病室へと移動される。ここで最後のベッドへの 移動を行う。しかし今回はスペースの関係で完全に横に並べることができず,ちょっと移動にに苦労するが,何とか俯せの状態でベッドを移ることに成功する。この辺りでちょっとほっとしたのだと思う。記憶が曖昧になってくる。
 体温,血圧,脈拍を取られる。そして昨日のトイレの回数を聞かれる。実は朝7時過ぎからトイレに行っていない。と言うか昨日の夜からの段階でこれは立てなくなるかも知れないから,立てる内になるべくトイレに行っておいて水分を取らないようにしていたのだ。入院前編での「朝7時には立てた」と言うのは,行ける内にトイレに行こうとして無理矢理立ち上がった時の事なのである。で,その事を説明すると困ったような顔をされて「水分を取って下さいね」と言われる。そして溲瓶がベッドの横に下げられる。まぁどう考えても飲まずにトイレに行かないようにしているのは体にいいわけがない。溲瓶に抵抗がないわけではないが,これは溲瓶にださなしゃあないなと思う。
 晩ご飯が出てきた(後で分かったのだが午後6時)。前の日の夕方以来の飯である。痛みのせいでそんなにお腹が空いている感じはしない。しかし朝から痛みに耐えるばっかりで楽しいことが何にもなかったので,ご飯が食べられるだけで嬉しい。ご飯は足元にある移動式のテーブルの上に置かれただけであり,寝返りもろくに打てない私にとってはおあずけ状態である。どうしようかと考えていると看護婦さんがやってきて私の状況を察して,ベッドの上に横向きなったらその横に置いてくれるという。しかし横向きになるのが難しい上に,ベッドが狭いのでご飯のトレイを置く場所を作るために横にずれなければならない。俯せの状態からちょこっと斜めになった所でずりっとと後ろにずれて,その位置で横向きになることに成功する。が,ここでお箸は自分で用意する必要があることを知る。げっ,どーしよーと思ったところ,隣のベッドの人が「お箸がないんだね。はいっ」と言って割り箸と横向きになったままの私の状態を察してストロー(みそ汁用)を下さった。非常に助かったし嬉しかった。なお,私が退院するまでの間に三人の新入院の方に割り箸をあげてお返しをすることが出来た。
 さて横になった状態で飯が食えるのかな?と思ったが,行儀が悪いとされるからやったことがなかっただけで,結構食べられるものである。ただし,油断をすると口の端からこぼれそうになるので,お勧めはできません。
 当然,食べ終わったお膳(トレー)を動かすこともできない。待っていると看護婦さんがやってきて下げてくれる。膳の上げ下げをここまで人にやっていただくことに対してなんか非常に申し訳ないような情けないような気持ちになる。
 暫くすると先輩が手回り品を持ってやって来てくれた。着替えや洗面&風呂道具などである。その他何がいるのかと話していると隣のベッドの人が細々と教えて下さった。助かる。まだ病院の売店が開いている時間だったので,先輩に売店で必要品を買いそろえて貰った。先輩が帰られた後,その日は消灯まで(と言っても1時間余り)少しテレビ見て寝てしまった。寝る前には痛み止めの静脈注射も打たれた。どうも安眠のために飲み薬に追加で処方されたようである。もともと足がつった後のように,若干の痛みはあるものの,さして強い痛みではなく,激痛に襲われることさえなければ眠る事はできた。そして,昨夜も激痛が襲うまでは似たような状況であったが,今は病院に入っているのでひどくなってもボタン一つ(ナースコール)で何とかしてもらえるという安心感も安眠には大きな要素となり,よく眠ることができた。
 翌朝,何となく腰背部が痛くて目が覚めた。でも看護婦さんを呼ぶほどではないなぁ。と思って,朝になって看護婦さんが来られたら状況を言えばいいかと考えて,再びうとうとしていた。しかし,はっきりは覚えていないのだが,寝返りを打とうとして力を入れた拍子だと思われるが,つるような激痛がが走った。仰向けに寝ていたのでそのままエビ反り状態になる。これはナースコールをするべき痛みだと感じてボタンを押す。「どうされましたか?」との問い合わせに痛みを訴える。ボタンを押しただけで駆けつけてきてくれる。昨日の夜のことを考えると境遇に雲泥の差がある。うーむありがたい。看護婦さんが天使だと言うのが分かる。看護婦さんが来てくれたとき,既に激痛は去っていたが余韻で結構痛い。看護婦さんは膝の裏に引く枕(足を曲げた状態にするため)と氷枕に使うゴム袋に何か暖かいものを詰めたホットパックと言うものを腰に当ててくれた。そして朝食後に飲む予定だった痛み止めをただちに飲むように指示された。その後,痛みが我慢が出来なければ座薬や注射を使うが使うが必要か?と訊かれるが,ちと恥ずかしいのと注射が筋肉注射だったらたまらんと言う思い,さらに激痛さえ来なければ耐えられると思うし,あんまり薬に頼るのもちょっと嫌だなと思って,取りあえず飲み薬だけで様子を見ると返事をする。飲み薬なんで効くまでに1時間程度かかるからその間だけ我慢と思っていると,予想通りそのうち痛みがしなくなった。
 痛みが引くと,昨日の朝以来24時間ほどしていない小便がしたくなる。そこでベッドの横に掛けてあった溲瓶を何とか取ってライする。が,出ない。結構したい感覚はあるのだが出ない。やはり出すべきでないところで出すのは結構心理的抵抗が大きくて出るものもでないのだろう。あと腰が痛くて起きあがれないので横向きに寝た姿勢でしかトライできなかったのも失敗の原因だと思われる。しかし出さないと体に悪い。腰の状態としては昨日の朝の最後にトイレに行ったときの状態と余り変わっていない様に思う。昨日は床に寝ていたのでなかなか立ち上がれずに激痛に襲われたが,今はベッドに寝ているのでずり落ちれば上半身が起きた状態になる。つまり立ち上がらなくてもいい。 立った後は何かに掴まればきっと歩けると思う。ちょうど赤ちゃんの使う歩行器みたいなものがあれば歩けるだろうなぁと思っていた。その後看護婦さんが様子を見に来てくれた時に,痛みはないけどトイレに行きたい。何か 掴まるものがあれば……と言うと,本当に歩行器が出てきてビックリした。その後,整形外科の病棟では車椅子と並んでメジャーな機器だと言うことが分かったが,その時は大人用の歩行器があるなんて思っていなかったので世の中何でもあるんだなぁと感心してしまった。実は,この時にスリッパがなかったので(布団に寝ていた所からそのまま救急車に乗った),看護婦さんにスリッパ(後で見たら「手術室」と書いてあった)を持ってきてもらってベッドからずり落ちながら足をつけて,その後ベッドや歩行器に捕まりながら24時間ぶりに立ち上がることに成功する。そのまま歩行器に肘で引っかかったような姿勢で何とかトイレに行くことに成功する。何とか独りでも必要最低限のことはできるなと安心した。

 追記,今回救急車まで呼ぶ事態になって思ったこと,なんだかんだと言いながら救急医療制度は機能していると思いました。山の中で遭難したら別ですが,普通に街中にいる分には多少困った事態に陥っても119番さえすれば何とかして助けてもらえるような制度になっていることが身をもって実感できました。一応,先進国と言われる国なんだから当たり前と言えば当たり前のことなのでしょうが,いざと言う時に何とかしてもらえるんだという事が分かって安心感を持ちました。

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