オーランド出張記


6月10日、初めての海外旅行の出発日。飛行機は午後の便なので、まず大学によって、出発前に処理すべき仕事が残っていないことを再確認。メールチャックを行うと、予約変更確認のメール返事がホテルから届いていたので一安心。実は昨晩になって、宿泊日が一日ずれていたことに気が付いて、あわてて訂正のメールを出しておいたのだった。飛行機の3時間前に大学を出発。旅行会社から既に飛行機のチケットを受け取っているので、まず半蔵門線水天宮駅のTCATへ。ところが、ここではデルタ航空のチェックインは出来ないということを知り、そのままシャトルバス(¥2900)で成田空港へ。少し慌てたが、料金所以外では渋滞も無く、14:15に第2ターミナルビルへ到着(75分前)。日本人の出国書類が廃止されていたので、時間的に助けられた。14:45に搭乗口に到着。

昨年、北海道に出張したときに、初めて飛行機に乗ったので、2回目が国際線、3回目がアメリカの国内線ということになる。通路側の座席で、右隣は渡辺さんというトラックの運転手さんで、ペルーの友人を訪ねるところだという。けっこう、おしゃべりな人だった。初めての機内食は、サラダ、鶏肉、日本そばだった。その後、おやつでパン、ヨーグルト、オレンジジュースが出された。通路側の席を取って貰ったおかげで、少し楽だったが、それでもエコノミーシートが狭いので、今ひとつ熟睡することは出来なかった。映画は、ゲーム理論で有名な数学者ナッシュの生涯を描いた作品(A Beautiful Mind)で、最後にナッシュが同僚の教授らからペンを贈られるシーンが感動的だった。

15:45(日本時間4:45)、世界一広いというアトランタ空港に到着。空港内には、日本語の表示があった。入国審査は混雑していたが、オーランドへの便へ乗り継ぐ人専用の受付があったので、すぐに通過することができた。"Except Orland"(オーランドへ行く人は除く)を聞き取れないと、悲惨だったかも。EターミナルからAターミナルへの移動は、専用の地下鉄だった。これは便利。ところで、もうちょっとカジュアルな服装でくればよかった。

アメリカの空港をうろつきながら、知らない場所に来たという感覚は勿論あったが、外国に来たという感慨は不思議なことにほとんどなかった。特に、お腹もへっていなかったので、乗り継ぎの搭乗口に直行。1時間もかからなかった。

アトランタからオーランドへは、たったの1時間20分。といっても、東京−札幌間よりは長いのかも。搭乗すると、席を間違えられていたが、結果的に通路側が空いていたので、そのまま席を交換する。オーランド空港に到着。地方空港だが、ターミナル間を移動する際の無人モノレール設備ひとつをとってみても、デザインが綺麗で、日本の空港の貧弱さを感じずにはいられない。

無事に荷物をピックアップして、ホテルに向かう。如何にも親切そうなお兄さんが、"town car"を捕まえてきてあげるから5分待っててね、とか言いながら、勝手にどこかに行ってしまうが、無視してタクシー乗り場へ。そこに居たのも、自家用のワンボックスみたいな車だったが、正式な乗り場なので運転手にまかせることにする。メーターが付いていないので、先に値段を尋ねると$47(¥125/$)という。30kmぐらいの距離なので、まあ妥当な額か?話してみると、1男2女の親父さんで、8年前にポーランドから移住したという。ワールドカップやディズニーワールドなどの話しをしながら、30分ほどで到着した。チップ込みで$55渡す。後で、ホテルの案内を読んでいたら、空港へは約$40とあったので、予め日本人だからチップ込み(included)の価格を言われたのかもしれない。確かめればよかった。(そういえば、別れの挨拶がやけに丁寧だったような気も)

ホテルのカウンターにクレジットカードを登録してチェックイン。ベルマンに荷物を部屋まで運んでもらう(チップ$2、チップを手渡ししたのはこれっきり)。かなり広い部屋で、ベッドもキングサイズ(枕3個分)で横方向に寝られるほどたっぷりだった。時差は13時間なので、1日半ほど寝ていないことになる。とりあえずシャワーを浴び(浴槽はなかった)、旅の疲れが出てきたので夕食は取らずに、勤行をして寝てしまう。


6月11日7:20、少し寝坊して起床、シャワー、勤行。9:00からチュートリアルがはじまるので、朝食を食べる時間がないと思ったら、会場にパンやフルーツが用意されていたので、他の人の真似をして、食べながら聴講することにする。最初はセンサー概論だった。OHPが良く出来ていたので、あっという間に90分が過ぎてしまう。昨日、たっぷり寝たせいか、眠くはならなかった。会場のクーラーがかなりきつかった。飛行機内もそうだったが、アメリカ人はクーラーをかけすぎる。

昼は来る途中にタクシーから見かけた、道の駅まで歩いて外出。しかし、飲食店は主に夕食専門のようで、ほとんどが閉じていた。とりあえず、スーパーに入ってみる。品揃えは、日本と同じようだが、beverage(飲料)のコーナーがやけに広い。奥に、飲食コーナーがあったので、ホットドックとチーズバーガーとスプライトのMを頼む。チーズバーガーに冠詞(というかここではoneが適当)を付けなかったので、"One or Two?"(幾つだって?)と、聞き返されてしまう。初めてのアメリカの食事だったが、大味でしょっぱいだけでまずかった。地元の味なのかもしれないが、もう一度食べる気にはならない。

午後は、電子鼻(Electronic noses)と、磁気測定の話しだった。後者は分りやすかったが、話しがくどいので、時差のためもあってか眠くなって大変だった。17:50終了。クーラーの効いた会場から外に出ると、まだ暑かった。アメリカは乾燥していると聞いていたが、フロリダは湿地で日本の夏ような気候だった。19:00からレセプションで、ただ飯を食うには良いチャンスなのだが、猛烈に眠くなったので部屋に戻る。

テレビをつけると、日本のアニメ(遊戯王やポケモン)をやっていた。あと、少し前に教育テレビでやっていたALFという宇宙人のコメディーもやっていた。英語で聞くのはもちろん初めてだが、吹き替えの声優を頼むとしたら所ジョージしかいないだろうと納得。いつの間にか眠ってしまい、気が付くと22:30。とりあえず、日本から持ってきたポロテイン・イン・ゼリーを食べ、シャワー、勤行。昼間のチーズバーガー、まだ少し残っているような気がする。

荷物減らしの為に、下着は2度づつ使用する予定なので、石鹸で洗濯をする。思ったより垢が出るので、ちょっとびっくり。


6月12日6:30起床。今日は本番。朝食は、初めてホテルのレストランへ。American Breakfastを注文すると、バイキング形式とのこと。目で見て選べるのは利点だが、これで$13.20は高い。それでも、やっとまともなものを食べた気がする。支払いは部屋に付けてもらう。

午前中のセッションを見て、昼は外のコンビニへ買い物に行く。ライ麦パンのサンドイッチ、りんごジュース、ポテトチップス、クッキーを買う。インスタントラーメンも発見。これだけ買っても、さっきの朝食と同じような価格。ホテルに戻って東屋で昼食。白鷺やリスなどが出てきて、自然のムードがたっぷり。フロリダは蚊の多いところだと聞いていたが、ホテルの敷地内にはほとんど虫が居なかった。

昼食後、自分のポスターを展示してから部屋に戻り、15:00〜16:30昼寝をする。その後、16:50から展示場へ。パンフレット、結晶の見本なども並べて、いよいよスタート。

ところで、放射線計測はセンサー会議のトピックスの一つになっていたのに、放射線関係は自分を含めて5点のみであった。質問者の関心も、今一つであったような気がする。多種のセンサーの研究者からの質問を受けることによって個人の視野を広げ、かつ、新たな研究の方向性を探るという点においては、その収穫は大であった。しかし、他の分野の研究者からも同様の声が聞かれたが、領域が広範であるために専門性に関しては、やや希薄であった憾みが残る。放射線計測の専門家集団に対して自己の研究成果をアピールし、自分の位置づけを見定める、あるいは新規シンチレーターの発明者として広く名前を売るという観点においては、課題を残す結果であった。無難にこなしてしまったという印象だが、もうちょっと質問で困るようなシーンも体験したてみたかった。

とはいえ、質問者の中には「こんなに応答の迅速なシンチレーターの報告ははじめてだ」と素直に驚きを述べてくれた方や、「自分の知り合いに核医学のシステムを開発している研究者がいるので、是非報告したい」といって、準備しておいたパンフレットを持っていってくれた方などもおり、これから報文集(プロシーディングス)が出版された後に、どのような反響が帰ってくるかと、期待の持てる結果ではあった。

夜はカップめんで済ましてしまい、勤行をしたら、あとは爆睡。生活は、言語が英語ということと、部屋が綺麗ということ以外は普段と変わりがないが、学会が目的の出張とはこんなものだろう。


6月13日6:00起床、勤行。ワールドカップ、イタリア・メキシコ戦で、イタリアの劇的な同点ゴールを見てから、セッションを見に行く。光センサーや、化学センサーなどの話しはわかるが、電気回路になるとおそらく日本語で説明されてもわからないので、聞ける話しが限られる。

昼は、レストランでハンバーガーを食べる。ハンバーグの焼き加減、チーズの有無、ケチャップの量などを聞かれる。ケチャップはうまく説明できないので、自分でかけることにする。なんとか、空中分解させずに食べることができた。おいしくて、お腹も一杯。

続いてホテルのカウンターへ。ケネディー宇宙センターに興味があるというと、明日の朝8:30にバスがホテルの玄関前に迎えに来るから、それに乗ればいいというので、チケットを購入(往復バス$19、宇宙センター$26.50)。大きなホテルはこういうところが便利。

午後から、試料合成のセッションを見る。ロシア人の発表が酷い内容だった。16:30終了。

デルタ航空にreconfirmationの電話をする。その後、フロントに行って帰りの空港までの交通機関を尋ねる。朝7:20のフライトだと告げると、4:40にシャトルバスがホテルから出ると言うので、チケットを購入。$16で、行きのタクシーの1/3以下の値段。やはり、確実で安価な移動方法を知るには、各所で案内役の人に尋ねるのが一番。

次に、ホテル内のショップでお土産のTシャツなどを買う。一度使ってたかったので、わざとトラベラーズチェックで支払いをしてみる。カードもT/Cもサインが必要なので、手間は一緒。

20:00ぐらいまでは明るいので、部屋で水着に着替えて2時間ほどホテルのプールで泳ぐ。水深が2.6mもあった。他には2家族がいるだけで、ほのぼのとした雰囲気。夕食は、ホテルの購買のローストビーフサンドで済ます。21:30勤行、就寝。


6月14日2:30起床。ワールドカップの日本−チュニジア戦を、ポップコーンを食べながら観戦。後半すぐに森島がゴールを決める。日本が、ボール支配率、ファール数、シュート数など、どれをとってみても完全に優位のまま終了。ビールを買っておけば良かった。

5:00仮眠、6:30起床、勤行。シャワーを浴びて、8:30玄関前からシャトル(ワンボックスカー)に乗る。途中で、観光バスが待っていて乗り換え。バスの中で、東北大のH教授とお知り合いになり、一日行動を共にすることにする。

大西洋に向かって走るどこまでも真っ直ぐなハイウェイと、地平線。一時間ほどで目的地に到着。ゲートで、予約チケットを入場券と交換して、まずは宇宙センター内のツアーバスに乗る。ロケット組立工場の巨大な館屋を見ながら、最初の観光ポイントは展望台。4階建だがまわりに何もないので、センターの広大な敷地を一望できる。見渡す限りの土地に、ロケットの発射台が点々と見える。アメリカって本当に広いのだなと思えてしまうような光景。

続いて、ツアーバスはアポロ計画の建物へ。実物大のブースターが展示されており、圧巻。打ち上げの技術や、宇宙計画の歴史について、映画で学べるようになっていた。ここで、お土産を購入したり、昼食(ピザ)を食べたりする。

ツアーバスで、最初の地点に戻って、IMAXシアターに行く。時間が残り少なくなってしまったので、1と2のうち、2の方(3D)のみを鑑賞する。実体視の映画は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)などでも見たことがあるが、本当に宇宙船に乗り込んだようにしか思えないほど現実感があり、体験がこれほど視覚に置き換えることができるのかと考えさせられた。

ホテルの購買で、サンドイッチ、スパゲティーサラダ、ビールを購入し、部屋に戻る。今日は、初めてちゃんとアメリカ(非日常)を体験できたように思える。帰りの荷造りを済ませて、21:00勤行、就寝。


6月15日、2:30起床、勤行。4:40のシャトルに乗る。やしの木の隙間から漏れる街の明かりに別れを告げながら、ハイウェイを流して空港に到着。この時間のフライトは多いらしく、チェックインは混雑していた。7:20離陸。アトランタ空港の乗り継ぎは、同じターミナル内で10分とかからなかった。10:20の成田/東京行きで日本へ(出国審査はなし)。乗客の半分ぐらいが日本人なので、既にアメリカという感じがなくなってきてちょっと残念。

24:30(日本時間13:30)、成田に着陸。アトランタ空港は、デルタ航空の拠点なのでデルタのジェット機ばかりだったが、成田空港は雑多なデザインの航空機に溢れていておもしろい。着陸後の移動距離が長いので、非常に大きな空港に到着したような印象を受けるが、滑走路の本数が不足しているのが実情であろう。大学によってから帰宅する。もう2・3日アメリカにいたかった。