2004.12.31
ver.0.4

風太郎の少年物


 山田風太郎の少年物について、現在、ページ制作者が知り得た範囲でまとめてみました。作品の多くは未見であり、掲載されている情報のはとんどは、「猟奇の鉄人BBS(啓示果つる処」及び「小林文庫ゲストブック」における書込みから頂戴したものです。昭和20〜30年代に山田風太郎が、一般向けと並行して、「少年」「少年クラブ」「太陽少年」「探偵王」「中学時代二年生」「四年の学習」といった少年誌・学習誌に少なくない数の作品を寄せていた事実は、ファンの心を大いに刺激するものがあります。まだ不明な点が多い少年物の全貌が明らかになり、刊行される日が来るのを期待したいと思います。
 多くの情報をいただいた両掲示板、日下三蔵氏をはじめとする掲示板寄稿者の方に深く感謝いたします。(引用箇所は、最後にまとめてあります)
 本稿の誤り、新しい情報など御教示いただければ幸いです。
(2002.3.23リストを追加しました)
(200.3.3.4リストを追加しました)
(2004.12.314リストを追加・修正しました)

■少年物リスト
 *安達さんの調査にほぼ全面的に依拠した原型リストにその後の追加情報を加えたものです)
○軟骨人間 「科学の友」昭和25年1月号 ☆荊木歓喜物
○古墳怪盗團 「科学の友」昭和25年2月号 ☆荊木歓喜物
○空を飛ぶ悪魔 「科学の友」昭和25年3月号 ☆荊木歓喜物
○虹の短剣 「科学の友」昭和25年4月号? ☆荊木歓喜物?
○黄金密使 「少年少女譚海」昭和25年9月号〜11月号
 →○怪盗魔猿団 「探偵王」昭和28年11月号〜12月号(改稿あるか不明)
○神変不知火城 「少年少女譚海」昭和26年1月号〜5月号 ☆中絶 ☆時代小説
*姿なき蝋人 「譚海文庫」昭和26年第5号 傑作選9
*魔の短剣 「少女サロン」昭和26年7月号 傑作選9
*水葬館の魔術 「探偵王」昭和26年8月号 傑作選9
*秘宝の墓場 「少年少女譚海」昭和26年12月号 傑作選9
○天使の復讐 「六年の学習」昭和27年3月号
*ぽっくりを買う話 「小学生朝日」昭和27年3月23号 傑作選8
*魔船の冒険 「少年」昭和27年9月号 傑作選9
*なぞの占い師 「少年」昭和28年1月号 傑作選9
*夜の皇太子 [第一回] 「探偵王」昭和28年2月号 コレクション3
  ☆連作長編(「探偵王」昭和28.2、3、8〜12)の第一回を担当
○緑の髑髏紳士「少年少女漫画と読物」昭和28年1月号〜3月号
○夜光珠の怪盗 「太陽少年」昭和28年1月号〜7月号?
*摩天楼の少年探偵 「少年」昭和28年7月号 傑作選9
*エベレストの怪人 「読みものとまん画」昭和28年7月夏休み号
○さばくのひみつ 「小学生朝日新聞」昭和28年7月25日、8月2日、8月9日、8月16日、8月23日、8月30日
*肉仮面 「探偵王」昭和29年1月号〜2月号 ☆中絶 傑作選10
*びっこの七面鳥 「野球少年」昭和29年12月号 傑作選8
○毒虫党御用心 「中学生の友」昭和31年5月号 ☆懸賞クイズ
*青雲寮の秘密 「おもしろブック」昭和31年8月号〜11月号 傑作選9、傑作選10
*あら海の少年 「四年の学習」昭和31年12月号 傑作選8
*笑う肉仮面 「野球少年」昭和31年11月号〜32年9月号 東光版 傑作選9
*黄金明王のひみつ 「中学時代一年生」昭和32年1月号〜3月号 傑作選9
*冬眠人間 「中学時代二年生」昭和32年4月号〜6月号 傑作選9
*暗黒迷宮党 「中学時代二年生」昭和32年7月号〜11月号 傑作選9
*魔人平家ガニ 「おもしろブック」昭和32年夏休み漫画読物号 傑作選9
*なぞの黒かげ 「四年の学習」昭和32年10月号〜33年3月号、東光版 傑作選9
           「五年の学習」昭和33年4月号〜6月号   
*とびらをあけるな 「なかよし」昭和33年1月号〜12月号 傑作選8
*冬眠人間 「少年クラブ」昭和34年1月号〜12月号 傑作選9
○地雷火童子 「少年クラブ」昭和35年1月号〜12月号 ☆時代小説  

(注記)
 東光版:『笑う肉仮面』(少年少女最新探偵長編小説集10)(昭和33.12/東光出版社)
 傑作選8:『怪談部屋』(山田風太郎ミステリー傑作選8)(平成14.5/光文社文庫)
 傑作選9:『笑う肉仮面』(山田風太郎ミステリー傑作選9)(平成14.1/光文社文庫)
 傑作選10:『達磨峠の事件』(山田風太郎ミステリー傑作選9)(平成14.3/光文社文庫)
 コレクション3:『十三の階段』(山田風太郎コレクション3)(平成15.2/出版芸術社)
 (「信濃の宿」(「高校時代」昭和29年10月号〜12月号)、「書庫の無頼漢」(「高校時代」昭和32年1月号〜3月号作品リストに掲載)




■ver.01当時の覚え書き■(その後の収録等の状況を→で追記)

昭和27年
○魔船の冒険 少年9

 「少年」は、光文社の少年雑誌。 『「少年」傑作選 小説絵物語編』(光文社文庫以下『「少年」傑作選』と略記)の巻末リストに掲載されています。
 →傑作選9に収録

昭和28年
○夜の皇太子第1回  探偵王2

 小林文庫ゲストブックにおける小林文庫オーナーの書込みで、作品の存在を知ることができました。以下引用します。
 「関西探偵作家クラブ会報」第59号(昭和28年3月1日発行)の編集後記部分に、次のような記述が有りました。
 鬼同人のリレー少年探偵小説「夜の皇太子」が探偵王の新企画として二月号より開始。第1回は山田風太郎、以下武田武彦、香住春吾、山村正夫、香山滋、大河内常平、三橋一夫、島田一男、岡田鯱彦、島久平、角田実、高木彬光氏の順です。 「探偵王」と言う雑誌自体初耳でしたが、この作家のラインアップでリレー小説が書かれているとしたら、物凄く魅力的です。」

 「猟奇の鉄人掲示板」における日下三蔵氏の書込みによれば、「夜の皇太子」の高木彬光担当の回(最終回)が載っている「探偵王」昭和28年12月号を所持されているとのことであり、山田風太郎執筆の「夜の皇太子 第1回」も存在するものと推測されます。なお、高木彬光の回に神津恭介は登場しない由。

 →コレクション3に収録 

○夜光珠の怪盗 太陽少年6
 「太陽少年」は、昭和25年創刊(太陽少年社刊)。草森紳一「少年よ、少年よ−「戦後」の少年雑誌文化について」(「別冊太陽・子供の昭和史(昭和20年〜35年)」(昭和62年1月発行)掲載)からの情報。「風太郎は、『夜光珠の怪盗』という探偵小説を書いていて、ためしに読んで見ると、三万匹の蛍を放つ夜光舞踏会などが出てきてやはりだし惜しみしない奇想があって面白い・・」とあります。
 →傑作選8の解説によれば、「太陽少年」昭和28年1月号〜7月号?のようです。

○摩天楼の少年探偵 少年7
 『「少年」傑作選』の巻末リストに掲載。
 →傑作選9に収録

○怪盗魔猿団 探偵王12?
 「猟奇の鉄人掲示板」における日下三蔵氏の書込みによれば、「探偵王」12月号の目次に掲載されているが、連載か読切か不明とのこと。掲載号が乱丁で、風太郎作品のあるべき所に、「夜の皇太子」の最終回が、もう一回載っている!!とのことです。本当の幻の作品かもしれません。

昭和29年
○「なぞの占い師」 少年1
 『「少年」傑作選』(光文社文庫)に収録されています。不可思議な未来予知を素材にしたよく出来たミステリ。アイデアの一部が「なぞの黒かげ」で使用されています。
 →傑作選9に収録

昭和32年

○冬眠人間 中学時代二年生4−6
○暗黒迷宮党 中学時代二年生7−9
 両作品とも鮎川哲也の少年物短編集『悪魔博士』(光文社文庫)巻末のリスト(山前譲氏作成)に掲載。大人向けの「冬眠人間」(『怪談部屋』(出版芸術社)所収/初出「講談倶楽部」昭和30年3月号掲載)とは、当然別ヴァージョンと思われます。
  →傑作選9に収録

○なぞの黒かげ 四年の学習 10〜昭和32.3?
 これは、後出の『笑う肉仮面』収録作品。初出情報は、松橋さんからいただきました。昭和33年『四年の学習 正月特大号』を松橋さんは所有されていて、これが連載4回目ということなので、前後を推定したということです。
 機密書類をめぐって怪人「なぞの黒かげ」と賢い姉弟の秘術を尽くした攻防が見られる快作。列車からの人間消失、巨大クモの出現、誘拐と機密書類の受渡しをめぐる秘術を尽くした攻防、未来予知、意外な犯人など、アイデア、トリックがてんこ盛りです。
  →傑作選9に収録
 

昭和33年
○笑う肉仮面 東方出版社『笑う肉仮面』収録
 唯一の少年物単行本『笑う肉仮面』(東光出版社/昭和33年12月刊)に収録された中編。初出は不明です。同書には、「なぞの黒かげ」も併載。

国会図書館の検索書誌情報
笑う肉仮面 / 山田風太郎‖著 ; 太賀正‖絵 * ワラウ ニクカメン
出版事項: 東京 : 東光出版社, 昭和33 形態事項: 256p ; 19cm

 同書は、江戸川乱歩監修・少年少女・読物「新選探偵小説集」一冊で、他に香山滋「秘島X13号」、楠田匡介『都会の怪獣』、岡田鯱彦『黒い太陽の秘密』などが出ているようです。
 同書 の書影は、「別冊太陽 古書遊覧」(平成10年7月発行)で、見ることができます。そのコメント(山前譲氏)に「山田風太郎の復刊ブームはもの凄い勢いで、単行本未収録短編なども復刊されているけれども、この少年物はまだ(永久に?)復刊されないようである。山田風太郎コレクターならどうしても入手したい1冊だろう。」とあります。
 金持ちの家に生まれながら、顔が常に笑っている状態に手術され、孤島に捨てられた笑太郎(弓太郎)が手品使いの宇宙斎に拾われ、7年後に生まれた村に帰ってきます。資産を乗っ取った伯父達は、笑太郎を始末しようとしますが・・。後半ややスケールが小さくなるような気がしますが、設定や人物造型、文章の香気に後年の大伝奇小説の片鱗をみることができます。

  →傑作選9に収録


昭和34年
「冬眠人間」 少年クラブ1〜10
 「別冊太陽・子供の昭和史(昭和20年〜35年)」(昭和62年1月発行)の43pに書影が乗っています。(この情報は、「猟奇の鉄人掲示板」における喜国雅彦氏提供情報)扉絵には、真ん中に横たわる冬眠人間。マッド・サイエンティストらしい医者、何かに怯える幼い兄妹が配される。惹句を引用。
 「さあ、よもう。いよいよはじまった怪奇探偵小説!これこそ山田先生の力作、そして全国の少年が熱狂する大傑作だ!」ああ、読みたい。
 それにしても、「冬眠人間」は何作あるのか。
 「猟奇の鉄人掲示板」における、おげまるさんの提供情報によれば、尾崎秀樹の『思い出の少年倶楽部時代』(講談社)という本に、『「少年倶楽部」主要作品年表』の項目があり、この作品が載っており、「別冊太陽」掲載の表紙は、この第1回目とのことです。
 ちなみに、IIN・POCKET平成11年11月号「山田風太郎総力特集」掲載の磯田和一「本と闘う人々 書斎曼陀羅VOL10」が山田風太郎の回で、「山田氏がお若いころ、書いておられた「少年倶楽部」の復刻版」というコメント付きで、「少年倶楽部」の書影が載っています。戦後の表記「少年クラブ」ではなく、「少年倶楽部」となっているので、「書いておられた」というのは誤記だとは思うのですが・・。

  →傑作選9に収録

昭和35年
○地雷火童子 少年クラブ1〜12
 これも、おげまるさんの情報。『思い出の少年倶楽部時代』(講談社)に、『「少年倶楽部」主要作品年表』として掲載されているとのことです。「いだてん百里」の中の一編とタイトルが似ていますが・・
果たして。

  →「いだてん百里」を原型とした時代小説

(参考にさせていただいたした掲示板過去ログ)
●小林文庫ゲストブック
No.798 (1999/10/22 20:13)小林文庫オーナー
 ・「夜の皇太子」情報
●「猟奇の鉄人BBS」(啓示果つる処)
1999年11月 03日 15時 01分 15秒日下三蔵さんhttp://www.ann.hi-ho.ne.jp/kashiba/bbs/list16.shtml
 ・「悪魔博士」巻末解説情報
 ・「夜の皇太子」最終回情報
 ・「怪盗魔猿伝」
1999年 11月 04日 10時 25分 07秒喜国雅彦 さん
 ・少年クラブ版「冬眠人間」情報
1999年 11月 05日 22時 15分 33秒おげまる さん
 ・少年クラブ版「冬眠人間」情報
 ・「地雷火童子」情報
 ・「夜光珠の怪盗」情報

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