スウィング投法とは,オモリを振り子のように振幅させる投げ方で,飛距離がもっとも得られる投法です。英語表記ではPendulum Cast,このまま日本語に直訳すれば振り子投げになりますが,日本では小さな振幅をイメージさせる「振り子」よりも,大きなオモリの動きを描写した「スウィング」と言う言葉が使われています。
 飛距離が一番出ることから,フリースタイルのキャスティング種目ではすべての人がスウィング投法を行っています。
 実釣中心でスウィングは必要ないといわれる人であっても,このスウィングには大きな魅力を感じているはずです。遠投実力者にとっては投げ方のバリエーションの一つとして,どうしてもマスターしておきたいものではないでしょうか。
 実釣ではなかなかお目にかかることは無いスウィング投法。確かにこの投法はオモリを体の近くで回転させる必要があることから,仕掛けが付けられた状態では針が刺さるなどの問題があり,実釣には適さないとされていますが,回転の仕方を調整すれば充分適応可能です。
 スウィング投法はV字や回転投法などと違って,即,形になる投げ方が身に付かない傾向があります。そして,ある決定的な事柄が習得を阻害し,そのため,かなりの人が本当はマスターしたいスウィング投法をあきらめてしまっているのです。
 それは,オモリを回転させるときに地面を叩いてしまうことです。この障害をクリアしなければ,スウィングをマスターすることはできません。
 仮に地面を叩くことがなくても,叩かないことを優先させるような無理なロッド動作をすることによって,フィッシングスタイルの時よりも飛距離が落ちるという納得のいかない状況となってしまいます。
 体の使い方やロッドの扱いがこれまでとは異なることから,習得初期の段階においてはオモリをたたく傾向がでてしまいますが,これをクリアして力一杯キャストすることができれば,一番飛距離が得られる投げ方はスウィング投法であると実感することになるのです。


 
1.キャストにはいる前の振り子動作について

 V字投法の構えのように,左肩が投てき方向に向くように構え振り子動作を行います。もちろん人によってはより振り角を大きくするために完全に背を向けて構える方法もありますが,第6種目のような負荷の大きいオモリではハスに構えるのが一般的です。
 この段階では,背中方向にオモリを通す前段階の動きで目線の高さで振り子運動をさせておきます。
 振幅スピードについて,最初はゆっくりにして,慣れに応じて徐々に早めていくことになります。ただし,最終的には最速に持っていけばよいというわけではありません。
 これは人によって異なります。オモリを展開させて投てき方向と逆向きになる直前に最速になれば良いわけですので,浅い構え(ハスに構える)を好むならば早めの展開となりますし,深い構え(投てき方向に背を向ける)ならばゆっくりと展開させても問題ありません。
←サンプルは第4種目なので比較的深い構えとなっており,構えでは投てき方向に背を向けている。


2.オモリを背方向に入れ込み展開させる

 振り子運動で蓄えられたオモリスピードをもって,背中方向にオモリを入れ込みます。
 ここには大切な第1のポイントがあります。
 オモリは直線的な動きで背中を通したあと,回転運動を行わせなければなりません。背中を通すようにするためには右手を引く動作を取る必要がありますが,そのまま引くと腕の動きが止まった段階でオモリが跳ね上がってしまいます。オモリが跳ね上がれば,必ず展開後にオモリは地面を叩きます。これを防がなくてはなりません。
 直線運動からスムースな回転運動へと移行させるためにロッドトップを寝かしていきます。これは右手を近づけると連動して動かす左手を目線の高さまで上げてくることによって上手く機能させることができ,引き終わった段階でロッドは地面と平行になります。この時点からオモリは跳ね上がることなく直線運動から回転運動へと急旋回していくことになります。
 直線運動から回転運動へと移行する際にはある程度オモリは上がることは仕方ありません。ただし,上がるといっても頭の程度までの高さです。この高さまでならば許容範囲です。実際には回転エネルギーと位置エネルギーの双方のエネルギーを活用できるためある程度オモリが上がった方がロッドを曲げやすくします。
 なお,これも人によっては地面すれすれに回転させることを好む人もいます。これは,ロッドを立てることなく寝かせたままで引き込み動作を行うことによって得られます。
←振り子動作の後,勢いのついたオモリを背面に通す。 ←背面で円運動を展開させる。オモリは上昇してもこの程度が限度。これ以上,上になると叩きやすくなる。


3.オモリの展開からロッドを曲げる動作へ

 オモリが回転運動に移行すれば,本格的な振り込み動作に移ります。
 オモリの展開スピードにもよりますが,背中を通した時点で,即振り始めたくなりますが,ほんのわずかな時間ではありますが待つ必要があります。これは,オモリを充分に展開させてMAXとなる遠心力を生じさせるためです。展開が不十分な時点で振り始めるとロッドを曲げることはできません。いわゆる「竿に乗る」感覚には至らないということです。
 次に,振り始めてから前を向きロッドを曲げる段階に入ります。ここにはオモリを叩かないための2つ目のポイントがあります。
 それは,ロッドトップを下げない=肩レベルに維持するということです。
 オモリを叩く傾向のある人は明らかにロッドトップが下がっています。フィッシングスタイルの投げ方では,構えた際ロッドトップを地面(砂浜)近くまで下げます。この癖を残したままではスウィング投法は機能しません。
 「ロッドトップを下げない」ことを身につければオモリを叩くことはありません。
 この時点からロッドの押し込みをかけていけばいいのです。
 なお,すくい上げる投げ方をする人は注意が必要です。そもそもV字・回転でもすくい上げて投げることは飛距離の点でメリットはありませんが,すくい上げるようなスウィング投法では投てきそのものが成り立たないのです。
←ロッドは地面と平行。V字のようにトップを下げるようなことはしない。 ←ロッドトップは下がっているが,これは,傾いた円運動によってオモリが下がったためでありトップを若干下方向に引っ張っているにすぎない。位置エネルギーの利用を考えればGOOD。


4.別のオモリたたき

 2つのポイントである「引き込む段階でオモリを跳ね上げていない」「展開の段階でロッドトップを下げていない」をクリアしているにもかかわらず,オモリを叩くことがあります。
 それは,展開中にオモリが失速してしまうことによるものです。オモリの展開はオモリが身体の後ろを通り過ぎてから徐々にそのスピードを増していかなければなりません。加速させていくような展開でなければスウィングの意味はありません。大きな振り幅をとるように深く構えているものの,加速させずに単にオモリを回している場合に起こりやすい現象です。
 ですから,もともと正しいオモリ展開をしていればこのようなオモリたたきは生じません。

連続画像サンプル
オモリを背中裏に引き込む。オモリが頭の高さを超えないようにするのがポイント。
ふり向き投げる動作へと移行。
右脇をしめ,肩を回転させると同時に,左足を直線的に踏み出す。
強い踏み込みへ。
右手・腕・肩で押し出していく。左は肩の回転に合わせて下ろしていくだけ。

 ここでは,ポイントとなるところを説明しましたが,スウィング投法はオモリの展開とロッドトップの軌跡が正確に連携することによって得られます。したがって,ある程度の練習を繰り返して,自分なりのスウィングとして身につける(アジャストする)必要があります。
 残念ながら,キャスティング大会常連のキャスターであっても競技の際にオモリを叩いてしまうことがあります。与えられる5回の投てきのうち,1投でもオモリを叩くようなことがあれば残りの投てきで修正することは極めて難しいものがあります。それだけ微妙な部分を含んでいます。
 しかし,ポイントとなる部分を理解していれば,その修正も早いでしょう。

 「スウィング投法で力一杯のキャスト」は,もはや一部の人達のものではありません。