ジョン レノン John Lennon

音楽の天才 〜聴こえるメッセージ〜

 天才といえば、雲の上に存在する人というイメージがあるかもしれませんが、ジョン・レノンは、天才の中でも身近に感じられる人物ではないでしょうか。

 音楽ファンなら知らない人はいないほど、Beatlesは有名です。
 1962〜1970年に活躍した、史上最高のロックバンド。まさにスーパースターの名をほしいままにしたのが“The Beatles”。
 もちろん彼らの根底にはロック魂があるのですが、実際にはBeatlesの音楽をロックという1つのジャンルだけで括ることはできません。世界で初めて、音楽のジャンルと国境と時代を同時に超えたグループがBeatlesだと説明すれば正しいでしょうか。

 Beatlesは、親しみやすいメロディライン、かっこよさ、鋭さ、若さ、スケールの大きさ、そしてユーモアまでかねそえた4人からなるバンドです。

 ジョン・レノン John Lennon (Vocal,Rhythm Guitar)
 ポール・マッカートニー Paul McCartney (Vocal,Bass
)
 ジョージ・ハリソン George Harrison (Read Guitar)
 リンゴ・スター Ringo Starr (Drums) 

 それぞれに個性があり、それでいて音楽的には完璧なまでに調和のとれたグループでした。そして、この世界最強バンドのリーダーこそが、ジョン・レノン、その人なのです。

 Beatlesといえば、才能の宝庫といえますが、特にそれを発揮していたのが、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの2人です。
 これは、あの甲子園史上最強のチーム、清原和博と桑田真澄のいたPL学園に譬えるしかないでしょう。清原、桑田は、それぞれが20年にひとりの逸材で、おまけに大舞台であるほど力を発揮できる選手でした。そんな人がチームに1人いれば、高校野球のレベルでは優勝をほぼ手中にしたも同じ(もちろんチームワークは絶対に必要ですが)。なにしろ清原、桑田は、その後、プロ野球の中でも超一流なのですから。
 そんなスーパーヒーローが、同じ野球を志し、同じ学年で、しかも同じチームのエースと4番になるなんて、こんな奇跡はないです。恐るべき確率が現実で起こったのです。甲子園全5回出場、優勝2回という数字も偶然ではなく必然として残ったに違いありません。清原は甲子園のホームラン記録をことごとく塗りかえ、桑田は甲子園歴代最多勝投手です。まさに向かうところ敵なしの状態です。

 これをロック界で、清原、桑田よりはるか前の時代に成し遂げていたのがBeatlesなのです。そう、Beatlesというチームにも、2人のスーパースターがいたのです。同じ時代、同じイギリスに、歳も近く、同じくロックを志した天才少年2人がいて、実際に出逢ったという奇跡です。さすが天才同士、一目逢った瞬間から、互いの才能が見え、互いに尊敬する心も持ち、友人、パートナーを超える存在へと広がっていったのです。
 才能といいましたが、2人の才能が全く違うものだったからこそ、それが合わさった時に、素晴らしいハーモニーが生まれたのだと思います。
 ポール・マッカートニーの才能は作曲能力に集約されているといえます。彼の放つメロディラインは、どの時代の誰が聴いても、純粋に「良いな」と思えるものばかりです。まさに普遍の名曲ぞろいといってよいでしょう。
 彼の作曲能力を譬えて、ある有名な指揮者が口にした言葉「史上最高の作曲家は、ベートーベンとポール・マッカートニーである」は決して大袈裟な表現ではありません。
 この言葉からは、もうひとつ深い意味が読み取れます。
 ロックやポップスとクラシックは別々の土俵では全くないのです。良い音楽なら、ジャンルや境界など関係ない。そんなことは本来当たり前のことですけれど、それに気づかないまま毎日をすごしていたりはしませんか? 音楽に限ったことではありません。内容で判断するのではなく、外見やビッグネームを鵜呑みにしてしまう自分というのが結構あちらこちらにいるものです。

 さて、本題です。ジョン・レノンの才能とは何なのでしょうか。

 音楽的にいえば、ジョン
には詞の才能があるといわれています。作詞能力です。もちろん、それは間違っていませんが、ジョンは詞だけではありません。作曲の方でも、ポールにはない独特の世界を持っていました。ポールの曲は誰が歌っても「良い曲」ですが、ジョンの曲は違います。ジョンの作る曲は、過去も未来もジョン・レノンだけしか発想し、創りえない曲ばかりなのです。
 ポールの曲が一般性を持っているとするなら、ジョンの曲は特異点です。ポール・マッカートニーが一般解なら、ジョン・レノンは特殊解。両極にある2つの答えが同居するBeatlesとは、とてつもなく凄いバンドだということがお解かりいただけると思います。

 ジョン・レノンの才能はさらに続きます。ポールの全才能が音楽だけに注がれていたのに対し、ジョンのそれは、絵にも注がれ、言葉にも注がれ(ヨーコ・オノを愛したように、日本という国、日本語も愛した人でした)、映画、そして文化へと注がれていったのです。

 ジョン・レノンは、ソロになってからの代表曲『Imagine』の中で、「The world will be as one」と歌っています。「世界はきっとひとつになるだろう」というメッセージです。彼は“歌は世界を救う”と信じていましたし、実際、救えると思います。言葉は違ってもメロディに国境はないし、歌に国境はありません。もし地球語が存在するとしたら、それは歌なのではないでしょうか。

 『Please Please Me』『Help!』』『We Can Work It Out』『In My Life』『Let It Be』『All You Need Is Love』……The Beatlesの数ある名曲は永遠に歌い継がれていきます。

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