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minoru niihara










私の5年来に友人であり、”ネット界の路傍の石サイト”である 当サイトを応援してくれる唯一の人、田川ヒロアキさんが 2006.2.22、Loudness、X.Y.Z.→Aのボーカルである二井原実さんの 17年ぶりのソロアルバム「Ashes To Glory」にてギタリスト& キーボード、アレンジャー、作曲家として遂にメジャーデビューされました。
それで当サイトではそれを祝して、僭越ではありますが 「勝手にライナーノーツ」と称して文章を掲載したいと思います。
ライナーノートとは名ばかりのいつもながらの駄文でありますが ご了承下さい。












「Ashes To Glory」

01.It's All Over Now
02.Fever
03.Zero
04.Long Live Your Life
05.Eternity
06.Easy Money
07.Is This First Time
08.Blue Ballad
09.Here We Go!
10.Ashes To Glory




徳間ジャパン・コミュニケーションズ
価格 3000円(税込)
カタログNo. TKCA72985












まずはこう言いたい。
このアルバムの真のタイトルは「魂の継承」であると。


二井原実という稀代のボーカリストの傍らには天才的な ギタリストが良く似合う。
Loudnessの高崎晃は言うに及ばす、SLYの石原慎一郎、 X.Y.Z.→Aの橘高文彦と蒼々たる面々。優れたボーカリスト にスターギタリストというタッグはロックの世界ではRolling Stonesのミック&キースを例に挙げるまでもなく王道である。
17年ぶりとなった本ソロ作「Ashes To Glory」でもこの定説は 生きていた。
しかし、前述のようなキャリアと名声を既に得ていた猛者をパートナー として選ぶ代わりに今回は、田川ヒロアキという全く無名なギタリスト を大抜擢する。(全曲アレンジも兼務)これが結果的に大正解で あった事はこのアルバムを聞き終わった諸氏には言うまでもない 事だろう。
それはアルバムトップを飾る「It's All Over Now」からも明かであった。田川氏の名刺代わりともなったこの曲でギターはメロディアスに唄いどこか懐かしささえ感じる正統的なHRを見事、提示する事に 成功している。続く「Fever」もブラスセクションを効果的に使い聞いているだけで心地良い。某清涼飲料水のCMに採用されても おかしくない出来映えだ。Freeの名曲「Mr.Big」を彷彿とさせる 「Zero」はブルーズロック。ポール・ロジャースばりのシャウトが耳を惹く。本アルバム中唯一、日本語歌詞で書かれたロッカバラード「Long Live Your Life」はギターのロングトーンが非常に印象的。「明日はいつでも希望に溢れる」という歌詞はこんな時代だからこそ深く胸に刻み込まれるべき言葉である。
パイプオルガンの荘厳な調べと共に始まる「Eternity」はランディ・ローズを擁した初期のオジー・オズボーンを想起させた。
これは余談だが、あるサイトのインタビューで二井原氏は
「日本のオジー・オズボーンを目指す」
と答えていたのを目にした事があるのだが、楽曲制作においてもその イメージが二井原氏の頭の中にはあったのかもしれない。
いずれにせよ今回の田川氏の起用もそのオジースタイルを踏襲したもの と思われる。
「Easy Money」「Is This First Time」は田川氏が作曲に関わっただけあってギターリフの一つをとっても頭一つ抜きん出た弾けた プレイが心を捉えた。そしてフラッシーなギターソロ。ギタリスト 田川ヒロアキの真骨頂が遺憾なく発揮される。特にファンカデリックなHR 「Is This First Time」ではベースのジェフ・ピルソン(ex Dokken)ドラムのヴィニー・アピス(ex Dio)の見せ場もあり非常に楽しい。
今の処、私の一番のお気に入りの曲でもある。
続く「Blue Ballad」では曲調に合わせてかバッキングのギターの音色もぐっと低音を効かせたものに変化させているのが一聴して判る。
その中で二井原氏は情感たっぷりに歌い上げる。そう、これは ボーカリスト、二井原実のソロアルバムなのだ。“歌”というものを 再認識させられた曲でもあった。
生のブラスセクションが曲に彩りを与え、まるでブルース・スプリング スティーンや同郷のボン・ジョビが唄っても良いぐらいの軽快な ロックンロールナンバー「Here We Go!」は本作品中、異彩を放っているものの踊り出したくなる程の楽しさがある。今の二井原氏にとってはこれも「アリ」なのだろう。
ラストを飾るアルバムタイトルトラック「Ashes To Glory」はドラマチックなイントロから一転、ドラムの連打と共にメロディアス なギターが曲を作り上げていく。ジャーマンメタル的な香りを漂わせ ながらもスローなソロで曲に表情を与えるという緩急自在な曲構成が 聴く者を束の間、別世界に誘う。正にアルバム最後に相応しい曲である。


田川氏、現在34歳。
デビューにしては遅咲きだがメタルだけではない その音楽性を育むにはこれまでの時間は決して無駄ではなかった筈だ。 そして二井原氏の勇姿をLoudnessの初期から見続けた彼にとっては 高崎、石原、橘高三氏らと共に今後語られるのは光栄な事だろう。
偉大なる達人たちの音が二井原氏の歌声を触媒にして語り継がれて いくこの系譜は高みを見た者だけが許される究極の世界へと繋がって いく。そこで交わされるのはただ単なる音の羅列ではない。言うなれば それは魂と魂のせめぎ合い。田川氏はその魂のバトンを今、しっかりと 受け取ったと言える。


「魂の継承」−そんな言葉が私の中で渦巻いているのだが 田川氏はこのバトンを今後どのように活かしていくのか?
そして次のバトンは誰に手渡されるのか?
大いに気になる処である。







               AKIRA 2006.03.05











田川ヒロアキ・オフィシャルページ


「Ashes To Glory」特集







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