NIGHT RANGER
JAPAN TOUR '83








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Jack Blades - bass, vocals
Brad Gillis - guitar
Jeff Watson - guitar
Kelly Keagy - drums, vocals
Alan "Fitz" Gerald - keyboards










 もう27年前の事となる。


 あの日の、あの夜の出来事は今もフラッシュバックのように思い出される。

 NIGHT RANGERを知ったのも、偶然の賜物だった。
 NIGHT RANGERが日本デビューしたのは1982年
 名盤の1st「DAWN PATROL」(邦題:緊急指令N.R.) はHR/HMファンの間で、話題になっていた。シングルカットされた「Don't Tell Me You Love Me」はその人気を牽引するには十分な名曲だった。
 洋楽を聴き始めた、HR/HM道の入り口に立ったばかりの私の耳にも その評判は入ってきていた。


 そうなれば、レコード屋(今ではこんな表現すらしないだろう)に行って、早速、購入−となる処なのだが、当時、私にはNIGHT RANGERの他にもう一つ気になるバンドがあった。
 それが、スペインのHMバンドBARON ROJO(バロンロッホ)でアルバムは「VOLMEN BRUTAL」というタイトルだった。
 現在も活動中というこのバンドは、当時からしてもマニア受けする”知る人ぞ知る” 存在であったと記憶するが、華やかなNIGHT RANGERと比べれば、対極に位置するものであった。

 小遣いに限界がある、現役高校生だった私は店頭で迷いに迷った末、結局「DAWN PATROL」を選んだ。

 「DAWN PATROL」は購入と同時に愛聴盤となり、30年近く経った今もそれは変わらない。NIGHT RANGERの大ファンになるきっかけをこのアルバムは創ってくれたのだ。だから、あの時、BARON ROJOを選んでいたら...
 その後の自分の音楽人生も全く別のものとなっていたに違いない。
 翌年、バンドは2ndアルバム「MIDNIGHT MADNESS」をリリース。
 特に、オープニングを飾った「(You Can Still) Rock in Ameica」は「Don't Tell Me You Love Me」の延長線上にもある、これぞアメリカンハードロックというノリの良さと、ブラッドとジェフのテクニカルなギターに私はまたしても、魅了されたのだった。
 そして、程なく決定した初来日公演。
 「ぴあ」さえも名古屋には存在していなかったあの頃、どうやってチケットを取ったのか全く覚えていない。電話予約だったのだろうか、それとも名古屋駅の玉音堂前に並んだのだろうか。玉音堂というのは、当時、外タレのライヴのチケットに関しては良席が取れる売り場として有名だった今も現存するCDショップである。(2015年に残念ながら 閉店しました)




 ライヴ当日。

 この日は、二学期の学期末試験最終日でもあった。
 当然、試験終了後と判っていたからこそ、チケットを取ったと思うのだが、もしも、ライヴ当日が試験期間中だったら、おそらく行く事は無かったと思う。
 そう考えれば、これも一つの偶然と言える。


 ライヴには私をHR/HMの世界に誘った友人が同行し、会場の名古屋市公会堂には、なぜか自転車で行った。
 名古屋弁でいう”ケッタ”である。
 名古屋市公会堂は、1930年に建立された由緒正しいコンサートホール。
 重厚な外観と、イギリス・ロンドンにあるロイヤル・アルバート・ホールに似たバルコニー形式の二階席を擁した格調溢れる客席は、今も他の会場とは一線を画すものがある。
 名古屋市公会堂は、自宅から交通機関を使っても1時間弱ぐらい掛かる距離にあり、なぜそんな処へ”ケッタ”(名古屋弁で自転車の事)で行ったのか判らないが、友人の提案だったのだろうか。今もって、謎である。

 やがて、開演時間となった。
 私はその時、私は今から目前で起こるであろう出来事に、胸の高鳴りを押さえる事が出来なかったに違いない。


 だが、肝心のライヴ本編についてはほとんど覚えていない。
 唯一、覚えている事と言ったらジェフ・ワトソンのギターソロのコーナーだった。
 目映いばかりのスポットライトを浴びながらステージセットである階段を巧みに使い、上り下りしながらもユニークなソロフレーズを奏でるジェフは、当時、エレキギターの知識の全く無かった私を興奮させた。
 (あの瞬間だったのかもしれない。ギターを弾きたいと思ったのは!
 また、ライブの内容を覚えていないのは、翌年、発売されたこの初来日公演の模様(1983.12.6 新宿厚生年金会館)を収めたビデオという恐ろしく優れたパッケージメディアがあったというのもあるかもしれない。
つまり − 生のライヴの記憶が、ビデオの映像によって”上書き”されてしまった。だから、思い出されるのは、あの映像の数々のシーンであると。
 マア、正直に白状すれば、初ライヴの緊張、二階席からの”参戦”等々があり、ライヴを冷静に見る事が出来なかった。というのが真相ではないかと思ってもいるのだが。

 夢のような時間は過ぎ、終演。
 大興奮のままライヴは終了した。
 その後、どのようにして帰宅したのか、友人とどのような話をしたのか全く覚えていないのだが、会場を後にする前にバンドを「出待ち」した事だけは今もはっきりと覚えている。
 人生初ライヴにして、初の出待ち。これは友人の誘いだったと思う。
 名古屋市公会堂の汎用口付近で、待つこと1時間余り。
 柵か何かで遮られ、決してメンバーに近寄る事も出来なかったが、タクシーに乗り込むその刹那、ジャックか、ケリーがこちらに向かって手を振ってくれた事は脳裏に焼き付いている。



 強烈なイメージと、ライヴの楽しさを教えてくれたNIGHT RANGER。
 この来日公演から数ヶ月後、バンドは「Sister Christian」で大ブレークを果たしたのはご承知の通り。だが、このヒットが結果的にレコード会社から「バラード・バンド」としての側面ばかりが押しつけられ、「ハードロック・バンド」との二律背反に苦しめられることになる。
 その結果、バンドは失速。解散した。
 それから7年後、オリジナルメンバーによる奇蹟の再結成を果たし、現在も活動中。
 私は現在も、来日の度に会場へ足を運んでいる。




 しかし、この初来日公演は自分にとっての初ライヴであった以上に特別な意味を持つと言っていい筈である。
 それは「バラード・バンド」という色眼鏡的なフィルターを通すことなく、純粋にハードロックバンドとしての期待感だけで臨み、それにメンバーも十分と応えたのは あの時のライヴだけだったと思うからだ。
 そういう意味からしても、あの日、私は希有な体験をしたのだと言えるのではないだろうか。
 私は今も、そう思っている。

2010. Spring









SET LIST
1Opening                               
2Play Rough
3Penny
4Rumours In The Air
5Eddie's Comin' Out Tonight
6Call My Name
7Passion Play
8Touch Of Madness
9Sister Christian
10Sing Me Away
11Jeff Watson Guitar Solo
12Night Ranger (incl. Drum Solo)
13Brad Gillis Guitar Solo
14Can't Find Me A Thrill
15Don't Tell Me You Love Me
・・・Encore・・・
16At Night She Sleeps
17(You Can Still) Rock In America











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