飛ばなくなるを考えるVer2.5


 「以前,確かに遠くへ飛ばすことができたのに,知らないうちに−5〜10mの飛距離になってしまった。」キャスティングを続けているとこんなことに出くわしたりします。そして,これからなかなか抜け出すことができず,いわゆるスランプ状態に入ります。
 実釣でも飛距離が出なくなることがあるはずなのですが,25m毎の色分けゆえに正確な飛距離を判断しにくかったり,魚サイドの好意により,飛距離マイナス分を表に出さないようにしてくれているのです。
 飛距離が得られないのは体力的な問題があるかも知れません。しかしながら,体力的な問題ならば,極めて緩やかな減少でしょうし,その減少は技術面の向上でカバーできるものと考えます。
 飛ばなくなる現象はどのような形で表面化するのでしょうか。
好調
 ↓
負けたことがない人にオーバーキャストされる
  ↓
もっと遠くへ飛ばすことができるのではないか
   ↓
フォームの変更・ロッド調整・タックルの交換
    ↓
遠くへ飛ぶこともある  →  再び1へ
 このスパイラルにハマルとなかなか抜け出すことができません。好調だった頃の形に戻すのも一つの方法です。しかし,もともとより遠くへ飛ばそうと考えていたのですから,自らの期待には応えられません。より遠くへ飛ばそうという発想には間違いがないと考えるべきでしょう。どこかがうまく機能しないがために安定した結果が得られないのです。
 このスパイラルから抜けることができれば明らかに「投げ」が変わります。キャスティング大会で真ん中あたりの人は,確実に上位争いをする事ができるでしょうし,トップを取ることも見えてきます。
 ここでは,私及びクラブ員の経験等をとおして,その対処法を提示したいと思います。 

1 右手が遠回りしていないか
 振り幅を大きく採ることは大切なことですが,ロッドを回しているだけで充分にロッドを曲げることができなくなっています。本人は回すという動作で体を大きく使っているので充実感がありますが,ロッドには力が伝わっていません。

対処法
 これにはもちろん右手押し出しを実行することです。右手が遠回りするような場合はヨコ振りになっていることが多いので,タテ気味に戻すと良いでしょう。タテにすることによって,自然と右手も押し出すことになります。

2 ラインをリリースしたあとまでロッドを振っていないか
 これは振りすぎそのものです。距離を稼ごうとしてまずやってしまうのがこれです。フィニッシュの際,タテ気味に振る人は竿先が地面近くにまで,また,ヨコ気味の人は体の正面を越え竿先は大きく左にまで行ってしまいます。とにかく強く振りたいと思えば思うほどこの症状が出てしまいます。

対処法
 一つには,意識してラインをリリースする際に右手を止めるよう矯正することです。しかし言い換えればこれは振りすぎないようにしなさいと言っているだけで答えとはなりません。分かっていてもやってしまうのがこの振りすぎなのですから。
 もう一つの方法として,リーチを長めにすることです。これによって,フィニッシュの際,右・左手の自由度が制限され,左手を腰の上まで引っ張りにくくしますし,右手も体の中心を越えて反対側に向かうこともありません。
 ただ,長くすると言っても5cmまでと考えます。秘訣にあるように短い方が腕を折り畳みやすいですから短いを基本にして,それよりも少々長くするということです。必要以上に長くするとフォームのバランスを崩すことになるとともに,投げる際の充分なロッドの振り幅やタメが得られなくなります。

3 腰が高くはないか
 体が突っ込み過ぎなっています。症状としては,強い弾道なのだけれど低すぎて充分な距離が得られないといったことや,左に引っ張ることが多くなるといったことになります。

対処法
 高く構えて投げれば高い弾道が得られると思われがちですが,実際には高いところから低い方へと振り下ろしてしまい,低い弾道になっています。ずばり,構える際に中腰にすることです。低く構えることによって,前に倒れ込むようなことがなくなりますし,左足も突っ込まずに充分に開き出すことができ,高い弾道が得られるようになります。

4 かけるタイミングが遅くなっていないか
 「かける」とは力を入れて振り込むことを言います。振り出し初めを言うのではありません。振り出し初めは深くても,実際に力を入れるポイントが遅れていることがあります。これによってオモリは左方向へ飛ぶこと,いわゆる引っかけた投げになってしまいます。
 キャスティングし始めは疲れも少ないことから比較的早めに力を入れることができ,体がほぐれてきて,より力を入れやすくなればロッドを曲げることができるからイメージする方向に良いキャスティングが可能となります。しかし疲れが出てくると,ロッドを曲げることができずロッドの曲がりに自らの力が対応できなくなり,これを補うために振り方を調節して,遅めに力をかけていくことになります。一番の問題となるのは,このことが短期的ではなく,早くかけるときついとうことを体が覚えてしまい,それが習慣化し身に着いてしまっていることです。

対処法
 振り出しながらタメをつくり力を入れるのではなく,タメは振り出す前に造っておくべきで,振り出し初めからロッドを曲げてやろうとする気持ちを持つことです。回転,V字,スウィングいずれも体が投てき方向に向かってから力を入れるのでは遅すぎ,投てき方向反対側の時点から力を入れていくということです。
 かけるのを遅くするのは,右へ抜けるようなキャスティングを避けるために自然としてしまう行為で,そのフォームとしては「手投げ」「前投げ」といった,ロッドに力が充分に伝わらない投げ方です。
 左へ引っかけるよりも良いことだと考え,早めに力をかけていくことを体に慣らしていくことです。これでもなお大幅に右に飛んでしまうようなら,@少しずつタラシを長めにとる,A構える角度を少しずつ浅めにする,B柔らかめのロッドに換えていくことを組み合わせて対処していけばよいでしょう。

 特に自称パワーキャスター系はBを選択することに勇気がいるでしょう。でも,最初に使用していたロッドは硬すぎて右へ行きすぎたのだと考えるべきです。硬いロッドを前振りするよりも柔らかめのロッドで力を早くかける方が必ず遠くへ飛ぶはずです。

上記だけではなく,ちょっとしたフォームやモーションの狂いが飛距離減となっていることもあります。
考えることは当然必要ですが,実際にロッドを持ち投げ込みをして調整していくことがベストです。
必ず活路は見えてきます。