堀内 健 (ネプチューン)

 天然の天才 〜ホリケン語〜

 笑いにはいろいろな種類があると思います。ボケとツッコミで成り立つコンビやトリオ。もちろん落語家のように1人で全てをこなす形態もあります。その中で、僕が一番好きなのは“天然ボケ”です。ホリケンことネプチューンの堀内健は、他の誰も真似できない独自の笑いを持っています。30歳をすぎた人が、まるで中学生のいたずら坊主のような子供らしさ、伸び伸びさを今もずっと発揮しているのは、まさにスゴイのひとことです。

 ホリケンの面白さは、脈絡なし、共演者との計算的な絡みもなし、突発的ホリケンワールドにあるのだと思います。何より頭の回転が光速に勝るとも劣らないほど早いのです。ホリケンにフリが来ると、彼は一瞬の間もなくギャグを返します。しかも、全てオモシロイ。芸能界の先輩への物怖じもなく(それでいて嫌な後味は全く残りません)、他の人では誰もそこまで思いつかないような言葉を連発します。

 ホリケンによって、初めてこの世に生まれた言葉の何と多いことか……まさに「ホリケン語」の創始者です。おそらく、ホリケン語録を本にしたのなら、それを全て解読するには「ホリケン辞書」が必要でしょう。逆に、宇宙人がいるとして彼らにメッセージを送るとしたら、「ホリケン語」なら、日本語、英語という地球語の枠を超えて、案外簡単に通じてしまうかもしれません。

 ホリケンのギャグには、打ち合わせや、計算された前フリは一切必要ありません。というか、それは無意味なのです。もっといえば不可能なのです。どんな反応が返ってくるかは優秀な予言者をもってしても全くわかりません。それこそが、ホリケンの面白さの一番の要因なのでしょう。

 そういってしまうと、まるで努力なしで笑いをとっているように見えますが、実はホリケンは努力家で研究家なんだと思います。日常生活のどんな場面でも、情報のアンテナを広げ、ネタになるような題材をメモしたり、頭にインプットしたりしているに違いありません。一見、天然ボケのように見えますが、それだけで生きていけるほど芸能界は甘くないはずです。

 そしてもう1つ尊敬できるのは、人に対する嫌味がないところです。面白ければ、どんな題材もネタにするという姿勢ではなく、人を傷つけることなく面白さを追求しているからこそ、人間としての魅力があるのだと思います。

 ドラえもん好きのホリケンは、今でも少年のように夢がいっぱいの人です。しかも本気で子供の頃の夢を持ちつづけているのです。そのことへの恥ずかしさなんて全くありません。なんて素敵なことだろうと思います。

 もちろん、ホリケンは1人で存在などしていません。自己紹介で「は〜ら〜だたいぞうです」が定番の原田泰造も面白さでは負けていません。ホリケンと共通するのは、笑いに嫌味がないところです。自分の中から笑いを作っているからこそ、それが可能なのだと思います。最近は、人の欠点や失敗を笑いにする若手芸人が増えています。そんな人たちと対極にいる、堀内健と原田泰造。この2人は、ネプチューンの前身フローレンスでコンビを組んでいました。
この2人の出逢いにも、ジョン・レノンとポール・マッカートニー、清原和博と桑田真澄の出逢いに通じる奇跡的な縁を感じます。

 笑いの女神が、どこかで微笑んでいる気がします。

ホリケンパンチ