吉川友
Kikkawa You 微かな粒 Live







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 2020年は 今を生きる現代人にとって、忘れられない年になったのは間違いないだろう。


 それは もちろんCOVID-19、新型コロナウイルス感染症の世界的感染の爆発的拡がりと其処を起因とする数々の影響....に他ならないのだが、未だ収束が全く見えず、適応するワクチンもまだないという状況は事態を困難にさせている。
 街のロックダウン、在宅勤務、検疫、マスク・アルコール除菌液の不足・高騰、医療機関の逼迫、休業要請、給付金支給、繁華街での感染等々、ここ数ヶ月で我々の生活の上で起こった事象は数えたらきりがない。
 そのどれもが今まで全く、経験したことのないものばかりであった。
 そして殊、経済の面に於いては飲食業、サービス業、製造業を中心に仕事が激減し、外国人労働者、派遣社員という労働の調整弁とも云われる弱い立場の労働者は真っ先に切られ、リーマンショックの悲劇が再び、繰り返されている。
 また感染初期の段階においては、ライヴハウスでのクラスター発生した件、小劇場でのクラスター発生によって、演奏、演技を伴うパフォーマンスを生業とする『エンターテイメント業』は感染拡大の温床のように言われ、自粛期間の数ヶ月間は開店休業状態であった。

 緊急事態宣言が5月末に解除され、ようやくエンタメ業界も徐々に活動が出来るようになったものの、それは当然ながら限定的であった。
 ZOOMというアプリケーションによる配信やドラマ、YouTubeやインスタライブ、ニコ生など各種動画サイトでの無観客ライヴ、無観客舞台が有料で配信され、アーティストや俳優への収入へと繋がっている。
 7月に入って、社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保ちながら、観客の数を半減?させながらのライヴも所々で行われはじめている。


 きっかこと、吉川友さんも7月26日(日)、東京・表参道GROUNDに1月13日以来、半年ぶりの単独ライヴが観客を入れて行われた。

 このライヴには『Kikkawa You 微かな粒』というタイトルが掲げられ、14:00、19:00の2回開催されたが、客数は普段のライヴとは異なり、ぐっと減らされたものになった。
 しかし、その代わりといったらなんだが、ツイキャスでの有料生配信が決定し、私は「きっかのライヴは二公演目を見る」というマイ・ルールに従い、19:00の回の予約購入をした。

 ところで、最近のきっかと言えば、忘れてならないのは『ひま粒し』という自粛期間中に行ったパフォーマンス(?)である。

 この『ひま粒し』とは”外出自粛期間中に暇を持て余して始めた、さまざまな食べ物の粒を数える”行為のことで、本人が語る処によると、子供の頃から粒を数えることは好きだったものの、親御さんに表には出さない方が良いよ。とひた隠しにしてきた趣味だったらしい。
 だが、コロナ禍で仕事はおろか、外出さえもままならなかった4月。
 ツイッター上に「はっさく」の粒画像と共に「158つぶ」と粒数を表記したことから始まったのだった。
 その後、「イチゴ 241つぶ」(4月4日)「イクラ 340つぶ」(4月6日)「とうもろこし 433つぶ」(4月7日)と数え終わったところ、ツイッターで目ざとく見つけた人が、それまでの粒かぞえの画像をまとめ「ライブができなくなったアイドルが、どれだけやる事がないか世間に知って欲しい」と拡散。
 そのツイートには8万リツイート、31万のいいねが付いた。
 これに対してきっか本人は「なんかこいつやばいみたいになってて将来結婚できなくなっちゃうからみんなRTやめて」と応戦するも、時すでに遅し。
 上記のように世界中に拡散した。
 その結果、本人も予想だにしなかったことが次々と発生した事から、ネットの力を思い知らされることとなった。
 まずabemaTV 「けやきヒルズ」で取り上げられた事を端緒に、その次はいきなりイギリスの大衆紙「デイリー・メール・オンライン」掲載されるという”ワールドワイド”な展開に度肝を抜かれ、その後もクウェートのFMラジオ局のDJにアラビア語でツイートされるという斜め上をいく展開に我々は付いていくのが精一杯となった。
 これら海外での影響を見たからだろうか、ようやく日本のマスコミも『ひま粒し』を取り上げることが多くなっていった(これこそ逆輸入!だ)。
 「めざましテレビ」「Nスタ」(TBS)「スポーツ報知」「京都新聞」「安住紳一郎の日曜天国」(TBSラジオ)「シューイチ」(NTV)「夕刊フジ」「東京スポーツ」「有吉反省会」.....とメジャーな媒体にインタビューが掲載され、時には本人が出演しインタビューが放送された。
 それに加え『ひま粒し』が実際に仕事に繋がるという快挙な出来事−デルモンテの『デルモンテ つぶ野菜』のPR動画を担当するというのもあった。
 このコロナ禍で仕事が激減した芸能界において、仕事を増やした数少ない芸能人が正にきっかであり、『自粛期間中の“暇”を仕事に変えた!』とまで言われるようになったのは流石であった。


 前置きが長くなってしまったが、『Kikkawa You 微かな粒』ライヴ、第二部は時間通り、19:00ジャストで始まった。
 会場ではライヴ開始を知らせるオープニングのSEが流されていた。
 それは「#ひま粒し Soulful ver.」
 所属事務所「YUM-Entertainment」山田昌治社長が、吉川友作品のプロデューサーであるmichitomo氏ともに一連の『ひま粒し』を題材に面白半分(?)に創った曲である。
 この選曲に とことん今夜のライヴは『ひま粒し』で行くぞ。という気概を感じたのは私だけだろうか?
 それはきっかが薄闇の中、バンドメンバーの間をぬって登場し、歌い始めた1曲目からも明らかであった。
 「#ひま粒し」。なんとオープニングSEからの連続である。
 「#ひま粒し Soulful ver.」を面白半分で歌われるのが嫌だという理由(?)で、改めてきっか本人が歌い直したというのがこの「#ひま粒し」である。
 バンドでこの曲が披露されるのは、本日が初であったが、ファンクど真ん中なこの楽曲はバンドでこそ真価を発揮する。と言っても過言ではない。
 きっかの口から繰り出される「数えた」のサビの印象的フレーズが頭を駆け巡る。
 しかも曲中には、なんと『ひま粒し』ステージ上で実践するというおまけ付きであったのだ。とはいえ、1、2分の尺で、細かい種を数える訳にはいかない為、用意されたのは山田社長が差し入れた高級巨峰(千疋屋で購入らしい)であった。(1部では「シャインマスカット」の「ひま粒し」が行われた)
 バンドの演奏をバックに、巨峰の粒を数えるきっか。相当、シュールな光景である。そんな時間もあっという間に過ぎ、巨峰の粒数え”37つぶ”という結果と相成った。
 巨峰の『ひま粒し』を終えると、再び本来の「#ひま粒し」に戻るのだから、シュールさは余計に極まるばかりであった。

 「みんなも(『ひま粒し』を)どういう気持で見たらいいか、わからないですよね(笑)」

 「今後も数える粒がある限り、挑戦していきますので、ぜひ、みなさん、温かい目で見守ってください」

 と直後のMCで『ひま粒し』について答えるのだった。
 2曲目は「恋」をそのタイトル通り、ハツラツと歌い客席と、画面の向こう側にいる我々を盛り上げ、その勢いに乗って途切れなく3曲目「NEO SUGAR SUGAR YOU」へとなだれ込んだ。
 最後の「ラ、ラ、ララ、ララ〜」のコーラスでは、社会的距離を意識してか、小さく手を振るように歌唱中にきっかから”指導”が入るというのも、今の御時世ならでは。
 2回目のMCはバンド紹介。友フレ(ファン)にはおなじみのメンバーである。
 ギターのオータケ・コーハンさん、キーボードのベントラー・カオルさん、ドラム GOTOさん、そしてベースは劔樹人さんに代わって有島コレスケさんという布陣である。
 きっかは久々の生バンドでの歌唱に「長年、バンドでやらせていただいているので、息がピッタリと合いますよね。ワン・チームというイメージがついてきて」
 とバンドの仲の良さをアピールし、楽屋ではゲームや瞑想をして(?)遊んでいるというエピソードも披露するのだった。
 MCを終え、パフォーマンスに復帰した4曲目はは「アカネディスコ」
 いつもながらのアッパーな楽曲に、画面のこちら側でも大いに盛り上がる。お約束のコール&レスポンスは、手と足を使って発声禁止「コロナ対策」もバッチリのバージョンだ。
 次曲の「チャーミング勝負世代」では疾走感を増加させるようなコーハンさんのギターソロが いつも以上にキレキレであったように感じたのは久々の客前のライヴだったからというのもあるだろうか。
 6曲目は もはやおなじみ。最近のライヴ定番曲でもあるロッカバラード「DISTORTION」である。
 ここでもコーハンさんの熱演にも目が行ってしまう。熱いプレイをしすぎて、ギターのストラップが外れ(壊れ)?左肘と膝でギターを支えているというハプニングも撮影カメラはバッチリと捉えていた。
 きっかは嵐のように3曲を歌い上げると、一休みとばかりMCタイムへと移っていった。
 用意されていた椅子をステージ前方に引っ張り出し、そこに座ると、目の前の観客に語りかけた。

 「私、キチンとしている人に見えるじゃないですか?」

 と問うと、場内の客も、我々視聴者も一同ポカーン(笑)デビュー以来何年も、きっかの言動を注視してきた者ならコレは納得できる状態でないかと思う(笑)。

 「A型なんできっちりしている筈なのに、ズボラというか だらしない事を自覚しました。」

 と言うと

 「(仕事を依頼された)デルモンテさんの商品のつぶを取っている映像をYouTubeにアップしたときに、(着ていた)黒い服に、たくさん白い粒が付いてますよ。シミもついているので気をつけた方がいいですよとファンに注意された。」

 と補足。私は笑うしかなかったのだった。

 また「去年の夏から、自転車に乗る事にハマっていて、雨の日も風の日も何があっても自転車で、たまに(仕事の)現場も行っているんだけど、マウンテンバイクとかって、右の裾が巻き込まれちゃうんですよ。あたし、しょっちゅうなっているんですよ。だから足がめっちゃ汚いんですよ。傷とか(笑)」

 「洋服とかも長いズボンの服を着るようになったんですよ。自転車に乗るから。ジーパンとかも普通に履くんですけど、裾が広がっているのが流行りでジーパンも巻き込まれて、こちらだけボロボなんですよ」

 「たまに長い、ひらひらのスカートを履いていると、自転車に乗る前に必死に(スカートの裾をサドルに)挟み込んで、巻き込まれないようにしてペダルを漕いでいる」

 と座っていた椅子を自転車のサドルに見立て、全身で再現するきっかの姿に萌えるのだった(笑)。

 「裾が破れない程度な洋服を着て自転車には乗ろうとか そういう女子力というか女の子らしい一面を28歳の今年は気をつけていこうと思っています。」

 とMCをまとめた。
 そんな面白MCコーナーのあとは、真逆とも言える「バラードコーナー」へと移っていった。
 ステージの照明も落とされ、きっかに青白いピンスポットのみが当たる。バラード1曲目は「暁 -Yoake-」。なるほど納得の選曲である。
 時折、目を閉じながらしっとりと歌い上げるきっかが美しい。
 2曲目「会いたくなったら」もこのバラードコーナーには相応しい。
 オリジナルよりもテンポを落とし演奏しているのも好印象である。
 そしてこのコーナーで最も驚いたのが 次曲の「Yellow Butterfly」であった。
 毎週月曜夜10時から配信しているShowroom『吉川友のShowroomで配信してみっか』を通じ、初めてきっかが作詞に挑戦した事でも有名なこの楽曲。
 オリジナルは疾走感に溢れた曲であるのに、今回はミディアムテンポのバラードへと変化(へんげ)させ、全く印象の異なるものへと昇華させていたのだった。
 間違いなく、本ライヴの見どころ、聞き所であったと思う。
 コーハンさんの「きっかけは」に対する「YOU」の掛け合いも、デビュー時を思い出させた。
 「バラードコーナー」最後は、きっか&キマグレンのユニット「きっかレン」がきっかけでキマグレンの二人(KureiIseki)が作詞・作曲をした「八月の花火」
 この時期にはピッタリな選曲だろう。
 特に このコロナ禍で各地の花火大会の多くが中止になったり無観客で行われている現状では、せめて音楽の中だけでも夏を感じて貰おうという きっかとスタッフの優しさかもしれない。

 艶やかな色気さえ感じさせた「八月の花火」を終え、「ここからは派手目な楽曲を続けていきたいと思います。みなさん、最後まで盛り上がってください」と言って始まったのは「さよなら、スタンダード」
 いよいよライヴも終盤戦である。
 「さよなら、スタンダード」の歌詞にある「ねえ ねえ でも」「わかるの 言えないだけ」「わかるの 伝わらないだけ」等の高音部が(きっかにとっては歌うには難しいだろうが)心地良く聞こえるのも、いつも通りである。
 そして観客にクラップを促して始まったは「恋愛遠慕」
 きっかのライヴには欠かせないアップチューンの1曲である。正しくきっかのライヴの楽しさを教えてくれる名曲と言っていいだろう。
 13曲目はライヴ後半の、あるいは最後の曲としてなくてはならない大定番曲「Stairways」であった。
 間奏前には、あらためてバンドメンバーをキーボードのベントラー・カオルさんから紹介するきっか。
 「Stairways」が表す 希望しか無い前向きな高揚感は、ライヴ1部を締めくくるにはこのコロナ禍では特に相応しい曲であったと思う。
 曲を終え、きっかはバンド・メンバーをステージから送り出すと、一人だけ残り、観客に、視聴者に語りかけるように話し始めた。

 「(この自粛期間中)Showroomだったり、配信だったりを通じて、みなさんと触れ合える時間もあったので 離れていても繋がっているような感じがしていたんですが、あらためて今日はライヴで皆さんと出会えて良かったなと思ってます。ホントに来てくださってありがとうございます。」

 「最後は新曲で締めたいと思います。5月の11日にソロデビューして9周年を迎えまして、来年が記念すべき10周年イヤーということなんですが、今回のこの新曲「TABOO」というナンバーは、デビュー当時からずっとお世話になっている音楽のプロデューサーmichitomoさん、サカノウエヨースケさんに作詞作曲して頂いた曲です。初めてこの曲を貰ったとき、すっごい自分でもオトナになったな。と感じます。10年前、9年前ぐらいの最初のデビュー当時のキャピキャピしたザ・王道アイドル”吉川友”の楽曲が10年で こんなにも振り幅が大きい楽曲を今、歌っているんだなと思うと 私自身も色んな意味で心も身体もちょっとずつですが、成長しているんじゃないかなと思います。」

 ときっか自身がこの10年間を感慨深く振り返ったように、それをずっと見守り応援してきた我々ファン(友フレ)もこの10年間を懐かしく思い出していたのではないかと思う。
 「そんな新曲「TABOO」を聞いてください」と始まった楽曲は、きっか本人の紹介にもあったようなミディアムテンポのR&Bで、これまできっかが歌ってきた曲にどれにも似ていない非常に大人な作品であった。「お気に召すまま」「バカにしないで」というパワー・ワードな歌詞も印象に残った。

 きっかは、事あるごとに好きな歌手は、目標は後藤真希と公言してきた。
 この「TABOO」は正にその後藤真希スタイル、イメージを具現化したような楽曲できっか本人の念願叶った1曲だったのではないかと思う。
 ソロデビュー10周年を来年に控え、「TABOO」は大きな転換点となる楽曲ではないだろうか。

 歌い終えたきっかは、今後、噂では「TABOO」のMVも撮るみたい。と言うと、そのMVの内容を妄想気味に予想した(笑)
 「TABOO」というタイトルゆえか「ヌードもありえるんじゃない。ヌードありえるよね?」とぶっ飛び発言が飛び出したかと思えば「渋谷の街を使うわけよ。深夜に。誰もいない所を警備してもらって、渋谷の交差点のところで不良少女みたいに歩くわけ、ちょっとアブナイ男に引っ掛かりそうになるのか...」と妄想を爆発させた。

 「本日はご来場頂きまして ありがとうございました。またライヴが出来るように頑張ります。その時は来てください。また、お会いしましょう」

 という言葉を残し、きっかはステージを降りていった。

 約半年ぶりの単独ライヴの幕はこうして閉じたのだった。




 今回は普段のライヴとは違い、観客の歓声や応援が全く聞こえない、そこに観客が居るのに−という異常な状態でのライヴであったが、そんなマイナスな点を全く感じさせない楽しいライヴであった。
 ライヴ後半、後のYouTube『Around 40 Japanese Guyz』チャンネルにて山田社長曰く「声がやや、つらくなってきた」というのも確かに感じられる部分もあったが、それだけきっかの並々ならぬ意気込みが感じられる良いライヴであったという証ではないかと思う。
 それから これまた山田社長の発言だが「1公演目より、2公演目の方がより凄かった」というのもあって、2公演目を選んだ自分のチョイスは間違っていなかったと独り言ちたのだった。

 新型コロナウイルスの感染者増大と共に、限定的でありがならようやく戻ってきたこのライブ・パフォーマンスの”微かな光”も、いつ潰えてしまうのか判らない。
 だからこそ、余計にこの時期に行われたライヴは後々になって 大きな意味を持つのではないかと今、思っている。









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SET LIST
0SE : #ひま粒し Soulful ver.
1#ひま粒し 〜 巨峰で粒数え実演(37つぶ)
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3NEO SUGAR SUGAR YOU
MC
4アカネディスコ
5チャーミング勝負世代
6DISTORTION
MC
7暁 -Yoake-
8会いたくなったら
9Yellow Butterfly(slow version)                   
10八月の花火
MC
11さよなら、スタンダード
12恋愛遠慕
13Stairways 〜 バンドメンバー紹介
MC
14TABOO(新曲)
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