「校友会だよりNo.70」平成11年3月19日自治大学校校友会掲載
校友会会員の皆さんこんにちは。
自治大では、現在、1部課程九一期、2部課程一二四期と国際交流課程一二期の研修生が勉学に励んでいます。自治大の授業は、開校以来、外部講師による講義、内部教官による講義とグループ別や班別の討議を行う演習というパターンは基本的に変わっていません。
筆者の担当している1部・2部(特別課程を含む)と3部の授業を中心に最近の授業風景を紹介します。
自治大の授業時間数のうち演習の占める割合は、1部・2部で二割強、3部で三割弱となっています。もっとも、これはカリキュラム上の数字であり、実際はグループ討議などはそれ以外にも行っているので、実質的にはさらに多くなります。皆さんの中には夜遅くまで時が経つのを忘れてグループ討議をした思い出のある方も多いと思います。
最近の演習では、ディベートを採り入れています。ディベートは、一つの論題をめぐって肯定派と否定派に別れて討論し、審判が勝敗を判定するものです。「政策の是非を問う住民投票を実施すべきか」「甲町は、乙市と合併すべきか」「介護保険において家族介護に対する現金支給をすべきか」など現実の政策論争を論題に取り上げ、ディベートを行っています。毎回白熱した討論が展開されており、研修生からは「人の話を聞きながら自分の意見をまとめることのむずかしさがよく判った」「立場を変えて物事を考える必要性を感じた」などと好評を得ています。「大変勉強にはなったが二度とやりたくない」という声もあります。
地方行政演習では、条例立案の能力の修得を目指す政策法務演習を実施しています。具体的には研修生が持ち寄った所属団体の独自条例を題材に、その法的規制としてあるいは政策手段としての妥当性などを検討する、また、グループごとに設定した行政課題を解決するための条例案を起草する、という内容です。鉛散弾使用禁止条例、携帯電話使用適正化条例、通勤自動車交通削源条例などユニークな条例が次々と提案されています。条例立案・解釈を担当したことのない研修生にとってはハードな演習となりますが、「条例に対する見方・考え方が変わった」などと研修効果も大きいようです。
1部の政策課題研究は、1部研修生が研修の中で最も精根を込めて取り組む演習です。
従来は、実地調査で遠隔地へ行くために研究テーマを設定するようなグループも少なからずありましたが、今では北海道・沖縄へ調査に出かけるグループは姿を消しています。「報告書の出来は実地調査先までの距離に反比例する」という法則は成り立たなくなっています。
また、研究テーマは地方分権や行政改革を取り上げるものが増えており、提言内容も法律や条例の制定など制度設計を目指す力作が目立つようになっています。
政策課題研究発表会は約五か月にわたる研究活動の晴れ舞台です。
発表レジュメやOHPを使用した地味なものからパソコン画像ソフトを駆使したもの、地方議会審議あるいは親子の会話を擬した寸劇によるものなどそれぞれに工夫を凝らしており、見る者、聞く者を退屈させません。しかし、度を過ぎると「学芸会のようだ」と、またオーソドックスに行うと「今期の発表は大人しい」などと外部の先生方から皮肉られます。何事も程合いがむずかしい。いずれにせよ、「住民に政策をわかりやすく説明するという観点から、プレゼンテーションを行うように」と、指導しています。
また、政策評価能力を修得するため、研修生全員が他のグループの政策研究・政策提言をあらかじめ定めた項目と基準に基づいて評価するという作業を行っています。一人ひとりの評価にばらつきはあっても、集計分析してみると、意外に客観的なものになっています。
1部・2部の講師養成課程の講義演習では、時間的制約から従来は模擬講義者一〇名のみを指名していましたが、今期から履習選択者のうち半数を模擬演者、残りの半数を講評者として指名し、全員が登壇するようにしています。やはり講義演習は聞いているよりも自ら演じる方が効果は高いようです。中には、冒頭の自己紹介などに持ち時間の大半を費やすつわものもいます。
内部講師による授業科目に「地方自治制度」があります。地方自治法は、昭和四九年の改正以来、久しく本格的な改正は行われず、一七年ぶりの平成三年に議会・監査委員の権限の拡充、地縁による団体の規定の創設等の改正が行われ、次いで平成六年に中核市・広域連合制度の創設、平成九年に外部監査制度の導入等と、三年毎に改正が行われています。皆さんの覚えている授業の内容により、自治大で研修時期が推し測ることができます。もっとも、すっかり忘れてしまった諸氏も居られると思います。
地方分権推進計画を実施するための、地方自治法の抜本改正を含む地方分権関連一括法案が今国会に提案され、早ければ平成一二年四月から施行されます。したがって、皆さんが自治大で熱心に勉強した地方自治制度に関する知識の有効期限はあと一年間ということになります。
さて、授業ではありませんが、麗澤寮自治会が毎年五月と一月に、研修生が郷土の地酒や特産品を持ち寄って賞味しながら懇談するパーティー「味覚祭」を催しています。食材をいかに調理するかが研修生の腕の見せ所であります。また、近隣の大使館の職員・家族を招待して、ちょっとした国際交流の場にもなり、自治大ならでは行事となっています。残念ながら、今年の一月は中断しています。地元の特産品を宣伝PRするというのも自治体職員にとって必要な能力です。こうした観点からも、次期からは復活されることを期待しています。
以上、最近の自治大の授業風景を取留めもなく書き綴ってきましたが、皆さんの在学時と比べていかがでしょうか。
自治大の授業は、自治体の幹部職を養成するという時代を超えても変らない使命を堅持しながら、時代の要請に応えて見直していかなければならないと思っています。
校友会会員の皆さんのご活躍をお祈りします。