御法主上人猊下御言葉 新六万塔開眼法要の砌


新六万塔
※写真は平成15年現在


本日は、宗旨建立御報恩法要、ならびに宗内・藤本総監ほか教師全員と、法華講連合会・柳沢委員長ほか幹部役員、および全国法華講支部幹部御一同、さらに海外信徒代表等、6千人が総本山に集会し、6百億遍の唱題を成就し、その功徳をもって新六万塔を建立し、ただいま、その開眼法要を執り行いました。皆様、本当におめでとうございます。

そもそも、この六万塔の先例は宝永元年の建立にありますが、この時に塔建立の因縁を成した当時の僧俗は、ことごとく下種仏法の仏道を成じて、寂光の都において自受法楽されております。あるいは、そのうちの一部の方々は、妙法受持弘通の因縁に呼び呼はわれて、今日、この集まりのなかに来生されているでありましょう。共に尊い仏道の功徳であり、深縁であります。

故に、このたび、新六万塔の建立に当たって、旧の六万塔は、仏法上、最も幽玄深遠の意義を持ち、尊ぶべき丑寅の方角に当たる、南条時光殿と大聖人御両親の御墓碑の近くの清浄の地にお移しいたしました。そして、御影堂の丑寅に当たるこの地に、ただいま、宗祖大聖人の無辺常住の御化導の鴻徳(こうとく)と現代の地涌出現による妙法広布を表す、新六万塔を建立した次第であります。これは、全国法華講の信徒皆様の大法護持と弘通の誠心(じょうしん)を結集して建立されたのであり、平成の仏法流布の歴史的事業として、その意義はまことに無限であると確信いたします。

この塔の建立に当たって、全国のあらゆる地域の方々、そして遠く海外の信徒の方々も参加して、真剣な唱題行による功徳が積まれました。御書に、「善積もれば仏となる」(南条殿女房御返事)と仰せの如く、至極の大善たる妙法唱題6百億遍の功徳は、凡眼凡智をもってしては到底、測り知ることはできませんが、仏智は了々と御照覧あそばすのであります。既に、あの百日の唱題行の功徳は、それぞれの方々の命のなかに、生活のなかに、あらゆる意義と姿において顕れております。しかし、それはまだ、現在一分の小さい報いであります。将来は、仏道の増上の因縁とともに、いよいよその実際の善報は展転して、自他共に無上の仏道成就の妙因妙果を顕すことを確信いたします。その本門の大法の現在における流布の妙塔が、この新六万塔であります。

この六万塔も宝永の前例の如く、六角の石造りでありますが、その正面は「南無妙法蓮華経 南無日蓮大聖人」と御本仏の御名を書き顕し、右前側面に「南無妙法蓮華経 南無上行菩薩」、右後側面が同じく無辺行菩薩、左前側面が同じく浄行菩薩、左後側面に安立行菩薩を書き顕してあります。

『御義口伝』に、経文の「唱導之師」について、「本化の菩薩の所作としては南無妙法蓮華経なり。此を唱(しよう)と云ふなり。導とは日本国の一切衆生を霊山浄土ヘ引導する事なり。末法の導師とは本化に限ると云ふを師と云ふなり」と御指南の如く、南無妙法蓮華経を唱えて、衆生を寂光の宝土へ導くのが本化の菩薩であります。故に、上行・無辺行。浄行・安立行の四導師の上に「南無妙法蓮華経」と書き顕すのであります。

次に、『御義口伝』には、『輔正記』を引かれ、「経に四導師有りとは今四徳を表はす。上行は我(が)を表はし、無辺行は常を表はし、浄行は浄を表はし、安立行は楽を表はす。有る時には一人に此の四義を具す云云」と仰せられました。

この常楽我浄の四徳中の常とは常住のことであり、妙法の徳をもって荘厳された無辺行菩薩は、時間・空間を超越し、有為転変することのない常徳を具え給うのであります。次の楽とは安楽であり、妙法の徳による安立行菩薩は、生死の苦しみを脱し、いかなることにも患わされることのない楽徳を示されます。次の我とは大我であり、妙法の徳による上行菩薩には、世間の小我妄執を離れた自由自在の真の我徳があることを申します。最後の浄とは、妙法の徳による浄行菩薩は清浄であって、世間の種々の煩悩や悪業・悪事による穢れをよく浄化する、清浄の命であると述べられているのであります。

しかして、この四菩薩が末法に出現して、広く妙法を弘宣される時は、まず、御一人の人格として表れ給うことを「有る時には一人にその四義を具す」といわれるのであります。その「一人」とは、末法の歴史段階に出現され、四菩薩の常楽我浄の四大徳をもって南無妙法蓮華経の大功徳と深義を顕し、弘通し給う日蓮大聖人様であります。

故に、六万塔の中央に「南無妙法蓮華経南無日蓮大聖人」と奉書申し上げてあります。ここに重大な意義があり、霊山涌現の四菩薩の本体は久遠の本仏の日蓮大聖人であらせられ、その御一身中の火大が上行菩薩、風大が無辺行菩薩、水大が浄行菩薩、地大が安立行菩薩であることを、本門の大御本尊、および、この六万塔が明らかに表しておるのであります。

また、『御義口伝』に、「火は物を焼くを以て行とし、水は物を浄むるを以て行とし、風は塵垢を払ふを以て行とし、大地は草木を長ずるを以て行とするなり。四菩薩の利益とは是なり。四菩薩の行は不同なりと雖も倶に妙法蓮華経の修行なり」とあり、本日のこの穏やかな雨は、水大・浄行菩薩様の、穢れた濁悪の世を清め、浄化し給う用きであり、加護であると信ずるものであります。

我等が日蓮大聖人の真実の弟子檀那たる信心の自覚を持って南無妙法蓮華経を唱え奉るところ、我等もまた、地涌四菩薩の常楽我浄をもって荘厳された自在無辺の徳を自然(じねん)に譲与されるのであります。

また、「此の四菩薩は下方に住する故に、釈に『法性の淵底(えんでい)玄宗の極地』と云へり。下方を以て住処とす。下方とは真理なり・・・此の理の住処より顕はれ出づるを事(じ)と云ふなり」とある如く、かの法華経の会座に在って、釈尊は一期の大事たる寿量顕本をなさるため、真理の奥底に住していた地涌六万の菩薩に出現の命を下し、これによって法界に遍満する地涌の菩薩が現れ、釈尊の本懐たる寿量品の説法が説かれました。これが脱益仏法における、地涌の菩薩が理の住処から事に向かって出現された相であります。

今、下種仏法においては、末法のこの平成6年に当たり、御本仏日蓮大聖人が大慈大悲をもって、この六万塔を因縁として三大秘法の広宣流布を、日蓮正宗の僧俗に命ぜられたのであります。それに応じて、本日、まずここに私ども6千の正法正義の僧俗が集まったのであり、これこそ尊い仏法の因縁であります。

したがって、ここより、僧俗一致する真の広布の大業が始まることを確信し、来るべき六万総登山と未来の広布に大精進をお誓いいたそうではありませんか。皆様、異体同心の固い団結をもって、力強く前進してまいりましょう。以上をもって本日の挨拶といたします。



経過報告 大石寺主任理事 八木信瑩御尊師


皆さん、待望の新六万塔が見事に完成いたしました。誠に、おめでとうございます。

本日、この新六万塔建立に当たり、御当代御法主日顕上人猊下大導師の下、藤本総監を始め全国の僧侶各位、並びに法華講連合会柳沢委員長ならびに信徒代表及び寺族代表各位、計6千余名が総本山に参集して、その除幕開眼法要と奉告法要が只今、厳粛かつ盛大に奉修できましたことを総本山として心から御礼申し上げます。つきましては、当新六万塔建立に至った経過の概要を御報告いたします。

去る平成2年7月、法華講連合会による3万名総登山が実施され、大客殿前広場を埋め尽くす4万数千名が結集し、盛大に第27回総会が開催されました。その折、御法主上人猊下から更なる目標として、平成6年を期して6万人の大結集をめざしてはどうか、とのお言葉がありました。この御指南を拝して勇躍、精進を決意した折も折、池田創価学会の逸脱謗法が再発し、果ては下種三宝尊破壊の大謗法に及び、遂に決別破門という著しい宗内情勢の転変があり、茲に地道に発展を続けて来た法華講の存在意義、更に6万人大結集の持つ意味は弥増して大きなものとなったのであります。

このような中で、昨年8月に開催された宗務院と連合会との連絡会議の席上、柳沢委員長から、「邪教創価学会の大謗法により、大聖人の仏法が壊乱されようとしている重大な時に当たって、御法主日顕上人猊下の下、僧俗一結し、真実の妙法広布に結集する地涌六万人の法華講衆の新たな前進と、世界広布達成への決意を込め、その実現を大御本尊様に誓願し奉り、茲に六万塔の建立を願い出る」旨の発願が表明され、建立にかかわる具体的な実施についてはすべて総本山にお任せしたい、とのことでありました。

御法主上人猊下には、この申し出を快くお聞き届けになると同時に、それでは僧俗一致して6百億遍の唱題を以て六万塔建立の意義を顕彰していくよう御指南あそばされ、御承知のように本年(平成6年)元旦から全国一斉に1人1日5千遍、100日間の唱題行に入りました。

総本山においても、毎日朝と夕1時間ずつ大客殿において、御法主上人御自ら大導師となられ、私共山内在住者、更に有縁の信徒方も随従唱和して唱題行を重ね、去る4月10日、支障もなく予定通り満願の日を迎えた次第であります。この日は、あの広い大客殿に溢(あふ)れるほど多くの参加者がありました。

終了後、御法主上人猊下から今回の唱題行の意義について、一には六万塔建立のためであり、二つには今後の妙法広布には、法華講の充実発展が大切であり、各人が自分の生命に代えても、この尊い組織を守っていこうとの自覚を持つ為、三つには一人ひとりが唱題によって仏になっていく為であると、このように有り難い御指南を頂戴いたしました。

このような意義深い唱題行に参加した、全国の僧侶・信徒・寺族の名簿は、各寺院を通じて総本山に届けられ、只今この御影堂の御宝前にお供えし、共々に御報恩申し上げた次第であります。この名簿は、後刻、海外の方々の分が届いてすべてが揃いましたらステンレスの特製カプセルに入れて、新六万塔のもとに埋納(まいのう)することになっています。何年後かは判りませんが、いつの日にか必ず開封される時が来ると思いますので、法統相続を心掛けて、このことを子々孫々しっかり語り伝えていこうではありませんか。

次に、今まで御影堂裏手に在った24世日永上人代、宝永年間建立の六万塔は、この度、お塔川を渡った大納骨堂の東側、富士山を真近かに仰ぐ景勝の地に移され、去る3月16日、その移転法要が執り行われました。今回、その跡地を整備拡張して新六万塔が建立された訳ですが、最後にこの新六万塔の規模について御説明いたします。

用いられた石は、茨城県稲田産の稲田石(白御影)で、中野組石材工業株式会社の施工によって完成いたしました。上・中・下三段の台石の上に五輪の形式で、本体・笠石・宝珠等が載っており、高さは6m、厚さ45cmで20tの重さがあります。真中、第2段目の台石は3m四方で10t、一番上の台石は2m四方で6t、笠石は2m30cm四方、厚さ70cmで5tです。中心の本体は横幅1m20cm、高さ2m60cm、重さ6tの六角柱で、御法主上人御染筆により正面には「首題と南無日蓮大聖人」、その左右と後方側面に地涌の四大菩薩、背面(はいめん)には「僧俗和合信行口唱六百億遍、広布大願祈念、全国法華講中一同、平成六年四月二十八日」との文字が刻まれ、中国産の朱で着色が施され、鮮やかに拝することができます。

皆様の篤い護法の志による御供養を以て建立され、僧俗一結しての6百億遍のお題目によって荘厳された、この輝かしい新六万塔は、平成の今、心も新たに真の正法広布に向かっての大前進の出発を誓う、我々の願いを永く永く止めてくれるものと確信するものであります。

尚、本日のこの意義深い法要を記念して、御法主上人御染筆による色紙を全参列者に差し上げるよう準備いたしましたので御案内申し上げておきます。弥々地涌六万の法華講衆大結集まで、残すところ3カ月足らずとなりました。お互いにそれぞれの立場で精進し合い、再びこの御戒壇様まします霊地に僧俗共々晴々と相い集うことを約して経過報告といたします。