記事タイトル:「女相撲の女子高生」(園生義人風) 


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お名前: 大竹龍介   
飯島愛ってTバックやん。その格好で相撲したい。パンティー食い込ませてやるんや、ハハハ。
[2006年8月18日 9時27分50秒]

お名前: 大竹龍介   
俺、飯島愛と相撲したいです。
[2005年5月9日 8時49分10秒]

お名前: 大竹龍介   
俺、飯島愛と相撲したいです。
[2005年5月9日 8時49分1秒]

お名前: 関 英樹   
成田さんが中々続きを書かないから、罰としてまた少し話を乱してやろう。
(承前)
最後のひとつ、オランウータンのぬいぐるみの中身ももぬけの空であった。いや、その代り
にさがりが入っていた。
女子高生・茜はそのさがりを手にすると、何か決意した顔になった。
「マダム。私はすっかり忘れていました。私が女子高生であること、そして何よりも大切な
古本の為に、土俵に上がらねばいけないということを」
「茜さん!」
茜は着ていた衣服をその場で脱ぎ捨て、オランウータンのぬいぐるみを廻しにして、締め
始めた。その堂々とした脱ぎッぷり、廻しの締め込みにしばし呆然と見つめていた一同の
中から、ヘンリーこと山田老が歩み出て、さがりを付けるのを手伝い、最後のひと締めに
力を貸す。見事にオランウータン廻しが完成すると、山田老は茜の頭を髷に結い始めた。
「おおお、見事な女力士だ」
一同の賞賛の溜息の中、ひとかどの女力士となった茜は誰もいない土俵に上がるのだった。
「・・・・・」
今までの躊躇いが嘘のように消えていく。茜はすう、と一息吐くと、
「土俵は舞台。私達は女優よ」
と、ひとりごつのだった。
「はっけよい!」
いつの間に現れたのか、茜の目の前に立つ立行司が一人。
その男こそ、平井蒼太ではないか。
(つづく)

さあ、〆切はあさってだ。
[2001年6月30日 8時34分32秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
おお、小説の続きかと思ったら、スレッド伸ばしじゃん。もう。
この事件、職場でも話題になっておりました。これで、ちょんまげ結ってたら、
この小説にもゲスト出演してもらってたのに。

>成田さんは、いつ続きを書くのですか?
 まだ、待ってる人がいたとは。なんとか週末に、しかし用事があるしなあ、
といっていたと同僚のアメリカ人に伝えて下さい。 
[2001年6月28日 7時18分40秒]

お名前: 関 英樹   
東京世田谷区で、暴漢の被害に遭った「16歳の女子高生」が、実は44歳の女性だったと言う
事件がありましたね。調べを受けた警察で堂々と悪びれもせずに「16歳」「女子高生」と
言い切る本人も驚きですが、「本当に女子高生と思った」と言う警官も・・・。
これも「園生義人効果」でしょうか?
成田さんは、いつ続きを書くのですか?同僚のアメリカ人も「いつまで待たせる」と、
怒っています(嘘)。
[2001年6月27日 3時46分46秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
おお、女相撲スレに久々の書込みが。なかなか続きに着手できずにおります。
で、見てまいりました。うーん。マギー・ミネンコの頃は良かったな、とか
いろいろ感想があって、まとまりません。
[2001年6月25日 7時36分44秒]

お名前: MOTO   
えー。
再びの横レス、失礼いたします。

http://www.isenp.co.jp/news/_2001/0208/top.htm

…くだくだしくは申し上げません。上記アドレスを御覧下さいませ(記事内容はともかくも)。
時代は…怖いところに来ております。
[2001年6月23日 19時44分40秒]

お名前: おげまる   
(承前)
「「しーらないっと」じゃないわよ、このヴォケがあっ」
 茜は北の空に向かって叫んだ。
「……収拾がつきませんな、これは」恩田が溜息を吐く。
「「なぜ」も「どうやって」も、考えるだけ無駄ってもんでしょう」
「いや、まだわれわれの力でなんとかできるかもしれません」
 オルゲは女主人に向き直り、「そもそも、この連中はほんとに全員死んでいるんですか?」
「あら、死んでるわよお、ほら」女主人は唇を尖らせて、バッグから取り出した鏡をガラス瓶の
口に近づけて見せる。
 鏡は曇らなかった。
「息をしてないし、それに中の水が八割方流れ出してしまっているわ。手後れよ」
「……いや、だからそういうわけのわからんギャグはおいといて」
 だが、郵便局員も車掌も、生命反応はなかったのだ。

「なんですかねえ、大量死理論とか、そっちに話を持っていくつもりですかね?」
「成田さんならともかく、おげまるにそんな頭はないわよ」
 茜が吐き捨てるように言う。反射的にそう答えたものの、茜の意識になにかがひっかかった
ようである。
「大量死……大量の死体……」
 呟きながら、茜は足元のオランウータンを覗き込んだ。
「木を隠すには森の中……死体を隠すには」
 背中を探ると、ファスナーがついている。
「死体の中。もっとも、この場合隠れているのは死体じゃないけど」
 言いながら一気にファスナーを引きおろした。

「……いやあ意外だなあ」「そおかあ、死体のぬいぐるみだったのかあ」「死体の中、
って意味が違う」「まあ、こんなもんじゃないの?」「人間椅子系だしね」
「これはハズレだったみたい。残りを確かめてみてください」
 一同は次々にファスナーをあけていく。いずれも空であった。そして最後のひとつ。
 はたして、この中に平井蒼太が隠れ潜んでいるのだろうか?
(続く)
[2001年6月10日 0時16分48秒]

お名前: 関 英樹   
幕間狂言
<密室レポート>
成田さん、未だ完結していませんが、「女相撲の女子高生」に密室が出ています(笑)。
リストにお加え下さい。
[2001年6月9日 6時6分36秒]

お名前: おげまる   
 ううむ、打ち合わせなしの思いつきリレー小説でマジメに本格推理をやろうとした私が愚か
であった。いや、マジメだったんだよ、オレ的には。

(承前)
「追うんだ!」
 一同は出口に殺到した。
「きゃあっ」先頭の茜が、なにかにつまずいて前のめりに倒れた。このとき茜の下敷きになっ
た一匹のカエルの運命については、また別の機会に物語るとしよう。
「あわわ」「ぎゃっ」「とっとっと」「え?」「ええと」「んじゃボクも」「よいしょ」
 ばたばたと将棋倒しに茜の上に積み重なっていく一同。
 とりあえず十二名を数えた。これがスチャラカ小説でなければ、茜の命はなかっただろう。
 マルク・オルゲは首を振ってパスした。十三名に挑むらしい。
 恩田幾三が助走をつけて、跳ぶ。ぎりぎりのところで、最上段にひっかかった。
 オルゲはシルクハットを観客席に放り投げ、レッサーパンダ帽をかぶり直す。
 2km先で針が落ちても、その音が聞き取れるかもしれない。その張りつめた一瞬。
「どおすこおおおおいっ!」
 茜が立ち上がった。

「死んだらどーするんですか、まったくもお」
「ま、ま、無事だったんだから結果オーライ……それより、これよ」
 女主人が茜をなだめつつ、本題に戻ろうとしている。
「さっき、あたしがつまづいたのは……」
「これよね」
「これってゆうのは……」
「さっきの郵便局員よね」
「この郵便局員……」
「死んでるわね」
「で、死体は……」
「これひとつじゃなくて、いっぱい転がってるのよねええっ」
 はたしてこれは平井蒼太の仕業なのか、ヘンゼルとグレーテルのパン屑のごとく、あるいは
BDバッジのごとく、車掌やらオランウータンやら12人の乗客やらこれを書いている私やら、はては水の入ったガラス瓶にいたるさまざまな死体が、犯人の逃走経路を示すように、点々と
転がっていたのである。

 さて。
 公正を期すために筆者はさらにいくつかのデータを提示しておこう。
 ・その建物の天井は、開閉式のドーム型構造になっていた。
 ・当日は晴天であった。

          ≪第一の挑戦≫

 読者諸君、私はいまこそ諸君に挑戦しよう。
 郵便配達夫が犯人でないのなら、真犯人はいかにしてこの完璧な密室から逃走しえたのであ
ろうか?
 ……なに、わからない? 困りますねえ、そんなに勘が鈍くては。

(続く)

 しーらないっと。
[2001年6月7日 23時3分53秒]

お名前: 川口@白梅軒   
おおっ、私同様、成田さんまで死体になってしまいましたか(笑)。

今後の展開が楽しみです。

スレッド、立てるほどの内容ではないので、ついでにここへ。
映画「エド・ウッド」、あれを観ると、いくら好きでも才能のない人間の哀しさを
感じてしまいます。
なまじ監督が才人ティム・バートンだけにね。
[2001年6月7日 4時49分1秒]

お名前: 関 英樹   
調子に乗って、つづきです(笑)。
(承前)
「・・・しかし、平井蒼太が犯人として、いったいどうやって?」
「そうだ。話しによると、巨漢女が部屋に入った時は、誰も中にいなかったのだぞ」
訝しがる一同。そこへ一人の男が、女主人に一通の手紙を渡しにやって来た。
「お取り込み中、失礼します。マダムに火急の速達です」
「きいい」
女主人は、目当ての古本を横合いから引き抜かれた時に発するような奇声をあげて、
一通の手紙を受け取った。さっと中味に目を通すと、
「何でも無いわ。さっ、それより続きよ。山田。それで?」
その時、ヘンリーこと山田老は莞爾として少しも騒がず、
「はい。実は彼はその時部屋の中に未だいたのでございます」
「馬鹿な。部屋の中には書き上げられた原稿以外、何も無かった筈だ」
「はい。しかしながら、原稿を書くのに机と椅子がそこにあった筈」
「それはそうだが・・・」
茜は山田老の言わんとした事を即座に理解した。
「そうか。人間椅子ね!」
あっ、とざわめく一同。取っておきの一言を横から小娘に奪われて、山田老はややむっと
しながらも、その後を引き継ぐ。
「さようでございます。これこそ、蒼太の犯行を裏付ける彼のセンスと存じます」
「そ、それで?」
「はい。夜半に部屋を訪れたのは小説の神様ならぬ蒼太でございました。彼は不本意な
小説を書き直して完成させると、その正体を悟られぬよう急いで男を殺し、豪華な皮装
の椅子を切り裂き、その中に死体を抱いて忍び込んだのでございます。幸いにして、男は
両手両足を切断されていて丁度赤ん坊を抱くようなものでございました。無理無く椅子の中に
収まったのでございます」
溜息に包まれる一同であった。何と言う大胆なトリック!巨漢女は目の前に犯人と死体が
いる事にも気付かず、もぬけの殻の部屋を後にしたのであろう。そして、女がいなくなって
から、蒼太は悠々と死体を抱いて部屋を辞去したのであろう。
「ううむ、判った。小説家消失の謎は。で、では、今回の成田一さんの場合は・・」
「はい」
山田老ことヘンリーはおごそかに部屋の中に進むと、豪華な皮装椅子をくるりと回転させて
一同の方に廻して見せた。
「今にして思えば、私が聞いた怪しげなうにょうにょうにょと言う電子音めいた音は、
電気メスのようなもので、この皮装を切り裂く音だったのでしょう」
そう言うと山田老は、縫い合わされたばかりの切れ目をビリッ、と破いたのであった。
おお、その椅子の中からは悶死した戦後最大の名探偵・成田一耕助の死体が!
またしても、あっと息を呑む一同。しかし、驚いたのは山田老も同じであった。
彼の推理では犯人の蒼太もこの椅子の中に隠れている筈だったのだ。
「きいい。山田。犯人はどこなの?どこに消えたのよ」
「こ、これは・・・。はて、面妖な」途方に暮れる山田老に既に先程までのオーラは無い。
「成る程。小説家消失の場合は納得したが、今回の推理にはどこかヌケがあったようだね」
「しかし、兄さん。犯人は我々が部屋を開ける直前まではここに居た事になります。だが、
部屋を開ける前は屈強な女力士達が部屋の前を囲んでおり、開けてからは常に我々の目が
あった。一体、いつ、どうやって、犯人はこの部屋を出たんでしょう?」
「きいい。透明人間でもなければ無理よ!」
「透明人間?」
その一言を聞いて、聡明な茜の脳細胞はまた活発に動き出したようだ。
「・・そうか。犯人は透明人間になって、この部屋を出たのよ。私達の目の前を堂々と」
「はっは。何を仰るお嬢さん。SFじゃないのだよ、これは」
「だから、透明人間と言ったのは比喩です。犯人はそこにいても誰の目にもとまらない
姿をしていたのです。見えない人だったのよ」
「え?それはつまり・・」
「さっき、マダムに手紙を渡した郵便局の男よ。彼が蒼太だったのよ!」
「どすこい!」
女力士達の四股が再びこだました。
(つづく)
[2001年6月7日 4時23分1秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
おお、見殺しにされなかったぞ。これで、話を止めた責任は、ひとまず
回避できた。
しかし、ヘンリー・太田まで、出てきますか。昔、某大推理研で制作
したビデオ映画「黒コゲ蜘蛛の会」(脚本:関)の登場人物なんです
が、しゃべり方がそのまんまなんで、笑ってしまった。って、俺にしか
受けないじゃん。
[2001年6月6日 23時50分40秒]

お名前: 関 英樹   
(承前)
ドアの前に立ちはだかる女力士達を押しのけ、一同は次々に部屋の中に声を掛ける。
「おおい、成田一さあん!」
内側から旋錠されているドアは押せども引けども開かない。
「こ、この部屋の鍵は?」
しびれを切らした月太郎ことマルク・オルゲ三世が舌打ちをしながら、女主人に
鋭い視線を向ける。
「ここに合鍵がございます」
恭しく慇懃無礼な口調で山田老人が鍵を差し出した。マルク・オルゲはその鍵を奪うように
受け取ると、鍵穴に指し込み急いで開錠した。ドアがゆっくりと開く。
はたして部屋の中はもぬけの殻であった。ああ、成田一耕助もまた自称園生義人同様に
密室から消失してしまったのか・・・。
「あれは?!」
その時、花太郎こと恩田幾三が指差したのは床の上に転がる火掻き棒であった。
「これは・・・デレッキでは?」と、北海道出身のマルク・オルゲ。
「デレッキ?」東京出身の茜と女主人は聞き慣れぬ言葉に眉をしかめる。
「さよう、デレキとも言う。北海道の方言よ。石炭ストーブに使う火掻き棒のこと」
「デレッキ・・・」
茜の思考は先程女主人の漏らした一言に素早く反応した。
「そう言えば、あなたはこの状況がデレック・スミスの未発表長編に酷似していると、
仰っていましたね。デレッキとデレック・・・。これはやはり、その長編に精通している
者が仕掛けたトリックなのでは?言わば一種の挑戦状よ!」
「きいい。あたし以外にこの本を持っていて、しかも先に読んだ者が日本にいると言うの?」
「・・・そのようですな。しかも、その者はデレッキを知っている事から、北海道出身
若しくは北海道の方言に詳しい人間・・・」
(今回は妙にシリアスで駄洒落が未だ出てこないわ)
茜はこの展開に息苦しさを覚え始めていた。
「失礼ですが・・・」
一同の背後に控えていた山田老人が慇懃に話しに割って入って来た。
「どうしたんだね?」
「はい。私にはどうやらこの密室消失の謎が解けたようでございます」
そのオーラのこもった一言を聞いた途端に、恩田幾三はハッとして、
「き、君。や、山田君とか言っていたが、以前『黒焦蜘蛛の会』にいたヘンリー・太田
じゃないのか?!」
「ばれましたか。仰る通り、私以前はヘンリーと名乗っておりました」
(そんな事はどうでもいいから、駄洒落は未だなの?)と、焦れる茜。
「花太郎、知っているのか?彼を」
「はい。月太郎兄さん。優秀な会のメンバーが毎回解けぬ謎を快刀乱麻を断つが如くに、
推理する名人なのです。私も一度ゲストで呼ばれた際に、その名推理を目の当たりに」
「きいい。じゃ、仰い。山田」
「はい。マダム。犯人は、先の小説家消失事件と同一犯と存じます」
思わず息を呑む一同。では、この老人は過去の事件もろとも一挙に二つの消失の謎を
解いたと言うのか。
「哀れ両手両足を切断された小説家のその姿こそ、先程お話しに登りました『芋虫』に
他なりません。そしてそれは乱歩のセンスでは無い、と」
「うむ・・・」
「いかに小説の神様がいようと、一夜にして世人を謀るような小説を素人風情が書ける訳が
ございません。ましてや女相撲の基礎知識や素養も無い者には不可能です」
「それはそうだ。これだけの小説を書ける素養があるとすれば、この歴史公論に出ている
くらいの原稿が書けないと」
「さようでございます。しかも、デレック・スミスにも通じている・・。私、聞きかじった
事がございますが、戦後小説の書けなくなった乱歩がさる人物に依頼して海外の未紹介作家
の作品をパクる為に、原書のセレクトをさせていた事実を。そして戦後の紙事情の悪い折に
本業の古本事業の拠点を札幌に置いていた人物」
「まさか・・・」
「ヘンリー」
「さようでございます。回答は既に皆様の目の前にございました。犯人は平井蒼太に
ございます」
「どすこい!」
女力士達が一斉に四股を踏み始めた。
(つづく)
[2001年6月6日 3時49分52秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
大分時間が開いてしまいました。続くのかなあ。

「しかし、なぜ蒼太は」
 恩田幾三は、質問者の眼の奧を覗き込むように言った。
「話は変わるが、乱歩の小説は、理知を愛する一方で、それとは相反する猟奇
耽異の傾向をもっているのに、疑問をもったことはないかね。戦後の作家をみ
ても、この二色をもっている作家は、あまりいない。私にいわせれば、「芋虫」
や「人間椅子」は、乱歩のセンスではなく、蒼太のセンスだ」
 人間椅子、と聞いて、女主人は、なぜか屈伸運動をはじめたが、恩田は
かまわず続けて、
「乱歩の「双生児」という小説は、兄殺しの弟が兄になりすまして結婚生活
をおくるという話だが、これはなかなか心理的に含蓄に富んでいるとは思わ
ないかね」
「すると、あなたは」
「多くは語るまい。人嫌いだった乱歩は、戦後人が変わったように社交的にな
り、探偵作家クラブを設立する。一方、小説の方は、ますます書けなくなる。
ここに、蒼太との心理的な訣別があったのではあるまいか」
 古本女相撲の由来に関して、語られる探偵小説史上の一大秘事に一堂が耳を
すましているところへ、割って入ったのはマルク・オルゲ三世。
 「講釈は長いが、花太郎兄さんのもってきた雑誌自体の価値は、たかだか
数千円が相場。世界中の図書館を統べる者といわれた私の持参した古書を笑覧
あれ」といって翻すマント。
 再びどよめく貴族たちのもとへ座布団運びの山田老人が息せき切って駆け
込んできた。
 「成田一耕助さまが、さきほど気分が悪いと退席されましたが、」
 なるほど、いつの間にか、成田一の姿は消えている。
 「一人閉じこもったお部屋から、怪しいうにょうにょうにょという電子音
が聞こえてまいります。呼べど叫べと、お返事はありません。ドアの廻り
は、屈強の女力士達が取り巻いており、誰も出入りなど出来るはずはないの
ですが」
 「あああ、その設定は」
 女主人が蒼ざめる。
 「デレック・スミスの未発表長編で使われている密室の設定よ。ロバート・
エイディーがその長編を譲り受け、森さん経由で日本に持ち込まれたものよ。
私がこの前、三橋一夫2冊と交換したの」
 「それで、それで、そのトりックは」
 「まだ、読んでないのよーーっ」
 一同は、別室に向かって殺到した。

(続く)
[2001年6月5日 2時38分10秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
(承前)

 茜の家の蔵書をめぐって、興奮状態にあった人々は、二人の初老の男が
隅で手をとりあって泣いているのに気づいて、次第に静まった。
「月太郎にいさん」と酔っ払った頬をさらに上気させているのは、ものつく
り大学教授、恩田幾三。
「花太郎」と応じて、よよと、泣きくずれているのは、マーク・オルゲ三世。
人々に観られているのに気づいてバツの悪い思いをしたか、恩田は説明口調
で、
「かつて、古本女相撲界には、向かうところ敵なしの巨漢、まさ子という女
がいた。珍本を獲得するために、鍛え上げたその強さは伝説的で、この、ま
さ子に比べれば、そこにいる女主人など、まだ、ちーままクラスを出ておら
ん。人々は、その女を好事家の中の好事家。好事家まさ子と呼んだ」
 茜の脳裏を、かつて「肝っ玉母さん」で、日本全国2000万人の、ふくよか
ファンの血沸き肉躍らせたという、女優の顔がよぎった。
「その、まさ子は、あるとき、突然女相撲界から姿を消した。研究者の間でも、
その失踪は謎とされていたのだが、それが我々兄弟の母上だったとは」
 恩田は、ハンカチで涙を拭いながら
「しかし、ここは、勝負。珍本で茜さんの気をひけば、茜さんの蔵の蔵書も、
神門家の膨大な数の稀書もろとも、我が手に落ちる。こんなこともあろうこと
かと思って、今日は、少しく珍しい本を持参した。珍本自慢のトップバッター
は、この恩田幾三ということでよろしいか」

 書痴たちは、ごくりと唾をのみこみ、無言で恩田の黒い鞄を見つめる。
「その前に、なぜ古本と女相撲が結びつくのか皆さん疑問に思ってはいます
まいか。女相撲あるいはその祖先たる怪力女の伝説は、古くからある。「日
本霊異記」や「古今著聞集」にも、怪力女の伝説がみられるし、江戸の明和
年間には、見せ物としての女相撲が流行したという。しかし、これがなぜ古
本につながるのか。実は、相撲と古本、さらにはミステリをつなげる一人の
人物がいるのだ。それを明らかにするのが、これだ」
 恩田幾三は、一冊の古雑誌を鞄から取り出し、高々と差し上げた。
 「歴史公論」とある。書痴たちの間に落胆の声が広がる。
「ミステリ者には、興味がないようじゃが、この歴史公論5巻5号に、「見
世物女角力」という研究が載っており、女相撲研究の基礎文献として知られ
ておる。この文献の筆者こそ、平井蒼太」

 どよめく、貴族たち。
 乱歩蔵のビデオをもった男が、口を差し挟む。
「平井蒼太といえば、江戸川乱歩の実弟。性風俗の研究家にして、通信販売
の古本業も営んだ、あの蒼太ですか」
「説明的セリフだが、いいことをいってくれた。その蒼太だ。神門家の当主
とも親交があった蒼太は、おそらく兄の主宰する探偵作家クラブに対抗する
闇のネットワークとしてこの古本女相撲を仕掛けた」

(続く)

 もう一回続けます。
 *参考文献 宮田登「ヒメの民俗学」(筑摩文庫)  
[2001年6月3日 14時23分51秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
古本がらみだけに蒐集がつかない(汗)、などといっている場合
ではなく、とりあえず主な登場人物を整理してみました。石井さんの後、
1回書こうかと。

茜・・・古本好きのうなぎ屋の娘。女子高生。
女主人・・・古本の女王。実は、サイボーグ。
腹話術師・・・実は雨夜陣五郎。なめくじとなって逃走。
マルク・オルゲ三世・・シルクハットに片眼鏡の紳士。図書館に生きる者(月太郎?)
恩田幾三・・・ものつくり大学の古書鑑定家(花太郎?)
山田・・・・座布団運びを生業としている老人
成田一耕助・・・戦後最大の名探偵
茜の父・・・茜の父

小説家・・巨漢の女に監禁され自らを園生義人と思いこむ。密室から消失。
巨漢の女・・・熱狂的園生ファン。神門家の三つ子(オリオン三兄弟=月太郎、花太郎、
             雪太郎)の母
神門家の当主・・・古本女相撲を主宰。先頃死亡。

アテネの執政官・・・間投詞
[2001年6月1日 8時13分11秒]

お名前: 石井春生   
えーと、貧弱な頭を振り絞って、続きを考えみました。

(承前)
忌まわしい遺言…その恐ろしさにうち震える茜であったが、そのとき、ふと
脳裏をかすめるものがあった。幼い頃、家の蔵の中で見かけた本である。
茜の家はうなぎ屋だというのに、なぜか家に蔵がある。その蔵の中には一冊の
妙に古びた本があった。茜の父がどこからか持ってかえったものらしいが、
どういう由来なのか全く分からない。ただ、父にとってとても大切なもの
だったのだろうか、嬉しそうに本を虫干ししていたのを茜は憶えている。
(あの本はなんてタイトルだったかしら?ああ、思い出せない。でも、
背表紙の色は憶えているわ。黒だった)「あと、帯も付いていたし、月報も
あったような……あの本」いつしか茜は独り言をつぶやいていた。
しかし、その言葉に女主人が激しく反応した。
「ま、まさかその本、帯も付いていたの!ええっ、月報まで!ということは完本!」
口から泡を吹かんばかりの勢いである。
「ほほぅ、完本ですか。それはそれは」
「さて、今だったら相場はいくらになることやら」
「私のはカバ無しの裸本なんですよ。うーん、完本だったら弾んでもいいなぁ」
「ふふふ、その本のために、また臓器でも売りますか」
どうやら、茜の言葉が衝撃的だったらしく、大勢の人間が口々に話し合っている。
(いったい、どうして大勢の人がこんなに反応するの?ウチにある本はそんなに
珍しいというの?)
茜の家にある本、それは謎めいた遺言状とどこかで繋がるのだろうか。そして、
過去に起きた忌まわしい殺人の謎は如何に……。
(つづく)

ううっ、お粗末な続きで申し訳ないです。
[2001年5月29日 23時32分41秒]

お名前: 風々子   
(承前)
場面変わってここは女主人が普段過ごしている特別室。
関係者一同がぞろぞろとこの部屋に移動し、いよいよ遺言状が読み上げられるのであった。
「では、読みます。」
成田一耕助は、粗末な着物の懐から取り出した遺言書を読み始めた。
「ひとつ。神門家の全事業並びに全財産の相続権を意味する、神門家の三種の家宝、
鎌、輪、塗(かまわぬ)は、次の条件のもと、浅草××丁目、うなぎ屋『鵜難儀庵』の娘、
茜に譲られるものとす。」
驚きに目を見張る茜。周囲は、愕然、呆然、騒然…
そんななか、成田一耕助の声は淡々と続く。
「ひとつ。ただし、茜はその配偶者を神門家の三人の血縁、月太郎、雪太郎、花太郎の
うちより選ばざるべからず。
ひとつ。月太郎、雪太郎、花太郎の三人は、自らが選ばれんがため、
珍しい古本を手に入れて茜の気を引く努力を怠るべからず。」

遺言はままだまだ続くが、あまりにくだくだしくなるので省略する。
いいわすれたが、三種の家宝とは黄金で作られたそれぞれが三寸ばかりの置物のことで、
「鎌」は文字通り鎌の形、「輪」というのは円形のリング、
「塗」というのは漆塗りの食器を象徴しており、お椀の形をしている。

ああ、なんという呪いと悪意に満ちた遺言状であったろうか。
まるで一族を血で血を洗う諍いにまきこまんとするかのような邪悪な意志を感じて、
茜は肌に粟を生ずるのを禁ずることができなかった。

しだいに、茜の胸中にどす黒い暗雲が広がってゆく。
腹の底が重くなるようないやあな予感がするのである。
この先何やらよからぬ事件が起きる。
妙にネチネチとした、得体の知れぬ怪事件があいついで起こる。
しかも、変事が起こるたびに荒々しく奏でられるテルミンの音!
そんな予感に、茜は打ち震えた。

はたして、茜と神門家とはいったいどのようなつながりがあるのだろうか。
はたして、この広がりすぎた大風呂敷をたためるのはいったい誰なのだろうか。
(続く)

いやホント、どなたが落ちを付けてくださるのでしょう。
[2001年5月28日 20時19分43秒]

お名前: おげまる   
一日考えたけど、トリックが思いつかない。まあ、最後は成田さんが解決してくれるだろう。

(承前)
手をつくして探したものの男の行方はわからなかった。
女はその土地で絶大な権力をふるう神門家の人間であったので、この事件はそのまま闇に葬ら
れた(途中である探偵の介入があったようだが、この物語とは関係がない)。
ところでこの女はそのとき妊娠しており、ほどなく三つ子の男児を産み落とすと、この世を去
ったのである。

「生まれて間もなく里子に出されたそのときの三つ子が、ここにいるオリオン三兄弟なので
す」
女主人は話をつづける。
「ところで神門家の当主は古本貴族をあつめて「客注伝票コピー互助会」を主宰し、年に一
度、ダブり本を放出しては、会員同士に女相撲で争わせるのを楽しみにしておりました。それ
がつまりこの会です。
ご存知の方もおいででしょうがこの春に当主が急逝いたしました。
当主には跡継ぎがおりませんでしたので、血縁者である三兄弟が呼び寄せられたのです。神門
家の莫大な遺産、そしてその蔵書……」
女主人は手の甲で涎をぬぐった。
「大坂圭吉が甲賀三郎に託した長編『幽霊機関車』、戦争中に江戸川乱歩がひそかに書き継い
でいた『悪霊』の完成原稿、さらには横溝正史の『女の墓を洗え』『千社札殺人事件』、高木
彬光の『甲冑殺人事件』、都筑道夫の『北斎当年二千歳』、そればかりか沼島りうの幻の長編
にいたるまで……
この遺産を受け継ぐにはある条件がございます。故人の遺言については、こちらの先生からお
話しいただきましょう」
一同の目はあらためて新参の男に向けられた。
この人物こそ、戦後最大の名探偵、成田一耕助そのひとである。
(続く)

お粗末さま。次のかた、どうぞ。(続けにくいかな、これ)
[2001年5月28日 6時4分5秒]

お名前: おげまる   
(承前)
「……女の狂気が乗り移ったとでも言うのでしょうか、もうその頃には男の方も、すっかり自
分が園生義人であると信じ込んでしまったようなのです」
しんねりとした口調で女主人の話は続く。
「無理もございますまい。H大推理研始まって以来の異能を謳われ、アメリカでの事業に成功
を収めて帰国したばかりの俊才が、一夜にして生きながらの地獄に突き落とされたのですから。
その当時のことですので、もちろん音声入力のパソコンなどはございません。「両手両足を切
断して自由を奪」われ、口にペンをくわえて、書き慣れぬ、いえそれまでに読んだことすらな
い明朗小説の贋作を書くことを強いられる、その苦悶はいかほどでございましたろう……」
女主人はそこで言葉を途切らせると、うつむいたまま微かに両肩を震わせた。
それにしても――と茜は思う。これはまたなんという陰惨な話であろうか。
茜はわきの下を流れる冷たい汗を禁じることができなかった。
やがてキッと顔を上げた女主人は、一同を見回すと怒りを押さえるようなネツい調子で話をつ
づける。
「小説の神様というものがいるのなら、このようなときに訪れるのかもしれません。一昼夜を
かけて、その男は憑かれたように『女相撲の女子高生』を書き上げたのです。そうしてその翌
朝、女はいつものように男の部屋を訪れ、鍵を開けようとしました」
一同は息をのんで女主人の話にききいっている。
「いくら鍵を回しても扉は開きませんでした。その部屋はもともと錠前のほかに内側から閂が
かかるようになっていたのですが、監禁するために閂の棒は取り外されていたはずなのです。
家僕に命じてようやく扉を壊して開けてみると、内側からは取り外したはずの閂が掛けられて
いて、そうして男の姿はどこにもなく、あとには『女相撲の女子高生』の原稿が残されていた
のでした」
女主人の話はつづく。
(続く)

すいません、もう一回、書かせて。
[2001年5月26日 21時53分37秒]

お名前: おげまる   
あれあれ、関さんが30枚書いてくれるのかと思って、見守ってたのに。
なんですか、関さんの続きは私って、順番がきまってるんですか?
横溝でミザリーで不可能犯罪ね……
書きましょう。責任は取らんぞ。
(続く)
[2001年5月26日 20時11分10秒]

お名前: ストラングル・成田   
世界が分岐したか思ったら、古本サイボーグ、バベルの図書館長、異形の三兄弟、座布
団配りの山田まで登場し、いっそう、にぎにぎしく展開されておりますなあ。
(川口さま、「白梅軒」のレスを休んでまで参加くださり、ありがとうこざいました。)
「ミザリー」でメタ化して、ますますどこへ向かうのか。密室殺人は、いつ起こるのか。
ますます、眼が離せなくなってまいりました。
[2001年5月25日 7時45分33秒]

お名前: 関 英樹   
・・・未だ正体を現わさぬ花太郎なのだろうか。」
と、ここまでペンを進めて園生義人は、ふうとひとつため息をついた。
そこへドアを開けてあの女が入ってきた。
「どこまで進んだんだい」
体重百キロはあろうかと言う巨魁。園生のファンNo.1を自称するこの頭のイカレた女に
彼は憎悪の眼差しを向ける。
言葉巧みにこの人里離れた山荘に連れ込まれ、いわれの無い暴力を受け、自分をモデルに
した「女子高生」の新作「女相撲の女子高生」を書けと脅迫し、それを断ると園生の両手
両足を切断して自由を奪い、今日まで心ならずも件の小説を書かされて来たのだ。
既に精神に変調を来した園生の書いたそれは、パラノイアックなまでに前後の脈絡も無く、
記憶は混乱して、竹宮恵子と萩尾望都を取り違えるわ(こそこそ)、ダブリの章は書くわ、
熱狂的ファンを自認するこの女の満足を得られるレベルでは到底無かった。
「僕には、もうこれ以上書けない・・・」
「おだまり!」
直ぐに容赦の無い平手打ちが園生の頬に飛んだ。薄れ行く意識の中で、
(ああ、「ひだまり」をヒットさせたルクプルは今どうしているのかな・・・)
とどうでも良い事に涙するのであった。
「明日までにあと30枚書くのよ」
良い放つように出て行く女を尻目に、園生は再びペンを取る。朦朧としていた意識は
ややスッキリとして、ようやく本来の彼の文体が甦るのであった。
(つづく)
[2001年5月25日 5時6分22秒]

お名前: 石井春生   
ネタ切れ気味なので、ちょっと閑話休題m(_ _)m
うーん、みなさま、芸達者ですねぇ。ここまできたら、そろそろ
密室殺人(不可能犯罪もの)が起きてほしいような…
でも、そうすると、ますます「園生義人風」から遠ざかってしまうかしら(^^;)
[2001年5月24日 23時23分13秒]

お名前: MOTO   
あのー、盛り上がってるところに水さしてすみませんー(こそこそ)。
伏線かと思ったら違うみたいなんで…。
「11人いる!」の著者は竹宮惠子じゃなくて萩尾望都なんですー(こそこそ)。
[2001年5月24日 23時21分58秒]

お名前: 風々子   
(承前)
そのとき、茜の様子をじっと観察していた女主人が笑った。
「うっふっふ。ようやく二人がそっくりだってことにお気付きかい。さてここで問題です。
このふたりは血のつながりはあるのですが、兄弟でも双生児でもありません。
ではこの二人の関係は?」

茜は脳天から真っ赤に焼けた鉄串をぶち込まれたような衝撃を感じて、よろめいた。
おお、大地がゆれる。海がもえる。空がきらめく。……
「そ、そ、そ、それではこの人達は、み、三つ児だとでもいうんですか」

「おや、あっさりと真相を見抜いたねえ。そのとおり、この紳士達は、
本名が月太郎、雪太郎、花太郎という三つ児だったのさ。」
そういう女主人の言葉に青ざめる茜。
その背後にすっと影のように立ち上がった人物、ああこれぞ、
未だ正体を表さぬ花太郎なのだろうか。
(続く…といったって、どこまで続くのだろう)
[2001年5月24日 22時28分24秒]

お名前: おげまる   
もひとつ投稿。

(承前)
そのとき、茜さんはようやく気がついたのです。
ああ、これはどうしたことでしょうか。
さっきから茜さんが相手をしていたへんなおじさんは、よく見ると、古本の女王様とむずかしいお話をしている紳士にそっくりではありませんか。
ひとりは川内公範原作のバベルの図書館長、もうひとりは酔っぱらいのいろもの教授。
性格のまるでちがうこの二人は、鏡に映したようにうりふたつなのです。
こういうと、「ハハア、ひとりは二十面相の変そうだな」と思う人もいるかもしれません。
ところが、ちがうのです。読者諸君、ここにはもっと恐ろしい秘密がかくされていたのです。
それはどんな秘密でしょうか。諸君も、ひとつ考えてごらんなさい。
(続く)

……続くよねえ?
[2001年5月24日 21時31分5秒]

お名前: おげまる   
(承前)
「うなぎ屋だけに……「手も足も出ない」「つかみどころがない」「ギャグが滑っている」
……ううん、どれもいまいちだな……「捌くのは俺だ」「わが友、ウナギり者」「白尾ウナギ
は死んだ」……うーむうーむ……」
いきなり苦悶しはじめる男を、茜は奇異の眼で見つめた。
その視線は、あたかも道立図書館で少年雑誌に読み耽る初老のオタクを目にしたかのごとく、
白く冷たかった。
(ママあのひと)(しっ静かに)(くすくす)(へえ「少年」かあ)(やあねえ)(あの歳
で)
……うう、筒井ネタはやめよう。

男の狂態はアメリカからの電波が途絶えたためなのだが、むろんそんなメタな事情は、作中人
物の知るところではない。
「♪せとわあ、ひぐれてえ、ゆウナギこナギい〜」
こナギつーのはなんなのよ、と突っ込む間もなく、男の歌は「瀬戸の花嫁」から「高校三年
生」にかわった。
茜は、あえて問わなかった。
答はわかっている。ウナギ一夫であろう。
やがてフルコーラス歌い終えた男は、息を整え、
「うなぎ屋だけに……クシに一生を得ましたな」
そう言うと、胸を張ってポーズを作り、拍手を待つ。
茜は叫んだ。
「山田くん、全部持っていけえ!」

すると、楽屋から一人の老人がよろよろと歩み出て、男を張り倒し、座布団を抱えてまたよろ
よろと歩み去っていった。
案外、お元気そうである。
(こんな役ですみません……)

(続く)
[2001年5月24日 20時17分29秒]

お名前: 関 英樹   
続きです。
(承前)
「どうも食欲をそそりますね」
「あなたは・・・」
その片眼鏡の紳士は、懐から静かに一枚の名刺を差し出した。
「ものつくり大学で、古書鑑定を専門にしています恩田幾三と言います」
どうやら女主人も一目置く人物らしい。慌てて目録をバッグにしまった。茜もつられて
竹串をポケットにしまおうとする。
「お見受けするに、うなぎ屋さんのお嬢さんらしいですな。はっは、私もうなぎは精力
絶倫になるので好きですよ」
「私は絶倫より絶版が好き!」
「はっは、これはこれは。よろしい、うなぎ屋さんだけにひとつ腹を割って話しましょう」
茜はこの紳士から発せられる不思議な「古本力」のオーラに魅入られたように、身動ぎ
出来ないでいた。
(ああ、この紳士は私に何を話そうと言うのかしら)
紳士はおもむろに懐から古書店のカバーのかかった本を取り出すと、
「九人と死人で・・・」
と、茜に問い掛けるのだった。
(古本題名当てクイズ!私の眼力を試そうと言うのだわ!)
謎の紳士恩田と女主人はにやにやと茜がどう答えるか待っていた。
「九人と死人で・・・」
「11人いる!」
ほお、と紳士は意外そうな声を出し、静かにカバーを外した。確かにそこには
竹宮恵子の往年のコミックが美装カバー付きで。
「さすが、うなぎ屋だけに手に負えませんな」
その時、茜の眼がきらりと光った。
「うなぎ屋だけに・・・」
「うなぎ屋だけに?」
「そう、うなぎ屋だけに・・・」
(つづく)

映画「恋はハッケヨイ!」のニュースはおいらもビックリ!
[2001年5月24日 3時33分51秒]

お名前: 川口@白梅軒   
(承前)
そう、それは図書館世界の支配者として知らぬ者はいない伝説の人物、
マルク・オルゲ三世であった。
「茜さん。早まってはいけない。この女相撲に足を踏み入れたが最後、
ある者は人生を踏み外し、ある者は他人を信じる心を忘れた亡者になってしまうんだ。
若い君がこんな汚れた世界に関わってはいけない!」

そこへ、女主人の高らかな哄笑が響き渡った。
「ホホホ、どなたかと思えば。オーゲさまでしたの。あなたらしくもない。
なんの根拠があって、そのようなことを」
「久しぶりですね、マダム。あなたは古本の世界に、そして、私は図書館に生きる者。
お互いに会うことなど、金輪際なかろうかと思っていました。
しかし、あなたがこんな少女までこの道に引きこもうとなさると知っては、黙ってはおれませんよ」
そう言うと、オーゲ氏はくるりと茜の方に向き直った。

「いいかね、何度でもいう。このマダムのようになりたくなければ、今すぐここから逃げ出すんだ。
この女はもう人とはいえないんだ」
「まあ、オーゲさま、なにをおっしゃいますの。無礼は許しませんことよ」
オーゲ氏は口元に不敵な笑みを浮かべた。
「ふふふ……、私のいうことは嘘ではない。なんなら証拠を見せようか」
その言葉が終るや、オーゲ氏が手にした片眼鏡から突如閃光がほとばしった。
「外道照身霊波光線!」

おおっ!見よ。なんとその光に映し出された女主人の姿は……。
き、機械だ!

「どうだね。わかったかね、茜さん。彼女はもう人間とはいえないと言った意味が。
彼女も昔は単なる古本マニアだった。しかし、ある本を入手するために、
彼女は自分の内臓を売り始めたんだ。やがて欲しい本が見つかる度に彼女は自分の内臓を売り、
代わりに機械の体へと替えていった。永遠に歳をとらない、
それもマシンのパワーを秘めた彼女が女相撲で並ぶもののない存在となったのも当然なんだ」

正体を暴かれた女主人。しかし、彼女はそれでも冷静さを失わなかった。
「そうよ。あなたのおっしゃるとおりだわ。でも、本に執り憑かれたものが、
それぐらいのこと、しても当然でしょ。あなただって同じだわ。
いいえ、あなたにはもっと恐ろしい血が流れているはず……」

「馬鹿なことを。私の、この名門の血が恐ろしいだなどと」
「いいえ。私が知らないとでも思ってらしたの。オルゲ様。
あなたのご家系は代々世界各地の図書館を収めてきたはず。
歴史書にもその名は記述されておりますわ。あら、お国では発音が違ったようですわね。
そう正しくは「ホルヘ」様とお呼びになればよろしいのかしら」

「!」
「ホホホ……私とあなたにどんな違いがあると言うの? 
あなたも、私と同じ世界の住人なのよ」

さあ、すっかり話に取り残された茜の運命は如何に!?
(続く)

ああ、話を乱してしまった気も。許してください。
おげまるさんをネタに出したくて。
[2001年5月24日 2時33分5秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
 あれ、御本人まで参加してる。
 リレー小説になるとはまったく思ってなかったのですが・・。 
皆さま、さすがです。面白いです。特に、風々子さんのは、園生
風というのが生きているし、女主人も、らしくてよいなあ。
宮澤さんの情報にも驚きました。意図せず、時代の先端を走って
いました(笑)「恋は、ハッケヨイ!」は当スレッド推奨ですね。
 
 では、続きを楽しみにしております。(誰にいってる誰に)
[2001年5月23日 23時59分38秒]

お名前: 石井春生   
ああ、格調高い密室系の掲示板が色物と化しているような……

(承前)
そんな茜の心の隙を突くように女主人が出してきたものは、なんと一通の薄っぺらい
目録であった。しかし、なんということだろうか。その目録は紙の薄さと裏腹に
掲載品のあまりの凄さにマニアの間では伝説とされていたもの。ああ、その目録を
巡ってどれだけの血が流されたことだろうか。茜の目が光った。
「ふふふ、この目録をご存じとはさすがね。これは選ばれた者だけが注文できるもの。
貴女ごときでは、指一本触れることも叶わないものよ」
茜はごくりと唾を呑んだ。
「……じゃあ、土俵に上がれば見せてくれるの」
茜は魅入られたようにふらふらとまわしに近づいた。と、そのときであった。
「お待ちなさい。早まってはいけませんよ」
涼しげな声に思わず振り返ると、そこにはシルクハットに片眼鏡の紳士が。
茜は叫んだ。
「ああ、あなたは!」
(つづく)

ところで、女相撲ってやっばり秘密クラブなのね。うーん、海外でも好事家が
いようとは…
[2001年5月23日 21時48分18秒]

お名前: 風々子   
(承前)
だが、鍛えられた茜の眼は一瞬ですべてを見抜いていた。
一番上に表紙を見せている本こそ「赤い鎧戸のかげで」であるが、
その下に積み重なっている本の背を見ると、
「囁く影」「魔女が笑う夜」「雷鳴の中でも」……
「あのお、これってほとんどが最近重版された本なんですけど」

女主人の目がぎらりと光る。茜の言葉が正しく急所を突いてきたのだ。
女主人は古本にのめり込むあまり、新刊や重版の情報には極端に弱くなっていたのであった。
「くくく、見事な攻撃だこと。それなら、この古本攻撃には耐えられるかしら?」
と言いつつ身構える女主人。

「!」
危険を感じた茜はとっさに三尺飛びすさるや、懐から何本もの蒲焼き用の竹串をつかみ出した。
幼いころから鰻屋の父親に徹底的にしごかれ、
血を吐く思いで修得した必殺技「竹串胡蝶乱舞(望郷編)」は、
はたしてこの女主人に歯が立つのだろうか。
もしや、もっと手強い相手なのか。
さらなる秘奥義、「腕まくり竹串」「チビ助竹串」「竹串はお医者さま」まで出さないと
勝てないのだろうか。

負けたらむりやり土俵に上げられてしまうかもしれない……
茜の眼にふと不安がよぎった。
(続く)

え〜と、コメントは特にありません(^^;
お粗末さまでした。

「恋はハッケヨイ!」って、字幕を観るとしらけそうだな(−−)
[2001年5月23日 18時51分14秒]

お名前: 宮澤@探偵小説頁    URL
こんなの見つけました。
http://news.lycos.co.jp/search/story.html?from=jp&query=%8F%97%91%8A%96o&q=23sankeient001

http://www.gaga.ne.jp/hakkeyoi/

今朝のニュースで見て唖然。
[2001年5月23日 15時2分22秒]

お名前: おげまる   
どうなるんだろうな、このスレッド……

(承前)
甲高い悲鳴は、腹話術師が右腕に抱く人形の口から発せられた。
見よ、塩をかぶった人形の表面はどろどろと溶け崩れ、縮んでいくではないか。
巨大ななめくじは腹話術師の腕をすり抜けて床に落ちると、光る粘液の帯を残しながら会場の
人ごみに消えていった。
呆然と立ちすくむ茜の背後から
「さすがだわね。一目で雨夜陣五郎の本体を見破るとは」
女主人の声がかかった。
「どうあっても、あなたにはこの試合に出てもらいましょう」
「でもあたしい、「都会の怪獣」とかー、「世界探偵文芸叢書」?みたいなー、そんなの欲し
くないんですよお」
尻込みする茜に、女主人はうなずいて、一山の文庫本を取り出して見せる。
茜は息を呑んだ。
それは、ハヤカワミステリ文庫の、ディクスン・カーの品切本であった。
(続く)

……ほんとに、どうなるんだろ。
[2001年5月23日 6時2分46秒]

お名前: 関 英樹   
(承前)
と差し出された物は、ヒカリトカゲ製の皮のまわしであった。
「さあ、これを着けるのよ。着けてお前も土俵にあがるのよ」
せまる女主人の胸に輝くメンバーの証、古本屋の鑑札は神々しい光りを放ち、中央競馬会馬主
ピンに魅せられる神野桜子の如くに次第にその目が潤むのであった。
「ほほお、これはこれは。飛び入りですかな」
女主人の背後から、何時の間にか人形を抱えた紳士が近づいてきた。
「ボク、コノオネエサン、キライ!」
と、その人形の口から甲高い声が。腹話術師!茜はその場に硬直したまま、人形から目が
離せない。ああ、これはアテネの執政官。
「さあ、お嬢さん。このまわしを早く」
「ナニシテルンダヨ!」
迫る紳士に、茜は咄嗟に土俵下にあった塩の入った笊を掴み、二人めがけて夢中で塩をまくの
であった。
「鬼は外!腹話術!」
(つづく)
[2001年5月23日 2時37分19秒]

お名前: 川口@白梅軒   
なるほど、リレー小説なんですね?
これから楽しみに読ませていただきます。
[2001年5月23日 1時24分32秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
ほんとに立ち上げてしまいましたが、ネタどうしましょう。
「私が女王だけど、なにか質問ある?」コーナーにするとか(笑)。
スレッド希望した方は、来て下さいね。

古本女子高生物を妄想してみると。

下町のうなぎ屋の娘、茜は、古本に夢中。目録注文は、ピンクの便せん
。バレンタインチョコの付届けもかかさないから、古本屋殺しの異名
をとる。一足早く出物を押さえるためブックオフのバイトに励んでい
た茜は、奇妙な客に出逢う。棚の前で「血風」とか「ダブリー」とか
呟いている男に、ただならぬ「古本力」を感じた彼女は、男に導かれる
ままに新宿の古びたビルの地下へ。そこは、市場に出ない珍本を争奪し
て開催される極秘の古本女相撲の会場だった。試合を観戦できるのは
古本屋の鑑札をもつ貴族だけ。熱気で溢れ帰る会場の扉の影からは、
水ギセルをくわえた女主人が、登場。
「おほほほ。あなた古本のためならどんなことでもするといったわね。
さあこれをお付けなさい。さあ」哀れ、茜の運命は。

お粗末さまでした。全然、園尾義人風ではない。
[2001年5月23日 1時11分58秒]

お名前: 石井春生   
ああ、この恐ろしいスレッドがホントに立ち上がろうとは。しかし、
書き込む人がいるのでしょうか。とりあえず、私は希望した手前、
参りましたが、でもネタが……

ちなみに、せっかくなので、ここで書き込みますが、成田さんや関さんの
おかげで、私の中のおげまるさんのイメージは膨らむ一方です。
私の予想では、おげまるさんのホントの仕事は、道立図書館の警備員。
警備の合間を縫って書庫に潜り込み、夜な夜な調べ物をしていると
みました。果たして、この予想当たっているかしら? 
ちなみに、お仕事中は片眼鏡のステッキをついた小粋な紳士風(マント付き)
だと、なお嬉しいな(^o^)>おげまるさん
[2001年5月22日 19時55分11秒]

お名前: ストラングル・成田    URL
さあ、それでは参りましょうか。
[2001年5月22日 8時13分6秒]

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