以下の文章は「自治大山形」寄稿されたものを,先生より自治大同窓会ホームページあてに転送いただいたものです。
「自治大山形」第40号の発刊に当たり心からお慶び申し上げます。
40号という年輪を重ねているのは、自治大卒業生相互のきずなの証であると言えましょう。
自治大学校は、今年で開校45年を迎え、現校舎は築37年ということになる。現在、第1部第91期と第2部第123期の研修生が学んでいる。卒業生は延べ43,405人を数える。このように述べていると、自治大の伝統というものを感ざるを得ない。
私は、4年前に自治大に転勤してきたが、はじめは校舎や寮の施設・設備の老朽さに驚き、また多人数を対象とした画一的な旧態依然たる研修の内容や方法に戸惑ったものである。しかし、環境順応性が高い由か何事にも馴れてしまい、これが当たり前、伝統の重みと思うようになっている。
最近、「企業経営の目標として、顧客満足度(Consumer Satisfaction)の向上を目指すべきである」という考え方があり、このことは自治体経営にも当てはまると言われている。住民満足度の向上を目的として成果指標を設定する事務事業評価システムが、自治体にも急速に導入されつつある。
自治大もサービス事業であり、顧客満足度を高めることをその目標としなければならないと考えている。もっともこの場合の顧客とは、自治大生そのものではなく、その任命権者すなわち自治体ということになる。
ところで、ほとんどの自治大生は5カ月あるいは2カ月半の研修を終え、総じて満足して卒業されているのではないか、と思う。
このような評価を下すためには、そもそも自治大生が自治大入校を希望した動機は何か、ということを明らかにする必要がある。人によりその動機はまちまちであり、単純には言えないが、私はあえて次のように分類している。
第一に、各界一流の講師による授業を受けたい、という動機である。これは当然のことのように思われるが、自治大生に入校の希望理由を尋ねても、これを挙げる人はまずない。当たり前のことだから言わないのか、それとも元々動機にないのか、よくわからない。
次に、自治大の仲間と、文字通り寝食を共にして全国に広がる友情の輪を築き生涯の財産にしたい、という動機である。自治大卒業後も、同期会を開催したり、お互いに行き来をし、旧交を暖めている人が多いようである。
三つ目は、東京での生活をしてみたい、という動機である。麻布・広尾という東京の都心で暮らし、東京のカルチャーやナイトライフを体感してみたい、というものである。「田舎の学問より京の昼寝」ということわざがある。田舎で勉強してもたかが知れているが、都はただそこにいるだけでも見聞を広める材料がたくさんあるので知識が身につく、という意味である。私は、毎期の授業でこのことわざを紹介しているが、直ちに実行されている。そして、東京での見聞体験は「東京経済研究会報告書」としてまとめられ、私の所に提出されている。毎期、仲々の出来栄えである。
最後に、現状からの逃避という動機である。現在の職場の人間関係や抱えている仕事からとりあえず逃げ出したい、あるいは家庭の人間関係から一時逃れたい、そのために自治大入校を希望したというものである。自治大生と話していると、この動機が意外に多いことがわかる。もっとも、自治大卒業後その結果がどうなったかは知る由もない。
(皆さんの入校動機は、上記のいずれに該当していましたか?)
このように見てくると、自治大生の満足度は、研修(授業)の内容以外の諸々の要因によっていることがわかる。しかし、それはやはり研修自体による成果が得られてはじめて言いうることであろう、と私は信じている。
芭蕉の言葉に「不易流行」というものがある。自治大の研修においても、自治体の幹部職員を養成するという時代を超えても変わらない使命を堅持しながら、地方分権の時代を迎えて自己決定・自己責任という自治体の政策形成を担う能力を養成すべく、研修の内容や方法を見直さなければならない。そのことが、自治大生ひいては自治体の満足度をさらに高めることに結びついていく。
自治大では現在、立川への移転(平成15年4月開校)に合わせて研修内容の抜本的な見直しを検討している。自治大卒業生の皆さんの己憚のないご意見をお聞かせ願いたい。
皆様のご活躍をお祈りします。
(掲載)
「自治大山形」平成10年11月
自治大学校校友会山形県支部