あふたぁ けぇす

ケース2 その名はevangelion



 我々の歴史は 300年ほど前 つまり西暦2026年以前のデータは皆無に等しかった
 現在 世界の人々は全て同じ言語で話し同じ文字を使っていた
 300年ほど前に何があったかは現在でも明確な学説がなく 謎のままであった
 ただ起こった出来事がサードインバクトと呼ばれることだけは明確な理由もないまま分かっていた
 ここ数世紀の文明の発展はめざましい物があったと言ってもいいだろう 現在では人類はその生活域の一部を衛星軌道上にまで広げるに至っていた
 
 
 

 14年前(西暦2341年)
「・・・スクリーンをご覧下さい」
 暗い室内にプロジェクターの映像が映し出される そこには複数の巨大な人間のような物体が同じスケールの形容不明な物体と戦闘している様子が映し出されていた
「なんだねこれは」
 問題にならない というような声の後 淡々と
「これは 例の遺跡で発見されたものです もちろんデータは修正しておりません 説明を始めてもよろしいでしょうか?」
「始めてくれ」
 淡々と流れる映像にevangelionの説明が付け加えられる それはこの会議に出席した全員を驚愕させるのに十分な物であった
 映像が終わり 静止画が現れる 先ほどの映像に出てきた 先ほど初号機と説明された頭に角が一本ある人間のような形をした物体だ
「この静止画は同じく遺跡の物です 現時点で現品は2体確認しています」
「君は何が言いたいのかね?」
「この技術を吸収したいだけです」
「遺跡からか」
「その通りです」
「ではそこには何か建てるか 丁度いい具合に森と湖しかないからな」
「兵研を移すのはどうです あそこはそろそろ手狭になってきたとのことですから」
「ではこの件はそのように 資料はここに それから・・・ 他言無用だ」
 頷く全員 そして 室内に明かりがともる
 

 8年前(西暦2347年)芦ノ湖湖畔
 兵研の最重要区画の建物から地下に降りるエレベーターに二人の男が乗った 降下を始めたのを確認して
 ひとりは平然として 一人はまるでお上りさんのようにキョロキョロとあたりを見渡しながら
 そして そのお上りさんは もう一人の人物に
「やっと完成か」
「いや大変でしたよ 球形と思われるドーム天井付近の再構築さらにその上に兵研を建てる 飛行場はドームの上からはずしてあります」
「予定通りだな で どうだドーム内部の方は」
「はい既に9割近くが埋まっていましたが 現在ではnervが使っていたときの状態に復元されています」
「浸水区画は?」
「現在ではありません ドーム自体が完全に外部を遮断するように作られていたようですから ただし当時の状態を復元すると言うことからドーム内部の湖だけは残しました」
 エレベーターが止まり二人はそれから降りる 改装中の区画を過ぎると地下鉄のプラットホームが
「ここでいいんだよなぁ?」
 質問をした 不安に思ったのだろう もう一人の人物はいたって当然とばかりに
「ここでいいんですよ」
 そう答えた
 二人はそのままホームに止まっている列車に乗り込む まるでふつうの地下鉄のように
 しばらくして 発車を告げるベルが鳴り 列車は動き始めた ただの地下鉄のように
 吊革は全て進行方向に傾いている その様子からこの列車が地の底へ向かって走り行くのが分かる
 そしてそれは姿を現した 地上から採光しているせいかその内部は非常に明るい
「アレがそうか」
「ようこそジオフロントへ所長どの あれが元nerv 世界の要だった場所 現在では兵研地下実験場です」
 二人の視界には復元されたピラミッド状の建物が映っていた
 

 6年前(西暦2349年)兵研地下実験場 所長室
「ATフィールド及びコアの解析が終了しました」
「そうか で例の計画は?」
「データについてはそちらに移送しました」
「ふむ ATフィールドの完全制御にはまだ時間がかかるか グラハムの方はどうだ」
「現在 順調に第2ドッグにて建造中です」
「分かった ご苦労」
 そう言って この部屋の主は通信を切り 静かに目を閉じた
 彼の机の上にはnerv時代の詳細な報告書がおかれていた
「誰も知ることの無かった 過去の出来事か」

 同年年末 兵研地下実験場
 三機のN2炉及び直結された発電器が生み出す大電力を コアのATフィールド発生システムのみを取り出したテストヴァージョンのデミコアのエネルギー源としATフィールドを発生させる実験が始まろうとしていた
「デミコアの強制支配率86% 一号N2炉出力101% 二号N2炉出力100% 三号N2炉出力100% バッテリー容量臨界に達しました」
「では実験開始」
「了解」
「デミコアへの回路接続開始します」

 淡々と実験の報告が行われる実験場の様子を写したモニターを 暗い所長室で一人の人間がその様子を見つめながら
「300年か 昔は14歳の子供とその親を媒体に使っていた か 信じられんな」
 そうつぶやいた

「ATフィールド出力80%で展開」
「バッテリー残量64% 毎分0.4%づつ回復しています」
 それらの報告を宙に映るパネルごしに聞いていると所長室に誰かが入ってきた 所長と思わしき者は その人物に
「やはり展開時にかなりのエネルギーを喰うな」
「N2炉発電器は一機で都市の電力を十二分にまかなうほどの力があるのだぞ それを三機も使ってしまうとはな」
「しかし このタイプの発電器は航空母艦に搭載されているものだ」
「とすると一機当たり80億か よく予算が通ったな そう言えば 初号機の組み直しには いくら使ったんだ?」
「予算全体の6割だ」
「な 3兆は使っているのか?」
「いや 専らS2機関の解析だ」
「そうか S2機関か たしか永久機関だと聞いたが それが現実ならコアなどよりよほど役に立つな」
「いや 報告を聞くとそうでもない S2は空間の均衡を崩すことによって自身にエネルギーを取り込む仕組みになっている その空間の均衡を崩すというのが問題なのだ どうやら近くのエネルギースポットからエネルギーを取り込んでいるらしい」
「エネルギースポット?」
「何度かの実験の結果分かった この星の中心からだ」
「熱と圧力だけの星の中心から何を取るというのだ?」
「それは分からない・・・ あと 実験の内一回だけ太陽から取り込んだ例も報告されている」
「どうやら 夢の永久機関とは行かないようだな」
「そのようだな しかし現時点で分かっているのはエネルギーの取込先だけだ 後はまだ報告が来ていない」
「シンクロシステムの方は?」
「サイバーコネクタのフィードバックの調整に時間が必要だ しかし予測はしていた」
「そうか ではスケジュールの遅れはないんだな」
「大丈夫だ 事故さえなければな」
「事故か セカンド及びサードインパクトのデータを見たよ あれは人の起こした事故とも呼べるな」
「事故? 違うなあれは人類への冒涜だ 全世界の人口が12億人 そしていまだ不毛な南半球を見れば分かる そしてRe Terraform Project」
「彼の提案した・・・ その為の空間操作技術 ATフィールドか」
「ATフィールドという呼称も変更する必要があるな」
「そうだな 絶対領域ではないからな」
「ああ」
「さて 所長 ここへはあの件についての報告に来たのだが」
「分かった」
 所長と呼ばれた者は 相手が机の前まで来るのを確認して机の上のスイッチを一つ押し
「始めようか」
 

「次の実験は4時間後に開始します」
 実験のスタッフは昼食を取るべくそれぞれに部屋から出ていった
 その様子を所長室のパネルで見ている人影 計器類は停止状態のデミコアのデータをとり続けている
「平均の強制支配率92%か」
「残り8%はどうなのだ?」
「デミコアには意志はない100%にこしたことはないが心配することはない」
「そうか ではコアの方は?」
「初号機か まだ外部装甲の組立が終わっていない 現在の拘束装甲に外部装甲を追加する 報告書はこれだ」
「・・・ いいのか?」
「何がだ?」
「初号機にはオリジナルのコアがあるのだぞ それにデミコアを乗せてただですむとは思えんのだがな」
「大丈夫だ デミコアはただの兵装に過ぎん 稼働時間無限にして地球圏内全てを射程距離とする兵装の搭載」
「べらぼうにかかる維持費」
「維持費はそうでもない 製造にはとんでもない額がかかるがな」
「現在のここだとどのくらいになる?」
「試算はないが 推定で14兆 と言ったところだな」
「それだけあれば 全ての利権を買うこともできるな」
「今はな」
 

 4時間53分後 鈍い衝撃が所長室に走る
「どうした?」
 所長の座っている机の上に現れたVoice Onlyのパネルから
「evangelionが暴走しました」
「状況は」
「電源をカットしましたので 現在では一切の動作及び反応は見せていません」
「分かった」
 パネルが消える
「内蔵電源を搭載してなくて良かったな いくら高次元空間隔離してS2機関のエネルギー供給を絶ったとしても最大2時間も暴れられては建物がもたんからな しかしこれで エヴァに関する実験はひとまず据え置きだな」
「ああ 少なくとも1ヶ月は」
 少しして所長はサードインパクト関連事項を記した書類を机の上に出した
「結局どうするのだ?」
「今 公表したところで だれも信じないだろう」
「そうだな では例の方法でいいのだな」
「ああ 秘密裏にな」
「分かっている」
「しかし これで予算が難しくなるな」
「分かっている・・・」
「大丈夫なのか?」
「今回はな しかし次はだめかもしれん」
「臨時予算枠か」
「ああ」
「厳しいな」
「変わるか?」
「冗談じゃない 私はただの補佐官だ」
「・・・。」
 黙って胃薬を取り出す所長であった
 

 4ヶ月前(西暦2355年)兵研地下実験場 ドック
 補佐官が その一角でドックを出て行く軍艦を見て
「戦艦グラハム 完成したな」
「はい N2機関搭載ですからこれ一隻でほとんどの作戦行動が可能です」
「ああ よくやってくれたS2機関の解析にATフィールドの兵器転用 しかしこれからを思うとな」
「はぁ・・・ しかし次はいよいよ」
「ああ そうだ」
「2番艦は S2エンジン搭載ですから一隻で大気圏内外を問わず活動できます」
「まだその名を使っていたのか まあいい完成までは2ヶ月の予定 大気圏突入と離脱が単艦で可能な戦艦か まるでSFだな」
「科学はこれからも そうやって進歩して行くんですよ」
「・・・  まあいい 頼んだぞ」
「はい」
 進水した戦艦グラハムはゆっくりとその巨体を 地底湖から新横須賀へ続く地下水路へと入っていった

 翌日 所長室
「で 偽装の方は うまくいったのか?」
「本物とすり替わったなどと誰も気づくまい 今の時点ではこの技術を有しているのはここだけだよ」
「そうならいいのだが」
「心配するな 諜報部も馬鹿ではない」
「ああ」
「ところで 予算の一部が使途不明金なのだが調査しなくてもいいのか」
「既に調査をした 報告書を見るか? 問題はなかったぞ」
「そうか ・・・ なんだこれは」
「ほとんどが 使途不明金ではなく4隻目の戦艦関連ではないか」
「そう そしてこれが提出用の報告書だ」
「提出用か ・・・ おい 何を考えている」
「最悪の場合の為の装備 巡航艦ニルバーノだ問題はない」
「・・・。」
 

 1ヶ月前
 所長室へと続く廊下
「戦艦エウロパ完成か」
「ああ 長かったな」
「予定より5日遅れたがな」
「引き渡しはしないのか?」
「ああ まだだ 引き渡しは試験航海をすませてからだな」
「そうか」
 所長室へ入った二人 机の上のパネルには表示されている洋上の一番艦と それを宇宙用に再設計したドッグの中の2番艦エウロパの姿があった
「エヴァ初号機の支配テストようやく開始のめどが立ったそうだ」
「そうか ここのところ十分な予算が回せなかったからな」
「しかし エヴァをどうするつもりだ いくらデミコアを追加したからと言って用済みなのではないのか?」
「既にS2機関を装備しているからな 分解も容易ではない 維持費はかかるが防衛用予算で通る」
「何を考えている」
「大丈夫だ 問題なくうまく行く 我々は空間を操られるのだからな」
 

 若干過去
「すいませぇーん 日替わり定食」
「あいよ ところであんたどこの部署だい?」
「えっ? あははははっ」
「ま 旨いって食べてくれるんなら誰でもいいんだけどね はい」
「どうも」

 そして 現在
「ああ そうだ私だ ・・・ なに空挺部隊が 高機動体が確認されている? 分かった職員をシェルターに避難させろ それから地上の部隊のことはマニュアル通り君に全て任せる以上だ」
 通信を切った後 この部屋の主が戻ってきた
「ん? 何かあったのか?」
「何をやっていた」
「ああ 今日の日替わり定食は好物だったんでな」
「・・・ 状況を報告する」
「敵か」
「そうだ」
「では行くか」
「早くしろ」
「すまん」

 第一発令所
 ここはnerv時代の物を改装して使っている 外観は発掘当時とあまり変わらない状態にあった
 その戦艦の艦橋のような構造物のもっとも高いブースに 所長と補佐官は現れた
「状況は?」
 補佐官の言葉にパネルを確認し
「現在 強羅方面 第2防衛ライン付近で戦闘が確認されています」
 オペレーターが返した
「何とか避難はできそうだな」
 所長がこぼした言葉に対し 補佐官は再びオペレーターに
「軍はどうか この状況をしらん訳ではあるまい」
「現在ジャミングがひどく通信回線を開けません」
 オペレーターの声に所長が
「戦艦エウロパにつなげ」
「しかし ジャミングが」
「大丈夫だ」
「了解 ・・・ ? 太平洋洋上の戦艦エウロパ応答しました」
「それを経由に救援要請を出せ」
「了解」
 少しして統合作戦本部から救援部隊を送る旨の通信が入る
「シェルターへの避難確認後 E5以外の地上への経路を全て閉鎖しベークライトを流せ 経路E5は全隔壁閉鎖 同時に空調を閉鎖時に移行」
「了解 地上職員の避難を確認します」
 所長は補佐官に他の職員に届かぬように言う
「これで 地上からここへの経路は避難後20分で完全に閉鎖できる」
「そうだな」
 二人は正面のスクリーンに目をやる 所長は
「しかし」
「どうした 所長ともあろう者がこの程度でうろたえてどうする」
「そうではない 自問していただけだ」
「ほう まだ現実逃避には早いと思うが」
「・・・ 言ってろ」
 所長はオペレーターに対し
「evangelionを使う 準備を始めるように」
 その言葉に補佐官は慌てて所長の耳側で
「おい まだ強制支配実験は行っていないのだぞ」
「データインプット後 暴走させ 地上へ転送する」
 そのままの姿勢で答えた所長
「なっ」
「今までつぎ込んだ金は惜しいが 既に実験をする必要性もないのでな 廃棄する口実だよ」
「しかし」
「フォースインパクトを起こしたいのか?」
「どうやって破壊するつもりだ?」
「いざとなれば 太陽にでも放り込むさ」
「・・・」

 ピピッピピッ
 呼び出し音を確認後 所長は手元のボタンを押しVoice Onlyのパネルを開く
「所長 現時点でevangelionを暴走させるのは 不可能です 準備が整うのに3日はかかります・・・」
「そうか では準備だけはしておけ」
「分かりました」
 私はそのまま発令所で次々と流れてくる情報を 眠い目をこすりながらその耳に脳髄にたたき込んでいた
「所長 少し仮眠を取ったらどうだ?」
「そうだな 長丁場になりそうだ そうする 職員も随時交代させるように指示を頼む」
「わかった」
 補佐官の返事を確認し 私はいすを傾けアイマスクを・・・
「所長 地上部分完全に占拠されました」
「分かった」
 オペレーターに補佐官がそう答えたのを最後に一度意識が閉じた
 

 意識が戻ってきた そうだ私は寝ていたのか 周囲はいつもの発令所のように静かであった アイマスクをはずしながら目を開け頭をぼりぼりとかく そばに補佐官がいたので 状況を訪ねた
「どうやら 連中は ここには全く気づかなかったらしい 目当てはシンクロインターフェイスのようだな」
「そうか すまんどのくらい寝ていた?」
 腕時計を確認しながら補佐官は
「だいたい 4時間半ぐらいだな」
「そうか」
 私は 眠気覚ましにと渡されたインスタントのコーヒーを飲みながら考えた 空間操作技術の媒体となったATフィールドの存在 コアと呼ばれた物体 エネルギースポットから空間を超越してエネルギーを取り込み稼働するS2機関 それらを持っていたデータの中のevangelion初号機 そして 残っていたオリジナルコアを用いて再構成したevangelion 強制支配を拒むオリジナルコア・・・ 吸収できうる限りの技術力の結集 我々の切り札的存在にして彼の乗艦である巡航艦ニルバーノ
「どうした」
「いや 考え事をな」
「考え事もいいが そろそろ地上に残ったジャマーに気づく頃だろう」
「ああ サテライトを使おう通信開始と同時に攻撃できるようにしておくように」
「もう手配済みだ」
「早いな では ついでに戦艦エウロパを低軌道上に配置しておいてくれ」
「何に使うつもりだ?」
「ニルバーノも発進準備を」
「ニルバーノについては既に準備を終えている 乗っているのは彼ただ一人だ」
「彼か・・・ では evangelionの方は」
「明後日の午前5時には起動準備が整う」
「 今は待ちだな」
「よし・・・ しばらく たのむ」
「分かった」
 私は発令所を後にし所長室へ向かう

 所長室に入り デスクにつきそのスイッチを押した 部屋が暗くなる 静かに時間だけが経過し
 やがて 暗闇に声が広がった
『全員そろったな では始めよう』
 その 国防委員長の声と共に明るくなり ホログラムで表示された国防委員会の面々の姿があたかも円卓を囲っているかのように目の前に現れた
『兵研所長よりevangelionの廃棄案が出ている詳細は各自の手元に用意してある 意見を聞きたい』
 委員長の隣に座っている者が続ける
『evangelionは金を使いすぎる 一流の能力だとしても 兵器としては二流としか言いようがあるまい』
『現時点で 廃棄して 問題はないのか?』
 その質問に私は返す
「全く問題ありません すでにデータ収集は十二分に終了しています 必要とあれば再び造るまでです」
 どよめきの中 国防委員長は
『evangelionを造る その事については 後日報告書を提出してもらおう』
「了解」
『時間がない 反対の者は?』
 数秒の沈黙
『では詳細は任せる』
 国防委員長の言葉の後 ホログラムが消え部屋が暗くなる

 少しの間をおいて再び明るくなった 私は手元のキーボードをたたき 発令所を呼び出す
「何か動きは?」
 パネルに映る補佐官は
「いや 静かなものだよ」
「分かった そちらへ戻る」
 何か言いかけた補佐官の顔を最後に通信を切り 所長室を後にした
 

 翌日夜
 既にevangelionに関係する作戦の全てを通達していたので 特にすることもなく私は今日何度目かのコーヒーをいれていた
「援軍の戦線が強羅第2防衛ラインに達しました」
 オペレーターの声に私は質問で返す
「evangelionの方はどうか」
「予定通り明日午前5時には起動実験開始できます」
 予定の変更が必要ないことを再確認した私はシートを補佐官の方へ回し
「補佐官」
「なんだ 改まって」
「明日は忙しくなる 十分に睡眠をとっておくように」
 補佐官は腕時計を見て
「そうだな そうさせてもらうよ」
 補佐官が去った発令所 私は自分で入れたコーヒーを飲みながら 日が変わるのを示した時計を見ていた

 午前5時を少しすぎて 技術部から映像つきのパネルにて連絡が入る
「所長 evangelionの起動実験準備完了しました」
「始めてくれ ただし転送はいつでも行えるように 事前の命令通りに暴走直後に転送 また転送は兵研直上に座標をセットするように」
「了解」
 通信を切り カップに残ったコーヒーを飲み干した 眠気を振り払うために・・・
「ニルバーノとエウロパに作戦開始と伝えてくれ」
「了解」
 

 数時間後
 援軍は確実にここに近づいている 既にevangelionが暴走してもしてもいいはずなのだがと発令所の時計を見る
「どうした?」
「遅い・・・」
「では エウロパに実験用として積み込んだデミコアを作動させるように命令を出してみないか?」
「? 理由は」
「以前evangelionが暴走したのは デミコアの実験中だ もしやと思ってな」
「やってみる価値ぐらいはあるな よし」
 私はオペレーターにその命令を伝えるように指示した
 しばらくして鈍い振動の後evangelionの暴走及び直上へ転送したとの報告が私の元に届いた
「うまくいくものだな」
 補佐官がそう言ったので 私は苦笑しつつここ数日飲み飽きたとはいえ やはりコーヒーを飲むのであった
 それとほぼ同時に 正面のメインモニタに衛星画像と思われる地上の様子が映し出された
「エウロパとevangelionの位置関係をサブに出してくれ」
「了解」
 メインモニタより手前の空間にカリフォルニア上空1200kmにあるステルス状態のニルバーノとハワイ北東沖の上空520kmにあるエウロパそしてこの直上のevangelionの三者の位置関係を表した映像が現れ evangelionの座標周辺が拡大される
「所長evangelionは現在援軍と交戦中の模様」
 オペレーターの言葉に補佐官は
「少し遅かったな」
 と 言葉をこぼす
「いや これでいい これでevangelionは我らの敵だよ」
「ふっ 悪人め」
「・・・ほめ言葉と受け取っておこう」
「ところで 戦艦グラハムの座標は表示しなくていいのか?」
「そうだな 表示はさせておくか」
 私はそうオペレーターに命令する 戦艦グラハムはすぐ近く新横須賀沖20キロの海域にいた
「どうする 問題があるぞ」
「そうだな」
 私は手元のコードの付いた受話器を取り 国防委員長へとつなぐ
『私だ』
「兵研の所長です」
『君か 用件はなんだね』
「evangelionはS2反応を追ってハワイ北東沖の上空に待機しているエウロパに接近します」
『それは 本当だな?』
「はい ですから軍隊を撤退させて下さい みすみす勝てない相手に挑む必要も無いでしょう」
『む・・・ 分かった君の意見を聞こう』
「エウロパの主砲射程内に入り次第 一点集中砲火を浴びせます ATフィールドはおろかevangelionを完全に消滅できます」
『作戦を承認する 失敗した場合は 分かっているだろうな』
「もちろん」
『作戦の 成功を祈る』
「了解」
 受話器を置いた私は
「食堂に行って来る」
 そう言って 発令所から出た もちろん胃薬を持って

 その場に残った補佐官はevangelionに関するオペレーターの報告を聞く 既に一連の事件で地上部分のカメラはことごとく破壊されたので超望遠の衛星画像と軍の通信回線の傍受からしか情報が入ってきていなかった
「こんな事なら もっと望遠の効くスパイ用のカメラを搭載するべきだったな」
 補佐官がメインモニタに映る 超望遠映像に映る小さな人のような形の陰を落とす物体を その周りで小さく爆発する軍隊の車両を見つめていた
「地上部隊の発する映像は傍受できないのか?」
「暗号の解読に時間がかかりすぎて使いものになりませんがそれでも良ければ」
「データはとっておけ」
「既に取っています」
 しばらくevangelionは己の側にある軍隊の兵器を破壊していた

「軍の部隊が撤退を始めた模様 先ほど命令を傍受しました」
 その報告に補佐官は一度所長が出ていった方向に目をやり再びメインモニタに戻した
「evangelionの動きが止まり・・・ いえ な 何あれ」
 evangelionからの光 メインモニタの力不足な超望遠画像でもはっきりと分かる
「あれが」
 補佐官はそう言って 依然見た2ndインパクトの資料を思い出していた
 が 次のオペレータの報告に安堵する
「evangelionが 移動を始めました 東の方へ向かっています 現在速度時速約40km」

 1時間後
 光の翼とでも形容すべき光を背にevangelionがその悪魔のような姿をメインモニタに映していた
「今度はカメラの準備は完全だ」
「ああ」
「evangelionの様子はどうか」
「はい 現在 高度56km 高度を上げながらまっすぐ戦艦エウロパに向かっています エウロパの安全射程距離圏まであと12分」
 所長は報告を聞いて補佐官に
「まずいな まだ高度が低い」
「ああ どうする」
「そうだな 破壊はエウロパの仕事だ では 彼にでも頼むか」
 私は先ほど国防委員長へつないだ コードの付いた受話器を取り 彼の駆るニルバーノへとつなぐ
『どうしたの』
 何度となく話している慣れているつもりの彼の声
「すまないが 目標の高度が足りない 地球に対する衝撃を吸収してほしい」
『わかったよ 手段はこちらの自由にさせてもらうよ』
「ああ まかせる」
『じゃあ 切るよ』
「ああ」
 

 システムの計算通り12分後にevangelionは戦艦エウロパの射程距離圏に入った
 メインモニタにはevangelionに対して側面を見せ全主砲門を開いているエウロパの姿がある
『目標手前ATフィールド予測展開位置に素点固定しました』
 サブモニタにはエウロパの艦橋の様子が映し出されている
『主砲発射』
 エウロパから放たれるいくつもの鈍く赤い光は あっという間にevangelionに迫り 一瞬ATフィールドはその反応を見せ

「電波障害回復まで後12秒」
 メイン・サブの両モニタがホワイトアウトしたままノイズを映す
「evangelionの位置にエネルギー反応認められず」
「直下の海水温上昇認められず」
「evangelion完全消滅を確認」
「終わったな」
 補佐官の声が私の耳に届いていた

 そうあれは今から16年ほど前
「この星を元に戻したいんだ」
 彼の話は私には衝撃的だった しかし彼の提示したデータは全てが事実だった だから私は彼の話に乗った たとえ全人類を敵に回したとしても・・・
 そんなことを考えつつ私はニルバーノの彼へ回線をつなぐ 始まりを告げる為に
 

Ende



 あとがき
 

なかなかうまく書けませんでした そんなものを投稿してもいいのか・・・
難しいところデシ
一番難しかったところはN2やS2等のデータが皆無だったこと で結局こちらで勝手に付け加えました

所長室の二人 モチーフはもちろん冬月老人と碇のゲンちゃん 司令と副司令じゃないところがみそ

「命のだし」・・・ 書いててどんな味がするんだろうと想ってしまった・・・

さあ
ねくすとけぇす「我が名はevangelion」
δ「ああ お客さん ものを投げないで 投げないで下さい」拡声器使用 台詞棒読み
 
 
 

・・・・Data Area・・・・
δ「ここからは 私の出番ですね」
お願いします
δ「はい では 登場した兵器などの解説を行いたいと思います

 戦艦グラハム
地下ドッグにて制作した初めてのそして最後の水上艦 この時期の大型艦にはN2炉が標準搭載されているがグラハムのN2炉は新型で従来型の13倍の出力を持つ 名前はベルより

 戦艦エウロパ
地下ドックにて初めて製造した 大気圏内外を単艦で行動可能な宇宙戦艦です 主砲に移送歪曲場による原子転換兵器を持つ
名前はヨーロッパより

 巡航艦ニルバーノ
彼の駆る兵研の切り札的存在の戦闘艦 内部には最新の機能に強化されたコンピューターが3つ ほぼ完全なステルスシステムを装備し光学的にも認識しにくいようになっている オリジナルコアの搭載によりコア以外の自立復元が可能である 人間なら15人まで外部の補給一切なしに恒久的に生活できる 名前は1のfinal areaより

 evangelion
遺跡内部に残っていたオリジナルコアを回収 初号機のデータを元にテクノロジーの粋をつぎ込んで製造した結果 当時よりも強力で強固な機体に仕上がる 専用武装は無し本体のバッテリーで2時間をフルパワーのまま使用可
 
 

 作品で語られない世界設定について
まずサードインパクトで「命のだし」状態から人類が復活・・・した事になっています
さらに技術力はMAGIクラスのコンピューターならば炊飯ジャーにも付いている と言うような感じです

男女の人口比率は汚染物質の影響により5:6で全人口は約12億人です

みんなが話しているのは世界共通語ですサードインパクトで「命のだし」状態になっていますから
一応 思考直系型の言語で非常に多彩なニュアンスを持つ

地軸は傾いたままで 南半球は永遠の冬状態にあります南緯40度以南は人が通常の手段での進入は不可能です 南極には現在大氷原が広がっているのみです

ジャミングの中通信できる理由は エネルギーしか伝えられないワームホールによる ATフィールドの技術より吸収したもので他に 宇宙戦艦が色々な高度の軌道上で制止できるのもその技術より来ている

では」


もどる

ここから下はHolyBeast掲載当時のモノを残してあります

中昭のコメント(感想として・・・)

  しまぷ(う)さまからの投稿作品です。

  むおう。
  ハードカバーなSF・・・というか戦記もの。
  わたしごのみ
  それはともかく設定集が欲しいにゃ。数兆防衛予算があるくらいだから敵性国家は
  あるんですよね。実際侵入しようとしてた部隊もいるし。

  
  それにしても所長さん
  なんとなくのんきそうな所があるのが親近感。
  >「すいませぇーん 日替わり定食」
  >「あいよ ところであんたどこの部署だい?」
  所長さんですよね。顔を知られてないの・・・
 

  ”ニルバーノの彼”とは?!
  >「この星を元に戻したいんだ」
  この言葉の意味は!?

  謎が謎を呼んでます。
  もしかして地球征服を?!
 

  しかしevaを使い捨て・・・ふーむ
 
 
 
 
 
 

  みなさんも、是非しまぷ(う)さんに感想を書いて下さい。
  メールアドレスをお持ちでない方は、掲示板に書いて下さい。