'bout JAZZ

G

GARY BURTON & MAKOTO OZONE

FACE TO FACE / (GRP)
gary01.jpg (11022 バイト) GARY BURTON(VIB),小曽根真(PF)
1.KATO'S REVENGE    
2.MONK'S DREAM     
3.FOR HEVEN'S SAKE   
4.BENTO BOX      
5.BLUE MONK      
6.O GRANDE AMOR
7.LAURA'S DREAM
8.OPUS HALF
9.MY ROMANCE
10.TIMES LIKE THESE
11.EIDERDOWN

ゲイリーバートンでデュエットと云えば、
チックコリアとのインタープレイが有名ですね。
あれは、チックコリアのカラーが強くでたアルバムでした。
「CRYSTAL SILENCE / (ECM)」も美しい作品でしたが、
個人的には、壮大なストーリーを感じさせる標題曲を持つ

「DUET SUITE / (ECM)」がお気に入りです。

一方このアルバムは、師弟関係の小曽根真との顔合わせと云う事もあり、
チックの時とは違ったゲイリーバートンのプレイが聴けます。
特にオープニングの小曽根のオリジナル"KATO'S REVENGE"での
息の合ったプレイは、2人のタイム感覚が見えないところで
繋がってるんではないかと思うほどです。
選曲がややまとまりなく幕の内弁当的ですが(笑)、
これだけとりそろうときっと気に入る曲もあるに違いありません(笑)。
私は、とにかくこのオープニング曲だけでくらくらです。

 

GARY FOSTER

MAKE YOUR OWN FUN / (CONCORD)
foster01.jpg (7258 バイト) GARY FOSTER(AS,FL),JIMMY ROWLES(PF,VO),
JOHN HEARD(B),JOE LABARBERA(DS)
1.ALONE TOGETHER
2.THE PEACOCKS
3.WARNE-ING
4.NICA'S DREAM
5.WHAT A LIFE
6.I CONCENTRATE ON YOU
7.SOME OTHER SPRING
8.'TEEF
9.I'LL CLOSE MY EYES
10.EASY LIVING
11.SWEET LIPS

ゲイリーフォスターの暖かみとクールさが相俟った気持ちの良いアルバムです。
あまり誰かに似てるって云い方をするのは好きではないのですが、
彼のアドリブを聴いてると「スタンゲッツがアルトを吹いてるみたいだなぁ。」と思います。
流麗なフレーズの中にサブトーンがかった抜群に美しい粒立ちの音が散らばって
クールなフレーズを作っていく感じです。
ものの本によるとトリスターノの影響を受けているらしく、ウォーンマーシュとの共演もあり。
それで三曲目の"WARNE-ING"なんて、タイトル的にも手法的にも
ウォーンマーシュ的な演奏している訳ですね。
この曲、ゲイリーフォスターのオリジナル曲としてクレジットされていますが、
コード進行は"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE"です。
幾何学的なテーマから急速なテンポで繰り広げられるアドリブはまさにトリスターノ系。
このアルバムの聴きドコロと云えるでしょう。
あとピアノのジミーロウルズの"PEACOCKS"をフルートで演奏しています。
私、この曲が入ると、アルバムの評価が一翻アップしてしまうんです(笑)。

foster02.jpg (3390 バイト)他に
「ALAN BROADBENT&GARY FOSTER/(CONCORD)」も好きです。
デュオと云うフォーマットで生きた対話のある演奏が聴けます。
アランブロードベントも最初トリスターノ系だった訳で、相性も良し。
トリスターノの"317 EAST 32ND STREET"を取り上げたり、
"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE〜HOT HOUSE"で
如何にもな演奏をしたりしていますが、
全体としては暖かみに溢れた寛いだ雰囲気が素敵です。

 

GATO BARBIERI & DOLLAR BRAND

CONFLUENCE / (FREEDOM)
gato01.jpg (5870 バイト) GATO BARBIERI(TS),DOLLAR BRAND(PF,CELLO)
1.THE ALOE AND THE WILDROSE
2.HAMBA KHALE!
3.TO ELSA
4.EIGHTY FIRST STREET

ガトーバルビエリは、大嫌いでした。
「CHAPTER THREE〜VIVA EMILIANO ZAPATA / (IMPULSE!)」
最初に聴いたのがいけませんでした。
ムード歌謡スレスレの臭さとガトーの灰汁の強い泣き節に
嫌悪感が込み上げて来て、最後まで聴く事が出来ませんでした(笑)。
しかし、初期においてはドンチェリーの下でフリージャズに傾倒していたと知り、
適当に見つけて買ったのがこのアルバムだった訳です。

陰鬱なダラーブランドのピアノに導かれるように重苦しく絞り出される
彼の肉声に近いテナーの音色にゾクッと来てしまいました。
高音域のフリーキートーンで悲痛な叫びを模し、
声帯を使ったダーティートーンで熟柿臭すら漂よわせます。
このアルバムは、ダラーブランドの個性の上に乗っかる事で、
バルビエリのスタイルが実に良い色合いで出てると思うのです。
もともとブランドの音楽は、コード進行が希薄で、
執拗なパターン反復の中に陶酔感を生み出して行くのですが、
バルビエリの演奏は、このフォーマットで大きな表現力を得た様です。
アフリカの土臭さとアルゼンチンの人間臭さが見事に合流(CONFLUENCE)した
フリージャズの名盤だと私は思います。

gato02.jpg (2472 バイト)これより一年前の1967年に録音された彼の初リーダー作
「IN SEARCH OF THE MYSTERY / (ESP)」も素晴らしいアルバムです。
フリーキートーンがのべつまくなしでヒステリックな感じもしますが、
テナー、セロ、ベース、ドラムと云う特殊なユニットが
なかなかの効果を上げているように思います。
攻撃的なフレーズから静かに語りかける様なフレーズまで
ドラマティックに展開するソロは聴き応え充分です。

gato03.jpg (2281 バイト)彼は次第によりポップでメロディアスな路線に進んで行くのですが、
その過渡的なシーンを捉えたアルバムが
「EL PAMPERO / (PHILIPS?)」
1971年のモントルージャズフェスのライヴ盤です。
コンガなどのパーカッションを加えて民族的な色合いも出ていますが、
アプローチはかなりフリーキーです。
"BRAZIL"なんて曲も演奏していますが、結構ワヤクチャ(笑)。

 

GEORGES ARVANITAS

GEORGES ARVANITAS QUARTET / (CARRERE)
arvani01.jpg (22521 バイト) MICHEL GOLDBERG(TS,AS,SS),GEORGES ARVANITAS(PF E-PF)
JACKY SAMSON(B),CHARLES SAUDRAIS(DS)
A-1.QUARTET             
 2.THE PEACOCKS
 3.BODY AND SOUL
 4.BILLY'S BOUNCE   
B-1.FABLES OF FAUBUS
 2.SOPHISTICATED LADY
 3.MY LOVE GOES THROUGH TIME
C-1.CHASING THE DEX
  2.CREPUSCULE WITH NELLY
  3.FOOT PRINTS
  4.MIDNIGHT SUN
D-1.LOVER MAN
  2.VENUSIA
  3.GOOD BYE PORK PIE HAT

このアルバムの魅力は、アルバニタのプレイもさる事ながら
ゴールドバーグなるサックス奏者に負うところが大きいと思います。
じいさんのボヤキみたいなフガフガな音色と節回しで
粘度の高いプレイを聴かせてくれます(笑)。

アルバニタもインコーサートの時の様な尖がったモード演奏から
個性的な円熟のスタイルに変化しており、好感が持てます。

これらのメンバーがお互い融解し合ってできた演奏は、
完成度が高い上に唯一無二な特異性を秘めている様に思います。

また選曲がどれも魅力的です。
ハンプトンやエリントンからショーターまで多岐に渡る楽曲を
自分たちなりに消化しきった演奏は、LP2枚を短く感じさせます。

特に、ミンガスの"フォーバス知事の寓話"、ジミーロウルズの
難曲"ピーコックス"が素晴らしい出来です。

 

GEORGE ROBERT

YOUNGBLOODS / (MONS RECORDS)
robert01.jpg (24857 バイト) GEORGE ROBERT(AS,CL),DADO MORINI(PF,EL-PF)
1.I REMEMBER YOU
2.BLUES FOR ANDY
3.LUSH LIFE
4.LOVE'S MIRROR IMAGE
5.EAST OF THE SUN
6.MISSING YOU
7.VOYAGE
8.MY KIND OF WORLD
9.PACIFIC SUNSET
10.EASY TO LOVE
11.SPRING CAN REALLY HANG
          YOU UP THE MOST
12.STABLEMATE
13.SUSANITA
14.BODY AND SOUL

ジョージロバートはスイス出身のアルト吹きです。
ジョージもロバートもありきたりな名前なのでぱっとしませんが(笑)、
テクニック、歌心、音色、どれをとっても秀でた人だと思います。
彼はフィルウッズを規範として自分のスタイルを確立して行ったと
ものの本には書かれていますが、一聴すれば納得です。

このアルバムは、ダドモローニとのデュオアルバムです。
ジョージロバートの音は私が聴いた他のどのアルバムよりも
よく鳴っていて流麗なフレーズが伸びやかに響きます。
また、ダドモローニのピアノもオーソドックスなスタイルながら
鍵盤を幅広く使い実に煌びやか。
全体としてデュオでありながらも音の薄さは全く感じられず、
楽しくゴキゲンなアルバムに仕上がっています。
冒頭の二曲"I REMEMBER YOU","BLUES FOR ANDY"を聴いただけで、
その日の幸せ度がワンランクアップするくらいです。ホント。

彼は一時期トランペットのトムハレルとユニットを組んでました。
「CAPE VERDE / GEORGE ROBERT TOM HARRELL QUINTET (MONS)」
しか聴いた事ありませんので、あまりハッキリと云えませんけど、
このアルバムは良くない。凡百のコンボ演奏に終始してる気が‥‥。

robert02.jpg (14326 バイト)それなら大御所クラークテリーをゲストに迎えた
「GEORGE ROBERT QUARTET FEAT. Mr.CLARK TERRY / (TCB)」
が面白い。(ジャケ写はオリジナルじゃないと思います。)
でも完全に主役をクラークテリーに奪われてます(笑)。
「OSCAR PETERSON+ONE / (VERVE)」ででも演ってた"MUMBLES"の
ハナモゲラ系スキャットを長い尺で聴く事ができます。爆笑必至。

robert03.jpg (11742 バイト)話がそれてしまいました(笑)。
ジョージロバートで大好きなアルバムがもう一枚。
「VOYAGE / (TCB)」
(←これもジャケ写がオリジナルじゃなさっぽい(^-^;)
ワンホーンカルテットでイマジネーション溢れるプレイが聴けます。
デュークピアソンの"JEANINE"、ハンコックの"DOLPHIN DANCE"、
ケニーバロンの"VOYAGE"と、ジャズメンの名曲が素晴らしい。

もっともっと評価されていいミュージシャンだと思います。

【追記】
とか何とか云ってたら、そこそこ評価されて始めたみたいで、
ケニーバロンとの「」なんてアルバムがDIWから発売されました。
でもバロンと演ってるのに"VOYAGE"を取り上げたないのが残念。
で、名前がジョージロバートではなくジョルジュロベールだった事が判明。
殆ど引っ掛け問題や(笑)。

 


GEORGE RUSSELL

EZZ-THETICS / (RIVERSIDE)
george01.jpg (9161 バイト) DON ELLIS(TP),DAVE BAKER(TB),ERIC DOLPHY(AS,B-CL),
GEORGE RUSSELL(PF),STEPHEN SWALLOW(B),JOE HUNT(DS)
A-1.EZZ-THETICS
 2.NARDIS
 3.LYDIOT
B-1.THOUGHT
 2.HONESTY
 3.'ROUND MIDNIGHT

リバーサイドに残されたラッセルのアルバムのうち、
最も密度の濃い作品がこれだと思います。

まずは、名曲"EZZ-THETHICS"を演奏している事です。
コールポーターの"LOVE FOR SALE"の進行を借りて作られたこの曲、
この後もしつこくしつこく演奏されつづけていくわけですが、
個人的には、ここでの完成度を超えるものはないと思ってます。

次に、ドルフィーが参加している事。
彼のアルトは、ラッセルの曲に彩りを添えるどころか、
ラッセルの曲のカラーを決定づけているとさえ思えます。
だから、この後のリビングタイムオーケストラとかを聴いても、
「ここにドルフィーが入ってたらなぁ。」と考えてしまう(笑)。

 

GERRY MULLIGAN

I WANT TO LIVE! / (LIBERTY)
gerry01.jpg (22032 バイト) GERRY MULLIGAN(BS),ART FARMER(TP),
BUD SHANK(AS,FL),FRANK ROSOLINO(TB),
PETE JOLLY(PF),RED MITCHELL(B),
SHELLY MANNE(DS)
A-1.BLACK NIGHTGOWN
  2.THEME FROM A WANT TO LIVE
  3.NIGHT WATCH
B-1.FRISCO CLUB
  2.BARBARA'S THEME
  3.LIFE'S A FUNNY THING

映画「私は死にたくない」の音楽としてジョニーマンデルが曲を書き、
それをウエストコースト系の超一流ミュージシャンが演奏、
劇中にもかっこいいマリガンの姿を登場させ‥‥、
まー今で云うところのメディアミックスなアルバムですね(笑)。
映画は観た事ありませんので資料に基づいて簡単に書きますと、
無実の罪をきせられた女性がガス室送りになったと云う実話を描いたもの。
映画と楽曲と演奏の三つが見事に融合された作品なのだそうです。
映画の部分はさておき、後の二つの要素については
このアルバムを聴けば一発でわかっていただけると思います。
但しこの演奏は、実際の映画のサントラではなく、
後で別録りされたものです。
サントラ部分を含んだコンプリートなCDが最近発売されていましたので
今ならそちらが簡単に入手できる事と思います。

"いそしぎ"で有名なジョニーマンデルの魅力的な曲もさる事ながら
アンサンブルとアドリブが交錯する巧みな構成のアレンジを見事に活かし、
澱みない演奏を繰り広げる西海岸の旗手達に脱帽です。非の打ち所なし。

 

WHAT IS THERE TO SAY? / (COLUMBIA)
gerry02.jpg (5564 バイト) GERRY MULLIGAN(BS),ART FARMER(TP),
BILL CROW(B),DAVE BAILEY(DS)
A-1.WHAT IS THERE TO SAY?
  2.JUST IN TIME
  3.NEWS FROM BLUEPORT
  4.FASTIVE MINOR
B-1.AS CATCH
  2.MY FUNNY VALENTINE
  3.BLUEPORT
  4.UTTER CHAOS

音楽は音を楽しむと書きます。
このアルバムはマリガンが自分の好きなサウンドを
心おきなく楽しんで表現したって感じの作品なんですね。
素直で明るい旋律、気持ちの良いアンサンブル。
これらの演奏前に事前に用意された要素と
レコーディングの現場で創造されていくアドリブのスリルが
見事なバランスを保って一つの音楽を作り上げています。
演ってる連中も楽しいでしょうけど、聴いてる我々も楽しい。
私個人の趣味ですけど、ここに収められている"BLUEPORT"が好きです。
ウエストコーストジャズの魅力を満載したアイデアとスリル満載の
素晴らしい演奏だと思います。
かの実録映画「真夏の夜のジャズ」の中でも演奏されたこの曲。
真っ赤なジャケットを着て音に打ちこむマリガンの姿、カッコ良かったなぁ…。
輸入CDで見かけた事がありますので入手は容易だと思います。
是非聴いて欲しいアルバムです。

gerry03.jpg (2301 バイト)マリガンの中で少し異質なアルバムになるかもしれませんが、
「CONCERT IN JAZZ/(VERVE)」も忘れられないアルバムです。
自らもアレンジャーとしての才能を持つマリガンが、
彼の率いるTHE CONCERT JAZZ BANDの為に
他のアレンジャーに作編曲を依頼して作ったアルバムな訳です。
その中に名前を連ねているのがジョージラッセル、ゲイリーマクファーソン、
ジョニーキャリシ、ボブブルックマイヤー、そしてマリガンなんですが、
特にラッセルの"ALL ABOUT ROSIE"がこのアルバムの目玉と云っても
良いでしょう。
凡百のアレンジャーでは表現できないサウンドは、申し訳ありませんが
他のどのトラックよりもバンドに躍動感を与えている感じがします。
この曲はもともとブランダイズ大学芸術祭の依頼で作られたモノで
gerry04.jpg (2831 バイト)「BRANDIES JAZZ FESTIVAL/
      GUNTHERSCHULLER&GEORGE RUSSELL(CBS)」
と云うアルバムでオリジナルアレンジを聴けます。
アートファーマー、ジミーネッパー、ハルマクージック、
ティディーチャールズそしてビルエヴァンスが参加しています。
両方のヴァージョンを聴き較べて見るのも面白いと思います。

少し話がそれましたが、マリガンの魅力は彼のプレイだけでなく
アレンジに対するこだわりだと云うお話でした(笑)。

H

HAMPTON HAWES

THE GREEN LEAVES OF SUMMER / (CONTEMPORARY)
hawes01.jpg (23063 バイト) HAMPTON HAWES(PF),
MONK MONGOMERY(B),
STEVE ELLINGTON(DS)
A-1.VIERD BLUES
  2.THE GREEN LEAVES OF SUMMER
  3.ILL WIND
  4.ST.THOMAS
B-1.SECRET LOVE
  2.BLUE SKIES
  3.THE MORE I SEE YOU
  4.G.K.BLUES

hawes02.jpg (8006 バイト)ハンプトンホーズは、力強く重いタッチでありながらも
黒人独特の粘っこさとは全く違った明るい躍動感を持ってました。
50年代のコンテンポラリーへの吹き込み作品は、
どれをとっても素晴らしい。
とりわけ名盤中の名盤と云われる
「THE TRIO VOL.1〜3/(CONTEMPORARY)」は、
何の迷いもなく自分のスタイルで邁進するホーズの演奏が
克明にとらえられています。
鍵盤の上をコロコロ転がるフレーズではなく、
グイグイと押していく息の長いフレーズは、
聴いていてホントに気持ち良い。

ところが,そんな彼のスタイルが60年代に入って変化していきます。
ここで取り上げた「THE GREEN LEAVES OF SUMMER」は、
58年に麻薬で逮捕されて5年余りのブランクの後に吹き込まれた
復帰第一作目にあたります。
指が動かないのではなく、信条だったドライブ感を
敢えて排除した様な朴訥としたフレージングが目立ちます。
左手のバッキングもパワーを抑え最小限の音数。
表題曲の"THE GREEN LEAVES OF SUMMER"は、昔のホーズなら
取り上げることのなかった選曲です。
しかし、この胸がしめつけられる様な説得力は一体何なんでしょう。
あまり音楽にサイドストーリーを求めるのは好きではありませんが、
ホーズを変容させたものは何だったんだろうと色々考えてしまいます。
他も"ILL WIND"、"THE MORE I SEE YOU"、"BLUE SKIES"、
"SECRET LOVE"と歌モノの表現が素晴らしく、
かみしめるように弾くホーズのピアノが心に沁みます。

こうしてホーズは、64年から77年に亡くなるまで、
深みのある作品を沢山生み出していきます。

hawes03.jpg (8404 バイト)とりわけ私が好きなのは、67年の
「HAMP'S PIANO/(MPS)」
"恋とは何でしょう"は、「THE TRIO VOL.1」でも
演奏されていましたから聴き比べてみるのも良いかも。
クレジット上ではトリオですが、半分がベースとのデュオ。
こちらの方がホーズの表情がよく出ています。

hawes04.jpg (8045 バイト)そしてホーズの最後の作品がこれ。
「AT THE PIANO/(CONTENPORARY)」(76年)
古巣コンテンポラリーに戻っての録音と云うのが感慨深い。
名手レイブラウン、シェリーマンのサポートを得て、
円熟の中に新しいフィーリングを感じさせる演奏です。
"やさしく歌って"や"SUNNY"の様なPOPSの解釈もさすが。

スタイルの変化したミュージシャンに対しては、
「前期か?」「後期か?」みたいな勝手な論争が良くありますが、
ウマさんの場合、全て良いって結論に落ち着きそうです(笑)。


HANNIBAL MARVIN PETERSON

HANNIBAL / HANNIBAL AND THE SUNRISE ORCHESTRA (MPS)
hanibl01.jpg (19316 バイト) HANNIBAL MARVIN PETERSON(TP,KOTO,VO),
MICHAEL COCHRANE(PF),DIEDRE MURRAY(CELLO),
STAFFORD JAMES(B),THABO MICHAEL CARVIN(DS,PERC,VO),
CHRIS HART(PERC)
1.THE RABBIT
2.REVELATION
3.MISTY
4.THE VOYAGE
5.SOUL BROTHER-IN DEDICATION
        TO MALCOM X

ハンニバルは、絶対に人より体温が高いと思います。
血圧も倍くらいあるかもしれません。
ホルモンの分泌も無尽蔵の恐れがあります(笑)。
とにかく、こんな凄いラッパを聴いた事がありません。

ギルエヴァンスのオーケストラでソロをとっている時は、
そんなに気にしてなかったんですが(他にも沢山いるので)、
リーダー作を聴いてぶっ飛びました。
トランペットの音が始終叫んでるのです。
聴きどころは、熱い熱い4ビート"REVELATION"と
ソウルフルな8ビート"SOUL BROTHER-IN DEDICATION TO MALCOM X"。
あと、テーマが全く出てこない男の"MISTY"もいい(笑)。

hanibl02.jpg (11170 バイト)最近、MPSが大量にCD化されているので、
「HANNIBAL IN BERLIN / (MPS)」も日本盤で入手可能です。
ライヴと云う事もあって更にヒートアップ、
頭に血がのぼっている為かフレーズが単調で素晴らしい(笑)。
コルトレーンのイメージが強すぎて、誰もが敬遠する
"MY FAVORITE THINGS"を臆面もなくぶちかましてくれてます。


hanibl03.jpg (8640 バイト)上記とほぼ同時期の別のライブアルバム
「HANNIBAL IN ANTIBES / (ENJA)」も凄まじい。
20分前後の演奏2曲が収められています。
演奏の尺が長い事でアドリブのアプローチが
「IN BERLIN」と全く異なりドラマティックです。

 

HELEN MERRILL

HELEN MERRILL / (EMARCY)
helen01.jpg (21291 バイト) HELEN MERRILL(VO),CLIFFORD BROWN(TP),
JIMMY JONES(PF),BARRY GALBRAITH(G),
DANNY BANK(BS),MILT HINTON(B),
OSIE JOHNSON(DS),OSCAR PETTIFORD(B),
BOBBY DONALDSON(DS),QUINCY JONES(ARR)
A-1.S'WONDERFUL
  2.YOU'D BE SO NICE
         TO COME HOME TO
  3.WHAT'S NEW
  4.FALLING IN LOVE WITH LOVE
B-1.YESTERDAYS
  2.BORN TO BE BLUE
  3.DON'T EXPLAIN

原題は「HELEN MERRILL」であって、「WITH CLIFFORD BROWN」の文字は、
どこにも書かれていません。でも「WITH CLIFFORD BROWN」なんですよね(笑)。

とにかく聴き所のかたまりみたいな名盤です。
吐息までが生々しく伝わってくるヘレンメリルのハスキーヴォイス、
イマジネーション溢れる輝かしいクリフォードブラウンのソロ、
クインシージョーンズの冴え渡るアレンジ、
そして"YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO"の決定的名演。

全ての曲でのブラウニーのソロが素晴らしいの一言です。
あまりの完成度に書き符ではないのかと疑いたくなるくらいです。
更に、この艶やかでダイナミックな音色。
彼を超えるトランペッターは、今に至るまで現れていないと思います。

このアルバムを少し違った切り口で聴いてみるなら、
ピアノのジミージョーンズに耳を傾けてみるのも面白いかもしれません。
数曲でソロをとっているんですが、こいつのピアノが結構変。
ブロックコードだけでアドリブなんだかバッキングなんだかわからない様な
ソロをとってみたり、異常にテンションの高いスケールを弾いたり‥‥。
気にして聴いてみるとメリルやブラウニーのバックでひっきりなしに、
奇妙なフレーズを絡めて来ているんですね。

helen03.jpg (9869 バイト)ヘレンメリルは、それから40年の時を経て
「BROWNIE / (VERVE)」ってアルバムを録音しています。
クリフォードブラウンに思いを寄せて幾つかの曲を再演。
出来は‥‥。まあ、企画先行って事で(笑)。
ルーソロフ、ロイハーグローヴ、トムハレル、ウォレスルーニーと、
当代きっての名手が参加しています。
んでもって、出来は‥‥。まあ、企画先行って事で(笑)。

helen02.jpg (7919 バイト)彼女の他の作品で印象深いのが
「MUSIC MAKERS / (OWL)」です。
スティーヴレイシーの演奏が素晴らしく、ドラムレスの構成も効果的。
ゴードンベックのピアノ&エレピも美しい。
個人的には、ステファングラッペリの参加には疑問を感じます。
一気にテンションが下がってしまってる様な気がして‥‥。
ちょっと勿体無い、かな。

 

HORACE SILVER

BLOWIN' THE BLUES AWAY / (BLUE NOTE)
silver01.jpg (25381 バイト) BLUE MITCHELL(TP),JUNIOR COOK(TS),
HORACE SILVER(PF),EUGENE TAYLOR(B),
LOUIS HAYES
1.BLOWIN'THE BLUES AWAY
2.THE ST.VITUS DANCE
3.BREAK CITY
4.PEACE
5.SISTER SADIE
6.THE BAGHDAD BLUES
7.MELANCHOLY MOOD  NEW VERSION

ホレスシルヴァーの演奏を聴くにつけ、テーマの魅力って大きいなぁと思います。
彼のオリジナルは、そう云った意味ではかなりキャッチーです。
流行り歌に近い感覚かな。
クサさとカッコよさの微妙なところをついてきます(笑)。
アーシーでファンキーな部分と洗練された部分が、
なんかこう、うまい具合に入り交じって‥‥。
それを魅力的なフロント陣がビシッと極める。聴いてる方は、スカッとする。
って事で、この「気持ち良さ度」(今、命名)を基準に
お薦めアルバムを選ばせていただきました(笑)。

まずこのアルバムの気持ち良いところは、
"BLOWIN' THE BLUES AWAY","BREAK CITY","SISTER SADIE"と
いかにもシルヴァーらしいミディアムファスト以上の曲が並ぶ中、
"THE ST.VITUS DANCE"みたいなトリオ演奏が挟まれていたり、
珠玉のバラッド"PEACE"が演奏されていたりする事です。
そして、次に気持ち良いポイントと云えば、
ブルーミッチェルの音色に尽きるでしょう。
彼のハリのあるトランペットのお陰でアンサンブルのキレが
一段も二段もアップしてます。

アルバム全体として見た場合の「総合気持ち良さ度」では
「BLOWIN' THE BLUES AWAY」に軍配が上がりますが、
この曲一曲だけの「瞬間的気持ち良さ度」に注目すれば、
どうしてもこの二枚を挙げておきたいです(笑)。
"COOKIN' AT THE CONTINENTAL"の聴ける
「FINGER POPPIN'」(上)、
"THE KICKER"の聴ける
「SONG FOR MY FATHER」(下)
(いずれもブルーノートレーベル)
前者は、「BLOWIN' THE BLUES AWAY」と全く同じメンバーです。
後者は、トランペットのカーメルジョーンズが少し弱い代わりに、
テナーのジョーヘンダーソンが強烈。
コテコテのファンキーから一歩抜き出たソロを展開します。


HOUDINI'S,THE

KICKIN' IN THE FRONTWINDOW / (TIMELESS)
ANGELO VERPLOEGEN(TP),ROLF DELFOS(AS,SS),
BORIS VANDERLEK(TS),ERWIN HOORWEG(PF),
MARIUS BEETS(B),BRAM WIJLAND(DS)
1.CATCH 22 HOT
2.LULLEMAN
3.EDD TIDE
4.KICKIN' IN THE FRONTWINDOW
5.MOOSE'S MOOD
6.BOUNCIN' MARIO
7.FAT GROUPIE
8.I FALL IN LOVE TOO EASILY
9.GONE
10.SINGLE BREATH ORGY
11.DON'T MOVE

THE HOUDINI'Sはオランダ出身のコンボです。
メンバーは細かく入れ替わっているみたいですが、
この1993年の当時は上記の編成でした。
2002年のメンバーではテナーが抜けてトロンボーンが入っているので
サウンドに違いが出てきてるんでしょうね。

とにかくアンサンブルの気持ちよさが半端じゃありません。
「ここは渋く抑えて。」なんて事を考えずに、キメるトコロはがーっといく(笑)。
ベースが唸って、ドラムが鼓舞して、ホーンが鳴り切るコンボを
カッコイイと思わないジャズファンがいるでしょうか、いやいない。
優等生的なコンボではなく、悪ガキどものはっちゃけた暴れぶりに
とうちゃん嬉しくて涙でてくらぁって感じなのです(意味不明)。

楽曲の多くがメンバーのオリジナルと云うのもポイント高し。
ファンキーで痛快な曲のオンパレードです。
中でもROLF DELFOSの"LULLEMAN"は凄い。
緩やかな前半部分からドラマティックに変化していく構成。
良く聴けば一人一人のソロが突出している訳ではないけれど、
アンサンブルアレンジと構成の巧さで演奏のクォリティを
数段上げている様に思います。

他には、この「KICHIN' IN THE FRONTWINDOW」の
翌年に録音された
HYBRID/(CHALLANGE)」
1996年のオーストラリアでのライヴアルバム
「THE BEST OF THE HOUDINI'S/(CHALLANGE)」良い。
同じ1996年の「COOEE/(CHALLANGE)」は
エリントン系の曲を多く取り上げたり、
フリーキーな展開を見せたりと、少し肌触りの違う作品。


HOWARD McGHEE

MUSIC FROM THE CONNECTION / (FELSTED)
mcghee01.jpg (17180 バイト) HOWARD McGHEE(TP),TINA BROOKS(TS),
I.CHING(PF),MILT HINTON(B),
OSIE JOHNSON(DS)
※I.CHINGは、FREDDIE REDDの変名
A-1.WHO KILLED COCK ROBIN?
  2.WIGGLIN'
  3.MUSIC FOREVER
  4.TIME TO SMILE
B-1.THEME FOR SISTER SALVATION
  2.JIM DUNN'S DILEMMA
  3.O.D.(OVERDOSE)

このアルバムで演奏されている曲は、麻薬を題材に扱った演劇
「ザ・コネクション」の劇中歌としてフレディレッドが作曲したものです。
その舞台では実際にジャッキーマクリーンやフレディレッドといった
ジャズメンが俳優兼プレイヤーとして出演したとの事。
redd01.jpg (9875 バイト)そのマクリーンとレッドによるアルバム
「THE MUSIC FROM THE CONNECTION / FREDDIE REDD (BLUE NOTE)」
素晴らしい作品なのですが、ワンホーンモノと云う事もあって
マクリーン色が大変濃い仕上がりになっています。
一方このフェルステッド盤の良いところはフロント2管による
アンサンブルが聴ける事です。
実はこれがとっても大きなポイントなんです。
フレディレッドによるこの舞台音楽はどれもハードバップとして魅力ある曲なので
フロントの分厚さでイメージが全然変わってくるんです。
‥‥ま、殆どユニゾンですが(笑)。
冒頭の"WHO KILLED COCK ROBIN?"(ん?誰が殺したクックロビン?!)や
"JIM DUNN'S DILEMMA"辺りを聴き比べて見ればその差は歴然。
マクリーンのアドリブの素晴らしさを考慮しても軍配はフェルステッド盤に。

特に誰のソロが傑出しているって訳でもないんですけど、
全体としてみんなの溌剌としたプレイが展開されていてバランスが良いです。
心底からハードバップを感じさせてくれる名盤だと思います。

payne01.jpg (9997 バイト)更にこの「ザ・コネクション」には、もう一つの名盤が存在します。
「THE CONNECTION / (CHARLIE PARKER RECORD)」がそれです。
こちらの作品は、先の公演の好評を受けて、
別の劇場で上演される際に全く新しく書き直されたもの。
作曲を担当したのがセシルペインとケニードリュー。
メンバーも壮観で、CECIL PAYNE(BS),CLARK TERRY(TP),
BENNIE GREEN(TB),DUKE JORDAN(PF),CHARLIE PERSIP(DS),
RON CARTER(B)と凄い顔ぶれが揃っています。
一人一人の演奏のレベルはこちらの方がかなり高い様な気もしますが、
楽曲の魅力の差でやはりフェルステッド盤に一歩譲る‥‥かな?(笑)


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