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Act three "あんのーんふぉーす いん ふろーとひる"
 

 彼はSDADから流れる曲を聴きながら地上へと昇る列車の揺れに身を任せていた
『〜 Sometime it gets so hand without you.
It sense to me the whole world's away
Do you know that you have a clue.
Why I was born to live this windy day?
I think of you,oh,you holding me tight now feel your warmth revive...
It must be something that comes, flooding into my heart
there must be something that leads me through the space between.
It seems so far away We've come,but it's only a start
tonight for you I pray to the brightest star on the heavenly screen. 〜』

 

 地上に出ると彼は 比較的近くの芦ノ湖に向かった
 波の音を聞きに・・・ あの場所へ・・・
 

 湖の畔の湖に向いた あのベンチに座っていると後ろの方から声をかけられた
「どうしたんですか? こんな所で」
 独特のアクセントの声 首を回すとそこには青い瞳 鮮やかな黄金色の髪を上げたトレーナー姿のジェノア・ニルバーノの姿があった 彼は首を元に戻し
「波の音を聞いている(まさか 裕美と話そうとしていた などとは言えぬ 私はジェノアを裕美の代わりとして見ているのだろうか だとすれば 私はとんでもない愚か者だ)」
「波の音?」
「ああ 落ち着くんだよ 所でジェノアは?・・・」
「シンクロテストが終わりましたからジョギングでもと・・・ でも ここまで来たら後はいつも歩いて帰りますけど」
 この二人 二ヶ月ほど前に一悶着あってからだが 仲が良かった 彼女はエヴァンゲリオン4号機の予備パイロットだ
 朝霧は立ち上がり
「一緒に戻るか?」
「はい ・・・そう言えば明日ですね」
「ああ 明日だ準備は?」
「ばっちりです」
 ジェノアの嬉しそうな表情を見て 彼は困惑した表情を見られぬように湖の方へと歩き出す
 だが彼女は朝霧の瞳の中に迷いの感情を見てしまった 彼は出来るだけ自然に深呼吸をしたようだ
「タケオ 幸せは 悲しみの海に沈んでいては 得られるものでは・・・」
 目が合う 彼は視線があったまま瞼を閉じた 訪れる沈黙の後 彼は
「行こうか(そうだな 裕美の分まで幸せにならねばな ・・・少なくとも今と言う名の時は)」
 そう言って振り返った 他人ではほとんど表情に出ないため分からないだろうが 空元気のままに朝霧は言ったのだ
「はい」
 ジェノアは短く答え 二人はベンチから離れていった

 ときに彼女の射撃能力は某ヒットマンを彷彿とさせるような程にすごいのだ まるで銃器を自分の体のごとく使うのだから
 ちなみに以前の施設では銃を携帯していたらしい だがこちらに来てからは携帯していない 彼女の話によると未だに申請中なのだそうだ まあ日常では特に必要な道具ではないのだが・・・
 話がそれるが 彼女の格闘技のタイプは通常のタイプと言えるだろう 故在って朝霧と格闘訓練することもある ただし彼女自身格闘技はあまり得意でないので 朝霧が相手を傷つけることもなく十分に訓練の相手ができる程度である とは言え彼女との訓練の後に朝霧の体に新しい痣がいつもより多くできるのはいつものことだったが・・・

 朝霧も彼なりの戦い方をすれば それなりに引けを取らないのだが 教官からその戦い方を禁止されている ちなみに6秒事件は教官にそう言われたその翌日に起こった 今まではほとんど脊髄反射に近い形で戦闘していたのだ 急に戦う型を変えるのがいかに難しいかを物語っていた事件でもあった
 

翌日
 第三東京は厚い雲に覆われていた
「なかなか 壮観な景色だな 雲の湖 とでも言うべきか・・・」
 それが箱根外輪山の尾根の上の少し開けた場所から見下ろした朝霧の感想だった 反対側には富士山が望める
「タぁケオぉー」
 疲れ切った声 ジェノアだ
「ご苦労様 一息つこうか」
 彼女はほとんど荷物を持ってきていない 代わりに朝霧が荷物を持っているのだ 二人とも長袖長ズボンな山登りの服装である 二人は道を避けるようにして腰を下ろした 下に見えるはずのTokio-3を覆う雲以外にはまとまった雲もなく 遠くまでよく晴れ渡っている

ほぼ同時刻Tokio-3
 足下まで届こうかというほのかに緑をたたえる白髪に深い緑の瞳という独特の風貌をした人物がスーパーから出てきた 大量の買い物袋と共に
「ふむ 買い物も終わったし 後は帰るだけだな」
 そんな事を言いながらユウロスは大量の買い物袋を抱え お気に入りの軽自動車に乗り込む
 エンジンキーを差し込んだ直後
 ピピピッ ピピピッ ピピピッ
 どう見ても手の大きさしかないポケットの深くから携帯をとりだし回線をつなぐ
「はい ああ どうした? ・・・分かった急いで帰る」
 特に表情をかえるでもなく回線を切り エンジンをかけ車を駐車場から出した

第一発令所
 なんの前触れもなくサイレンは鳴り響いた
「何事?」
「使徒です 反応は・・・ 直上 第三東京上空200m」
「そんなっ エヴァ発進準備急いで!」

Tokio-3
 雲の中で光ががうごめいている 見上げる数千の瞳 鳴り始めるサイレン
「いかんな 住民の避難が間に合わん 死傷者が多数出るな・・・」
 そうつぶやき 彼は仕方なく車を車道の端に寄せ止めた 一般人に混じって避難するために
 と ドアに手を掛けた直後 視界が光に包まれる

第一発令所
 そのモニタの一つに使徒の放った光線が青い軽自動車を襲った 爆発の後 煙が晴れる後には爆発によるクレーターのみ残り周りには人間の形をした炭が転がっていた

Tokio-3
「なんだ? 私をねらったのか?」
 そんな事を言いながら かろうじて取り出した大根などが入った買い物袋を片手に抱え 彼はその髪を風に任せビルの屋上から下を見下ろし 燃える暇もなく蒸発した自分の軽自動車の在った場所から視線を雲の中の光に向ける が
「しかし 完全に蒸発したから保険おりるかな・・・」
 主夫とはやはりこういう物らしい・・・
「さて 取りあえず避難するか」
 自分に言い聞かせるように呟いた直後

第一発令所
 使徒の放った光線がビルの屋上付近でぱっとはじけるように四散する様子がモニタの一つに映し出される
「街を攻撃しているの?」
「エヴァ零号機出撃準備完了 初号機は後20秒 弐号機以降はパイロットが未だ到着していません」
「零号機と初号機を同時に出撃させて 初号機にはパレットライフルを零号機にはポジトロンライフルを用意して」
「了解」

Tokio-3
 平然と光線の放たれた雲を見やるユウロス
「私を狙ったというのか 良いだろう・・・ そろそろエヴァが出てくる頃か・・・」
と 振り返って屋上からビルの中に入る階段を・・・
「・・・入り口が さっきの攻撃で壊れてる 参ったな」
 そう言った直後彼はビルの屋上から音もなく姿を消した
 それから少ししてエヴァ零号機と初号機による 残り三機が出撃するまでの時間稼ぎをすることになった

箱根外輪山
「はい 分かりました このまま向かいます」
「使徒がな」
「タケオ 行こう」
「分かった 急ごう」
 ジェノアは朝霧に指示された迎えのヘリが到着できる開けた場所を指し示す 彼は鉄道時計にて時間を確認する 現在午前11時24分
 二人はその場から元来た方向ではなく 先に進むような形で尾根をすすむ
 時折 聞き慣れた爆音が遠く第三東京から響いてくるのが二人の耳に届いた
 

 相手が雲のままなので 結局稼働するエヴァが全機そろうものの有効な手だてもなく全機が一度帰還し作戦を練り直すこととなった
 

常闇
「限定空間を展開 SIVA浮上する」
 都市上空に一瞬波紋のような淡い光の揺らめきが起こり その中心へと光がゆっくりと流れ込み始めると同時に中心から闇が広がる 光と闇はお互いに打ち消しあい その中にエヴァの半分ほどの大きさの人型の常闇の姿があった
 光と闇が完全に打ち消しあうと それは音もなく光を放つ翼を広げた 常闇の翼の骨格から光をたたえた翼がのびる
「さて 私を敵に回したのだ この空からお前が在るという事象を全て消し去ってくれよう」
 と意気込んだものの 相手は眼下に 雲のままである・・・

第一発令所
「都市上空500mに新たな反応 パターンは・・・ MAGIパターン出力を拒否しています!」
「「なんですって」」
 リツコとミサトの声がだぶる
「どう言う事?」
「詳しくは分かりません なんだと! あ いえ MAGIは新たな反応に対する映像以外の全データ出力を2対1で否決しました」
 思わず何処か山の中腹にあるカメラが捉えた 神々しいまでに光を放つ翼をはためかせるような鎧を纏った人型の常闇を映し出す主モニタを見つめてしまう 発令所の面々

司令のブース
「私のシナリオにはないぞ 碇」
「シナリオだけが全てではない 老人達には良い薬だろう」
「たしかにな」
「冬月 あれが何に見える?」
「知らない方が良いものが 世の中には存在するものだよ 碇君」
「だが 知らなければならない」
「どうしようというのだ?」
「簡単なことだ 拒否しているMAGIを切り離せばいい」
「しかし それでは他のシステムが それに・・・」
「かまわん」

常闇
「空を渡る者に 勝てるなどと思わぬ事だな ・・・さて データ収集完了・・・ まずは恐怖から 始めよう」
 全く感情の交じらないフラットな言葉が広がった
 常闇はそのまま高度を下げ雲に近づいて行く
 程なく常闇の足が雲に触れる 雲は常闇の足を離すまいとその足にからみつく だが常闇はそのままの速度で高度を下げ雲の中に沈んだ

第一発令所
 若干の口論があった物の やはり司令に従うこととなった
「切り離し作業に入ります」
「ああ 始めてくれ」
「上空の気温が下がり始めました 現在摂氏14度まだ下がります」
「気温が? どう言う事 まさか」

常闇
 ウインドウに表示されるデータの一つに目を向け
「干渉波か この私を知りたいのか?」
 彼は手元のキーボードを操作しつつ
「愚か者が」
 そう呟き キー入力を終えた
「さぁ 身の 程を 知るがよい」

第一発令所
「使徒のATフィールド 反応が強力になりつつあり あの物体は未だ健在の模様」

常闇
 頭の部位にある目のような部分が 紅く鈍く光る
「悲しいかな そんな物がなんの役に立つ ・・・さぁ 怯え 叫ぶがよい 恐怖を知れ」
 言いつつ手元のウインドウに表示されるデータを視界の端に捉えている
 グラフは踊る 何かを訴える言葉を紡ぎ出すように

第一発令所
「使徒の反応が変化を始めました 反応が収束しつつあります」
 青葉の報告に発令所の視線が主モニタに集まる そこには一カ所に集中している雲の中から 非常に透明度の高い水晶のような大小様々な結晶体で構成される2本の触手らしきものが 全く正確にのび常闇を捉えているのが映し出されていた

常闇
 ネルフ内の発令所の様子をモニタしている彼は
「しかし Magiか所詮ハードは道具でしかないのに」
 そう呟き 使徒の方を見やり
「雲が 邪魔だな MSDを出力ナノレベルで・・・ 発射」

 直後常闇はその頭の部分を使徒の方に向け どこからともなく闇のかけらを使徒を覆う雲へ向け放った
 放たれた闇のかけらは使徒を追おう雲を巻き込み まるで吸い込むようにして使徒を覆う雲を引き剥がし
 消えた

 触手と同じように大小様々な水晶のような結晶体に覆われたその中に 一見機械のような中身がうごめいているのが見えている 触手の付け根には小さな触手が4本その中に口のような器官がうごめいている 紅いコアの位置はその口の奥辺りに見えた

常闇
「見えるのは良いが EVAなら 彼ならどうするかな ・・・惑星圏内で他に使用可能な攻撃オプションは」
 ことごとく赤で表示される使用不能オプション その中に一つだけ黄色で表示されるHGZの表示
「かろうじてHGZだけか では出すとしよう その前に・・・」

 常闇を捉えていた触手が光りへと 空間に溶けるように消えて行く 使徒はその残った触手を引き戻し自身の中にしまい込んだ 常闇はそのままに使徒から距離をとり 自身の身長ほどはあろうかという大剣を何もない空から左手で引き抜いた そのままその象牙から削りだしたような白い大剣を左手のみで構える

常闇
「しかし やはりSIVAで来るのはまずかったかな 元来外宇宙用の兵装だから出力調整が不安定だな 何が悲しくてナノクラスに調整しないといけないんだか・・・ まあぼやいても始まらんな これしか持ってきていないし・・・」
 結構ぶつぶつと呟いている

第一発令所
「気温はどうなっているの?」
「はい徐々に緩やかに変化しつつあります 現在氷点下16度です」
「切り離し作業終了しました」
「データ来ます ・・・」
 いきなり沈黙した青葉は 一度頭を振り 再び表示に目をやり 口を開いた
「なんなんだこれは 推定静止質量が天体クラスじゃないか」
「データを回して」
 リツコの言葉に 伊吹のコンソールにデータを回す青葉
「なによこれ 有り得ないわ」
「どうしたのよ リツコ」
「貴方に分かる? 使徒とあの物体が戦っている空間が完全に隔離されているのよ それなのにその空間の外から中の様子をのぞけるなんて」
「は?」
 言われたことの現実感のなさに そう口走ってしまう葛城

常闇
「ふっ まあ中の様子を見せるのはご愛敬だ どうせ魔法としか理解できまいて・・・」

第一発令所
「簡単に言えば 外から中の様子を見ることが出来ても 手を出すことが出来ない訳ですね 先輩」
 伊吹が赤木の言葉を簡単に説明した
「じゃあなに 私達には指をくわえて見ているしかないって事?」
「そう言うことね」
「現在 都市上空の温度氷点下24度で安定しています」

箱根外輪山
 後ろを着いてきているジェノアの様子が気になり振り返った朝霧だったが 視線の向こうに使徒ともう一つ光を放つ黒い物体が見て取れた
「どうしたのです?」
 そう言って ジェノアは朝霧の視線を追った
「使徒とあれは?EVAではありませんよね?」
 同意を求め振り返った彼女の視界には 朝霧が携帯用の望遠鏡で相手を覗いている姿があった
「どうですか?」
「(あれはzweihander? 同じだ SIVAだったな なにかの頭文字だったと思うが 全くやってくれる)あの馬鹿!」
「は?」
「えっ?」
 ジェノアの事などすっかり忘れてしまっていた朝霧はあわてて
「いや そのあの・・・」
「私にも・・・」
「ああ」
 朝霧から携帯用の望遠鏡を貸して貰い使徒と常闇の方を見る
「あの」
 戦いの場を覗いたままジェノアは
「ご存じなのですか?」
「なにを?」
「あの闇のような物を」
「知っている はずだが 確証が脆い」
「話してもらえますか? ワタシに」
「良いだろう だが速いところあのヘリに乗ろう」
「・・・はい」
 二人は着陸態勢に入っているネルフのヘリに向かって走り始めるのだった

 修復でもしたのか 使徒の体内に収まっていた触手が吐き出されるように姿を現す その先端が常闇に向けられ 光った
 ほぼ同時に常闇の少し前面に空間に穴が開くようにごく小さい闇が生まれた
 一瞬後 その闇から 使徒の触手の先端と同じ様な光が発せられ 使徒のATフィールドを紅く輝かせた

 驚いた そう形容するのが最もふさわしい行動を使徒はとった 常闇からの距離が広がる

常闇
 使徒内部のエネルギー流動をモニタしつつ 限定空間の有効切断次元を上げる
「まあ 時間をかけても意味はあるまい 終わらせるか 早く戻って夕飯の買い物をし直さないと ・・・なれば shift・・・」

 象牙から削りだしたような白い大剣を常闇は左手のみで上段に構え その光を放つ翼を半ば畳み込こんだ
 次の瞬間 そこから常闇は消え 使徒の周りにいくつかの残像を残し 使徒の遙か後方に姿を見せた
 そして 使徒は3つの切り口から体液とおぼしき液体を噴き出し 目に見えるまでに強力な衝撃波が飛んだ

第一発令所
「使徒完全に沈黙しました」
 感情を込められない声で日向が告げた
「何て事 使徒のATフィールドは健在だったんでしょ」
「いまデータを出します」
「・・・ 推定静止質量390兆トンのあの剣で 音速の24倍もの速度で 使徒に三度 いずれも正確にコアの中心を切りつけ離脱 直後使徒は沈黙した という事よ」
「信じられないわ」
「私も信じたくないわ でも事実なのよ」
「じぁなに? ネルフなんかよりも高度な技術力を持った組織があるって事?」
「そう言うことになるわね」

常闇
「悪いが組織ではなく 個人なのだが
 ・・・さて 名もない使徒よ 消えよ 汝の過去と未来 全ての因果と共に 消えるがいい そして我も行こう ・・・いやまてよ 夕飯の買い物を 忘れていたな・・・」

 ゆっくりと常闇は使徒の真上に移動し 静止した 握られていた大剣は既にいずこかに消えていた
 完全に沈黙した 屍となっている使徒 それにその手のひららしき部分を向けた常闇
 その頭らしき部位の瞳の部分が紅く光った
 使徒が光を放つ
 まるで空へ墜ちる砂のように使徒は粉々になりながら淡く光を放ち空へと昇る

ヘリ内部
 手近なヘリポートへと朝霧とジェノアを乗せたヘリは外輪山山麓を降下していた
「ジェノア」
「タケオ」
 思わず視線の先に移る光景に二人はそれぞれの名を呼び合う

 幻想的な それとも絶望的な光景とでも朝霧なら言っただろうか
 やがてそれは最後の一粒まで空へ舞い上がった

常闇
「悲劇か喜劇か・・・ 結局使徒を相手にしようと 虚しさしか残らぬ と言うのか
 まあよい 夕飯の買い物に行くとしよう 一つの土産を置いて・・・」

 常闇はその頭らしき部位を空へ向け翼を畳む 一瞬波紋のような淡い光の揺らめきが起こり その中心へと光がゆっくりと流れ込み始めると同時に中心から闇が広がる 光と闇はお互いに打ち消しあい 中に常闇を内包し それらは陽炎のように消え去った

第一発令所
「反応は完全に消えました 使徒の残骸も確認できません」
「なんだったのよ あれは・・・」
「上空の気温が急激に変動します」
「元に戻ったようね」
「そのようね」

司令のブース
 事後処理を始めた部下を視界に納めたまま冬月は問いかけた
「どうするのだ?」
「・・・問題ないシナリオ通りだ」
「そうか ならばいいがな」
 冬月は彼がその額に汗を浮かべていることに気づいてはいたが言葉には出さなかった

外輪山山麓にあるヘリポート
「終わったようだな」
「そうですね」
 朝霧は取りあえずとばかりにヘリから降りた
「ん? さ 寒い・・・」
「え? そんなはず ! すいません毛布か何かありませんか?」
 ジェノアは程なく標準装備らしい毛布を二つもらい一つを彼に差し出す
「あ ありがとう」
 そう言って朝霧は受け取った毛布を羽織った
「寒いですね」
「ああ だがこの寒さ本来ならばこの日本にはやはり四季としてあるべき物だろうな 私はそれがどんな物かも感じたことはないが・・・」
 二人の視界に白い粉のような物がちらほらと降り始めた
「雪か」
 比較的近くにいた保安部員らしき人物がそう呟いた
 二人はそれぞれに毛布にくるまったまま空を見上げる
 いつの間にか空には雲が覆い被さり 冷たくて小さな氷の結晶が そこから静かに舞い降りてきているのだった
「これが雪」
「ワタシも降っているのを見るのは初めてです」
「奴に感謝しないとな」
 二人はそのままに空を見上げていた
 

 そして もう一度波紋のような光の揺らめきが全てを通り抜け・・・
 

「タぁケオぉー」
 疲れ切った声 ジェノアだ
 朝霧は振り返り
「ご苦労様 一息つこ・・・(やられた のか・・・)」
 二人分の荷物を抱えた朝霧は呆然と立っている
「タケオ?」
 様子がおかしいのに気がついたジェノアは もう一度
「タケオ どうしたの?」
 返事がないのを良いことに ジェノアは辺りを見渡し誰も見ていないことを確認し そのままタケオの唇を奪った
「なななななななっ」
 面白いくらいにあわてる朝霧
「何を考えていたのです?」
「・・・いや なに この景色を見ていたらな(雪か まあ いいさ・・・)」
 振り向いたジェノアの視線には 第三東京から芦ノ湖・箱根・外輪山その向こうやや霞の中の太平洋と伊豆半島が広がっている
「いい景色」
 下に見えるはずのTokio-3を覆う雲もなく 遠くまでよく晴れ渡っていた
 

夜 寮 朝霧の自室
『はい もしもし ナッキャストラフィーネです』
「あ 夜分すみません」
『あら 浅葱君 どうしたの?』
「ユウロスさんは?」
『ごめんね 彼ちょっと音信不通なの』
「はい?」
『たぶん一週間ぐらいで帰ってくると思うんだけど・・・』
「そうですか 分かりました」
『ごめんね』
 電話を切った朝霧は
「なんなんだ あの夫婦は」
 ため息混じりに呟いたのだった
 

後日 某模型店の隣の家にて
「やあ 浅葱さん いらっしゃい」
「単刀直入に聞きますが あの時 また時間に介入しましたね?」
「どうしたんだ? そんなに強く言わなくとも・・・」
「いえ まぁ確認です」
「まあな 私を敵に回したものにはことごとく滅んで貰う だが私から誰かを敵にするなんてことはしていないつもりだ」
「そうですか しばらく音沙汰なかったものですから どうされたのかと思いましたよ」
「それは失礼をしたな まぁここは刺激に満ちているからね まだしばらくはいることにするよ」
「そうですか ・・・どうですチェスでも」
「そうだな 今用意するよ それよりも雪はどうだった?」
 そう言って 一度部屋から出ていった彼は チェスの用意と常闇の模型をもって現れるのだった
 
 


お後に
 今回は『〜の日常 或いは平穏な日々』の第三作目に当たる話だったのでが 遅れに遅れてしまい現在に至ったわけで

 まあ・・・ 今回のはジョークですから・・・ 笑っていただければOKっ!
 ジョークついでに 使徒のもとネタはGradius2 3rd Stage:BOSS Crystal Core
 

おまけ

  朝霧のスペック・・・
基準排水量
公試排水量
全長
水線長
全幅
速力
航続力
燃料満載量
機関
出力
主要兵装
 

備考

 
1,680トン
1,980トン
118m
115.3m
10.36m
38ノット
14ノット/5,000哩
重油500トン
艦本式タービン2基2軸
50,000馬力
12.7センチ砲6問
7.7センチ機銃
61センチ魚雷発射管9門、魚雷18本
第二次世界大戦時に南方で沈んだ駆逐艦
綾波級もしくは特型Uと称される
中学生一人分
中学生一人分+装備
背は低い方だ
ほぼ身長に同じ
肩幅は広い方だ
平地より山の方が機動力を発揮できる
未計測
未計測
電気信号によるタイミング調整式カーボンベースポンプ1基
未計測
刃渡り三尺二寸の逆反りの刀"神無月"
無銘の鉈
己の身体
黙示録における登場キャラの一人
松本零士の作品を全て読破したらしい・・・


ついで
 
おたけくん:
ユウちゃん:
おたけくん:
ユウちゃん:
おたけくん:
γ:
ユウちゃん:
おたけくん:
γ:
 

おたけくん:
γ:
ユウちゃん:
γ:
おたけくん:
γ:
ユウちゃん:
おたけくん:

γ:

 
どんならん ねぇ
そう言われてもな
なっ いつの間に?
いや さっきからいたが 気がつかなかったのか?
めまいがしてきた
いやいや お二人さんそろったね
何なのだ 今回の話は
(台詞取られた・・・)
いや もともと朝霧君はユウロス君の性格をコンセプトに組み込んだのだわ
そんなんだから 敵として認識した者には容赦しないの 闇の中の方が落ち着くのも同じ
違うのはそれまでの重ねた時間ぐらいなの
で その辺りのことを表現したかったと?
そう言うこと
で?
でって?
いいのかい? BLEAD殿は
 あ・・・
行こうか
そうだな

あれ? ああ二人とも置いていかないで 待っておくれデシよぉーー
おっと 今回のは隠しがあるの 探してみるのも良いかも


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Ende