TAGAWA
Flying Carpet Tour







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田川ヒロアキ - guitar, keyboards, vocals
長谷川浩二 - drums, vocals
寺沢功一 - bass, vocals












 日本が世界に誇るヘビーメタルの祭典LOUD PARKから 出演のオファーが田川ヒロアキさんのもとに届いたのは 2009年の事である。

 バンド単位での出演が通例のこのフェスティバルにおいて、 個人での出演要請はかなり異例な事であった。
 だが、当時、固定のバンドを持たなかった田川さんはメンバー 選びに苦労したらしいのだが、そこで手を差し伸べたのが 旧知の二井原実氏(LOUDNESS)だった。

 二井原さんは、THE ALFEEで長年サポートドラマーを務めた 長谷川浩二さんと、SLYでバンドメイトでもあった寺沢功一さんを招集。ここに(即席であったが)バンドが誕生した。




 あれから5年。

 昨年−2014年後半。突如としてこのバンドが動き出した。
一度きりで終わらせるのは、勿体無いと長谷川さんが プロデューサーとなってプロジェクトを再始動させたのである。
 こうしてレコーディングされたアルバムには 「Flying Carpet」とタイトルが付けられ、バンド名は「TAGAWA」と決まった。


 「TAGAWA」と呼び捨てにされると、なんだか変な感じもするが Van HalenBon Joviのように名前(ラストネーム=苗字)をバンドネームにしている例を考えれば何ら、おかしくはない。
(長谷川さんも、MCでそれを念頭において決定したと発言していた。)
 「TAGAWA」初のライヴツアー「Flying Carpet Tour」が東京・初台での初日を皮切りに、ここ名古屋から本格的に始まった。
 会場となった名古屋MUJICAは、名古屋のシンボルの一つ、テレビ塔からほど近くにあるたての街ビルの地下二階にある。
 ここは、全くの未踏の地である為、不安があったが開場時間に合わせて 会場に向かうと既に何人かが列を為していた。
 受付を抜け、会場に入ると其処には椅子が並べられ、スタンディングではない事に まずは安堵した。
 ステージはやや高くに位置し、左右には大きなPAスピーカー。
 其処から、SE代わりに比較的小さな音でクラシック・ロックが流されていた。
 開演時間に向かって、席が埋まり始める。
 見渡した処、女性が多いような気がした。着実にファンが増えている事に嬉しくなった。


 開演時間を5分少々経過。暗転したステージを前に、スピーカーからは大音量 で歓声が聞こえてきた。
 これはアルバム1曲目の「Introduction(Strum on the Guitar!)」に他ならない。
 地を這うようにギター・アーミングの轟音が場内に溢れた。
 やがて長谷川さん、寺沢さん、田川さんが暗闇の中、ステージに現われた。
 すかさずセッティング。ギターをセットした田川さんが曲に合わせ最後のアーミングを生で聞かせた。SEに合わせて登場−ライブ開始というのはよくあるものだが、そのSEの曲に合わせて演奏するライヴっていうのはあまり聞かない。個人的には、こういう趣向は大好きなのでこれまた嬉しくなった。
 ヘビーなリフを奏で始めると、そこに長谷川さんのドラムが重なり「ワン・ツー・スリー!」の カウントが高らかに響き渡った。
 アルバムの曲順どおり「Stranger Destroys Arms」が披露された。
 然しながら、物凄い音圧だ。特に長谷川さんのドコドコとしたツーバスの響きが腹に伝わる。今夜は凄い事になりそうだ。そんな予感が頭をよぎった。
 ノイズのような轟音が田川さんのギターから、いやアンプからフィードバックされる。
 それを断ち切るように一転して明るいリフがギターから弾き出されるとお馴染みの「My Eternal Dream」であった。これまたアルバムの曲順に披露されている。
 思えば、初めて田川さんの映像を見たのがこの曲だった。もう10年以上、昔の事である。
 そんな懐かしい記憶が呼び起こされもした。
 田川さん十八番のSeep Pickingをたっぷり聞かせ、曲が終わると大きな拍手と歓声に 包まれた。

 1回目のMCでは、このバンド「TAGAWA」結成のいきさつが 長谷川プロデューサーから語られたのをイントロに、メンバー紹介が行われた。
(なんでも、長谷川さんのお兄さんは名古屋在住だとか。)
 メンバー紹介最後の田川さんからは、今回のツアーに掛ける並々ならぬ意気込みが語られたのもツアー初日ならではであろう。

 「CD通りにやると、あっという間に終わってしまうので、人の曲を挟みましょう」

 と次に始まったのが『ハードロック・ヘビーメタルの名曲』3連発であった。
 まず、1曲目はMichael Schenker Groupの有名なインストInto the Arena
 手慣れたもので、田川さんは完璧な形でカバーする。私には6月の本家来日公演の予習ともなった。
 ただ、個人的な事を言わせて貰えれば、田川さんと同じパープルエクスプレスリスナーとしてはCaptain Nemoをやってくれれば感涙必至と思ったのだが(苦笑)
 2曲目はJudas Priestの代表曲の一つBreaking the Lawであった。
 田川さんのヘビーメタル魂が炸裂した選曲(田川さんの選曲だったかどうかは判らなかったが)なのだが、 凄かったのはロブ・ハルフォードばりにハイトーンで歌い上げた田川さんのボーカル。
 私は胸が熱くなった。
 だが、それも次の曲のイントロに過ぎなかったと言えばいいのか。
何といっても、寺沢さんの選曲というJeff BeckのLed Bootsがとてつもなく凄かったのだ。
 丁度、10年前に自分も御本家のパフォーマンスを見ているが原曲とは比べ物に為らない程の 激しい演奏に、正直な処、私は何の曲なのか途中まで全く判らない程であった。
 特に長谷川さんの重戦車の如く鳴り響くドカドカドカとしたツーバスドラムと、激しいシンバルの連打が 観客の耳を直撃して圧倒した。
 長谷川さん曰く

   「ジェフ・ベックに怒られるよ」。確かに、そうかもしれない(笑)

 ただ、こういうヘビーメタル・アレンジを施したのは田川さんだという話であった。
 正にこのバンド「TAGAWA」ならではだろう。
 各自、CDなどグッズ紹介の後、演奏が再開されると今度はアルバムからは外れた、新たな曲が 披露された。
 その1曲目「Train」は電車好きな田川さんが、文字通り電車に乗っている時の高揚感を表した曲で2013年リリースされたようこそ田川Nightへに収録されている。
 イントロからして電車のSEとそれを模したリフが軽快に鳴り響いた。
 ミディアムテンポのとても楽しい曲である。
 引き続く「キミを乗せて」マツダファンフェスタ 2014 in 岡山の公式テーマソングともなった曲で「Train」よりももっと軽快な、そして田川さんがボーカルを取るロックチューン。速いだけのファストソングではなく、こういう歌えるロックチューンというのもとても良い。簡潔なギターソロも実に田川さんらしかった。

 今宵、3度目となったMCではアルバム「Flying Carpet」が発売初日、amazonで売り切れたという嬉しい報告をしたり、名古屋ネタ(コメダ珈琲 etc)や、このバンドでの海外ツアーの夢を語り、盛り上げながら、ライヴは既に後半戦に突入した。
 後半戦は再びアルバム曲の「That's Over」からであった。
 曲中盤に目一杯、寺沢さんの(チャッパーを絡めた)多彩なベース・ソロと長谷川さんの派手なドラムソロを含み、3ピースバンドの可能性を遺憾なく知らしめた。
 やはり、演奏が巧いバンドというのはひと味も、二味も違うということである。
荘厳なキーボードのメロディに乗って田川さんのGary Mooreばりの泣きのフレーズが場内に 木霊する。アルバムからの曲−「Luminous」である。
(ちなみにキーボードのメロディは、田川さんの足元にあるZOOMのマルチレコーダーから自ら 音出ししていたようである。)
 ギタリスト、田川ヒロアキの魅力が濃縮されたシアワセな時間であった。
永久に続くと思われたギターの残響音が長谷川さんのカウントで打ち破られた。
 素早いギターのパッセージが「Fly Away」の始まりを伝えた。
 お馴染みの楽曲−もはや、田川さんのスタンダードとなったこの曲は、どんなステージでも 必ず演奏されてきたと思うのだが、メタル色の強いこのバンドでのパフォーマンスは最も 映えていたように見えた(聞こえた)。
 「Fly Away」で本編を終えると一旦、メンバーがステージを捌けた。
すかさずアンコールを求める手拍子が客席から湧き上がる。
 ただ、予め、長谷川さんがアンコールを予告していただけに、そこに緊張感はない。
 場内は和やかな雰囲気に包まれていた。
 程なくしてアンコールに突入。メンバーはステージに戻ってきた。



 そのアンコールはまず、MCから始まった。
長谷川さんがこのバンドの方向性についてちょっと話されたが、ネットでの発言では 田川ヒロアキのへヴィ・メタルの部分だけを切り出そうというアイデアが素になったそうなので セットリスト、アルバムの楽曲共にそのポリシーは貫かれていたと思う。
 アンコール1曲目は、田川さんが20歳の頃、作った曲 − 長谷川さんがしきりに「大変な曲」と言っていた「Space Walker」であった。
 「Flying Carpet」アルバムの中で、最後の選曲となった。
 うーん、確かにリズム隊は大変だ(笑)。もの凄い勢いでドカドカ、ズンズンと鳴っている。
 その轟音に、立ち向かう田川さんのギターも全く負けていない。
 SweepやハイポジションでのTapping、速弾きが白熱したバトルに拍車を掛けた。

 演奏後のMCで寺沢さんが「50過ぎて、やる曲じゃないよね」と呟けば、長谷川さんも「40、50超えるとキツイっすね」と同調していたぐらいだったが、長谷川さんの肩で息をするぐらいの様子を見れば、その大変さは納得するしかなかった。そう考えると、MetallicaSlayerIron MaidenJudas Priestなど、50、60 OVERのメンバーで構成されたベテランのメタルバンドってどれだけの凄さなのか。あらためて考えさせられたのだった(^^)

 「Space Walker」で遂にアルバム曲を全てやり尽くしてしまった今、さて、最後は?
 と期待を持って待ち構えれば、聞き慣れたリフとコーラスがPAから流れ始めた。
 The Beatlesの「Back in the USSR」である。でも、当たり前のカバーではない。
 見事に激しい、ヘビーメタルバージョンである。田川さんが腕時計でスライドプレイや速弾きを披露し 寺沢さん、長谷川さんが次々と激しいソロを決める。
 まさに今夜の集大成という言葉に相応しいプレイを聞かせてくれたのだった。





 「二井原実バンド/ソロプロジェクト」「手数セッション」「田川ヒロアキ・バンド」等々事あるごとに田川さんが出演するライヴを見てきたが、今回の「TAGAWA」はその中で一番、激しかったのではないだろうか。

 最小の3人でこの音量と、リズム、歪み、テクニック.... フルバンドで聴かせる以上の迫力がこのバンドにはある。
 長谷川さんと田川さんも言っていたが、このバンドをパーマネント化してこれから ドンドンとアルバムをリリースし続けて欲しいものである。
 今回のアルバム「Flying Carpet」は田川さんの既発曲からのリアレンジであった。
 次のアルバムは、きっと3人でスタジオに入って、セッションをしながら曲が創られていくのだろう。
 このメンバーの技量を考えると、一体、どれほどのものになるのか?

 妄想は広がるばかりである。
















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田川さんの足元 : ZOOM マルチエフェクター G5 とマルチレコーダー














SET LIST
S.E. Introduction (Strum on the Guitar!)
1Stranger Destroys Arms
2My Eternal Dream
MC
3Into the Arena (Michael Schenker Group)
4Breaking the Law (Judas Priest)
5Led Boots (include Drums solo) (Jeff Beck)                  
MC (グッズ紹介など)
6Train
7キミを乗せて
MC
8That's Over (include Bass solo / Drums solo)                   
9Luminous
10Fly Away
・・・Encore・・・
MC
11Space Walker
MC
12Back in the USSR (The Beatles)






7曲目「キミを乗せて」MAZDA FAN FESTA 2014 in OKAYAMAのテーマソング。
















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