだった。 第一部の最後は「Cocaine」。これはもう、ステージと客席が一体となる曲。と云っても過言ではないだろう。「コケイン〜」とシンガロングして盛り上がる。その為に用意された曲である。 そんな一体感もこれが最後か−と思うと一抹の寂しさも禁じ得なかった。 「コケイン〜」と叫んで終わった後、軽く挨拶をしたクラプトン一行はそのまますぐに、あっさりとステージ脇の暗闇に消えていった。ステージが暗転するとすぐさま、客席ではアンコールを求める手拍子が始まった。 歓声の中、メンバーが復帰して始まったのが「High Time We Went」。 昨年のツアーでもアンコールで披露されていた曲である。ジョー・コッカーのカバーというこの曲、今回もボーカルはポール・キャラックに委ねられていた。 結局、この1曲だけのアンコールであったがこの曲が持つ雰囲気とアレンジがそうさせるのか この華々しいフィナーレ感に心が満たされた。 ただ、周りでは「アレ、これだけ?」という戸惑いを感じているのは実感できた。特にライヴ最後をクラプトン自身がボーカル取らないというのは納得出来ないというのは多かったかもしれない。そんな気分を知ってか知らずか、当のクラプトンはベースのネイサン・イーストに笑顔で話しかけながら、ステージを去っていったのだった。 計7回の公演となった、今回のジャパン・ツアー。 例年に比べ、1/2、3/1ぐらいに公演回数は減ってしまったが60代最後の日本公演としては年齢を感じさせない充実したライヴとなった。それにファンサイトの情報によると、このジャパン・ツアーでは一二を争うほど、良い出来だったというこの名古屋公演。最後に良い思い出を残してくれた エリック・クラプトンに感謝したいと思う。 |
SET LIST | |
1 | Pretending |
2 | Key To The Highway |
3 | Tell The Truth |
4 | Hoochie Coochie Man |
5 | Honest Man (vocal : Paul Carrack) |
6 | Wonderful Tonight |
7 | I Shot The Sheriff ※ |
8 | Driftin' Blues (Acoustic set) |
9 | Nobody Knows You When You're Down and Out (Acoustic set) |
10 | Alabama Women Blues (Acoustic set) |
11 | Layla (Acoustic set) |
12 | Tears in Heaven (Acoustic set) |
13 | How Long (vocal : Paul Carrack)(Ace) |
14 | Before You Accuse Me |
15 | Crossroads |
16 | Little Queen of Spades |
17 | Cocaine |
・・・Encore・・・ | |
18 | High Time We Went (vocal : Paul Carrack) (Joe Cocker) |
7曲目の「I Shot The Sheriff」は「Aftrer Midnight」と日替わりで披露された。 エレキギターは珍しく1本だけで通され、それはピューターカラーのFenderシグネイチャーストラト。アコギはマーティンのOM-ECHF Navy Bluesを使った。 クラプトン、情感たっぷり 20回目の来日公演スタート http://www.asahi.com/articles/ASG2L3QRNG2LUCVL00D.html ローラがエリック・クラプトン武道館公演へ。“ギターの神様”と彼女の意外な関係。 http://news.livedoor.com/article/detail/8564122/ |