DUMKA

Farewell to Pluto (2006.08.31)

2006.08.31(木)

 2006年8月24日(日本時間)、チェコのプラハで開催されていた国際天文学連合(IAU)の総会で太陽系の惑星についての定義が決まり、冥王星は1930年の発見以来保ってきた「太陽系第九惑星」の地位を失いました。

 IAUの決定による太陽系惑星の定義は、「1. 太陽の周りを回っている」「2. 十分に大きいため自らの重力によりほぼ球状を保っている」「3. 軌道周辺では衛星を除き他の天体を排除している」の3項目から成っています。冥王星はこのうち3番目を満たさず、かつ衛星でもない「dwarf planet (矮惑星)」に分類され、太陽系の惑星は「水金地火木土天海」の8個となったわけです。

 もちろん、惑星ではなくなったといっても、太陽系から放り出されたり、砕け散ったりしたわけではありません。しかし、冥王星は「宇宙戦艦ヤマト」や「セーラームーン」などアニメで馴染み深かったためか、世間一般には感傷的に受け止められていますね。検索サイトで探せば今回の決定を残念がるブログが幾つでも見付かり、「2ちゃんねる」にも冥王星を追悼(?)するスレッドが沢山現れました。

 意外なところでは、有名なクラシック音楽のひとつであるホルストの組曲「惑星」がオリコンのトップ100に入り、クラシック音楽としては異例のヒットを飛ばしています。1916年作曲の「惑星」には当時未発見だった冥王星の楽章は当然ありませんが、近年、コリン・マシューズ作曲による「冥王星」が付け加えられ、折良く発売されたサイモン・ラトル指揮、ベルリン・フィル演奏による新盤が注目を集めたようです。

 プラネタリウムをはじめ天文学習の現場では、決定を受けて展示や解説を変更する必要が生じました。天文ファンの受け止め方は様々ですが、長年の議論に終止符が打たれ、観望会などで惑星の説明がしやすくなったのは確かでしょう。

 今年1月には、NASAの冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ (New Horizons)」が発見者トンボーの遺灰を載せて打ち上げられました。誰も見たことのない素顔が2015年7月頃には拝めそうで、遥かに遠い私たちの仲間・冥王星への関心が高まるのはむしろこれからです。

※「farewell」は「良き旅を」の意。転じて、長いお別れの言葉となった。

サハロフ(佐藤純一)