誠愛剣友会



幹事 土屋 一徳先生よりの御教示


 

打ち込み十徳(千葉周作が確立した竹刀の打ち込み稽古法)

本来、打ち込み稽古は「撃ち込み稽古」と書き、現在の「切り返し」と「かかり稽古」と
考えれば「切り返し」の稽古による”十”の効能と言うことになります。

一.技烈しくなること


  「攻撃は最大の防御」と言うように「攻め」を大切とする剣道は相手の間合いに
  攻め込んだら、あとは相手を倒すまで(技が決まるまで)矢継ぎ早に技を出すこと。
  それには烈しい連続を切り返しの中で体得しておくことです。


二.打ち強くなること


  打突にはそれなりに強さを保ち、何べんも打ち込むことで身体を鍛え、打ちの強度を増します。


三.息合い長くすること


  吐く息を長く、吸う息を短くするのが剣道の呼吸法です。
  息を吸った時が居着いた状態でもあり、これが負けにつながるわけです。
  従って、息を吸う時間を短く、息を吐く時間を長くする鍛錬を積む必要があります。
  ”「切り返し」は一息で行え”と言われるのは、そうした呼吸法をマスターするため
  ですから、苦しくても頑張って下さい。


四.腕の働き自由になること


  昔は振り下ろす動作よりも振り上げる動作について厳しく指導されました。
  「大きく振りかぶれ」は基本中の基本。小さな動きばかりしていては大きな動きは
  できません。
  肩の関節を大きく使っていれば、小さな動きも出来る訳です。
  また、大きく振りかぶれば腰も入りやすく、また、肩もラクに使えるようになることで
  自然と胸が張り、正しい打ち方にも結びつきます。


五.身体軽く自在になること


  普段、打突の際は右手だけでなく身体にも無駄な力が入りがちです。
  しかし、精魂尽き果て極限の状態になっても、更に気力を振り絞れば
  往々にして無駄のないとても素直な技が出るものです。
  そうした状態を身体に覚えさせるためには、やはり数をかけることが大事です。
  昔の武専(武道専門学校)では、入学して一、二ヶ月は切り返しだけでまず悪癖を除き
  最初の二年間は打ち込み、切り返しで鍛え上げ、三、四年でやっと地稽古が出来ました。


六.寸長の太刀自由に使わるること


  江戸時代、長い刀でも使いこなせるような自在性を身に付ける効果も切り返しには
  あったのでしょう。


七.臍下おさまり体崩れざること


  臍下丹田に気をためる−−−即ち、切り返しで重心が安定します。
  重心を下腹に置いたまま移動出来れば身体の崩れはありません。
  体が崩れなければ、いつまでも技が出せます。


八.眼明らかになること


  相手との距離は横から見れば分かりやすいが、正対した状態ではわかりにくいものです。
  その距離感が繰り返し行う切り返しでわかってきます。


九.打ち間明らかになること


  切り返しは、本来元立ち主義で行われました。
  かかる側の元立ちの動き合わせようとする姿勢が本来は間合いの勉強に
  つながったのです。


十.手の内軽く冴え出ること


  昔、武専の小川金之助範士は刀で巻きわらを切る時は、肩にも手元にも
  全く力をいれず、いとも軽やかに、どんな角度からもスパッと切ったそうです。
  切り返しによって、手の内の作用を会得したのでしょう。



剣術打込受八徳

「受け八徳」も元立ちの効能としてこうあります。

一.心静かにおさまること


二.眼明らかになること


三.敵の太刀明らかなること


四.身体自由になること


五.体堅固になること


六.手の内締まること


七.受け方明らかなること


八.腕丈夫になること


切り返しを受ける側は、ただなんとなく受けていればよいわけではありません。
かつて武専で修行した範士は、「切り返しは元立ちの意のままだった」と回想しています。
今のようなかかる側の意志で自由に動けるようなものではなく、主は元立ちだったのです。


                                        

竹刀

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