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個人的に何年も前から、気になる存在であり、アイドルファンからも一目置かれるBABYMETAL。 今更、紹介するまでもないが、アミューズ所属のアイドルグループ「さくら学院」の部活動”重音部”のユニットとして結成されたというこのグループは「さくら学院」卒業(中学卒業と共にメンバーは自動的に卒業)後は、独立し、『課外活動』として今や、一枚看板として活動の幅を広げている。 神バンドという強力な援軍を得てからは、海外での活動が活発化。 各フェスへの参加、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダを周るワールドツアーの開催、その後も規模を拡大した2回のワールドツアーを決行。 「ダウンロード・フェスティバル」「レディング・フェスティバル」「LOUD PARK」「Ozzfest Japan」....などHR/HMファンで知らない者はないという有名フェスを総なめし、ロンドンのウェンブリー・アリーナで日本人初の単独公演を行ったのはもう驚異としか言いようがなかった。 またレディー・ガガのオープニングアクトをはじめとして、ドラゴンフォース、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードとの共演、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのツアーに帯同、メタリカの韓国公演のオープニングアクト、そして2017年4月からは再び、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのアメリカツアーに帯同するという。 コアなメタルファンから、とかく言われるBABYMETALであるが、これだけ多くのアーティストからオファーされ、ステージ袖から彼女たちのパフォーマンスを鑑賞し、賞賛しているのは凄い事だと思う。 メタルの世界では、こういうコンセプトのアイドルなんて(そもそも海外に、日本で云うアイドルは居ない)存在しなかっただけに可愛がられている、というのもあるだろう。 それだけにBABYMETALは「メタル」と「アイドル」を繋ぐアイコンとなり得たのではないだろうか。 それに加え、アイドル好きの自分としては色々、感慨深い思いにかられていた。 まずボーカルのSU-METALこと中元すず香は、乃木坂46の中元日芽香(現在活動休止中)の妹であり、地元、アクターズスクール広島で姉妹で活躍。同期には、元モーニング娘。の鞘師里保(現在留学中)も居た。 また広島アクターズスクールはPerfumeの出身スクールとして名を馳せたのは、今更、語ることもないだろう。 ダンス・スクリーム担当のMOAMETALこと菊地最愛にいたっては隣の区出身である(という噂)。 そしてそのMOAMETALは以前から、℃-ute(2017年6月12日、解散予定)の鈴木愛理ファンを公言しRespectもしている。 (鈴木愛理もそれを十分に認識し、昨年のBABYMETAL 東京ドーム公演を見ている。) そんな彼女たちが、ガンズ・アンド・ローゼズの日本ツアーで、オープニングアクトを務めると聞いた時は、小躍りしてしまった(笑)。 「やっと あのパフォーマンスが見れるのか」と。 開演時間を僅かに過ぎたその時、ステージ後方の大型スクリーンに「BABYMETAL」のロゴが浮かびあがった。 暗闇のステージには白装束のメンバーの姿、神バンドだ。やがて 始まる英語のナレーション。 YouTubeでよく目にした光景である。既に メンバー3人がステージでスタンバイしていた。 デスメタル的なドラムの連打と歪んだ轟音がドーム全体を包み込む。ステージの3人にスポットライトが当たった。 ステージ上に用意されたお立ち台にMOAMETALとYUIMETALが立ち、腕を振り上げ客を煽る。 「SU-METAL DEATH!」 「MOAMETAL DEATH!」 「YUIMETAL DEATH!」 1曲目「BABYMETAL DEATH」は、メンバーが自身の名前を叫ぶ、いわば自己紹介ソングである。 後半、ギターソロに乗せてステージを縦横無尽に3人が走り回り、アイドル的なノリに寄せていく。 2曲目の「泡玉フィーバー」は、神バンドのセッション、特にギター・ソロ、ベース・ソロをふんだんに取り込んでスタート。歌が始まれば、強調が非常にポップだと気づく。ダンズも非常にアイドル的だ。 それゆえ、コアなメタルファンからしては異端視されるのだろうと納得も出来る。 次曲「メギツネ」はBABYMETALの代表曲の1曲である。 和の要素を取り込み、SU-METALのハイトーンも冴え渡り、BABYMETALのアイコンである「キツネ」が全面に押し出される。 また中盤の煽りタイムでは SU-METALの禁断な「〜Jump Up. Are You Ready Kyocera Doooome!」が(笑) しかし、大阪・京セラドームはジャンプ禁止なのである。 かって観客が一斉にジャンプした為、周辺地区で地震のような地響き・揺れが発生し、それ以来、禁止になったのである。 それを知ってか知らずか、それとも敢えてなのか?いつものライヴのように客を煽ったBABYMETALであった。 再び、轟音の嵐をイントロに始まった「ギミチョコ!! Gimme Chocolate!!」。これもBABYMETAL代表曲である。 三位一体のダンス。SU-METALを中心点としてMOAMETAL、YUIMETALが舞い踊る。 今までネットで散々、見てきた映像が目前で再現されている事に 心が震えた。 ひとときの場内暗転から、3人にスポットライトが当たると それを合図に激しいギターリフが場内に響き渡った。 彼女達は、その中で空手の型(正式なものではない)を取り続ける。 そう、すなわち昨年のスマッシュヒット曲「KARATE」の披露である。 BassのBOH氏もリズムに乗せてブンブン、べースを振り回しながら弾きまくる。 そして、この曲の中盤の煽りでもSU-METALは「Everybody Jump Up!」と我々、観客に挑んでくる。 ステージ上ではその言葉通り、神バンドメンバーも含め、ジャンプ=縦ノリをしながらの熱演。 生で初めて聞き、あらためて印象的な曲調、構成に唸るばかりだった。 最後の曲は、SU-METALの「ル、ル、ル...」のハミング? スキャット?から始まった。 よもやの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」である。 直近の海外ライヴでも披露されていなかったこの曲の登場に自然とテンションが上がる。 私がBABYMETALを注目する事になった、間違いなくキッカケの曲であった。 SU-METALのスクリーミングを合図に、ステージ上、左右に勢い良くダッシュするMOAMETAL、YUIMETALが眩しく目に映る。 「イジメ(ダメ!) イジメ(ダメ!) カッコわるいよ(ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!)」 「キツネ(飛べ!) キツネ(飛べ!) きっと飛べるよ(飛べ!飛べ!飛べ!飛べ!)」 このサビの歌詞を初めて、聞いた時のインパクトを思い出していた。 今回のガンズのオープニングアクト公演では、回替わりで披露されない会場もあっただけに幸運であった。 高らかに歌い上げたSU-METALと 時に可愛らしく、激しくダンスで盛り上げたMOAMETAL、YUIMETAL。 この「イジメ、ダメ、ゼッタイ」を以て見事に、ガンズ・アンド・ローゼズ来日公演初日のオープニングアクトを務め上げたのだった。 「Hope enjoying our Show. Now It's Time for Guns N'Roses !」 ガンズにバトンを渡すが如く、叫んだSU-METALの横で対照的にクールに定番の「See You!」と言葉を残したMOAMETAL、YUIMETALは「キツネサイン(フォックスサイン)」を掲げ、ステージを去っていく。 その姿に、周りでは「メッチャ、カワイイ」という声さえ漏れ聞こえてきたのだった。 あっと言う間の35分。 こうして私にとって初のBABYMETALのライヴは終わった。 英語によるMC、巧みな神バンドの演奏、ステージを何倍にも大きく見せるパフォーマンス...。 まだまだ 生で見ないと決して判らないパフォーマンスが有ることをBABYMETALは教えてくれた。 |
SET LIST | |
1 | BABYMETAL DEATH |
2 | あわだまフィーバー |
3 | メギツネ |
4 | Gimme Chocolate!! |
5 | KARATE |
6 | イジメ、ダメ、ゼッタイ |
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「Not in This Lifetime....」
『生きてる間にはあり得ない』とアクセルがスラッシュらとのガンズ再結成の可能性を聞かれた時に答えたセリフから名付けられた−というツアータイトル。 それぐらいアクセルとスラッシュの関係は、冷めきっていた。 Guns N'Rosesの名称の権利を取得したアクセル・ローズは、ほぼ自分だけをオリジナルメンバーとして(キーボードのディジー・リードだけは唯一、残るが)2000年代を生き残った。 アクセル以外のメンバーは、スラッシュをはじめとして、当然ながらソロ活動、新たなバンド活動を続けてきた。 例えば、それは「Velvet Revolver」であり、「Loaded」であり、「Slash featuring Myles Kennedy & The Conspirators」であった。 それぞれが精力的に活動し、それなりの評価も受け、来日公演も行っている。 だが、Guns N'Rosesの往年の活躍を知っているファンからしてみれば、どこか不完全なものだと感じぜずにはいられなかった筈だ。 「この歌をアクセルが歌っていれば...」 「このギターがスラッシュだったら...」 そう何度、思ったことか。 それだけにこのスラッシュと、ダフのガンズへの再合流は夢物語として語られてきた。 それが現実と為ったのはちょうど、一年前。 「コーチェラ・フェスティバル」へのクラシック・ラインナップ(アクセル・スラッシュ・ダフ)での出演を発表。 それを控えて4月8日にはLAのクラブでウォーミングアップ・ギグを開いた。 マスコミ・シャットアウトの中、限られた幸運なファンを前に、3人は遂に同じステージに立った。 そして−即座に、スマフォによって撮られた映像は世界に拡散。 奇跡の再合流が為ったことを知らしめた。 しかし、好事魔多し。この公演でアクセルは足を骨折した。 いきなり暗雲がGuns N'Rosesに立ち込めるものの、このバンドの歩みは力強かった。 またアクセルは、ガンズのツアーの合間を縫って、ブライアン・ジョンソンの代役としてAC/DCのステージにも立ち続けた。 フー・ファイターズのデイヴ・グロールから借りた「王座」に座って歌うというサプライズもあった。 今思えば、この数々のハプニングが兎角、情緒不安定と言われるアクセルにプロフェッショナルに振る舞う覚悟を持たせたような気がする。 それを来日初日、この大阪公演でも実感する事になった。 BABYMETALが、オープニングアクトとしてステージを温めて休憩に入った。 とりあえず、トイレに行ってみたが、男子トイレでさえも何重にも列が形成されているという驚きの光景が広がっていた。 私はあまり、ドームのライヴには行ったことがないので比べようもないが、これはガンズだから?なのだろうか。 大混雑の男子トイレから自席に帰還して、しばらく同行の友人と雑談。 その会話の中でも「(ガンズは)いつ、始まるんだろう?」と、開演時間の遅れを気にしていた。 そもそも ガンズの開演予定時刻自体、正式に発表されていなかった。 それゆえにどれだけ待たされるのか、全く想像もつかなかったのだ。 会場内ではSEとして「Ramones」の曲が流されていた。 実にガンズらしい。と頷く選曲である。 スクリーンには先程から、ガンズのクラシックロゴをあしらったアニメーションが映し出されていた。 それは昨日、オフィシャルのツイッター等で公開されたばかりのものであった。 バンドの象徴である銃ではなく、刀に変わっているのも秀逸であった。 −さいたまスーパーアリーナ公演のオープニング映像− そのアニメーションが突然、別の映像に切り替わった。 アニメーションの銃が火を吹いたのだ。何発も....。 どうやら これがライヴ開始を知らせる合図らしい。 まだ休憩に入ってから30分が経過したかどうか?という短い時間帯であった。(BURRN! の情報だと19時07分。BABYMETALの終演が18時35分。実に"たった32分間"のインターバルであったのだ。) 暗転するステージ。 昨年のツアーから使用されているワーナー・ブラザース製作のアニメ「ルーニー・テューンズ」のテーマソングが響き渡った。 この予想を裏切った開演の早さに、周りの観客も驚きを隠せず「スゲエー」という言葉も漏れ聞こえた。 慌てて椅子から立ち上がる我々。 軽快なテーマから矢継ぎ早に、不穏なテーマが場内を満たしていく(2014年公開の映画「イコライザー」のテーマ)。 その曲を背に ステージ上にはメンバーがパラパラと姿を現し始めていた。 湧き上がる歓声。 やがて お馴染みの力強いスクリーム。 「 Oh Saka ! 〜 From Los Angeles " Guns & Roses"!」 歓声が最高潮に達したその時、ダフ・マッケイガンのベースがあの曲 −「It's So Easy」のイントロを奏で始めたのだった。 一斉に振り上がる拳。 ステージ中央に、徐ろに革ジャンを着たアクセル・ローズが立つと一気にボルテージが上がった。 アクセルの傍らには、確かに黒いハットを被ったスラッシュが居た。 私は 伝説を目の当たりにしている事に身体が震えたのだった。 「You think you're so cool Why don't you just」の歌詞の後に、観客が一斉に中指を突き立てて こう叫ぶ。 「Fuck off!」 なんと壮観なことか! パンクスの初期衝動が蘇ってくるかのようだ。 ワウを踏みながら、ギターを掻き鳴らすスラッシュにスポットライトが当たる。 「Mr. Brownstone」の始まりである。 でべそ状のステージ先端で、革ジャンを脱いだアクセルが歌い始める。まるで当たり前のような佇まい。 ギターソロになれば スクリーンいっぱいにスラッシュの際立った流麗なフィンガリングが映る。当然の如く、歓声があがった。 3曲目「Chinese Democracy」。 「How are Doing 」「Good Evening」というアクセルの呟きと共に曲はスタートした。 遂に、スラッシュが参加していない曲が披露されたのである。 だが、冒頭のリフから、既にスラッシュの曲−と言ったら語弊だろうが、もはやあのアルバム「Chinese Democracy」にさえ、脱退せずにレコーディングに参加してずっと弾き続けてきたような一体感があった。 「Chinese Democracy」のロゴ(民主)アニメーションが派手に動き回るスクリーンを背にアクセルは熱唱した。 曲終了後には、ドラムのフランク・フェラーがバスドラで観客を煽る。 「 Guns & Roses!」「 Guns & Roses!」 その音に被せ気味に、スラッシュが"あの単音リフ"の触りをドームに響き渡らせた。 すかさず場内は熱狂のような盛り上がりに支配される。 アクセルがこう叫んだ。 「Do You know where the Fucking you are ? You're in the jungle "Osaka", you're gonna die!」 この場に居た誰もが待ち望んだ曲に、狂喜乱舞する。 個人的な事を言わせて頂ければ、「Welcome to the Jungle」が流行し、ラジオ等で頻繁に流れていた頃は嫌いだった。 いや、大嫌いだったと言っていいかもしれない。 何と言ってもこの特徴的なアクセルの歌い方が 当時の自分にとっては拒否反応が強かったのだ。 しかし、今は違う。 あの嫌いだった「Welcome to the Jungle」を 当時のバンドのメンバーが3人が中心となって熱演しているこの状況は、感動すら覚えた。 アクセルはギターソロ時にはステージと、ステージ袖を行ったり来たりする(これも今や、見慣れた光景だ)。 その時、ステージの最前線に居るのは、ダフ・マッケイガンである。華がある男が居ると、バンドはとても締まって見える。 アクセルが珍しく一礼して曲を終えると、今度はステージの先端にスラッシュが歩み出て、コードをかき鳴らしながら8ビートのリフを刻む。(この時の、スラッシュの、軽快なステップを踏みながらのギターは見どころであった。) 「Double Talkin'Jive Motherfucker」である。 アクセルのラップのような早口の歌詞に感心するばかりであったが、エンディングまでのメランコリックでメロディアスなギター・ソロにも酔いしれる事となった。 「Chinese Democracy」アルバムから2曲目の披露となったのは「Better」。 大音量の不協和音のようなイントロが響き渡る中、ステージ後方のスクリーンには不気味な"でっかい目玉"が映し出された。 しかし、この時のアクセルには、イマイチ、声が出しにくい、不調ぶりが伺えた。 終始、歌いにくい音程で、声を張り上げないといけないこの曲は、平時でもかなり難しい。 新年一発目、昨年から1ヶ月、間が空いたアクセルでも好不調の波が存在するのを改めて知ったのだった。 7曲目の披露となった「Estranged」はミディアムテンポのパワーバラードだけに、アクセル節を存分に堪能できる曲となった。 アクセルにとっても「Better」に比べたら、随分、歌い易そうである。(但し、BURRN! のレポートにもあったように、今ひとつ、キレがなかったのも否めなかったが) レスポールのゴールドトップに持ち替えたスラッシュのメロディアスなギターソロは非常に気持ち良い。 スラッシュ参加の意義深さを実感した瞬間でもあった。 中間部に組み込まれたディジー・リードのピアノ・ソロ。 アクセルから紹介されるシーンは20数年前の東京ドーム公演以来、馴染み深いものである。 壮大なバラード曲の後は、Wingsのカバー「Live And Let Die 」。 アクセルのスクリーム一発で、会場が揺れるほど盛り上がったかと思えば、その後に来るレゲエのリズムで意表を突く。 その後には、またハードに盛り上がる。この何度にも渡る波状攻撃に頭がクラクラする。 最後はそんな観客の様子に満足したアクセルが、ステージセンターにある小型モニター(歌詞が流れるプロンプター)に乗り、仁王立ちでポーズ。 我々は そんなアクセルに賞賛の拍手を送ったのだった。 9曲目も往年の名曲の登場だ。「Rocket Queen」である。 再び、ダフにスポットライトが当たり、ベースラインが響き渡る。 スクリーンにはダフのベースが大写しになると、其処には昨年、亡くなったプリンスの「シンボルマーク」が貼られているのに気付く。 プリンス・ファンであるダフ流の追悼メッセージであるのだろう。 やがて、スラッシュのギターがベースラインに絡まり、リフを刻み始めると歌が始まった。 ここでの見所は、サビの部分の、アクセルの横乗りダンス?だろう。今まで、何度となく見てきた光景である。 また今夜初の、もうひとりのギタリスト−リチャード・フォータスのギター・ソロ・コーナーが用意されていたことも特徴的であった。 彼のプレイを見るのは2007年以来であったが、案外、テクニカルなフレーズを弾くことに驚いた。見た目がイジー・ストラドリンなだけにギャップが..(笑) その後、スラッシュは、JEFF BECK宜しく(またはRichie Sambora宜しく?)トーキングモジュレーターを使い、フリーキーなソロで曲に華を添えたのだった。 それから、この「Rocket Queen」では、SEXシーンを想像させる女性の喘ぎ声が収録されていることで有名であるが、その声が聞こえてくる辺り(流石に会場では流れなかったが)になると、後方のスクリーンには、二人の骸骨が交わっているシーンが映し出され、ニヤリとしてしまった。 10曲目は「You Could Be Mine」。 ドラム連打のイントロだけで歓声があがる。 さすが「ターミーネーター2」の主題歌である。(と言っても、それを覚えているのも40代半ば以上の年齢層だろうが) 個人的には、スラッシュがアーノルド・シュワルツェネッガーも出演したPVで弾いたように、赤いB.C.リッチ・モッキンバードに持ち替えていたのが懐かしかった。 「Duff McKagan!」とアクセルの紹介され、スポットライトを浴びるダフ。 マイクスタンドの前に立ったダフは、後ろにスラッシュとリチャードを引き連れているような、ポジションになった。 そんな中、リチャードがコードをかき鳴らし、そこにスラッシュが絶妙なオブリガードを入れてくる。 それをバックにしてダフは渋く、ゆったりと歌い上げる。 曲はJohnny Thundersのカバー曲「You Can't Put Your Arms」である。 チャールズ・マンソンの曲をシークレット・トラックとして収録した事で物議を醸したカバーアルバム「The Spaghetti Incident ?」からの選曲である。 ワンコーラスほど、歌い終わると、曲は急にスピードを増した。 ドラムも勢い良く入ってくる。 メドレーのように曲が移り変わり、Misfitsのカバー・ソング「Attitude」披露となった。 根っからのパンク・ファンのダフの出自に見事に適った選曲であった。 次に、ステージに復帰したアクセルがディジー・リードの美しいピアノの調べに乗って「This I Love」を披露。 これも「Chinese Democracy」アルバムからの選曲である。 こういうロッカバラードを歌わせたら、アクセルの右に出るものは居ないというぐらいアクセルの声も良く出ていた。 深緑のレスポールを携えたスラッシュのギターソロとアクセルの声が合わさった瞬間、私は鳥肌が立った。 間違いなく、今夜の白眉な時間であったと思う。 感動的な余韻がドームに拡がっていく中で、映画「暴力脱獄」の有名なセリフがPAから流された。 「What we've got here is failure to communicate. Some men you just can't reach. So you get what we had here last week 〜」 それだけで大きな歓声があがる。 やがてアクセルの口笛が、ギターのアルペジオに乗って響き渡った。 「Civil War」は反戦を謳ったメッセージ色の強い曲である。 言葉を噛みしめるように静かに歌っていたかと思えば、サビに向かって叩きつけるように歌うアクセルの怒りが見事に表現されている。 アメリカを、世界を分断しようと躍起になるドナルド・トランプが大統領に就任したばかりの今である。 アクセルの脳裏に、あの大統領の顔が浮かんでいたのは想像に難くない。 ギルドのダブルネックギターを変幻自在に操ったスラッシュは、曲のエンディングにJimi Hendlixの「Voodoo Child」のメインリフを引用するサプライズも用意していたのだった。 14曲目は、ネットで意外にも待望されていた曲「Coma」。 スクリーンには、心電図の波形が不気味に映し出され、不穏な雰囲気を醸し出していた。 しかし、なんという音程の取りづらい曲だろうか。 所々、キツそうな表情をしているものの、易易と歌いあげるアクセルには敬服するばかりである。 曲終了後、ダフをはじめとしてバンドメンバーを順に紹介するアクセル。 最後に呼ばれるのはやっぱり、この人である。 「... and Guitar.... Slash」 眩しい光を一身に浴びたスラッシュが、ゴールドトップを手にブルーズ調のフレーズを流麗に弾きこなしていく。 それも 特徴的なスタイル(レスポールのボディを縦気味にして弾くあのスタイル)で再現されているのだ。 ブルーズ調の速弾きが、やがてメロディアスなフレーズに変わった。 「Speak Softly Love」....つまり「ゴッドファーザー 愛のテーマ」として つとに知られている曲である。 かってガンズのライヴでは定番の曲であったが、スラッシュの再合流と共に復活したのだった。 だが、トレモロピッキングでメロディを奏でる場面もあり、以前と演奏スタイルが異なっている事も気付かされた。 (そういえば、B'zの松本孝弘氏も、この曲を弾いていたな。とふと思い出した。) 最後の音を弾ききった後、ほんの一瞬のブレイク。そして− その後に聞こえてきたリフで、会場は文字通り、揺れた。 「Sweet Child O' Mine」の登場は、余りにも自分の思い出とリンクし過ぎていて心震えたのだった。 「Welcome to the Jungle」でガンズ嫌いになった自分に、ガンズの魅力を教えてくれた「Sweet Child O' Mine」。 風邪か何かで寝込んでいた時、ラジオから流れてきたこの曲を聞いたあの瞬間の事を未だに忘れられない。 それだけにスラッシュの演奏で、アクセルが歌うというこの現実は、まるで夢を見ているかのような時間だった。 周りで誰もがアクセルと一緒に歌っている(もちろん自分も)という一体感に、私は涙さえ零れそうになってしまった。 演奏を終え、感動が静かに場内で拡がっていく中、ステージセットの一番、高いところにスラッシュとリチャードが上った。 ギター・セッションの始まりであった。 向かい合い、互いの演奏を確かめるよう弾いている二人。 曲はPink Floydのカバーで「Wish You Were Here あなたがここにいてほしい」である。 お互いにソロを熱演する中、ステージセット下では、薄闇にまぎれてピアノの設置が行われていた。 そのピアノに腰を落ち着けるアクセル。 「Wish You Were Here」の演奏が終わると同時に、アクセルの指が鍵盤を叩いた。 スポットライトが静かにアクセルを映し出す。 「November Rain」はガンズの中でも 屈指の名バラードである。 正に、アクセル・ローズの独壇場と言った雰囲気だ。 ドラムが加わり、壮大なシンフォニー(シンセサイザー)が曲をバックアップする。 残念ながら、この時もアクセルの声が絶好調とは言えなかったものの、まだ この曲を含んだアルバム「Use Your Illusion」がリリースしていない頃、聞きまくっていたブートのDEMOテイクを懐かしく思い出したのだった。 「November Rain」後半のマーチ(?)部分で、アクセルのピアノの前で、ギターを弾きまくるスラッシュ。 なんと絵になる光景だろうか! 次にスラッシュがGibsonダブルネックのギターに持ち替えて、弾き始めたのはBob Dylanのカバー曲「Knockin'On Heaven's Door」である。 まさか ノーベル文学賞受賞者の曲をカバーする事になろうとは20数年前には思わなかっただろうが、今や、この曲もガンズのライヴでは定番曲。 中盤にはリチャード・フォータスのギター・ソロもたっぷり聞かせ、曲は怒涛の後半へ移っていった。 「Knock, knock, knockin' on heaven's door」の歌詞の部分では、観客に歌わせ、客席(最前列付近)がステージ左右の巨大縦長スクリーンに映し出された。 3度程、そんな機会があっただろうか。 其処には突然、映し出され、狂喜するファン、恥ずかしがるファン、隣の友人に確認するファンと色々と居たが、やっぱり印象深かったのは、胸の谷間を強調した女性であった。 その破壊力たるや...(笑)男性陣からどよめきにも似た歓声が上がったのは言うまでもない。 遂に本編最後。 それは列車の警笛から始まった。 そうなれば あの曲しかない−「Nightrain」である。 (だが「Nightrain」とは夜汽車ではなく、酒=ワインを意味するのだが。) スクリーンには、列車を想起させるような、何処かを走っているようなアニメーション映像が続いた。(後半になって、それは車に乗っている事が判明した。) しかしながら、疾走感溢れるこの曲には相応しい演出だろう。 起承転結のはっきりとした、日本人好みとも言える「Nightrain」は観客も本編最後と知ってか、大いに盛り上がって終わった。 曲エンディングでステージ中央のモニターに乗り、両手を高く掲げ「Thank You」と言い残したアクセル。 その目は満足そうに輝いていた。 足早にステージを去ったアクセルを呆然と見送る我々であったが、バンドメンバー全員が去った訳ではなかったようだ。 騒然とする中、薄闇のステージからアコースティック・ギターの音色が響いてきた。 どうやらスラッシュとリチャードはステージに残っているらしい。(本当は、ダフもアコギを携え、残っていた。) 最初は小さかった音も、観客の誰もが気付くぐらいの音量になると、ステージに3人のギタリストが立っている事がスポットライトによって示された。 ダフとリチャードが向き合ってアコースティック・ギターを弾いている傍らで、レスポールを爪弾いているスラッシュが居たのである。 二人のアコギ演奏に、歌のメロディラインを挟み込んでくるスラッシュ。リチャードの笑顔が印象的だ。 Rolling Stonesの「Angie」をインストで披露し終わると同時に、三人のスポットライトにアクセルが入り込んできた。 そしてほぼ同時に、あの口笛が聞こえてきたのだった。 そう、「Patience」である。 叙情的で、アコースティカルな響きが場内を満たし、後方のスクリーンには、鳥が飛翔する象徴的なアニメーションが流されていた。 (この映像を見て「えっ 『コンドルは飛んで行く』?」と思った人も多いのでは。笑) そんな映像に目を奪われている間に、アクセルは驚きの行動を取っていた。 ステージ上手に歩み寄ったアクセルは、観客の声援に応えて手を振っていたのだ。 これは今までのアクセルを鑑みれば、驚異としか言いようがなかった。 そんな態度に、観客も驚きの声をあげたと同時に、笑顔で手を振り返し応えたのだった。 「Patience」は個人的にも思い入れの強い曲であった。 この曲のリリース当時(1988年)、アメリカのミュージックシーンではアンプラグド・ブームが到来し始めていた。とはいえ、ガンズがアコギでロックしていることの意外性、そしてそれが実にカッコ良かった事。HR/HMだけではない幅広い音楽性にノックアウトされたのだった。 (それが祟って(苦笑)、初めてカセットMTRで録音したのもこの曲だった。とてつもなく下手だが、個人的なライフログとして公開してもいる。⇒ GN'R - Patience (Cover) それゆえ、この「Patience」を当時のレコーディング・メンバーを中心に再現している事に感激したのだった。 それに何だろう? ドームという広大な会場であるのに、まるで隣で演奏しているかのようなアットホーム感というか、小さなライヴハウス感というか....。 スマフォの光を、ライター代わりに頭上で翳す観客の自然な演出効果もあって、印象的な素晴らしい演奏となった。 ライヴはいよいよ、オーラスへと近づいていた。 此処で一呼吸置くように、聞きなれない曲が披露された。 それはThe Whoのカバー「The Seeker」であったのだが、誰の趣味で選曲されたのだろう? おそらくThe Whoのファンぐらいしか知らないこの曲(?)に観客は(自分も含め)半ば、ポカーンとしていたようであった。 ライヴ・ラストは、昔から(ライヴ・ラストソングとして)変わらないこの曲 −「Paradise City」。 ステージ中央の一段高くなった処で、スラッシュがメインリフを弾き、アクセルも其処に乗って横で歌い始める。 その姿は2017年の今だからこそ、新鮮に映る。 イントロから、アクセルの「 Look Out !」スクリームの後、メインテーマに入った瞬間、ドームが揺れた。 アクセルはその反応を見ながら、手に持ったホイッスルを合図代わりに一吹きし、それを客席に投げ込むと、当然の如く、大歓声である。 この「Paradise City」のサビの歌詞 「 Take me down to the paradise city Where the grass is green and the girls are pretty Oh, won't you please take me home 」 では 日本人にも非常に判りやすい英詞の為か、大合唱になる。 これは今も、昔も変わらない。 そして−後半のここぞという処で、ステージ下に設置されたキャノン砲から紙吹雪が噴射された。 2007年の来日公演でこの演出は経験済だった為、驚きはしなかったが、それでもライヴの大団円を知らせるこのサプライズは観客を大いに盛り上げた。(残念な事に今回に限っていえば、その紙吹雪の嵐を直接、触れられなかった。もう一歩だったんだけれど 笑) 歌い終わったアクセルは、大阪の観客に向けて謝辞を叫び、マイクを客席に投げ入れると、両手を大きく掲げた。 (マイクを投げ入れるとは知らなかったので、アクセルの予想外の行動かと思ったが、これはここ最近の恒例行事であったようだ。) 場内の興奮も最高潮となったが、アクセルだけでなく他のメンバーも即座にステージを捌けていく様子を見て、我々にまだアンコールがあるんだ!と期待させた。 しかし、そんな事は有る訳もなく(苦笑)どうやらアクセルが進行を間違えたらしく(スタッフに促されると)他のメンバー共々、すぐにステージに帰還した。 あらためて バンドメンバーが横並びに肩を組み三礼。 アクセルの横には当然ながら、ダフとスラッシュである。 この光景を一体、何年 待ったのだろうか? 彼らを見ながら、私はそう思わずには居られなかった。 メンバーが去ったステージをしばらく、呆然と見つめた。其処では既に、スタッフが明日の神戸公演の為、機材撤収を始めていた。 それを悟ったかのように、PAからはRolling Stonesの「Far Away Eyes」が静かに流されていた。 「Get a girl with far away eyes (夢見るような瞳をした女を見つけるんだ)」 と歌う、この曲。 アクセル、スラッシュ、ダフが集ったGuns N'Rosesを夢見るように その瞳に収めたのは、我々だったのかもしれない。−と思うのだった。 2007年に行われた、Guns N'Roses ジャパンツアー(Chinese Democracy World Tour)を見てから10年。 あの時も、一度、延期されてからの公演だった為、無事に開催されるかどうか、開演のその瞬間まで不安が消えなかった。 ステージから近い処で見られたという幸運にも恵まれ、アクセルを至近距離で感じる事が出来たが、それだけに「アクセルに機嫌を損ねられ、途中で中止になったら大変だ」という心配から 客席で必死に盛り上げた。 今、思えばそれも懐かしい思い出であるが、当時は本当に必死だった(苦笑)。 ライヴが始まっても一寸先は闇。どうなるか判らない危うさが常に同居していたアクセルに、緊張を強いられるばかりであった事を思い出す。 10年前の日本公演も、全公演を上機嫌で臨んだ事も伝えられたものの、後年の来日公演では開演時間の大幅な遅れや、予定外の長時間パフォーマンスと"気分屋アクセル"を発揮し、やはり一筋縄でいかないアーティストで有る事を周知させてしまった。 それだけに今回も幕が上がるまで不安であった。 特に、今年一発目、ツアー初日である。 だが、そんな開演前の予想を覆し、驚くべき時間の正確さで始まった大阪公演。 (埼玉公演だったか、1時間ほど待たされたとは訊いたが...苦笑) ライヴの内容も、一瞬たりともダレることなく、時にはメンバーから笑顔も溢れたのは、幸せな気持ちに浸る事となった。 まさか ガンズから多幸感を得ることに為るとは考えもしなかったが、それだけバンド内の雰囲気は良好なのだろう。 バンドは日本公演の後、ニュージランド、オーストラリア、シンガポール、ドバイ、ヨーロッパ...と今もツアーを続けている。 このツアーが最終的に いつ終わるのか判らないが、この良いバンド状態のまま、新曲、アルバム・レコーディングに入り、それを携えて2年後ぐらいに再び日本に戻ってきて欲しい。 そう願わずにはいられない 今なのである。 |
GN'R LIVE IN OSAKA 2017 part1 GN'R LIVE IN OSAKA 2017 part2 |
SET LIST | |
** | OPENING SE : Ramones |
0 | Looney Tunes Thema 〜 The Equalizer OST (Harry Gregson-Williams) |
1 | It's So Easy |
2 | Mr.Brownstone |
3 | Chinese Democracy |
4 | Welcome To The Jungle |
5 | Double Talkin'Jive Motherfucker |
6 | Better |
7 | Estranged |
8 | Live And Let Die (Wings) |
9 | Rocket Queen |
10 | You Could Be Mine |
11 | You Can't Put Your Arms Around a Memory (Johnny Thunders) 〜 Attitude (Misfits)※ |
12 | This I Love |
13 | Civil War 〜 Voodoo Child (Jimi Hendlix) |
14 | Coma |
15 | Speak Softly Love (Love Theme From The Godfather) (Nino Rota) |
16 | Sweet Child O' Mine |
17 | Wish You Were Here (Pink Floyd) 〜 November Rain ※※ |
18 | Knockin' On Heaven's Door (Bob Dylan) |
19 | Nightrain |
・・・Encore・・・ | |
20 | Angie (Rolling Stones) 〜 Patience ※※※ |
21 | The Seeker (The Who) |
22 | Paradise City |
** | CLOSING SE : Far Away Eyes (The Rolling Stones) |