夏目 漱石

 文学の天才 〜則天去私〜

 夏目漱石は、日本の文壇では最も有名かつ人気が高い作家ですが、それだけ人々に認められるのには、やはり、それなりの理由があります。
 漱石はいつも悩んでいました。
 その内容は千差万別でしたが、そこには一貫したテーマがありました。
 それは「人間はどう生きるか」です。
 人間は生きるに従って、自我が強くなり、エゴで固まっていきます。彼はその現実に悩み、逃れようとし、しかし答えは、なかなか彼の前に姿を現わしませんでした。

 時は、彼の晩年まで来ていました。彼は最後に「則天去私」という境地に到ったのです。
 「則天去私」とは、自我(私)を去って、天に全てを任せる……つまり“あるがままに、なすがままに”という境地です。

 これは、どこかで聴いた優しいメロディと一緒ではありませんか。
 そう、あのBEATLESの最高のバラード“LET IT BE”が、同じことを語りかけています。
 “LET IT BE”の直訳こそが“あるがままに、なすがままに”なのです。

 夏目漱石とBEATLESは時代も違えば、国も言葉も違います。しかし、天才どうし、超一流どうしは、全てを超えて同じことを感じていたのです。
 実は“LET IT BE”もBEATLESとして最後にたどり着いた曲なのです。

則天去私