記事タイトル:来訪者と真夜中の檻 


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お名前: ストラングル・成田    URL
金光 さま

 送本がすっかり遅くなってしまいまして、すみませんでした。
 『来訪者』、汚れた本ですが、なかなか趣がありましょう。古本屋検索で、
簡単にひっかかる本なので、古書的な価値はないと思いますが、平井翁関係
の蔵書に加えてくださいませ。

 拙文については、平井翁にも、荷風にもまったくの門外漢が書いたものであり、
四回目の終わりの駄洒落が最大の眼目という一種の妄説ですので、ちょっと、
お気に障るかもしれないと心配しておりましたが、お目とおしいただき、その上、
御紹介まで戴き、感謝に堪えません。
 「真夜中の檻」に関しては、「オトラント城綺譚」との比較や、「東海道四谷
怪談」の影響など、いろいろとありそうなのですが、到底力及ぶところではあり
ませんでした。平井呈一の愛した怪奇小説の系譜を踏まえた本格的な「真夜中の
檻」「エイプリル・フール」論が欲しいところです。書き手が金光さんなら、なお、
最高なのですが。
 
 秋庭太郎『荷風外伝』には、平井氏との会見内容のことは、ほとんど記して
おらず、「荷風は色の聖 (ひじり) でした」という印象的な一節が出てくるだ
けですね。荷風のことは、よく知らず、まともに小説を読んだのも今回が初め
てでしたが、色好みや散歩も、「取材」といった側面も強く、自らの日記が
後生に残る文学作品として確信していたようなところからも、生きながら文学
に葬られ、という言葉が浮かびました。荒俣宏の序文に出てくる平井翁は、ち
ょっと荷風を彷彿させますね。
 
 平井呈一関係資料の博捜は、本当にご苦労さまです。書誌づくりは、一種の
地獄とも聞きますので、地獄で仏に出逢いますよう、お祈りしています。
[2001年5月27日 22時36分38秒]

お名前: 金光寛峯   
ストラングル・成田さん

個人的な事情でお返事が遅れてしまい、本当に申し訳ございません。
荷風『来訪者』札幌版、ありがたく頂戴致しました。ちゃんとカバーも
付いており、手漉き紙も挟んである造本は戦後まもない頃の本とは思え
ないしっかりしたもので、なるほどこれが世に言う「札幌本」なのかと
実物を手に実感させていただきました。
「来訪者」は文庫で読んでおりましたが、原本もまた趣があります。

「What New」欄 2001年 5月 4日〜13日寄稿の「荷風−平井呈一論」も
拝読させていただきました。
図書館通ったり古書市に顔出したりして、地を這うような調べ物して
目録作るばかりが能ではないだろう? もっと作品を読み込んで、自分
でもこうした考察をものしなければならないだろ、そう背中をどやさ
れているような気すら覚えました。

いえ、もちろんとても興味ぶかく読みました、きっちり順序を踏んで
組み立てられた論考で、だからこそ "敬愛する老作家の知遇を得て、歓喜
と陶酔に包まれ、後には幻滅と諦念に変じていく平井" (13日) という
言葉にも説得力があり、吐胸を付かれるのですね。
秋庭太郎『荷風外伝』に書かれている秋庭と平井の会見で、しみじみと
平井が述解した言葉「荷風は色の聖 (ひじり) でした」も、いっそう印象
ぶかくなります。
[2001年5月27日 1時6分17秒]

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