原作:手塚治虫、監督:出崎 統
手塚治虫が亡くなって早10年近く経とうとしているが、未だに手塚マンガは書店では売れに売れている。
この作品も文庫本、新書版で発売され、人気が高い。かくいう私も手塚マンガの中で一番好きな作品である。
ゆえにこの作品への思い入れは強く、手塚亡き後の今、どのような作品が誕生するのか非常に興味深く感じていた。
今回この『ブラックジャック』のアニメ作品は意外にも初の劇場作品であり、(実写版は大林宣彦監督作品があるが)原作を参考にしながらも脚本は全くのオリジナルである。
しかし、3年ほど前から発売されているOVA(オリジナルビデオアニメ)と同じスタッフで作られた作品だけに、そちらに馴染みがある者にとってはこの作品にすんなりと入ることが出来るであろう。
物語は1996年、夏のオリンピックから始まる。
無名の選手達が突如、スーパーレコードを記録し、世界新を続々と更新していく。
そんな彼らをマスコミは【超人類】と呼んでもてはやしたが、オリンピックから2年後、その【超人類】に異変が生じ始める。
そして、その同時期ブラックジャックは偶然にもそんな【超人類】の少女(天才画家)を手術するが多臓器不全で死亡してしまう。
ブラックジャックはその少女を以前にも手術を行っていたが、そんな死ぬような病気ではなかったはずだった。
やがてブラックジャックに【超人類】につながる謎の女から連絡が入り、手術を依頼してくるのだが......。
−と【超人類】誕生の経緯がストーリーのネックとなるのだが、今年世界中をパニックに陥れたエボラウイルスや、狂牛病そしてO-157などの未知なウイルスへの恐怖をうまく取り込んでいてストーリーに膨らみを与える事に成功したといえる。
また『あしたのジョー』『エースをねらえ』等の作品でタッグを組んできた出崎−杉野コンビの独特の映像表現はこの作品でもいかんなく発揮されている。
特に“影”の使い方が他の作品をも寄せ付けない独特な雰囲気を醸し出している。
しかし、この演出効果が逆に昔からのブラックジャックファンから反感を買うかもしれない。
前述のオリジナルビデオアニメが未見の者にとっては、どうしてもブラックジャックが“矢吹ジョー”に見えてしまうのは仕方がないだろう(笑)。それだけ演出方法が独特なのだ。
だがこの演出方法に違和感を感じなければ この作品を充分に楽しむことが出来ると思う。
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75点
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