密巻きで飛距離は伸びるのか?
 競技において密巻きを使用することはあります。それは,実釣に使用不可のロングストロークスプール(1回の巻き取りはできても2回目のキャストはできない)を手製の機械を使いラインを隙間無く完全に密着密巻きを行う方法です。ラインの太さ間隔できれいに密巻きするわけですから,リールによる密巻きとは全く違い,スレッドでガイドを巻くような形状となります。このような手の込んだ作業のため,1スプールを仕上げるには,1時間以上もかかり,しかも1回のキャスティングにしか使えないワンタイムパフォーマンス用です。
 このロングストローク・完全密巻きは仕上がりが素晴らしく,ライン放出もスムーズに感じられる(※「感じられる」がポイント)一方,スプールセッティングとなると,そのセッティングが大変,ゴップしやすい,練習には使えない等の問題があります。
 また,時間をかけずゴップも生じにくいようにするため,ある程度隙間の空いた密巻きも可能ですが,この場合には,不完全な密巻きのためにラインが噛んでしまう傾向があり,スムーズなライン放出とはならず,通常のリールのライン交差よりも飛距離が落ちてしまう傾向があります。
 現在のキャスティング競技における主流は,改造をほとんどしないノーマルリールで,基本的に実釣にそのまま供することができるものとなっており,そして使われる市販リールは,過去のロングストローク・完全密巻きを参考にしながらも,密巻きよりもロングストロークを好む傾向にあります。
 ロングストローク・完全密巻きは過去においてかなりはやりましたが,現在では,市販のリールの基本性能が向上したため,あまり使われることはないということでしょう。
 個人的には,密巻きに時間をかけるよりも投げ込みをして飛距離アップを図る方が確度が高いと考えています。
 ところで,市販リールで密巻きとなっているのはS社ですが,この密巻きは,過去の完全密巻きを意識したものと思われるものの,見栄えを含めて飛距離は,完全密着密巻きとは異なるものです。
 したがって,このシステムによって,飛び方は違うかも知れませんが飛距離が伸びるというようなことはなく,あくまでも感覚的なものに過ぎないと考えます。
 厳密に答えるとするならば,市販リールの密巻きによる飛距離アップに関して,答えはグレーなものといえます。何も分からないというわけではありません。この密巻きによる飛距離の優位性は記録には表されていない=飛ぶか飛ばないかの明確な証明がないから,飛ぶとも飛ばないとも言い切れないということです。