Kodak Retina Vc

 

 コダックというとアメリカのカメラかと思うかもしれないが、れっきとしたド
イツ製カメラである。元々コダックのパトローネ入り35mmフィルムを普及さ
せるためにドイツの小さなカメラメーカーに作らせたカメラであるため、現代の
フィルムを使用するに当たり全く問題のないカメラなのである。むしろ、こんな
昔から(実は戦前)35mmフィルムというのは完成していたということに感心
させられる。
 さて、このカメラはレチナシリーズの終わりの方で、完成型ともいえる。前蓋
に連動してレンズが飛び出てくるいわゆるスプリングカメラと呼ばれる種類で、
距離計を装備し、露出計まで内蔵している。おまけにレンズ交換までできる。た
だし、レンズを交換した場合操作面でかなりの制約が出るみたいだが、交換でき
ること事態レンズシャッター機としては画期的である。
 わたしは、かなり前からレチナについては気になっており欲しいクラカメのト
ップレベルにあった。コンパクトな形状とふたを閉めたときのおとなしさと、開
けたときのメカっぽさのアンバランスがとってもいい。しかも搭載されているレ
ンズの写りには多くのファンを魅了するほどすばらしいらしい。しかし、一番欲
しい3型は結構高い。といってもライカなんかに比べると遙かに安く、クラカメ
入門には最適なんて記事もよく見る。さらに古いカメラの例にもれずこのカメラ
も使用上においていろいろな作法が存在する。そこがちょっと引っかかっていた
のだが、今回買ってみてよく判りました。使用上の作法は、守らないと壊れると
いうのは当たり前だが、それはその通りしないと、作動しないようなフールプル
ーフ機構になっているのである。
 ファインダーがちょっと汚れているのを除けば、パーフェクトと言っていいく
らいきれいな状態でメカの作動も完璧である。これを購入した香港のカメラ修理
屋はかなり腕がいいようだ。どうりでお店が修理を依頼する人たちで混んでいた
わけだ。汚れていたファインダーは、最初バルサムのはがれか、曇りだろうと思
っていたのだけれど、日本に帰ってきてばらし、綿棒で拭いてみたら以外と簡単
に取れてしまった。おかげでファインダーもクリアになり気持ちよくなった。こ
れでHK$2,000(日本円で32000円)なら文句無い文句無い。いや、
とっても得した感じである。
 どうせだからということで、ロンドン旅行中に試し撮りをしてしまえと思い、
手持ちのフィルムを詰めて撮ってみました。コダックのカメラだからフィルムも
コダックを使いたいところだが、あいにくアグファしか手持ちがない。近所のス
ーパーで買ってもいいのだけど、ドイツのカメラだから、むしろアグファの方が
合うだろうと、気にせずアグファのフィルムを詰め込んだ。フィルム感度ダイヤ
ルを設定するときに気がついたが、DIN表示とASA表示が今と異なるのであ
る。ASA400というとDIN27°のはずなのにDIN27°にあわせると
ASA320になるのだ。そして、これ以上高感度の目盛りがないためASA
400にセットできないのである。当然ながらDIN21°のとき、ASAは
100になるはずが80である。表示自体はダイヤルに印刷されているためずれ
るはずがない。当時と今では規格が変わったのだろうか?まあ、どっちにしても
1/3段のズレだし、オーバー目になるならネガ中心で考えると全く問題のない
レベルである。むしろセレンのメーター精度の方が誤差が大きいだろう。
 ロンドンでの試し撮りの結果は良好で、シャープさや発色の良さがとても半世
紀前のものとは思えないくらいすばらしい。噂にたがわぬ写りに思わずにんまり
してしまう。アグファとの相性もバッチリみたい。とってもとってもお気に入り
のカメラがまた増えてしまった。

 

カメラ:Kodak Retina Vc
レンズ:Shuneider Retina Xenon 50mm F2.0
シャッター:SYNCRO COMPER 1〜1/500秒 B
絞り:F2〜16
ピント合わせ:距離計連動
露出計:セレン式メーター、EV値読み取り方式

2003年8月購入

 

作例
まだ眠いよ〜
50mm/F2 F5.6 1/250 AGFA VISTA 100
もう春ですねえ
50mm/F2 F8 1/250 AGFA VISTA 100