ガンダムSF設定のルーツなど
そもそも実物がある訳でないガンダム世界の設定には絶対に正解が存在しないので、「どの設定が正しいか」を決めるのはムダで意味のない作業です.
例えば零戦の生産数はどこかに真実の値があるのですが、ザクの生産数には真実の値はないのです.
設定というのは世界観を決める以上の意味をもたないので、正しいかどうではなく、ふさわしいかどうかで決定されるべきものでしょう.
尚、内容大部分敬称略です
名称 | 初登場 | 考案・命名・ 導入者 |
内容 |
AMBAC | ガンダム センチュリー |
森田 繁 | 「人型ロボットが宇宙空間で有効な兵器となる」という前提を達成するために生まれた設定. SFに巨大ロボは御法度というジレンマを少しでも回避するためにスタジオぬえの森田繁氏が発案したとされる理論. 巨大ロボ好きのSFマニア故の考案か. コロンブスの卵的な、極めてハッタリの効く傑作設定で、後の機動バインダーの論拠にもつながっていく. 力学的な整合性はあまり考えない方が、気持ちよくガンダムにハマれる. |
インコム | ZZガンダム | 明貴 美加? | ドーベンウルフに搭載された有線コントロールビーム兵器. サイコミュに連動して人の意志通りに動く.要はブラウブロというかジオングの腕なのだが名前を変えると、いかにも新しい兵器のように見えるのはフシギだ. 違いと言えば、回収方式やワイヤの張り方といったディティールぐらいか? TV以外ではセンチネルのG−V、Sガンダムに搭載され登場. |
隕石ミサイル | ガンダム | 松崎 健一 スタジオぬえ |
松崎氏がスタジオぬえのスタッフと「宇宙要塞攻略法」についてディスカッションして得られたアィデアの一つ. 他にパプリグのビーム攪乱膜などもこのディスカッションから出たものである. ガンダムにおいては数少ないSF臭が強い設定. |
可変MS | Zガンダム | バンダイ | Zガンダムの生まれた直接の原因は、可変式のおもちゃを増販する必要性からである. そこにはヒット商品となったタカトクのバルキリーの影響が色濃く出ているようだ. ザブングル以降の可変メカと、ガンダムをかけあわせた有力なブランド商品を開発するのが、その本来の目的であった. 故に可変MSは必然なのである. 当然ながら、スポンサーの要望は宇宙意志よりも、監督の意向よりも、はるかに重いので、SF的な設定なんぞは極めて二義的である. |
ガンダリウム 合金 |
Zガンダム | 富野由悠季 | ZガンダムにおけるMSの性能差を際立たせるための新用語. マジンガーZの超合金Zと同じ発想である. ルナチタニウムの発展板的なニュアンスを狙っていたと思われる.これも作品ごと、本ごと、人ごと(笑)に様々な解釈解説がある. 公約数でくくると「高価かつ多用途な高性能合金」となる. |
強化人間 | Zガンダム | 富野由悠季 | 人造NT. NTのテレパス的能力を薬物投与、洗脳などで人工的に作り出すもの. 被験者にはなぜか美少女が多い.アレな趣味の研究者が多いのだろう.男の強化人間は、ゲーツ、マシュマー、ギュネイぐらいか(ゲームだとゼロもいるケド). キャラクター的には、不安定でキチGUY(女)っぽい言動が多い. |
コロニー落とし | ガンダム | 松崎 健一 | スペースコロニーを地球に落下させ質量爆弾とする戦法. なぜ、コロニーを落とさねばならないのかは不明だが、好意的に解釈すれば1.形状、質量の詳細なデータがあるので、落下計算がやりやすい、2.心理的効果などがこじつけけられるのであろうか. この手の質量攻撃で一番簡単に思いつくのは、講談社MSVムックにチラリと書かれたり、ドラグナーに登場した月面マスドライバーによる砲撃である.安全(攻撃側にとって)、安価であり効果は絶大だからだ. 1980年代終わり頃までは、ブリティッシュ作戦で一個おちただけだったが、その後のサイドストーリーのヤマ場で使われたりするため、今後落ちた個数は増加することになるだろう. |
サブフライト システム |
ガンダム | 富野由悠季 | 航空機の上にMSが立って乗ってしまう、というアニメでしかあり得ない演出をするためのアイテム. ドダイ、Gファイターなどが第一作TVに登場したが、あまりにナニな設定なので映画版では無かったことにされた(映画にはドダイもGメカも出ない.コアブースターにガンダムは乗らない). しかし、なぜかZから復活. 宇宙では推進装置付きプロペラントタンクとみればムリのない設定だが…. むしろZZのメガライダーの方が設定的には自然と言える.(ヤだけど) |
シュツルム ファウスト |
0080 | 出渕 裕? | ナチドイツの成形炸薬弾発射器をそのままガンダム世界にもちこんだもの. 一時期、ガンダムメカデザイナーの大半をドイツ軍狂が占めたことがことがあり、その時に描かれた兵器. しかし、名前も形状もそのままというのやはり…. |
スペース コロニー |
ガンダム | オニール 博士 |
ガンダム世界の三大柱の一つ. 島三号型をベースに、開放型、密閉型、ハイブリッド型などが登場する. 小説ゼータガンダムのスイートウォーターは島一号型であった. 洋書であったため内容の吟味が不完全で、あきらかな取り違えもあるようだ. (作品に適合するためはしょった部分と明らかに別に…) ガンダムに於いては、本来は2つのシリンダーを結合してそれぞれ逆回転して、位置ずれを防ぐなど基本的な概念が幾つか見逃されている. |
ソーラレイ | ガンダム | 河森 正治 永瀬 唯 |
本放送時、スタジオぬえに出入りしていた河森正治氏の発案をもとに、松崎健一氏の相談相手の一人だった永瀬唯氏が理論付けした兵器. 富野氏の「最終兵器」構想のオファーに応えたものである. 永瀬氏の設定考証は美樹本、河森氏も参加していたガンダムファンジン「GUNSIGHT」に掲載された. |
モビルスーツ | ガンダム | ハインライン 高千穂遙 富野由悠季 ? |
日本サンライズの山浦栄二氏が「SFをやるのでいい素材は無いか?」と企画初期設定製作に参加していたスタジオぬえの高千穂氏に打診した結果、「宇宙の戦士」がガンダムスタッフへ紹介されることとなった. しかし、山浦氏のアバウトなアレンジ、スポンサーの指導の結果、機動歩兵は単なる巨大ロボに落ち着いてしまい、高千穂氏を激怒させることになる. 当初はパワードスーツという名称をそのまま使う予定だったが告訴王国アメリカに恐れを抱いた識者の意見でモビル(機動)スーツという名に落ち着いた. OUT’81年3月号「デスマッチ対談」によれば富野氏が直に命名したことになっている. 要はただの巨大ロボットであるのだが、兵器然とした印象を持たせることには成功したと言えよう. |
モビルアーマー | ガンダム | 富野由悠季 | 玩具の売り上げ不振に激怒したスポンサーの指導により登場した「より解りやすい敵メカ」. グラブロ、ビグロ、ザクレロなど怪獣的フォルムを持つものが多い.作品世界の崩壊を防ぐためもあってか、多くのMAは一話限りのヤラレメカとして処理されている. しかし、エルメスやブラウ・ブロのようにサイコミュと連動したMAも登場しており、ガンダム世界の兵器体系に厚みを持たせることができたのは怪我の功名と言えるだろう. その後の作品でも中ボス、ラスボス格でしばしば登場している. MAを全面肯定してしまうとロボットの存在価値が危うくなるため、その扱いは微妙なのだが…. |
バインダー | Zガンダム | 永野護 | シールドに武器やら弾倉やらを搭載できるようにしたもの. これもエルガイムからの流用である. これにより、機雷内蔵のデンジャラスなギャンの盾はバインダーの先駆として肯定されてしまった. |
バリア | ガンダム | 富野由悠季 松崎健一 |
ビグザムに搭載されて初登場した. 磁気によって粒子ビームを散乱減衰させるものだったが、ミノフスキー力学によるIフィールドが登場したことにより話しはイッキにややこしくなる.素直に磁気バリアにすればいいのに. |
バリュート | Zガンダム | 藤田一巳 | MS、艦艇などが大気圏突入に使う. 藤田一巳による発案・デザイン. 元々は人間を周回軌道より回収するためのものらしい. |
バンチ | Zガンダム | 富野由悠季 | コロニーの形成する集団単位. シリンダーが30〜40集まって1つのバンチを形成するといのはZ以降に発生した設定である. |
メガ粒子砲 | ガンダム | 富野由悠季 松崎健一 |
当初は粒子ビーム兵器を指す言葉だったらしい.アニメによくある「**ビーム」程度の発想だったのだが、後の設定考証で「重金属粒子(メガ粒子?)を撃ちだす」とか「登録商標」だとか様々な説が飛び出した. 現在では縮退ミノフスキー粒子というセンチュリー説を信奉する方が多い. 似たような言葉造りにイデオンの「グレンキャノン」、ザンボットの「イオン砲」などがある. |
ムーバブル フレーム |
Zガンダム | 永野護 | Zでデザインワークスを担当した永野氏がエルガイムで持ち込んだ造語. ロボットを骨組みと装甲に分割する考え方. Z本放送時にもチラホラ登場し、いつのまにやらガンダムネイティブ設定のようになっているから不思議だ. 永野氏のオリジナルと思われがちだが、ダグラムにおいて似たような概念が使われており、タカラからはデュアルモデルという装甲取り外し可能な玩具も発売されていた. この設定によって第一作のMSはモノコック式であることにされてしまった. |
ミノフスキー クラフト |
ガンダム | 松崎健一 | 富野氏の相談なしの演出により地上を低速で飛行してしまったホワイトベースを理屈づけるために、松崎健一氏が泣く泣く考案した浮揚システム. ミノフスキー粒子が特殊な力場を形成するという発想を元にした設定である. この設定を元にしてミノフスキー物理学という大風呂敷が拡がっていくことになる. 巨大質量の低速飛行は富野氏にとって欠かせない演出らしく、ザンボットから∀まで登場している. |
ミノフスキー粒子 | ガンダム | 松崎健一 | レーダー誘導の兵器を無くして有視界近接戦闘を描くための設定. 接近戦で殴り合うロボット戦闘の演出のために登場した粒子である. 当初はチャフ程度の概念だったものが、ミノフスキークラフトを出してしまったことによって大がかりな設定に発展していくことになる. |
ミノフスキー 物理学 |
ガンダム センチュリー |
松崎健一 | ミノフスキー粒子が力場を形成するという発想を元に、「静止質量0」「+と−の粒子がある」などの細かい設定がなされた.その力場の応用展開として「核融合炉のプラズマ封じ込め」「縮退ミノフスキー粒子(メガ粒子)」等々のガンダム科学を支える様々な理論を松崎氏が考案したもの. ミノフスキー粒子の対消滅をエネルギー化するくだりがあるのだが、この理論の応用で真っ先に考えつくのは「ミノフスキー爆弾」.松崎氏を始め、多くの人が気づいているようだがガンダム作品に登場した例はない.(一部アンソロジーコミックにはあるのだが…) |