1999年の夏休みオフ会

「劇団FANTASY ADVENTURE」

スペシャルプログラム

 

則夫(可愛あきさん)登場。

則夫「新学期が始まりました。桜の花が舞い落ちて、若葉の季節がやってきたけれど、僕は「大切な思い出」について、この寮に三人で残った『1999年の夏休み』について話したいと思います。」

−ディア・グリーンフィールド−(ピアノ演奏・大東様)

 

 

 

直人(桐生しのぶさん登場)

則夫「悠が和彦宛の手紙を残していなくなった。やっぱり『自殺』だったと思っているの?」

直人「悲しい『事故』だったんだよ。」

則夫「僕はきっと君が帰ってくると信じているよ。」

直人「祈ろう。一緒に・・・」

則夫「信じているの?死んでしまったって。」

直人「もう3ヶ月になるからね。」

則夫「でも死体は上がっていないんだよ。」

直人「永久に眠りつづけるために湖の底を選らんだんだよ。」

則夫「そして『夏休み』が始まった。寮のみんなは家に帰ってしまった。僕と直人と和彦『三人だけの夏休み』。そこに薫がやってきた。悠とそっくりの顔をした薫が・・・」

和彦(葵かずきさん)登場。

則夫「悠が帰ってきたよ。」

直人「よせ!」

和彦「『転入生』の事?」

則夫「転入生じゃない、『悠』だよ!」

和彦「あいつは『悠』なんかじゃない!」

則夫「だって、悠の部屋を選んだよ。」

和彦「悠の部屋へ入れたのか?」

直人「気に入ったらしくてね。『彼』。」

和彦「どうして?相談もしないで決めるなんて『規律』がめちゃくちゃになってしまうじゃないか!」

直人「たいした問題じゃないさ、そんなこと。」

則夫「二人とも興奮しちゃって。薫はきっと『悠』なんだよ。悠は、一人ぼっちの僕にいつも優しくしてくれた。悠はね、いなくなる前の夜、僕に言ったんだ。」

悠&薫(亘まゆさん)登場。

悠「僕らは、卵から生まれた『少年』という名の鳥なんだよ。鳥は、卵の中から抜け出ようと闘う。卵は『世界』だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。神にむかって飛ぶ。」

直人「ヘッセの『デミアン』だね。」

則夫「そう言っていたよ。」

悠「僕は、僕の卵を壊して羽ばたく。それから飛ぶ、『彼』にむかって…」

−ウィスパリング・アイズ−

和彦「ここから出たい・・・」

直人「何故?」

和彦「僕は、時々窒息しそうになる。ここに閉じ込められている事が無償に嫌になる。」

直人「でも、ここは『安全地帯』だよ。」

和彦「だから憎みたくなる。僕を取り巻いているすべてのものを壊したくなる。」

直人「壊しても壊しても壁だらけさ。僕らにできるのは、多少居心地のいい壁を探す事くらいだ。」

則夫「和彦はみんなから愛される。優しくもないのに好かれる。だから、僕は和彦が嫌いなんだ。」

薫「僕は、僕の時計を他のやつらより進めて、早く大人になりたいんだ。それでね、母さんの時計は僕が大人になるまで1秒も動かないように止めてしまいたい。母さんは『眠り姫』のように眠って、僕が口付けをするとようやく目を覚ますんだ。」

−大公−

バイオリンを弾く和彦。

則夫「悠は、ピアノがとても上手だったね。」

直人「悠より楽しそうに弾いているよ。」

則夫「悠はね、薫みたいになりたかったんだよ。悠はひたむきでとても良い子だったけど、もっとわがままに、もっと自由になりたかったんだよ。」

直人「そうだろうか?」

則夫「薫はきっと悠の『生まれ変わり』なんだ。」

 

和彦「あいつは悠じゃない。いつも後ろ暗いような目でオドオドしていたやつじゃない。僕は、悠が気に入らなかった。悠を見ていると、息苦しいような気持ちになった。それなのに、薫を見ているとホッとする。」

直人「和彦、お前、この間の晩、どんな夢を見たんだ?」

和彦「悠の夢さ…悠が、僕を湖の底へ引きずり込もうとしていた。湖には一面、『白いユリ』が咲いていた。直人・・・いつだったか、僕が詩の朗読会で賞を取った時、悠は僕に白いユリを贈ってくれた。その花を僕は、『白い花は葬式の花だ』と言って、彼の目の前で投げ捨てたんだ。」

直人「もうよせよ。そんな話。」

和彦「僕は、悠をいじめて、挑発して、憎まれようとした。」

直人「悠は、人を憎むような奴じゃなかったよ。」

和彦「あの時の『罪』だけでも、僕は地獄に堕ちられる。」

直人「忘れるしかないんだ、もう。」

和彦「だけどやっぱり僕には悠が許せない。悠はあの時、薫のように、僕に殴りかかってくればよかったんだ。そうすれば、僕は悠のことを好きになれたかも知れないんだ。」

直人「・・・・・」

和彦「ごめん。いつもこんな話ばかりして。君には関係無かった。」

直人「いや、何でも話してくれ。」

−ウィンディー・モーニング−

薫「僕に瓜二つの少年がいて、そいつは君にフラれて自殺した。だけど、まわりのみんなは事故だってことにしたがっている。君を傷つけまいとしてね。友情アツイことだよね。」

和彦「僕は、悠が僕を好きだった理由がわからない。僕は、あまり自分が好きじゃないのに。」

薫「僕も君をあまり好きじゃないよ。だけど、直人も則夫も君を好きだ。そして君はみんなに好かれながら、誰も受け入れず、心に鎧を着ている。それは何故?何のため?」

和彦「僕は、きっと弱虫なんだよ。そして臆病なんだ。自分をさらけ出してしまうのが怖いから、精一杯隠してるんだ。だけど、僕はずっとそうやって生きてきた。自分だけを相手に何とかやってきたんだよ。」

薫「だから、君は悠を憎んでいるんだね。直人の兄さんぶって保護している程度の愛情なら、その程度の愛なら、君は居心地良いんだ。でも、それ以上になると傷つきたくないから、ヤマアラシのように体じゅうに刺を生えさせて、誰も近づけまいとするんだ。でも、悠はその刺に傷つきながら、血だらけになって君に触れてきた。君にはそれが許せないんだ。もういいじゃないか。死んでしまったんだから、許しておやりよ。」

和彦「悠がはじめて僕に手紙を寄越した時、僕は面と向かって悠に言ったよ。迷惑なんだって。でも、また悠は手紙を寄越した。心の中で好きでいます、と書いてあった。だけど僕はそれも許さなかった。僕を思うのは僕だけでいいんだ、と言い捨てた。3通目からはもう読まなかった。4通目、5通目、6通目…その後最後の手紙が来た。そして、悠は崖から落ちた。こんな身勝手な押し付けがましい死はないよ。悠は、僕に忘れさせまいとしている。悠という少年がいたことを、その少年が僕を好きだったことを。悠は、僕の内側に土足で入りこんできて、そのまま居座っているんだ!」

薫「裸足でだよ、裸足で裸でだよ。誰かの中に靴を履いたまま、ずかずか入っていけるような奴じゃなかったんだ。」

和彦「どうして君にそんな事がわかる?君は悠とは何にも関係ないじゃないか!」

薫「僕は、何だか悠が他人だとは思えなくなってきたんだ。君みたいに冷淡な扱い方されたら、多分僕も悠みたいに熱くなる。悠の気持ちがわかる。僕の耳元で悠が囁いてる。捨て身になって裸の心で君にぶつかったのに拒まれて死んだんだよ。そして、君は悠の死を背負いきれなくて苛立っているんだ。お気の毒さま。死んだ人間を殺す事はできないよ。君は、悠が残した想いから逃げることは出来ないんだ。」

薫「和彦・・・君は寂しくないの?たった一人で生きていて。」

直人「僕は、この夏休みが永久に続けばいいと思っていた。いつまでも和彦のそばにいて、この少年としての時が終わらないことを望んでいた。薫があらわれる。時間を奇妙な方へねじまげてしまった。」

−ファンタジア−

則夫は、他の少年たちの様子を寂しげに見ている。

則夫「もうすぐ夏が終わって、それから秋が終わって、冬・・・冬の終わりになれば和彦も直人も薫もいなくなってしまう。卒業して寮を出て行ってしまう。来年の夏、僕は一人でここにいるんだ。僕は怖かった。一人ぼっちの孤独から逃げ出したんだ。だけど、和彦も直人も薫も僕を忘れてなんかいなかった。」

和彦「則夫は、仲間外れなんかじゃないよ。」

 

 

薫「多分、この手紙を君が読むことはないだろう。きっと破られて捨てられてしまうことだろう。でも、僕は書かずにはいられない。僕の最後の言葉だから。誰も読まなくてもいい。その方がいい。何かにむかって語りたいだけなのだから。僕は、僕の君への気持ちが何か値打ちのあるものだなんて考えているわけじゃない。だけど、この感情は透明で静かなもので決して消えないものだということは知っている。君が僕のことを忘れないでいてくれるなら、君の心の中に今の僕が生き続けるなら僕は、この体が無くなってしまおうともかまわない。だから僕は飛ぶ・・・君にむかって。もし、君がこの手紙を読むことがあるとすれぱ、その時、君は僕をゆるしてくれるだろうか・・・」

和彦「僕は、君が好きだよ薫。僕は、誰かを好きになったことなんかなかった。決して壊れないカプセルの中にいた。そこは、安全地帯だった。誰も愛したことがなかったから、僕はその出来事に幼くて、愛されることに怯えていた。僕は悠を拒み、そのために悠は死んだ。だけど、僕は君を見つめて悠の気持ちを知り、悠を通して君に近づいていった。そして、君が好きになった。カプセル壊れたよ。」

−私の騎士−

和彦「子供の頃、夕焼けを見て泣き出したことがあった。セミを取りに行って、4,5人いた仲間とはぐれて、気付いたら一人ぼっちで、夕焼けで、僕は恐ろしいほど孤独だった。まるで、天と地の間に僕一人しかいないようなそんな寂しさ。夕焼けは酷いくらいに綺麗で、赤と金色が入り混じって、あたり一面光ってた。それなのに、そのことを語ることのできる奴は、誰もいない。怖かった。寂しかった。僕はどうしようもなく無力で、出来ることと言ったら、泣き出すことだけだった。今でも、僕はその日のことを夢に見る。ちょうど、こんな風な夕焼けだったよ。」

則夫「和彦と一緒に湖に身を投げた薫は、消えてしまった。僕は、あの時、夏休みが終わるのが怖かった。何故なら、僕にとって特別なこの夏休みは、薫と一緒に消えてしまって、もう二度と戻って来ないと思っていたから。でも、今は違う。僕にとって、僕達にとって夏休みは永遠だと思えるから。」

−ウェイティング・フォー・ブロッサムズ−

則夫「僕は、絶対忘れない。『直人』、『和彦』、『薫』とすごしたあの夏休み。そして、これからも続いていく新しい夏休みを。」

旅立ちを予感させるように少年たちは、制服を羽織る。

直人「私がまだ何も知らなかったあの年の『夏休み』。」

和彦「世界がそれまでとは全く違って見えるようになった。」

薫「いや、あるいは私自身が卵の殻を破って変貌したのであろう。」

則夫「今でも、ハッキリと思い出すことができる『あの年の夏休み』。まるでまだ昨日のことのような気がしてならない。」

−END−

 

終演後、劇団を代表して直人役の「桐生しのぶ」さんよりご挨拶がありました。

「今日は、ありがとうございます。京都からやってきました劇団FANTASY ADVENTUREです。配らせていただいたプログラムにも書かせていたたいたのですが、去年の夏と、12月に2ステージ、2回ほど公演をやらせていただきました。今回は、こういうイベントへ参加させていただくということで、お芝居とは違いまして、非常にパーツ的なものになるので、役者としては難しかったのですが、新しい試みということでいろいろやらせていただきました。」

そのあと、和彦役の葵かずささん、ピアノの大東さん、則夫役の可愛あきさん、直人役の桐生しのぶさんの順でキャストの紹介がありました。

お忙しい折に、遠路横浜までいらしていただきありがとうございました。参加者のみなさんにも大変好評でした。ぜひ、『東京公演』が実現いたしますように。当日は、プログラムの都合で予定より皆様の開始時間が遅れてしまったことをこの場にてお詫びいたしますm(_ _)mぺこぺこ

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