金光 さま
送本がすっかり遅くなってしまいまして、すみませんでした。
『来訪者』、汚れた本ですが、なかなか趣がありましょう。古本屋検索で、
簡単にひっかかる本なので、古書的な価値はないと思いますが、平井翁関係
の蔵書に加えてくださいませ。
拙文については、平井翁にも、荷風にもまったくの門外漢が書いたものであり、
四回目の終わりの駄洒落が最大の眼目という一種の妄説ですので、ちょっと、
お気に障るかもしれないと心配しておりましたが、お目とおしいただき、その上、
御紹介まで戴き、感謝に堪えません。
「真夜中の檻」に関しては、「オトラント城綺譚」との比較や、「東海道四谷
怪談」の影響など、いろいろとありそうなのですが、到底力及ぶところではあり
ませんでした。平井呈一の愛した怪奇小説の系譜を踏まえた本格的な「真夜中の
檻」「エイプリル・フール」論が欲しいところです。書き手が金光さんなら、なお、
最高なのですが。
秋庭太郎『荷風外伝』には、平井氏との会見内容のことは、ほとんど記して
おらず、「荷風は色の聖 (ひじり) でした」という印象的な一節が出てくるだ
けですね。荷風のことは、よく知らず、まともに小説を読んだのも今回が初め
てでしたが、色好みや散歩も、「取材」といった側面も強く、自らの日記が
後生に残る文学作品として確信していたようなところからも、生きながら文学
に葬られ、という言葉が浮かびました。荒俣宏の序文に出てくる平井翁は、ち
ょっと荷風を彷彿させますね。
平井呈一関係資料の博捜は、本当にご苦労さまです。書誌づくりは、一種の
地獄とも聞きますので、地獄で仏に出逢いますよう、お祈りしています。
[2001年5月27日 22時36分38秒]