Voigtlander VITOMATIC U

 

 初めて購入した舶来カメラを今回は紹介いたします。
 舶来と言っても私が買えるレベルなので、中古でしかないのだが、それでもカ
メラの本場ドイツ製であるから、バチモンの宝庫ロシア製に比べると格段に嬉し
さの度合いが違うのである。
 ただし、本場ドイツと言っても超有名なL社やZ社ではなく、V社の製品であ
る。近頃日本製V社ブランドのカメラが世間を賑わせているが、そちらではなく
本家の西ドイツで作られていた頃の製品(本家の会社は、T社に吸収され、名前
のみが生き延びている状態)だから、すでに四十数年経っていることになる。
 しかし、西ドイツという言葉すらすでに懐かしくなっている昨今、ドイツが東
西に分かれたのが何年か憶えている人がいるだろうか、また、ベルリンの壁が出
来たのは何年で、崩壊したのが何年かあなたは憶えていますか?(答えは最後に)
 しかし当のカメラは、そんな歴史を微塵も感じさせないほど綺麗な状態である。
そのカメラとは、フォクトレンダーのヴィトマチックU(写真)という。
1958年頃に製造されたものらしい。
 クラシックなデザインでありながら、フィルムの巻き上げはレバーであったり、
露出計を内蔵しており、それがシャッターや絞りリングに連動していたり、フィ
ルムの装填も裏蓋式という風に、現代でも十分実用に足る機能を有しているので
ある。レンズも、写りに定評のあるカラースコパー50mm/2.8が付いてい
る。ファインダーは距離計連動タイプで、安いモデルは目測式が多いV社の中で
は、非常に使いやすいモデルではないだろうか。
 雑誌で見た限りでは、それほどピンとこなくて、V社で買うならこれくらいか
な〜なんて程度に思っていたのだけれど、現物を見たら思ったより小さい!隣に
展示してあるヴィトーC?(同じレンズを搭載した目測機)より明らかに小さい
のである。ここで、心は完全に「買ってもいいな〜」から「欲しい!」に変化し
てしまった。それに値段もすごく安い。
 ということで、店員にお願いして見せて貰ったのだけれど、ここで問題が・・
ピントリングを回してもファインダー中央部の像が動かないのである。距離計連
動機であるからピントリングの動きに合わせて中央の二重像がズレたり、重なっ
たりするはずなのに、動かないのである。つまり、距離計は壊れているようだ。
よく見ると、距離計窓の中にミラーが見えない。それで安かったのかと納得。
 この時点で急に欲しいという願望はすぼまってしまったけれど、ヴィトマチッ
ク自体への欲しいという願望はそのまま残り、欲求不満のまま店を後にしたので
ある。
 そうなると、居ても立ってもいられないのが、私の欠点。Webでウインドウ
ズ・ショッピング(ウインドウショッピングではないが似たようなもの)。そこ
でついに見つけてしまった。それもかなりの美品の様。次の瞬間にはマウスが勝
手に注文ボタンをクリックしていた。不思議だ←どこが?
 待つこと数日、あっという間に現物が届いてしまった。
最初に書いたとおりの美品で、機能も全く問題なし。テスト撮影の結果も上々。
ちょっと気になるレンズ周りのデザインは、本体のサイズの割に大きめで、バベ
ルの塔の様。決してかっこいいとは言えないが、使ってみると実に使いやすいデ
ザインなのである。
 いいことばかりでもなくて、テスト撮影中にトラブルが発生。「ピン!」とい
う音と共に、距離計が動かなくなってしまった。これには、ちょっとショックで
あった。もちろん初期トラブルということで、返品もきくだろうが、こんな美品
は二度と手に入らないかもしれない。ばらせば直せそうな感じがするが、返品は
できなくなるぞ。という心の中での悪魔と天使の駆け引きがしばらくあった後、
駄目でも目測機として使えると言う結論に達し、トップカバーを開けてみること
に・・・
 分解は、以外と簡単に出来(ネジ3本だけだった)、故障個所も予想通り、ミ
ラーをカムに押し当てるバネがはずれただけだったようだ。前ユーザーがオーバ
ーホールに出したときに、スプリングを掛け間違えていたのではないだろうか。
 無事に修復を終え、元の状態に復活! 開けてみて分かったのは、内部の状態
もすごく綺麗だったということ。これならもう半世紀は使えそうだな。
 実は、舶来高級カメラは、40歳過ぎるまでは手を出さないぞ。という誓いを
心の中で立てていたのだけれど、いざ手にしてみるとそのすばらしさに圧倒され
てしまった。同時代の国産機の安っぽい作りとは格が違うのである。もっとも比
較している国産機が中級以下のモデルだから当たり前かもしれないけれど。フォ
クトレンダーだってドイツじゃ高級機というイメージは無いはず。
 ただし、国産機は安っぽさはあるものの、決して写りに関しては負けていない
と思っている。カメラ先進国であるドイツに追いつけ追い越せと必死になってい
る時代が偲ばれて、これはこれでまた別の良さがあるから好きなんだよなあ。
 ついに禁を犯してしまったけれど金額的に高級じゃないからよしとしよう。む
しろ怖いのは、他のドイツ製カメラへの欲しい欲しい病が出ることである。

作例
 
ふと見つけた風車

            小泉かかし?

歴史のお勉強の答え
 第二次世界大戦終了    1945年
 東西ドイツ分断      1949年
 ベルリンの壁が出来たのは 1961年
 ベルリンの壁が崩壊したのは1989年
 東西ドイツ統合は     1990年

 ちなみに、Voigtlander社がZEISS IKON社に吸収されたのは1969年。
 第二次世界大戦が終わったのは1945年これは知っているか。でも東西分断
および、壁ができたのが終戦直後ではないというのは、以外だった人がたくさん
いるのでは?