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「淀川長治物語 神戸編 サイナラ」エキストラ体験記

1999.8.14 土曜日 天気:大雨



朝5:50分起床。興奮の為、あまり眠れず、朝を向かえた。
吉祥寺のホテルの外は雨。
なんやかんやで準備に手間取り、ホテルを出たのは7時前。 自分の予定では10分押しであった。 吉祥寺から井の頭線で明大前へ。あいにく各駅停車の電車しか 来ず集合時間の8時に間に合うか車中気が気ではない。
それに雨はどんどん強くなり、不安な気持ちに拍車をかける。 明大前に着いてここで京王線に乗り換えて、一気に調布を 目指す。なんとか一番早い快速急行に乗れたので時間を 挽回ができた。でも調布駅についたのは8時集合に間に合う 最終のバス(7:45分発 多摩住宅行き)の発車5分前であった。
駅構内を出ると外は土砂降り。ズボンがびしょ濡れになりながら もバス停を目指すと、前方になにやら見慣れたお姿が。
あれは 関東支部のZさんでは?」と思い 声をかえる前に、とりあえず後に付いて行ってみる。
しかし、バスターミナルからどんどん離れていくので、おかしいと 思い尾行は終了。やはり全くの別人だった。
(いやーよく似た人がいるものです。)
それで 急いでバスターミナルに戻り、多摩住宅行きのバス停に たどりつくと、後ろから肩をたたかれた。振り返ると 東海支部のYさんだった。彼も昨夜上京したらしく、おまけに 残業もこなされた後だったとか。さすがです。大林映画ファンの鏡です。
仲間が増えたことで心強かったが、バスの外はまだ大雨。 車外に出るのが嫌になってくる。それに改めて気付くと バスに乗っているほとんどの客はどうも同じエキストラらしい。
岩出さんの情報通り、10分ぐらいで「日活撮影所前」に到着。 なんとか8時には間にあった。
門をくぐっていくと雨宿りをしている岩出さんがいらっしゃった。 腕には包帯を巻いている。撮影で怪我をされたのだろうか。 (その後のお話で、4、5日前にセットで怪我をされたようだった。 お大事に)
その後はIさんの指示で控え室である第9ステージを目指す。
その途中、日産パオでいらした石熊さん&ちぐみさん夫妻を 目撃。TVのワイドショーの「StarWars試写会」以来だ。
足を踏み入れた第9ステージでは お馴染みの面々がすでに勢揃いされていた。

それから少し間をおいて我々エキストラの控え室となった第9ステージから (セカンド?)の助監督さん(または制作進行?)に指示を受けて 衣装の着付け、メイクの為に本館に移動する。
しかし、外は雨。それもかなりの土砂降りだ。
本館の休憩所のようなところで着付け、メイクの順番を待ち だいたい2人づつ呼ばれ、衣装部の部屋に通される。
自分は和服ということになったので持っていったスーツも 全く意味がなく(と言ってもそのスーツも時代的には 合わなかったのでどちらにしても意味がなかったが) 衣装部のベテランに和服の着付けをして頂く。 2重3重の帯締めが苦しい。慣れていないとこうも大変とは。 でも女性の方がもっと苦しそうだった。
その後、傘を置いてきた階段の踊り場のところに戻ってみると そこにはなんと大林組常連のあの人が何かスタッフの方と 話をされていた。あの方とは尾道・サウンズ オフ セトの 入り口でサインを頂いて以来だ。それもその際、失礼な事を訊いてしまった だけに「ヤバイ」と内心冷や冷やでその方の横をすり抜け傘を 取って急いで控え室に戻った。
それからやや時間がたって助監督の方が呼びにこられ いよいよスタジオに移動することになった。その時近くには 石熊さん&ちぐみさん夫妻のお顔も見えた。

さてスタジオに移動するとすでにそこには映画館の セットが組まれ大林監督、恭子さん、助監督の南さん、Iさん、Oさんの顔が見える。
しばしセッティング準備の間、スタッフが用意して下さったセット のイスに座って待つと俳優さんがセットにいらっしゃった。
淀川さんのおかあさん・おりゅうさん役には久々のあの人(ヒント「可愛い悪魔」)や最近NHKで宇崎竜堂とふたりのビックショーに出演されていた大林組連続出演のあの人、そしてカンヌにも今村監督と同行されたカンゾー先生ことあの人、そして子役の女の子二人である。
彼らはまず映画館の一等席という設定の2階席に上がられる。 その2階席も客席という設定上、当然客が必要である為 助監督の南さんが我々の中から何人かピックアップ していく。南さんは「顔で選んでいるのではなく、服装で選んでいるので ...」と我々から笑いをとっていく。
僕は心の中で選ばれないかなと期待していると ”なんと選ばれてしまった”。
結局、僕とIさんと関西支部長のAさんがこのシーンで2階に 上がることになった。 (このシーンは淀川さんをはらんだおりゅうさんが映画を見ているうちに産気づくという映画の中では重要なシーンである。)
しかし2階にあがったものの誰がどこに座るかというのが問題である。 キャメラを通して見た時の和服と洋服のバランスがあるのだ。 それで監督の指示でなんと僕が”おりょうさんの真後ろの客”に 選ばれてしまったのだった。
そして席に座るとほんの1メートル前ぐらいにおりゅうさん役のあの方が いらっしゃって子役の女の子と遊んでいる。(うまくあやしているという感じだ) また時にはセリフの稽古もしているようで、その声がダイレクトに聞こえてくる。 こんな貴重な経験はまたとなく素晴らしい。
おりゅうさんの横で同じく子役の女の子と遊んでいるのは、大林映画連続出演の ”ロケンローラー”のあの人だ。衣装が気のせいか「あの、夏の日」の時とよく似ている。 またその横にはカンゾー先生。我関せずという感じで 他の4人の輪に全く 加わろうとしない。ちょっと変わったキャラクターだ。(現に我々OBsエキストラ隊 の中でも 休憩時間中に あっちに行ったり、こっちに行ったりと落ちつかない キャラクターに話題がもちきりであった。そんなカンゾー先生とは 衣装から自前の服に着替える時、衣装部で偶然ご一緒になりました!!)
肝心の僕が出演するシーンは映画を見ている、それもおかしな映画を見ている設定なので監督から笑いの指示が色々出る。そして突然産気づくことで驚きもしなければ ならない。特に一番近くにいる僕には助監の南さんから「映るのでリアクションを大きく」と指示される。

どうやらはっきり映ってしまうらしい!!

エキストラ初参加にしてかなりおいしい役をいただいたようであった。
でもメガネを外して代わりに小道具のガラス入り銀縁メガネをかけているので キャメラさえどこにあるのかわからない。助監督あるいは大林監督の合図で 笑う仕草をするのだが、やっとこさその合図が見える程度だ。 でも後で考えると カメラ目線にならなくて済んだので結果的に良かったのかも しれない。
結局、視界が定まらないぼけた世界の中で撮影が進んで監督のOKでこの シーンが終了した。
その後は1階席での別の観客という設定で何回か撮影が行われ、楽隊の指揮 担当で「あの、夏の日」の音楽監督の山下さんや弁士役に先程お会いして冷や汗をかいたあの人がチャップリンのようなメイクをして出演されました。 ここでは劇場に入って席に着く様子、弁士の話を聞く様子、映画上映までの ざわついた感じを我々エキストラ隊は演じた。
それらの後、昼食の休憩に入りロケ弁というものを初めて頂く。 本当は 食堂に行ってヒロスエが今月号の文芸春秋誌の撮影日記で語っていた牛丼や、ナス入りカレー、パスタなどを食べてみたかった。(現在、同じ撮影所内で滝田洋二郎監督作品「秘密」を撮影中。 残念ながら遭遇できなかったが)
でもトイレに行きたかったので 衣装のまま食堂に入るとすぐ近くで大林監督を 中心にスタッフ御一行様が食事を取っておられた。
そのトイレで鏡に写った自分の姿を見て ”爆笑”。 - まさに 阿呆旦那 そのものだ -


午後からは新たに俳優さんが参加され、淀川さん役のたくちゃんやお玉ちゃん 校長先生役の「さびしんぼう」で同じく校長先生のあの人や、そして「ふたり」「青春デンデケデケデケ」「はるかノスタルジー」に出演されたあの人まで登場された。
特にセットチェンジなどの空き時間は、セットそでにわれわれエキストラや俳優さん が一緒に待機するわけでほんの1.2メートル前に俳優さんがいらっしゃるのである。 特に「ふたり」「青春デンデケデケデケ」「はるかノスタルジー」に出演されたあの方にお会いできたのは特にうれしかった。
何とかAさんと話しかけようとしたけれど話すきっかけが見つからずダメだった。 (一度は荷物を取る為に、向こうから我々の方に寄っていらっしゃったのに残念) せめてサインだけでもしてほしかったです。でもかえってこの状況でそれをお願いするのも気が引けて....。(奈波さんがいらしたら、すぐに話かけていたなあ。多分。
そして午後も2階席の撮影が続き、2階に上がったことがない人が優先的にあがり ほぼ全員がカメラに映るように全てのエキストラに心遣いしていただいたことが 何よりもうれしかったりしたのでした。

撮影はエキストラ参加分はPM7.00ぐらいに終わりましたが僕とAさんで恭子さんにお願いし監督と記念撮影をして夢のような1日は終了しました。


個人的には初エキストラ参加なのに、かなりおいしい役を頂いた事や、 俳優さんの生の姿にふれたこと、そして監督の演出「スタート- カット - オーケー」の声が聞け、その中に自分が参加しているということは何よりも感動しました。今回も無理して参加して本当によかったです。
大林監督、恭子さん、大林組のスタッフのみなさん、Iさん、Oさん 、Sさん、石熊さん、ちぐみさん 色々ありがとうございました。
そして今回新たに知り合えた 関西支部のSさん、関東支部 Zさん、Kさん、Yさん、関西支部のAさん、東海支部のIさん、Sさん、Hさん、Yさん、広島支部の 衝撃的なお姿で登場されたUさん(監督に名前を覚えてもらい、おりょうさんとも お話できて良かったですね)お世話になりました。ありがとうございました。







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大林監督、恭子Producerと共に




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