Page-Galwaliear1-第三章

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ガルバリア
第三章

此処から第三章R さて・・・
『ここで今までのラオリスが侵略した国とその経路をあげておく
10月2日 正午 ラオリスとグラメダの間で戦争が勃発 ラオリス軍グラメダを占領
10月26日午後 ラオリス グライゲルドに進行し これを占領
11月30日午前 ラオリスとクレイバラーズ・ヴィーイベリズの連合軍と本格的な戦闘に突入
 3月 5日午前 ラオリスは後退の一途をたどり王都ラオリス周辺まで戦線が後退
  正午 ラオリスは魔導戦艦を完成させる
7日午後 戦線は一気にクレイバラーズ・ヴィーイベリズの本国まで及ぶ
   8日午前 島国ミノルカは中立を表明 ラオリスはこれを受諾
      正午 クレイバラーズ・ヴィーイベリズは壊滅状態により崩壊
    9日   ペールイグスはラオリス軍の前に降伏ラスゴーは中立を表明ラオリスはこれを受諾
 12日午前 ラオリスの矛先がイトス・レンバルドに向けられる

 ガルスブリーズ
 ガルバリアβ暦 4月13日
「終わった 情報整理が やっと・・・」
と ユウロスは自分の図書室のディスプレイの前でキーボードの上にうつ伏せになってしまった
「ねえ ユウロス何が終わったの?」
 魔法書を読んでいたリーナが気になって聞く しかし 返事は返って来ない
「ユウロスッ」
 リーナが精一杯の声を図書室に響かせた
 その音が消えると ぐー ぐー という鼾が静かな図書室に響いているのがリーナの耳に入って来た
「はぁーーーーー」
 ため息の後再びリーナは魔法書をの続きを読むのであった

同日 イトス島北部の谷川
「ねぇー ラエル 本当にこの辺りなの?」
 リネの声がせせらぎの流れる音をかき消してラエルの耳元に届く
 ラエルは辺りをよく見回し何かを探している
「ああ そのはずなんだが」
 自信の無い声だ
「これ?!」
 エレナは二人から少し離れたところで五角形のかさを持つキノコをよく見えるように掲げた
 そのキノコはかさの色が非常に地面の色に似ている小さなキノコだ
 3人には分からないがかなり高価であるらしい
「エレナこれに入れて」
 リネはそばに置いたバスケットの中から口の広いビンを取り出した
 エレナはリネのもとまでゆっくりと歩いて行く
「はい」
 キノコはビンの中に入った リネはコルク栓をしっかりと閉めて
「ラエル やっと帰れるわね」
「ああー やっと帰路につけるなぁー」
 しみじみと言った
 そもそもこれはジュリアの見つけてきた仕事だ 二人増えると食費が二人分余計にかかると言って仕事を探してきた訳であった
 帰路についた三人はゆっくりと下山する
 三人の気が緩み切っている
 そのときエレナが
「何かいるわ」
と 指さした 指の先には防弾チョッキを着た兵士10人足らずがライフルを構えて3人にそのねらいをつけている 遠くて正確には分からないがラオリスの兵士であることがリネだけが気づいた
「手を上げろ」
「上げなかったらどうなるんだ」
と ラエルが剣に手をかける
 ラエルが一発の銃声と同時に無声音で叫びそのままひざをついた 弾はラエルの右足を貫通していた エレナがラエルに歩み寄る リネは密かに精神を集中させて行く
「そこまでだ おとなしくしろ」
 リネの首筋にナイフが突き付けられる リネはこのようなことは初めてである 一瞬の恐怖が集中しかけていた精神を元の状態に戻した リネは両腕を上げた グラメダで覚えたものである 素早く兵士たちは3人に麻酔をかけた
 意識が遠のく・・・

 時間の経過 ガルスブリーズ
 ユウロスは図書室で目の前のディスプレイにディーを呼び出す
「チーフ何か用でも?」
 ディーは片手に一口かぶりついたパンをもっている
「ディー チーフじゃなく友人として頼みたいのだが」
「なっ 何を」
 ディーの眉毛が顔が引きつるようにほんのわずかピクッと動く
「私のホワイトバードのB倉庫に慣性消去装置をつけてくれるかな・・・と」
「いつまでに」
 ディーの表情が生き生きとよみがえる
「7日以内に・・・」
「分かった」
 ユウロスはリーナについてくるように言い そのまま自分の部屋を経てハンガーに向かった
 ここはユウロスのハンガーの空きスペースむこうにはスクラップと化したライジングアローが山積みされている そしてユウロスは前もって書いておいた書いた魔法陣の前に立ち リーナを魔法陣の真ん中に立たせ
「リーナ 準備はいいな」
「ええ」
 魔法陣の中央に立ったリーナが真剣に返事をする
「始めるぞ UAIだれもここに入れないように」
 全てのハッチが一斉にロックされ その音が響き渡る
 ユウロスが精神を集中させた ぶつぶつとユウロスが何かを唱えるリーナが聞き取ろうとするがリーナの話す言葉とは発音はおろか言語体系も全く違う言葉をユウロスは唱えている
 ユウロスが唱え終えた
 魔法陣は静かに光る
「あっ あああっ ・・・・・」
体から何かが剥がれ落ちて行くのをリーナは感じ取った
ユウロスは自らを抱きしめ震えているリーナに歩み寄りながら告げた
「終わったよ」
リーナは膝をついて立ちすくみ疲れた表情をユウロスに見せ
「ありがとう」
言うが早いかリーナは力尽き倒れる ユウロスはそのリーナを何とか受けとめた

 数日後
 気がつくとラエルは冷たい石造の天井を見ていた
「んーーっ」しかし石にしては変だな
 ラエルはゆっくりと起き上がり辺りを見回した
「どうしたことだ」牢屋の中ではないか
 鉄格子の中にラエルはいた 側にエレナが満足そうな表情を浮かべて寝ている しかしリネの姿が見当たらない

 ちょっと離れたとある部屋の中
 リネは強力な魔法封じの魔法陣の中でいすに縛り付けられ さらにその手首には俗に言う魔法封じの手錠が窓一つ無い暗い部屋に不気味に光っていた 彼女はその中でただじっと沈黙を守り続けている
 不意にリネの目の前方の扉の鍵穴に鍵が差し込まれ そして扉が開いた
「久しぶりだなリネ 最も私の顔を覚えているかどうか」
 ディアス・エピックはゆっくりと魔法陣の側まで歩み寄りながら
「我が父上は元気なようだな 君の記憶を覗かせてもらったよ ・・・ 平和な毎日をおくっていたようだな・・・ まあ リネ 我が家計に生まれながら初歩の魔法しか使えないようでは 一家の恥」
「外道ぉー」
 リネの声が静かに窓一つない部屋にこだまする
「なんだと ・・・ せめて命だけは助けてやろうと思ったのだが・・・」
 かなり気合の入った声が廊下まで響いた
「断る」
 力のある響きだ
「行くぞ」
 ディアスは廊下に出た その部屋はまた鍵をかけられ光がささなくなった
 ディアスは廊下を進みながら
「あすの正午あの3人を公開死刑にしろ いい見せしめになる」
「はっ 御立ち会いになられますか?」
従者は普段どうりに聞いた
「ああ 立ち会おう」
「分かりました 昼食のあとに入れておきます」
「いや 昼食をとりながらでよい」
「分かりました」
従者はディアスの斜め後ろを歩きながら脅えていた・・・

 翌日 正午より少し前
 リネ・ラエル・エレナの三人はイトスの街の広場へ ラオリスの兵隊に囲まれ 広場の中央に急遽設置された絞首刑台へと歩いて行く 三人は抵抗できなかった リネとエレナにしては魔法をこれでもかこれでもかと封じられ ラエルはさすがに銃をもった兵隊達には太刀打ち出来ないことを悟っている
「ラエル エレナ リネ」
 ジュリアの声がどこからともなく雑音の中に響き渡る
 その雑踏から離れなおかつ絞首刑台がよく見える家のテラスでディアスは食事を取っている そして 手元の時計を見て
「もうすぐだな」
 三人は絞首刑台にあがった 刑の執行人が5つの輪になっているロープを点検している
 ぶぢっ
 一つのロープが切れた・・・
 しかし執行人は背の高い方からすなわちラエルとリネとエレナを順に木箱の台のうえに立たせ首にロープの輪を通し ロープを絞めた
「最後に言い残すことは」
 刑の執行人が三人にたずねた
 その時である高らかな笑い声の後に
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ 悪を倒せと俺を呼ぶ・・・」
と 空中に声が響いた
「ユウロス」
 三人の声がハモる
「全員 臨戦態勢をとれ」
 ディアスが椅子から立ち上がり声の方向を探す
「あすこだぁー 撃てぇー」
 鉛の弾がほぼいっせいに屋根の上にいる赤いマントをまとった者に襲い掛かる
「ふん」
 鉛の弾の弾道を反らし そいつは無傷で屋根に立ち尽くす
「わるいな 俺はユウロスではない」
 いい終えると同時に屋根から飛び降りた 着地時にプレートブーツによる金属音が響く
「いやあいやあ どーも遅れたよ」
 ユウロスの声が三人の真後ろで発せられた
 その後ろで得体の知れない肉の塊が鮮血と一緒になっていた だれももう刑の執行人であったラオリスの兵隊とは気づこうものではもない それをよそに ラエルから順にロープをほどき輪を首から外し腕や足の縄を小さなナイフで切り リネとエレナについては魔法封じの道具の数々を自分のコートのポケットから取り出し工具でてきぱきと破壊した
 その間に イトスの町の連中はみんな広場から退散していた 赤いマントの者は絞首刑台に走り寄って来た バリアスである その後ろからラオリスの兵隊達が各々武器をもち走って来ている
 ユウロスは普段着でもあるコートのポケットからユウロスの筋肉で持てる最大の剣をラエルに手渡し
「ラエル あなたのうでに期待するよ」
と 言った
 ラエルはユウロスと目を合わせ無言で相手に突っ込んで行く
 それとほぼ同時にこちらに走って来ているバリアスが剣を抜いた バリアスは絞首刑台に向かって真っすぐ走ってくる その数m後を一人の兵士がおってくる バリアスは絞首刑台に足をかけ進行方向と逆に見事な三角飛びをおこない その勢いで剣を振りかざしてゆく その動きに兵士は戸惑い反射的に目を瞑った しかしその兵士が再び目を開けることはなかった 鎧ごとその兵士の体をバリアスの剣は破壊したのである まだ三角飛びの慣性が残っているバリアスはそのまま兵士達いる方向へ剣をかまえ走って行く その様子を見物しながらユウロスはバルカンブラスターをコートのポケットから取り出した まだ両腕にはさっきラエルに渡した剣の重量感が残る
「リネぼぉーっとするなよ」
と リネの方向を振り向きながらユウロスが話しかける
「あら」
 リネとエレナは 肉塊と鮮血の交じりあった隣で 気を失って倒れていた ユウロスはその肉塊を数秒見て
「うっぷ」
 吐き気をもよおした
「ええーーい」
 気合と共にバルカンブラスターを持って絞首刑台から離れるユウロス
 その先にはバリアスとラエルが数人のラオリスの兵隊と戦っている
 ユウロスが二人に駆け寄る が何かの合図によりラオリスの兵隊達は引き上げて行った
「おや へんだな」
 ユウロスがバルカンブラスターをポケットにしまい ラエルとバリアスに駆け寄る
「ああ 何か策でもあるんじゃないか?」
 バリアスが剣を鞘に収める
「あの二人は」
 ラエルがユウロスに向かって問う
「気絶してるよ」
「まったく」
 言いながらラエルは絞首刑台へと歩きだす
 ユウロスとバリアスはその後をついて行くように歩きだした
 数秒後遠くから何か空から轟音が響いて来た
「なんだ この音は」
 バリアスが音の来る方向をじぃーーーーーっと見定める
 ユウロスはポケットからインコムを取り出し被り センサーをフル活用する
「来た」
 ユウロスはポケットからグラビティーキャノンを取り出しその方向に構える ユウロスには不釣り合いの重量と質感だ
 そのグラビティーキャノンの先 黒い大きな物体は空中から地上へ光線を放ち町を焼き始めた ユウロスはグラビティーキャノンのエネルギーチャージが終了するのを待っていた
 エネルギーチャージが完了しユウロスは照準を空の黒い大きな物体に定め 発射した それは真っすぐ空の黒い大きな物体に進むが その物体を中心とした球の表面に拡散するように打ち消された
「まったく 冗談じゃない」これは私に対する挑戦か?
 言いつつグラビティーキャノンをポケットに仕舞いコートを脱いだ バルカンブラスターMk2がベルトの右側に引っかけてある
「バリアスこれをもって俺から離れてくれ 少なくとも後方に100mは・・・」
と ユウロスはバリアスはコートをわたす
「よし」
 バリアスはユウロスからコートを受け取りこの場から離れた
「ラエルも早く」
「ああ」
 ラエルは気絶した二人を両肩にこの場を離れた
「UAI サポート頼む」
 分かりました
「・・・・・・」
 ユウロスは精神を集中させる
 エネルギー係数20352

空の黒い大きな物体
「だれが いったい・・・」
 艦長から言葉が漏れた 彼はこの魔導戦艦の最高責任者である
 宇宙戦艦を思わせるこの戦艦の艦橋は主動力源が精神力であるのに反しメカメカしい
 艦橋では皆が慌ただしく作業に追われている それもそのはず原因不明で勝手に動き出したのである
 勝手に動き出したのならばまだ猶予はあるが 攻撃まで始められてはこまるのは至極当然である
「艦長 もしかするとディアス様が・・・」
「信じられんが あり得るな エピック家の力はあなどれん」

ユウロス
エネルギー係数472382
「・・・・・・・・・」
 ユウロスは黙って魔導戦艦を睨みつけるとまでは行かないでも強い意志でじっと見つめている
エネルギー係数508394
「よし」
 ユウロスはバルカンブラスターMk2を左手で魔導戦艦に向かって真っすぐに構える
バルカンブラスターMk2 エネ・バスモードへ
 バルカンブラスターMk2の回転端子部分が パシュッ と4方向2段に展開する
前方に直線空間動機作成準備中
エネルギー係数1000000へ
生体コントロール開始します 反射防衛本能停止 消化器官停止 感覚神経系78%停止
 自動治癒システム停止 記憶系システム停止
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ようやく目を覚ましたリネとエレナ リネはユウロスをただ漠然と見つめる
「すごぉーーーーい」
 エレナはただおもしろがっている
 離れているその4人からユウロスの姿がゆっくりと少しづつぼんやりとした光の球体の中につつまれ ユウロスは闇のように見えなくなってゆく
 数秒後ユウロスから半径数百m以内にいた者達の鼓膜がピィイイイィーーンという音を最後に破壊された
空間歪曲修正中
エネルギー係数864394
 インコムは性能のほとんどを自己防衛にあてながらユウロスをサポートしている
 バリアス達とは別の場所でディアスはこの様子に精神のほんのわずかをユウロスに向けた
「くっ」一体 どんな魔法を使うというのだ ユウロス・ノジール
エネルギー係数1012735
直線空間動機作成完了
気合一発
「落ちろぉーー」
 それまでユウロスを覆っていたぼんやりとした光りが消え去りユウロス自身も元に戻り ユウロスの前方に白色の光線が空と魔導戦艦を貫いた 直後に光に飲まれた魔導戦艦が空中分解を遂げ 空間に轟音が響き渡る
 リネ ラエル エレナ バリアス ディアス達いやこの光景を見た皆が驚きに浸っている
ユウロス生体コントロール停止部分復活
 バルカンブラスターMk2は展開していた形を軽快な音とともに元に戻した
「やった」
 ユウロスは少しだけ幸せに触れたような心地になった
 リネが真っ先にユウロスに向かって鼓膜に治癒の魔法を使いながら駆け出す 他のメンバーも同様ユウロスに向かってに駆け出し始めた
「くっ 我が剣よ奴を貫け」なんて奴だ
 物陰から見ていたディアスは自分の剣を抜きユウロスに向かって投げ飛ばした
 リネの前方を通り過ぎた剣は 半回転しその鈍い音と共にユウロスの背中に突き刺さった 飛び散る鮮血に覆われた刃先がユウロスの胸部より突き出す
 肺に損傷 肺呼吸システム停止 無機呼吸システム作動
自動治癒中枢損傷 停止
 串刺しになったユウロスはリネの目前で人形のように吹っ飛び地に伏した
 リネはユウロスに駆け寄りユウロスをゆっくり見下ろす
「ユウロスっ・・・」死んだの? ねえ ユウちゃん 答えてユウロス
 なぜかリネの目から何かが流れてくる
「ユゥーロォース」
 リネの悲痛な叫び声が広場に轟く だがこの声はだれにも聞こえなかった
 駆けつけたバリアスはユウロスに突き刺さった剣に手をかけユウロスを片足で踏み 剣を抜き去る 剣が石畳の広場に低い金属音を立てて石畳のうえに止まった
「リネ こいつに治癒の魔法を使え」
 バリアスはユウロスの手首をもって心拍数をはかりながら言った 彼の指先にはゆっくりと一定の心拍が感じられている
「うん」
 リネはユウロスの傷口に治癒の魔法を使う
 ユウロスの傷口は深く長い その中は真っ赤な血がゆっくりと流れ出し傷口に血が溜まってゆく
 その様子を物陰から見たディアスはもう一度剣を動かそうとする
「さあ 行け」
「おっと あんたの相手はこっちだよ」
 少し年をとった女性の声が響く
「誰だ」
 ディアスが振り向くと少しはなれた場所に白いローブを纏った女が立っていた
「名乗る 訳には行かないよ」
「まあいい 死ねぇー」
 ディアスが雄叫びをあげ 炎の魔法を使う
 炎は石畳を溶かし家々を気化させ女に迫る
「Nitrogen storm」
 言うが早いか空気中の何かが凝結し吹雪のようにディアスに向かって炎を凍らせ進む
「ぬぉおおおおおっ」
 ディアスはその吹雪の来る前に気合で結界を張った
 その吹雪はディアスの結界をゆっくりと凍らせるが破壊するには至らなかった ローブを纏った女の方は家々が凍りに包まれディアスの方は凍りに包まれた灰や溶けた石畳が広がっている
「くっ」まずいな ここはひとまず引き上げるか
 女の目の前から一陣の風と共にディアスが姿を消した
「ふう・・・ やっぱり年はとりたくないな」
 女はローブについたほこりをはらい広場へと凍りついた溶けた石畳みの上を進む
「へっえぇくしょおぉぉぉん」寒いNitrogen stormなんか使わなきゃよかった
 広場のほぼ真ん中ではユウロスがまだぐったりとしている
 リネは治癒の魔法を使い続けているがユウロスにはなんの反応も見られない
 ユウロスのまわりにいるラエル エレナ リネ バリアスがユウロスの状態を見届けている
「おや そんな魔法ではユウロスは治らないよ」
 4人が振り返ると白いローブを纏った女が立っている
「いいかい 治癒の魔法というのは・・・」
 女の中指の指先から一筋の光線がユウロスの傷口をなぞったと同時にビデオの早送りより速くユウロスの傷口はふさがってゆく
 その様子をリネがあんぐりと口を開けてぼーぜんと見ている いや目がその方向を向いているだけだ
 破損臓器99%回復 副器官回復 生存率・・・
「よっこらしょっと」
 ユウロスがむくりと立ち上がる
「うっ・・・・・・」
 ユウロスの目の前には少し年老いた白いローブを纏った女が立っていた
「ユウロス・ノジール ・・・ これで借りを返したよ」
「借り?」
 考えるユウロス ・・・ まだ考えるユウロス ・・・ 
 それでも考えるユウロス
「ああーーっ お前そんな昔のこと覚えてたのか」
「ええ あんたの腕輪が役に立ったよ」
「そりゃどうも」
 かしこまるユウロス
「もう必要無いから」
 腕輪をユウロスに渡す ユウロスはそれを受け取り
「もう 帰るのか」
「ええ ペットのヌーヌが待ってるから」
「さよなら」
 黄昏るユウロス
「ええ」
 残像を残して白いローブを纏った女が広場から消えた
 ユウロスが見回すと この状況について行けない4人が鼓膜の治癒を終えぼーぜんと立ち尽くしていた
 それをよそにユウロスは
「UAI ホワイトバードを・・」
 了解
 数秒後ホワイトバードが広場に着地する タラップが降り中からリーナが姿を現すそしてタラップを降る
「ユウロス 何をしてた」
 リーナがユウロスに怒鳴る
「いやちょっと死の境を・・・」
 バリアスからコートを返してもらい着るユウロス
「ユウロス さっきのだれだ あの白いローブを纏った女性は」
 ラエルがユウロスに問う
「昔の友人さ」昔の・・・
「ところで 約束どうりお前の年齢を教えてもらうぞ」
 バリアスが思い出すかのようにユウロスに問う
「しりたい?」
「うん 知りたい」
 5人の声がダブる
「ええと 今」
 指を折って数えるユウロス
「590世紀と幾つだったかなー 忘れた」
と そそくさとインコムをコートのポケットへつっこみ
「59000歳って所かな」
 皆がボーゼンとしているのをよそに
「じゃあ 私は行くところがあるので・・・」
 ホワイトバードのタラップの上にユウロスの片足がのったところで・・・
「ユウロス 私も一緒にいっていい?」
 ユウロスにはだれの声かは分からなかったが振り返り
「ご自由に」
と タラップを昇った
 皆がタラップを昇ったのは言うまでもない
 そのころユウロスは薄暗いコクピットの操縦席に着いた
「UAI バベルの最上階へ」
了解
御自分で操縦しますか
「ああ ・・・おっと 今グラメダの学者団はどこにいる」
 座っているユウロスの頭ぐらいの高さにある数枚のパネルが外の景色を映し出しほのかにコクピットが明るくなった
全員 現在4時42分の方向 距離84キロ 深度2000の位置に・・・
「よし その座標へ」
無茶です 機体が圧力に耐えられません
「じゃあ 12班のメンバーだけ海上に運ぶように通信を入れて」
はあ あまり気は進みませんが
「たのむよ」
分かりました
「反重力推進 サブエンジンエネルギーチャージ」
空間動機開始 Rエンジンエネルギーチャージ
Rエンジンエネルギーチャージ完了
「行くぞー」
 ユウロスは操縦桿を引き スロットルレバーを入れた
主翼展開
 ゆっくりと白い主翼が展開され空に舞い上がる
「目的地の方向を・・・」
 ユウロスの体の前にメインパネルによる立体の球形のコンパスが現れた その球体の中で三角の矢印がそっぽを向いている ユウロスはこの矢印が真っすぐ前を向くように操縦桿を操作した
微調整はどうしましょうか
「しなくていいよ それより近づいたら知らせてくれ」
了解
半分が廃墟となった町の上を通過し 白い機体は海上にでた

 オケアノス
「艦長 通信です しかもオケアノスのブレイン HAC15経由の」
「なに 内容は?」
 グラメダ学者団の12班の者達を今すぐ海上まで浮上させてほしい
「オケアノスのブレインに直接入って来る事が出来るのは ・・・ あいつか?
 ソナー 擬態レーダーブイ射出 カメラ搭載のやつだ急げ」
「了解 S27射出口注水しオープン」
 オケアノスの甲板の一部が開き流木に見せかけたレーダー装置が自らの浮力で深度2000の深海をゆっくりと浮上する
「艦長 レーダー浮上にしばらくかかります」
「ああ」

 ホワイトバードMark2
 「目標地点まであと7キロ」
「よし減速」
 ユウロスはスロットルレバーを戻した そのため主翼が最大限に展開する
「目標地点まであと3キロ」
「目標地点の上空200で待機してくれ」
「了解」
 ユウロスは操縦席を立ち上がる
「どちらへ」
「みんなの所へ」
と ユウロスはコクピットを後にした
 ユウロスはおもむろに4つある中の1つ船室のドアを開ける
 しーーーーーん としてだれもいない
「おかしいな ディーの奴 防音装置でもつけたのかなぁー」
と その隣のドアを開けた やはりいない
「ええい」
とばかりに ユウロスはその反対側のドアを開けるやっぱり真っ暗でだれもいない 今度こそとばかりに残りの船室のドアを開けた だれもいない
「おおーーーーーーーーーーーーーーーーい」
と ユニットパーツでもある後部A倉庫へのエアロックに入った 何か騒がしい
「おおっ」
 ユウロスがエアロックをぬけると皆があのカードゲームを行っているではないか
 ユウロスはその倉庫の隅に座り込みゲームが終わるのを待つ
「うぉーー また負けるぅー」
と 大声を出すのはラエル
「・・うむーー・・・・・」
ポーカーフェイスのバリアス
「順調 順調」
と マイペースリネ
「あがり」
 たかだかと1位を宣言するエレナ
「次は・・・」
と カードを配る別にいなくても良いディーラー のリーナ
「くそー 勝つぞぉー」
 闘志というよりは殺気みなぎるラエル
バリアス「・・・・・・」
リネ「ラエル悪しからず」
「ぐぉおおおーーーーーーー」
 カードをリーナから数枚もらうラエル
 バリアスは微笑を浮かべるかのように
「これでお前の負けは確定だな」
 リネはカードをたたきつけるように出し
「これであがり」
「降参する・・・・」
と ラエルはもっていた数十枚のカードを手から落とした
「とりあえず 3位か・・・」
と カードを山に戻すバリアス
 リーナはカードをシャッフルしながらユウロスを見つけ
「ユウロス いつここに」
「さっきから いたんだよ」
 「ユウロス殿 小形潜水艇オケアノスを出ました」
 ユウロスは立ち上がって
「わかった 浮上位置へ移動 浮上したら知らせてくれ」
「了解」
「とりあえずここ片付けて部屋のほうに行ってくれないかな」
と ユウロスが皆に言いいエアロックを通り4つ船室のある通路に戻った
 ユウロスはそのままコクピットへ入り操縦席に
「どっこいしょ」
と ばかりに深く腰掛けた 前方のパネルには周囲の様子が映し出されている
 「すっかり年寄りですね」
 UAIの鋭い突っ込みが入る
「うっ・・・・・・・・・・・・・・」
と ユウロスが錯乱しているとリネがコクピットに入って来た
「へえー こうなってるんだぁー」
「リネ いじるなよ」
「ねえ ・・・ ユウロスの髪の毛って白いね」
と ユウロスの長い髪の毛を手に取るリネ
「うん」
「長いねーー」
 ユウロスの髪の毛をじーーーっとみるリネ
「うん」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「どうした リネ」
「白髪?」
「たわけ」

 小型潜水艇
 12班の皆がバルカンブラスターの点検をしている
「班長 もし上にいるのがユウロスじゃなかったら・・・」
「しかたあるまいミディー君・・・」
 小型潜水艇はゆっくり海中を浮上する
「海面まであと20」
 この小型潜水艇を操作している水兵は浮上速度ををゆるめ
「潜望鏡を上げます」
「ああ」
 班長は潜望鏡を覗く態勢に入った
 数秒後 彼の視野には少し波のある海面の様子が映っている 彼は潜望鏡の視野をしだいにずらした
「何もいないぞ」
「上は見ましたか?」
 水兵の声が班長の耳に届く
「上か・・・」
 班長は潜望鏡の視野を上に向ける
「おお・・・なんだあれは」
 班長はホワイトバードの機体下部の一部を見ている
「ちょっと いいですか班長」
 アレイムが班長を強引に押しのけ潜望鏡を覗きいろいろと視野ずらした後 潜望鏡からはなれ 狭い潜水艇内で態勢を立て直した班長に
「班長 浮上しましょう」
と 笑顔で言った
「どうしますか」
 水兵が班長に問う
 班長は辺りを見回し
「とにかく浮上しよう」
と 言った
「了解」
 水兵は再び小型潜水艇を浮上させるよう操作し
「もうすぐ海面です」
と 告げた

 ホワイトバードMark2
 ユウロスは一人でホワイトバードのB倉庫に行き後部ハッチを開けた 水平線が遠くに緩いカーブを描いている 下を見ると水面まで約5mというところだ
「UAI ここでいいのか?」
 「はい そのはずです」
と 返事の直後水面から黒塗りの小型潜水艇が沸き上がるように姿をあらわした
 数秒後 ハッチが開き中からアレイムがバルカンブラスターを持って小型潜水艇の甲板に立った
「狭い」
 アレイムは小型潜水艇の甲板が人が1人立つとすれ違いがしにくいぐらい狭いのに少し腹が立った
 ユウロスは縄ばしごを小型潜水艇の甲板に投げ降ろした 静止しているホワイトバードに比べ小型潜水艇は不安定に揺れている
「よう ユウロス」
 アレイムの声がユウロスの耳に届いた その直後アレイムが縄ばしごを昇って来た
「ユウロス おまえ あの船はどうなったんだ?」
「ちょっと 木っ端微塵にな・・・」
 頭をかくユウロス
 縄ばしごを班長 ディーロック 最後にラルドの順番で全員が昇って来た
班長「12班は本当に人数が少ないのーー」
 ユウロスは小型潜水艇が潜水したのを見届けて後部ハッチを閉じ エアロックを通り抜けコクピットへと足を進めた コクピットに入りハッチをロックした
「UAI バベルの最上階だ」
 「操縦しますか」
「いや 頼むよ」
「了解」
 ホワイトバードはまっすぐに大気圏を飛び出すべく加速し始めた

 そのころB倉庫では
 アレイムと目があった班長はアレイムに
「アレイム君は知っていたのか?」
「うっ・・・(まずい 非常にまずい)ははっ  はははっ」
 笑ってごまかすアレイム
「アレイム・ルーマン!」
 ラルド・ミディーの声が倉庫に響く
「はいっ」
 硬直するアレイム
 ラルドは硬直するアレイムの耳元で
「白状しないと ばらすわよ」
と 囁いた
「それだけはご勘弁を御代官様ぁーー」
と アレイム
 なかば展開に置き去りにされているロックこと ディーロック・アンヴァースト
「ほーーら 早く言わないとばらすわよ・・・」
「二人ともやめてくれぇーーーー」 ピシッ
 石化するアレイム
「あら」固まっちゃった・・・

 ガルスブリーズ
 のとある通路
 フリールは飛んで来るリディアに向かって
「ねえ ユウロス見なかった?」
 リディアはフリールの前に降り立ち
「いいえ どうかしたか?」
「ユウロスが遠くに行った感じがする・・・」
と フリール
「んーーー そいういのはUAIに聞いたほうがいいと思う」
「じゃあー」
と フリールはリディアの横を大きくまわって通り抜けた
「さて ・・・」
 リディアは再び通路せましと飛び立つのであった

 数分後フリールの部屋
 フリールはUAIの端末機に向かって
「ユウロス見なかった」
と 聞く
 「ユウロスですか」
「ええ」
 「それならば今バベルに向かっています」
「バベル?」
 「はい 旧ガルバリアβ防衛要塞塔の最上層の軌道衛星部分に向かっています」
「へっ? どう言う事」
「何がですか」
「・・・(フリールが考えていますしばらくお待ち下さい)・・・ !塔の構造を教えて」
「(旧ガルバリアβ防衛要塞塔)通称(バベルの塔)は最下層の地表部分と最上層の軌道衛星部分とその間の 直径200mのケーブル加工されたエレベーター部分に別れています 非常に高い建物なので最上層部分は人工衛星の概念を用い静止衛星軌道にのっています なお現在は私が管理しています」
「ふーーん ・・・ ・・・ ・・・ !UAIユウロスを連れ戻して」
「連れ戻すんですか?」
「そう」
「あまり気が進みませんが・・・」
「どーーーーして」
「ユウロスの今乗っているホワイトバードをこちらから操るには
  ユウロスの造ったガードプログラム等を
 全て・・・
  これが非常に・・・
  あの その」
「UAI はっきり言いなさい」
「まず無理でしょう」
「本当に?」
「はい」
「それでもやるの あなたUAIでしょ その辺の最新鋭のコンピューターよりずううううぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと性能がいいのにぃいいーー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(どうやら言う言葉がなくなったようだ)」
「まあとりあえず実行しますが 期待しないで下さい
 それからユウロスの図書室に行って下さい」
「どーして」
「いやその 電源が入ってないんです 何分古いタイプのコンピューターてすから」
 フリールはユウロスのコンピューターの電源を入れるべく自分の部屋を後にした

 ホワイトバードMark2
 ゆっくりとドッキングハッチにホワイトバードが近づく やがて鈍い音と共にドッキングする
「さて」
と 言いユウロスはホワイトバード側のハッチを開け続いてドッキングハッチ側のハッチを開けポケットからインコムを取り出し被り
「UAI 全員出たらハッチを閉めてガルスブリーズへ戻ってくれ」
 「了解」
 しばらくしてユウロスはホワイトバードにいる全員を呼び集めた
 ユウロスは狭い所で直径50cmの円形のハッチを指し
「皆さん 順番にここをくぐって向こうで待っていて下さい」
 ハッチの向こうには長い通路が続いているのしか見えなかった
エレナ「いっちばぁーーん」
ラエル「おおーい まてぇー」
 バリアスは一度引っ掛かり
「つっ 剣がつっかえる・・・」
 リネがユウロスの横で立ち止まった
「どうしたの」
「ああーー こんな事ならスカートはいて来るんじゃなかった・・・」
「あのなぁー・・・」
ラルド「男は先に行け」
班長&アレイムはしぶしぶハッチをくぐった
ラルド「ユウロスも先に行きなさいよ」
「あのなぁー 俺はこの船の船長だ最後に船を見回ってから降りないといけないの それに・・・ だれが見るかそんなもん」
 バキッ ドコッ  ゲスッ
 ラルドの攻撃を筆頭にリーナとリネのクリティカルヒットで ・・・ 床に倒れるユウロス
 そうして ユウロスが倒れている間にそそくさとハッチをくぐる3人
「ううっ ・・・ しっ しどひ・・・」
 ユウロスは一度船内を見回ると這いずりながらハッチをくぐり抜けもたれるようにドッキングハッチ側のハッチを閉めた その向こう側でハッチの閉まる音がユウロスの耳に入った その直後さっきのダメージの残る体が再び床に倒れた
「ユウロス」
と 呼ぶなりユウロスを抱えるアレイム こう見えても彼は結構力が強い
「ちょっと やりすぎたかな」
と リネが治癒魔法をユウロスに使う
 ラルドはそのユウロスを見ながら
「しかし 拳で殴ったのにまるで石を殴るような激痛だったなー」
 そうしてまだヒリヒリと痛い拳に目をやった
 数秒後立てるまでに回復したユウロスは ひょこひょこと不安定に歩きながら通路を進む しばらくして天井の高いホールに出た見渡すと天井が半球をつぶしたような形をしている
 そのままユウロスはそのホールの中央に進み出た
「ユウロス ここは?」
 アレイムの質問にユウロスはすぐ前にある逆三角のボタンを押し
「エレベーターホール」
と 答えた すぐに目の前の扉が開いたユウロスは中に入るなり
「みんな 早く乗って」
と エレベーター内のあるボタンを押した
 ぞろぞろとユウロスを除く一行がエレベーターに入って来る
「UAI このエレベーターをレベルマイナス1まで送ってくれ」
と インコムに告げた
 了解
 エレベーターの扉がゆっくりと閉まるその後数箇所に存在するレベルカウンターの表示が『最上層− 階』から『地上へ』に変わる ユウロスはインコムを外しながら
「かなり時間が掛かるからみんなゆっくりしていいよ」
と エレベーターの壁にもたれるように座りこみ  コートのポケットから本を取り出ししおりの挟んであるページを捜しだし続きを読み始めた
『その本の題名は 潜水艦と宇宙船について というものだ』
「あの様子だと かなりの時間が掛かるらしいな」
と 班長はユウロス以外の12班の班員に言った
「ユウロス ユウロスわたしにも読める本もってない?」
と リーナがユウロスに近づきながら彼の読書を妨げるように聞く 邪魔されたユウロスは
「ちょっと待て ・・・(ユウロスがポケットに深々と腕を突っ込んで何かを探しています)・・・ はい」
「ん」
 リーナは偉そうに礼を言うとユウロスのよこに座りその本を読み始めた
 アレイムがユウロスの隣に座って本を読み始めたリーナの服装を見て
「班長 あれは・・・」
 班長はリーナに歩み寄り ジロジロとリーナの服装をマジマジと観察する
「ユウロス こやつはだれだ無礼であろう」
と 昔の癖かリーナは偉そうな口をたたく
 班長はリーナに聞く
「きみはラオリス王族の人間だね」
 戸惑うリーナの隣ユウロスが本を読みながら
「そうだ彼女の名はリーナ・フィン・ラオリス ラオリスの第一皇女だ」
 班長は複雑な表情を浮かべ
「戦争の切り札かユウロス たいした功績だよ・・・・・」
 ユウロスの言葉が班長の言葉をかき消すように
「班長 いぃーやアレックス・スーウィン おまえはそんなことを考えているのか? それにお前には関係ないことだ」
「何が 関係無いだ じゃあ今までの君の功績は・・・」
「私はただ好きにやっただけだ それに・・・降りかかる火の粉は撃ち落す」
 班長はリーナを指さし
「こいつは人質にだってできるんだぞ それをみすみす・・・」
「くどい」全く こいつらは勝つ事しかあたまにないんだからこまる 人権はどうなる 人権は
 班長がユウロスから離れ変わりにアレイムがよって来た
「ユウロス 暇つぶしになる本無いか?」
 アレイムは少しユウロスを恐れているようだ
 ユウロスはすぐにポケットから少し厚い本をとりだし厚いに渡した 微笑と共に・・・
 アレイムはユウロスから少し離れた場所に座り込み本を読み始める
 ユウロスは笑みがこぼれるように
「ふっふっふっ」
 アレイムは突如として吹き出し笑い始めた 恐るべき本である その本の題名は「笑えます これであなたも一生笑顔」で ある
 しかし その笑い声に負けないくらいにうるさいのがいた グラメダの学者2名を巻き込んだ例のカードゲームだ

 一時間後
 アレイムは顔をひきつらせて笑っていた 思い出し笑いも重なりもう口の筋肉が限界である
 ユウロスとリーナは合計で5冊目の本をもくもくと読んでいる
 班長は悩んでいた そしてその他のメンバーによるカードゲームは狂乱のうちに続いていた

 

 ガルスブリーズ
「UAI どうしたの?」
「はあ すみませんフリール ホワイトバードが戻って来ます」
「ユウロスは?」
 「それがバベルに・・・」
 フリールは深くため息をついた後
「私の仕事を少しユウロスにまわしといて」
 「それは ちょっと・・・」
「完璧な文句でもあるの?」
 「分かりました 分かりました」
「分かればよろしい」

 さらに一時間後の軌道エレベーター
 ユウロスは軌道エレベーター内別室のキッチンで何かを料理している
 この軌道エレベーターは移動に長時間かかるので 現在やく一カ月分の食料がキッチンの奥に保存してあり さらにバスとトイレ 言い換えれば風呂と便所がある 構造は二階建てで二階部分から乗ることになり一階部分にキッチンと倉庫と風呂と便所がある
 上では12班のメンバーが難しすぎる本を辞書片手に読んでいる
「ユウロスまだかー」
と 腹をぐーぐー言わせてテーブルにはいつくばるように席についているのはラエル その隣でリネとエレナがぐーぐーという腹の虫を我慢して いや忘れてリーナとバリアスの4人でカードゲームに興じている
「まあ待て」
 ユウロスは世に言うチャーハンを作りながらその隣でスープを煮込んでいる
 しばらくして出来上がったチャーハンを個々に盛り付けスプーンをその横に刺したものを人数分テーブルに並べた言うところのフライパンにはまだチャーハンが残っている ユウロスはスープの煮込むのを止めて皿に盛り付けた どっちかというと流し込んだのだが
 テーブルについている5人ラエル エレナ リネはかき込むように胃へと流し込むのであった バリアスはがさつな食べ方だが隣の三人よりはましだった リーナは一人静かに食べ始めた恐らく元上流階級の意地だろう ユウロスは階段を昇り上にいる12班のメンバーに「ご飯出来たよぉーー」 と告げ階段を降りテーブルについて食べ始めるのであった
 皆が夕食を食べ終えて一息ついたころ この軌道エレベーターは全行程のまだ半分も降りていなかった
「ねえユウロス あなたそんなに長く生きておもしろいことあるの?」
と 最初に火ぶたを切ったのはリネだった
 そして後から後から 質問攻めに遭うユウロス
 そして数分後のとどめにバリアスの質問
「お前 今までに結婚した事があるのか?」
「あるよ」
 もー半分自棄糞状態
バリアス「ちくしょーーー なんだかとっても ちくしょーーーー」
 答えたユウロスは皆の集中する視線に深々と しまったと思うのであった
「ねえ 誰といつ結婚したの?」
 意味ありげな口調のリネ
「話してくれる?」
「どのくらい詳しく話そうか」
「かなり忠実に」
と ラエルが力んだ声で言う
「じゃあ結婚するまでだぞ」
 ユウロスはゆっくりと思い出しながら話し始めた
「今から6千年ほど昔になるがグーレーン高原の現在ではラヤルーエルフと呼ばれる者達の都市に私は自称発明家としてかなり広い倉庫に住んでいた・・・
 ええと しばらくは一人で機械をいじっていたのだが
 生活もかかっていたのでそれまでに造った使える品を売りに出したんだ その品の一つが当時の科学アカデミーの目に止まった それが現在で言うステルステクノロジーだったわけで そのためか何かあるとその科学アカデミーに呼ばれるようになったんだ かなり面倒な事だったが
 そうしてしばらくして現在で言うロボットを造ろうとした私は 助手を一人雇うことにした 実際に役に立つ助手ではなくてもよかった しかし どういう訳かすぐに科学アカデミーから一人派遣された 優秀な助手だったらしいが彼には作業のペースがゆっくりだったのか すぐに科学アカデミーに戻ってしまった なにせ部品の加工を友人の経営する鍛冶屋に頼むようだったから そうして数年に及ぶ基本研究が終わると設計に取り掛かった確か身長10数mの二足歩行型だった気がする
 再び私は助手を一人雇うことにした そうして来たのがナッキャ・ストラフィーネ当時20そこらの歳だった ともかく組み立て作業は当初の予定より5%ほど早く終わった 材料と加工は科学アカデミーに顔をきかせて 組み立ては地下で行った武装こそないが10c程度の砲弾が当たってもびくともしない機体の強度を誇っていた 友人の鍛冶屋にはとりあえずサーベルでも頼んでごまかしたが・・・ それからしばらくは生活の足しにする物ばかり造っていた
 だがある日科学アカデミーの実験により生まれた研究済みの 悪く言えば使用済みの飛竜を引き取るはめになった なにせくじ引きなんかには今も弱いものだから その実験により生まれた者は それがまあ外観は普通の飛竜だったが脳みその研究か何かでテレパシーの能力があった 私はとりあえず飼う事にしたしかし予想もしなかったのが ナッキャがその飛竜に興味を示した点だった 数カ月後ナッキャから私に結婚の申し込みがあった
 と言う訳だ」ここまでなら皆に話せるな
 赤面しながらいい終えたユウロス
「ねえ その後は・・・」
 リネが目を輝かせて聞く
「聞かないでくれ」
と ユウロスは物寂しげに言う
「畜生ーっ なんだかとっても畜生ぉぉぉおっ」
 叫んだのはバリアスである
「・・・・・・・・・」なんだかなぁー
 エレナは叫んだバリアスにあきれるユウロスの瞳をのぞき込むように言う
「愛してるのね 今でも」
「ああ」
 さてそんなうちにこの軌道エレベーターの至るところにあるレベル表示が『地上−レベル9』に変わった ミディーはレベル表示の変化に気づき
「あらっ ・・・ ユウロスもう着くんじゃない?」
 ユウロスはレベル表示を見
「ああもうすぐだ みんな降りる準備して」
 班長は視線をリーナに向けて
「・・・・・・・・・・・・・・」・・・・・・・・・・・
「どうしました 班長」
「アレイムか いやなんでもない」
 ユウロスはしばらく考えていたが インコムを被り
「UAI よく聞け」
感度良好
「・・・・・・・・・」なにか違う「スリットエンジンの実験艦があったろ」
はい確かに
「案内してくれ それと各部の説明書を作成してドックへ」
実験艦は第3ハンガーに引き上げてありますが・・・
「どうした」
スリットエンジンは多大な電力を消費します
「ああ 知っている」
その電源の発電機を外してあります
「と言うと その発電機は・・・」
核です
「そうか」
どうしますか
「もっと出力のある機関は無いのか」
ありますがガルフブリーズのメインジェネレーターぐらいです
「うむー うちの学者と言う名の馬鹿共では扱うのは無理だしな」
ちょっと待って下さい
「ん」
スペィグラッド機関を応用した物なら出力の60%程度で十分に使用に耐えます
「サイズは」
核の物より一回り小型ですが重量が少し増します
「仕方あるまい 今それはどこにある」
ガルフブリーズのディーのハンガーです
「おひおひ」
どうしますか
「ディーとその機関をホワイトバードでここへ運んでくれ」
分かりました ディーには他に何と伝えますか
「光学兵器を持って来いと伝えてくれ ただし他のメンバーには黙っていてくれ」
了解 吉報をお待ち下さい
「ああ それから食料を供給してくれ」
了解 第3ハンガーでお待ち下さい
「分かった」
と その直後ロックが鋭い目付きとともに
「ユウロス 学者と言う名の馬鹿共とはどういうことだい」
と 鋭い指摘がユウロスを襲う
 ユウロスはそっけなく
「簡単な事だ おまえたちは核を扱うには早いのさ」
 ユウロスの言葉に班長が機敏に反応し
「核だと」
「そういうことだ ・・・ さて降りる準備をしてくれよ」
 いまレベル表示は『地上−レベル3』をさしている
 ユウロスは食器の処理をして階段を昇ると皆が荷物整理を・・・ していなかった

 数分後
 軌道エレベーターはやっと『地上−レベルB1』に到達した
 ユウロスは皆を軌道エレベーターから降ろした
 目の前にはかなり広い空間が広がっている そして その床には個々のハンガーへの案内が矢印で示してあった ユウロスは第3ハンガーへの矢印に従って足を進める 他のメンバーもそれに続いた エレベーターホールから天井の高い通路に入りしばらく進む
「ユウロス さっき言ってた 核ってなんだ」
「ええと 読んでみてよアレイム」
と ポケットから取り出す一冊の分厚い本 その本の題名は「核の全て」である
 荷物を抱え歩きながら読み始めるアレイム
 十数分歩き続けた後通路が終わり第3ハンガーが広がっていた
 潜水艦のドッグにしては水が無い
「ええと UAI 例の実験艦を作業スペースに移動してくれ」
了解
「それから各部のマニュアルを製作してちょうだい」
現在編集中です
「うむ」
 コバルトブルーの実験艦は天井に軌道のある大型クレーン2つの力で宙づりにされゆっくりとドックに入って行く
「ユウロス これ何だ?」
と ラエルが手にしているのは 柄の部分は素っ気のないグリップだけで刃に当たる部分は黒いゴムのような物で覆われている物だった
「お前なぁー グラメダでなかったかそれ」
 呆れ返るユウロス
「それはなぁー ラバーブレードと言うんだ」
 言ってしまうユウロス
 ラバーブレードとは竹刀のような形状である グラメダの戦闘訓練などで見かけることもある ただし まともにぶたれると非常に痛い
「いやあ なるほど でも俺はヘビーブレードを使っていたから・・・」
とラエル ユウロスはラエルの手にあるラバーブレードの柄頭にあるダイヤルをいじった 片手で持っていたラエルは思わず
「おおうっ」
 声を上げた
「これで だいたい4kの重さだ・・・」
「こいつは便利だな」
と 2・3素振りをするラエル
「もう一振りないのか?」
と すっかり打ち解けているバリアスがユウロスにたずねた
「ラエルに聞いて」
 ラエルに振るユウロス
「あの箱の中 今リーナの座っている箱の中にまだあると思うが・・・」
 言われたままバリアスはリーナの座っている白いファィンセラミック製の箱に近づいた
リーナ「・・・・・・・・・・」
バリアス「・・・・・・・・・・どきな」
 睨み合う二人
 おずおずとリーナはバリアスと一定の距離を置いてユウロスのそばに駆け寄る
「ふんっ」
 バリアスは箱の蓋を開けラバーブレードを取り出した ゆっくりとその箱を離れラバーブレードの重量を調節したあと
「相手するぜ ラエル」
「おうし こい」
 バリアスに向かって構えるラエル
 そそくさとその場を少し離れるその他のメンバー
 リネはカードを取り出し
「ねえ しない?」
「だれが配るの?」
と ラルド
「まあとりあえず ・・・ やる人!?」
 リネの言葉にユウロスとリーナと班長以外のメンバーがリネのそばに座り込んだ
「ちょっと いいかな」
と ユウロスはリーナに手招きをする
「ええ」なんだろう
 二人はハンガーの中を散歩するかのように歩き始めた

 ガルスブリーズ ディーのハンガー
 スペイグラッドエンジンをホワイトバードのパーツの一つである大型カーゴに収納し終えたディーはそのエンジンを見つめ
「・・畜生ー 特許取りたいぃーー・・・・・」
 そしてハンガーに声が響いた
 黙ってコクピットに向かうディー ゆっくりと操縦席に座りながら
「さてと よろしく頼むよ」
「了解 アーム接続へ」
 ゆっくりとアームが伸びホワイトバードのブースターの間にあるフックに引っ掛かる
「エレベーターへ移動します」
 ゆっくりとアームがホワイトバードを持ち上げる 軋む音もなく静かに白い空間に浮かぶホワイトバード と その中である写真を見て叫ぶディー
「ああっ 好きだぁー」
 そんなこんなのうちにホワイトバードはエレベーターの上に静かに着地した
 アームがホワイトバードから離れ エレベーターの四隅からガイドビームが真上に伸び ゆっくりとボード状のエレベーターが天井に向かって加速する 途中 ディーの造ったメカなどがそれぞれの階にエレベーターに向かっておかれていた エレベーターが天井に近づくと 天井にあるハッチがゆっくりと開く エレベーターはその中へ吸い込まれるように入っていく
 ディーはコクピットの中で
「システム オールグリーン UAI全てこちらから指示してくれ」
「了解 エアロックに到着します」
 エレベーターはゆっくりと減速し その上方でエアロックへのハッチが開く
「レールシステム オープン」
 エレベーターがエアロックの真ん中にホワイトバードがくる位置で一度止まりホワイトバードをその位置に残しエレベーターが元来た方向に加速を始めた
「Bハッチクローズ 気圧低下」
「このプロセスが長いんだよなぁー」
「Aハッチオープン 射出します」
 ホワイトバードは長いレールカタパルトの空間を落ちるように加速し始めた

 ハベルの搭−レベルマイナス1−第3ハンガー
 ユウロスは立ち止まった
 リーナも立ち止まり
「どうしたの」
「もう21年か はやいものだな」
「私の事?」
「ああ ・・・ 私が名付け親だよ」
「嘘っ」
「そう言われても・・・」
「じゃー リーナの意味は?」
「永遠なる平和 ちなみに旧ウァルフィス語だよ」
「どーして 知っているのよ」
「だから 私が名付け親だよと 言っているじゃないか ところでラオリスがいま全世界を相手に戦っている はっきり言ってこのままではラオリスは自己崩壊すると思うんだが・・・」
「父は いえ 王はそんな大それたことができる性格ではありません」
「そりゃそうだ もし彼が一般市民なら戦争と聞いたら真っ先に逃げ出すだろうよ」
「ええ」
「実験艦の改造が終わる前に確かめに行く必要があるかもしれないな」
「どうやって」
「ちょっと君に飛竜になってもらえば・・・」済むんだが 遠すぎるなぁー「やめておこう」
「どうして」
「墜落するのはいやだろう」
「うん」
「ところでユウロス あなたあれだけの魔法が使えるのに なぜグラメダに」
「魔法よりは機械弄りの方が好きなんでね」
「ラオリスならば 高い地位も望めるのに」
「高い地位か んっ ・・・ 高い地位 高い地位 ああーーっ」
「どーしたの」
「ちょっと 行ってくる」
「何処へ・・・・」
 リーナの言葉が切れるが速いか ユウロスは彼女の目の前から残像を残し姿を消した
「にっ 逃げられた・・・」
 本を読む者 狂喜乱舞のカードゲームが続きその傍でチャンバラをやっているものがいる その第3ハンガーの端でリーナは ぼーっと立ち尽くしていた

 クレイバラーズ王国王都クレイムランド
の王宮の門の前 にユウロスの姿があった
「いま 暫し待たれよ 我が王は食事中ゆえ」
「はあ」
 日が高く昇る 真昼のクレイムランド王宮の門の前はユウロスと1人の中年の門番の姿があった
「お主 名は何と申す」
「はぁ 私はユウロス・ノジールと言う者で・・」
「ほう ユウロスか ・・・ もしや30年ほど前に王宮に訪れたユウロスの子供ではないのか?」
「いやぁ まあそんなところで・・・」本人だ とは言えないよなぁ
「やはりそうか よく似ておるわ」
 門番は懐かしそうにユウロスを見つめるのであった
「しかし 同じ名前とはなぁー ところで父上はお元気かな」
「はい」
 明るい返事でかえすユウロス
「ユウロス様でございますね」
 奥から一人の女性がユウロスを呼んだ
「ああ そうだが」
「国王陛下がお待ちになっております」
「分かった」
 門番は ぽかぁーん として
「ユウロス様って お主一体」
「まあ気にするなよ 会えてうれしかったぜ じぁーな」
 ユウロスは王宮の門をくぐり抜けた
「偉いのかぁー」と門番
「ええ」と女性
 ユウロスは謁見の間へと足を進める
「わぁっ」
ビタァーン
 突然こけてしまうユウロス 足元は石畳なのに・・・
「相変わらずだな」
と ここぞとばかりに姿を現したクレイバラーズ国王 リチャード3世 いまだ二十前後 まだ子供らしさの残る若輩の王様である 遊び好きという噂も・・・
「恥ずかしい所を見られてしまった」
 ユウロスは起き上がり自分の足元を見た すぐ後ろに縄がピーンと張ってある・・・
「やっ やったなぁーーー」
「普通 分からんか?」
「うっ・・・」
 リチャードはユウロスに手招きして歩き始めた ぶつぶつと言いながらついて行くユウロス
「何時この国へ?」
「さっき ・・・ 馬鹿に人気が少ないな」
「ああ ラオリス軍の飛行戦艦の攻撃が激しくてな」
「飛行戦艦 空飛ぶ黒い戦艦の事か」
「ああ イトスが一隻沈めたらしいが」
「面目ない しかし情報が伝わるのが早くないか」
「さっき届いたんだ・・・面目ないって・・・ まさか」
「いやぁー その ま・さ・か なんだよなぁー」
「おいおい じゃぁー例のエネバスか?」
「ああ 少々の砲弾は跳ね返されるだけだからな」
「うちの学者達も頭を悩ませているんだ あーあせめて遺跡でもあればなぁー」
「ぼやかない ぼやかない」
「ふぅーっ」
と リチャードがため息をついて足を止めた
「どうした」
「悪い予感が・・・」
「陛下」
 突然現れたじじい 驚くリチャードとユウロス
「陛下 なにとぞこのような者とお付き合いせぬようにと 申し上げたはずです・・・」
 心の底から迷惑そうに聞き流すリチャード
「陛下  聞いておられるのですか」
「そんなに 大声を出すな じい」
 なだめようとするリチャード
「いいえ陛下 今の陛下を 陛下の御父上がご覧になられたらと思うと じいは じいは悲しゅうございます そもそも・・・」
 まだ続くじいの言葉
 じいの長い説教を聞いている いや聞き流すリチャードとユウロス 説教はなお続く
・・・「分かりましたな陛下」
 やっと終わったじいの説教
「はい」
 疲れ果てたリチャード
 じいはゆっくりと二人から離れて行った
「やっと行ったか」
と ユウロス
「しっ」
 ユウロスの後ろで光るじいの視線 リチャードが振り向くと じいがまた二人によってくる
「・・・《何を叫んだらいいのかわからないリチャード》・・・」
と 叫んでリチャードはじいの鋭い視線を背中に走りだす
「ま 待ってくれぇーーーーー」
と ユウロスもリチャードの後をおって走りだす
「くぉおーらぁー 待たんかぁー」こんの悪ガキ共
 しかし 老体の足は遅かった・・・
 二人は取り留めもなく王宮の廊下を走り続けた
「もう いいんじゃないか?」
 ユウロスがリチャードに尋ねた
「もう 十分です」
と リチャードは足を止め 近くの扉の鍵を開けユウロスに手招きをして中に入った
「今度は何だぁー」
と リチャードの後に続いてゆく 主体性のないユウロス
 二人の目の前には高い天井をもつ暗い雰囲気の部屋 その中に幾つかの天井ギリギリまでの高さのある大きな本棚は棚に古い本をぎっしりと蓄えている しかし 図書室にしては本の量が少ない
「ここは」
「私の書斎だよ 所でここへは何しに?」
 大きな大理石のデスクの向こうの椅子に深くかけたリチャードは言った
「あいさつに来ただけ」
「あのなぁー お前の行動は行き当たりバッタリだな」
「そっちに 用が無いんだったら 帰るが・・・」
「そうだな 一つだけ国王として頼もうか」
「はぁー」
「飛行戦艦を撃ち落としてほしい」
「はぁー」
 リチャードは呆れ返り
「なぁ ユウロスもうちょっとこう 人間らしくしようよ」
   頭を抱えるリチャード
「しかし そこが私らしいだろ」
と ユウロス
「本人が言ってどうするつもりだ 全く」ぶつぶつ
「それは言わないで ・・・ しかし 空軍はどうした」
「海軍空軍共に全滅状態 なんとか個々の都市などを結界をはって防いでる状態だからなぁ」
「それにしては暇そうだな」
「それを言われると辛い ・・・ 作戦指令室にでも行くか?」
「・・・・」
と その直後突然書斎の扉が開き外から一人の兵士が入るなり
「陛下 作戦司令室へお越しください」
と どなって去って行った
 リチャードは立ち上がり
「ついて来いよ」
と ユウロスを誘う
「・・・ 私は行かない」
「どういう意味だ?」
 ユウロスはゆっくりと空間操作を行いながら
「リチャード 降伏も選択の一つだ ・・・・・ いざとなったらバベルへ来い ・・・」
「ユウロスッ ・・・」行っちまいやがった
 リチャードは珍しく国王として深く考え始め書斎を後にした

 そんなこんなでバベルの地下の第3ハンガー
 突然リーナの目の前に現れるユウロス
「わぁあーああああっ」
 手摺りの上に座っていたリーナは重心を崩し 腕を後ろに回す暇も無く頭を痛打
「おや 脳震盪かな?」
 頭を痛打してのびているリーナを見下ろし 手摺りをはさんでユウロスはリーナの体をゆっくりと持ち上げようとした 無論手摺りの間から両腕を延ばして
 リーナは持ち上がらない 仕方なくユウロスは手摺りを越えてリーナを持ち上げる
「ああーーっ だぁあー 落ちるぅー 重いぃー」
 リーナを抱えて叫ぶユウロス
 そんなこんなでこの二人は狂乱のカードゲームをしているそばについた
 なにせ 狂乱の だからこの二人に気づいた者がいない ユウロスはリーナを床に降ろした
「よう ユウロス」
 ユウロスは声をかけたディーを見て
「ええと だれだっけ?」
「おい」
 力むディー
「えーと んーと うーんと」
 悩むユウロス
「帰るぞ」
と ディーが言うが早いかユウロスは言った
「ピーー(自主規制)ーーのディーだな」
「ピーー(自主規制)ーーが余計だ だいたいお前は・・・」
 ディーがユウロスにせりふの続きをしゃべっているがユウロスはそれをものともせずに
「ところでディー あのドックに入っている実験艦にエンジンを ・・・ あらっ」
 ユウロスの言葉がまだ続くのにディーは早々と作業に入った
「なんだかなぁー」
 いい終え 気の抜け切ったユウロス その頭に重い衝撃の後 激痛がはしった
「おおおおぉー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おおっ」
 絶句状態のユウロス
 彼は反転しその相手を絶対零度の瞳で見つめた
「あいつだれだ」
と 微動だにしないその相手のラエル
 ユウロスの頭のたんこぶの上には推定重量6kのラバーブレードがまだ静止している
「ディーだよ」
 冷たく答えたユウロスはバリアスの方向に左手を伸ばし
「ラバーブレードを・・・」
 バリアスは黙って推定重量4kのラバーブレードをユウロスの左手に手渡した
 受け取ったユウロスは重量を調整し ラエルに向かって
「ラエル ・・・ 手合わせ願おう」
 ラエルは余裕という態度で数歩分の距離をとり ユウロスに向かって構え手招きをし
「全力で かかってきな」と言い切る始末
 ちなみにラエルはこの2秒後 吹っ飛ぶはめになった

 2秒だけ飛ばします
「おーーー」
っと驚かないバリアスの歓声
 気を失って吹っ飛ぶラエル
 そのラエルに背を向けたユウロスは半壊状態のラバーブレードを投げ捨て
「他愛もない」全力で かかって来いか・・・

 そんなことには目もくれずカードゲームにうつつをぬかす輩が・・・
「そーれ あがりっ」
 最後の一枚を気合の入った声で出すのはアレイムだ その声に続くエレナとミディー
「残念でした」
「さらに倍っ」
「うわぁーーーーーー」
と 嘆くアレイム 彼はカードの山から2n枚のカードを引いた
 そして順番はリネに回る
「そーれ 落ちろ」
と同種類のカードを3枚出した
「防御っ」
と 叫ぶディーロック・アンヴァーストことロックもリネの出したカードと同じものを出した
「そんなぁー」
 叫ぶフリール 彼女は4N枚のカードを山から引くことに・・・

 実験艦甲板
 ここはその実験艦ラーディアの後部上甲板 ディーはこの甲板下のエンジンルームにスペイグラットエンジンをこの実験艦に積み込むのである で 今はその甲板を切断している所である
 この実験艦は遠距離外視システム等多数の当時の新技術を駆使して完成した潜水艦である 因にこの潜水艦の最大の特徴は可動式スタビライザー これは高速航行中などにもその威力を発揮するが 艦内にたまった過剰エネルギーを艦外へ放出する働きもある それに抵抗に関する限界の理論を用い抵抗を最小限に抑えてあるので加速や高速航行中支障をきたさない 最大角−87.3度 収納時+0.82度
 ディーはベートーベンの第9の第三楽章を口ずさみながらプラズマカッターで装甲板を切ってゆく
 四角く切り取られた装甲板はクレーンで吊り上げられる・・・

 ラオリス空軍リムン空軍基地
 にある ラオリス空軍指令本部では飛空戦艦轟沈の報に揺れていた
 現在 設計に携わった者達が 空軍総司令官の前に集まっている
 その中の一人の技術者の轟沈に関する言い分はこうである
「対衝撃には20万G 対魔法には70万ファクト/m3 まで耐え得るように作成した」
と 言うことらしい
 しかし空軍総司令官は言った
「では どうすれば落ちるんだ」
「恐らく 光学兵器しかあり得ないものかと・・・」
 突然総司令官の部屋に入って来た総司令官の女性秘書が言った
「光学兵器に対する防御方法はどうなっているかね?」
 総司令官は技術者達にたずねた
「光学兵器に関しては4GWまで耐え得ることができます」
「総司令 以上の数値は飛空戦艦の攻撃力をもってしても十二分に耐え得る数値であります」
 隣の技術者が付け加えた・・・
「そうか 我が国の魔法力を合計しても及ばないというのに・・・」
 総司令官は窓の外を眺めた
「奴だ」
 この部屋に入って来たディアス・エピックは言った
「何物だ」
 総司令官は秘書にたずねる
 ぼそぼそと答える秘書
「ディアス・エピック 海軍の艦隊司令官が何用かな」
「ユウロス・ノジールという男が飛空戦艦を撃ち落としたのだ」
「面白い ではその方法は?」
「超高圧縮したエネルギーをぶつけるだけだ・・・」
「そんな たわごと・・・ 現在の最高記録は10万ファクト/m3だと言うのに・・・」
「奴の魔法力密度はそんなもの足元にも及ばぬわ」
「口が過ぎますディアス殿」
 秘書はディアスの言葉を遮るように言った
「ふん ・・・ では失礼する」
 ディアスはこの部屋を去った
「もう一度 設計にミスがないかを探してみてくれ」
 何故だ 何故落ちた 私とてあの程度の知識は持ち合わせているつもりだ 何故
「総司令 どうかいたしましたか?」
「いや 考え事をしていただけだ」
「では総司令 10時から会議ですので そろそろ・・・」
「ん わかった」
 空軍総司令官は席を立った

 クレイバラーズ王国王都クレイムランド
の王宮の地下数百メートルにある 作戦司令室
「国王陛下 新たにルノーの城塞の結界が崩壊致しました」
「あと27地点か・・・ 皆に 聞きたい 我が国にはまだ戦う力があるのか?」
 この国王の声が長い沈黙を呼んだ
「残念ながら・・・」
「そうか」
「しかし陛下 現在 トルレアーノ城塞で新兵器を製作中であります」
「使えるのか?」
「はあ 威力は保証できますが・・・」
「どうした」
「それを使用すると国土が使用不能に・・・」
「そんな兵器の使用は認められない」
「はあ・・・」

 ガルスブリーズ
「なるほど」
 空間歪曲測定器を片手にフリーナはつぶやいた
「少しずつ元に戻りつつある・・・」
 目を閉じ静かになる フリーナの耳に入ってくるのはメインジェネレーターの音ばかりなり
「・・・・・・」この歪みの行き着く座標は βの上空2万m
 インカムにここの座標を記録させ 広く明るい通路をフリールの車でハンガーの方向へ去った

 グラメダ
のチャール・エピックの経営する書店
「はいよ」
 男は箱を降ろし開け中身をチャールに確認してもらいラオリスの言葉でチャールに言った
「全部で 246200ファルだ」
 しばらくしてチャールは金庫からその額を持って出て来た
「確かに」
 男はそれを受け取るとこの店を後にした
「さて」
 チャールは箱の中身を本棚に並べてゆく
「しかし 占領下でも商売ができるとは思わなんだなぁー」
 並べ終えるとカウンターの奥に座り読みかけの本の続きを読み始めるのであった

 実験艦内部
の艦橋は艦長用の小高いコンソールとその他のメインクルーのコンソールに別れている
 前方には外視システム搭載の隔壁付耐圧ガラスが覆っている
 ユウロスは艦長用のシートに深く腰掛け我が物顔で・・・
 さて その下のデッキの一般クルー用の1室ではリネとフリールが2人で部屋の掃除を行っていた その隣ではラエルとエレナが同じく掃除を・・・ おっと ラエルは2段ベッドの下で横になっていた
 バリアスは と言うとこの実験艦の舳先に立っていたりして・・・
 さてアレイムとミディーとディーロックよろしくロックは艦橋に上がって来た
 現在艦橋はスペイグラッドエンジンの取り付け作業中なので機能が停止している
「ユウロス」
「んっ?」
「案内してくれないか?」
「んむっ」
 ユウロスは物ぐさに返事をするとシートから立ち上がり階段を降りた
「艦橋から降りたこことこの下はBデッキ 主にクルーの生活空間だ」
 アレイムとミディーとロックはユウロスを先頭に艦内を舳先へ向かう
 ハッチをくぐりぬけた後ユウロスが言う
「ここはDデッキ 中距離弾道ミサイルの斜口発射管が4対ある」
 ミディーはユウロスの言葉の直後に質問を押し付ける
「中距離弾道ミサイルって何?」
「射程約6000kmのミサイルだ 落ちてくるときの速度は音速の10倍以上になる」はずなんだが
「ほえぇーーーっ」
 さてユウロスとその一行は通路の行き着くままに階段を降りてハッチをくぐる
「ここはEデッキ 魚雷発射管が3対ある」
 一行の目には狭い舳先の内部が映っている
「なあ ユウロス魚雷発射管にしては大きくないか?」
「名前が魚雷発射管なだけだよ アレイム」
「分かんないなぁー」
 考え込むアレイム
「後で マニュアルを渡すから心配はないと思うよ」
「そうか・・・」

 数時間後ガルスブリーズ
のカタパルトにフリーナはユウロスのハンガーに眠るホワイトバードMark3にフル装備を施したものに乗り込み ゆっくりと 深呼吸をした後
「出して」
と パネルに向かって言った
 そのパネルに映っているリディアは言う
「早く帰って来なさいよ」
「ええ」
 リディアはカタパルト加速スタートのキーを押した
 ゆっくりとカタパルトアームがホワイトバードMark3を伴って加速してゆく
「いいのかなぁーー」
 リディアはフリールの行動を予想しつつこの場を去った

 実験艦の前甲板
の上にはディー以外のメンバーが集まりマニュアルに目を通していた
 ただ一人バリアスを除いて・・・
「よう ユウロス終わったぞ」
「チェックは?」
「済んだ」
「そうか・・・ 教育頼むな」
「へっ?」
「飯作るから・・・」
「ああ 食えるもの作れよ」
「はははっ・・・」
 ユウロスは宙吊りの実験艦の甲板からハッチを開けデッキに飛び降りた
「さて 人員を振り分けるか」
 ディーはメンバーを見回す
「フリールと 女が3人 男が4人か・・・ ええと ナビゲーター ソナー ・・・」
 ディーは頭をかきながらぶつぶつと考えるのであった
 そのころユウロスはBデッキのキッチンに向かって料理をしている
 突然ポケットの中のインコムが鳴る
「なっ なんだ」
 ユウロスはインコムを被る
 大変ですフリーナ殿がフル装備のホワイトバードMark3に乗ってこちらに向かっています
「あとどの位で着く?」
約2時間ほどかと・・・
「分かった 知らせてくれてありがとう」
いいえ お役に立てれば幸いです
 ユウロスはインコムをポケットにいれ 比較的早くできるようメニューを切り替えた

 二十数分後
「お待たせ」
 ユウロスは甲板に夕飯を運んでくる
「おう 来たか」
 言いながらラエルは食い気が真っ先に脳を支配しだれよりも早く手が伸びる
「ディー ちょっと」
 ユウロスはディーに手招きをして呼び寄せる
「なんだ ユウロス」
 ディーはユウロスと共に少し皆から離れた
 その様子を視角の内側に入れるフリール
 ユウロスはディーに少しかがんでもらって話を始める
「いま さっきフリーナがフル装備のホワイトバードMark3に乗ってこちらに向かった・・・」
「なっ・・・ なにそれじゃあー」
「お前さん 戻ったほうがいいよ・・・」
「ああ 食事が済んだら戻るよ」
「私からはそれだけだ・・・」
「ユウロス さっき爺さんをバベルから出したんだが・・・ よかったのか?」
「なにっ」
 一瞬全員の視線がユウロスに注がれる
 ユウロスはディーの耳側で
「何か持ってなかったか?」
「そう言えば・・・ 何か核関係の本を持っていたような・・・」
「なんて事だ・・・」・・・・ 

 クレイバラーズ攻撃の命を受けた飛行戦艦
 班長はこの戦艦の艦長の前で二人の兵士に引きつられ立っている
「貴様 正気か?」
「ええ 私は至って平常です」
「しかし よりによってグラメダの学者がラオリスに亡命するか? 動機は?」
「動機は 現在のグラメダでは十分な武器生産が出来ないからであります」
「武器生産? ・・・ 貴様手土産でもあるのか?」
「核に関する本と知識です」
「核?」
「はい 一つの爆弾で都市を一つ消すことが可能です」
「本当か?」
「嘘は申しません」
「よかろう 本国に連絡を入れてみよう」・・・

 ホワイトバードMark3
 フリーナの操縦するフル装備のホワイトバードMark3は 惑星ガルバリアβへと自由落下してゆく
 そのメインコンピューターに当たるUAI04は大気圏への突入の準備を行う
 「メーンブレード及び機体下部の45mmマルチガトリング砲 収納します」
と 男性の声がフリーナに呼びかける
「ええ どうぞ」
 最大角28°に展開していたメーンブレードはゆっくりと88°まで後退すると同時に 45mmマルチガトリング砲は機体下部のエンジンの間の窪みに沈み込む その数秒後個々のバーニアが姿勢を正した
 「ガルバリアβ大気圏への再突入まであと25分
  突入座標 東経167度12分7秒 南緯28度41分34秒
  突入方向 270度00分2秒
突入角度 6.72度
ガルバリアβに対する相対速度 時速・・・」
「はぁーーーっ」全く ユウロスは何を考えて生きているのだか・・・
「どうしました?」
「んっ 何でもない・・・」
「そうでしょうか 脈拍数が上がっていますが」
「うーーーーーーっ・・・」全くとんでもない物造ったな ユウロスわぁ

 実験艦の艦橋
「へっ ・・・ へぇっ ・ へぇっくしっ  うーーーーっ」
と 艦長のシートに座っているユウロスは鼻をこすりながら手元のティッシュペーパーを取り鼻を咬む
「電源入れるぞぉー」
と ディーの威勢のいい声が響く
 数秒後 艦橋の全コンソールが数万年ぶりに息を吹き返しす 徐々に明るくなる艦橋はグラメダの学者でも思わず声を上げた
と そんな時ユウロスの目の前のパネルにある女性の上半身が映り音声がユウロスの耳に届く
 「ユウロス・ノジール お久しぶりです
  アクセスに時間が掛かりまして・・・ そんなことはさておき
  あと23分でホワイトバードMrk.3が再突入します 急いでください」
「お前さんは?」
 「あらっ? 申し遅れました UAI04ですマスター」
「ご苦労さん 暫くは通信しないでくれ」
 「はい でわごきげんよう」
 ユウロスの目の前のパネルから女性の姿が消え この実験艦の状態を映し始めた
「はぁーーーっ・・・ 」どいつもこいつも私のメカを勝手に使いおって
「どうしたの?」
 リネがユウロスに歩み寄りながら尋ねた
「ねぇー ユウロスっ」
 リネの質問に一向に応じないユウロス 彼はぼぉーーっとしている
「ユウロス」
 リネの右手にスパークが走る その様子を第三者の目で見るフリール
 その右手のスパークは徐々に強烈になる ゆっくりと だんだんと そのままユウロスの目の前で2・3度ゆっりと振る
「・・・・」
 反応がない リネはユウロスに対してエネルギーをほんの一瞬溜め 右手を振りかざした
 バァッン 狭い艦橋内に音が響く
「ぁっ  ・・・・・・・・・」
 一瞬の硬直の後全身に電撃が走り抜け 力が抜けたようにリネは跪いた
「・・・引き込まれるぅー・・・」
 叫びながらユウロスはバベルの地下数百m第3ハンガーの その座標からその姿を消した
「なっ なんなのよぉーーーーーーー」
 リネは行き所のない感情が体を支配していた

 クレイムランドの王宮
「陛下 来ました」
「・・・・・・・・・! どこだ此処は?」
 ユウロスはボーゼンとしている・・・
「よう ユウロス 突然呼び出してすまない」
 リチャード3世はユウロスの目の前の小さなデスクについている
「退屈そうだな リチャード しかしいきなり召喚するか?普通」
「でも君は人間ではないだろ?」
 ユウロスは閉口した
「さがってくれ」
 リチャードは一人の魔道士らしい者に言った ゆっくりとその者は部屋を去る
「ユウロス まじめな話だ 真剣に聞いてくれ」
「始めてくれ」
 ユウロスは冷たく言う
「降伏の件だが・・・ 難しいところでな降伏の条件はともかくとして 私や王家の人間だけ逃げる訳にもいかんし・・・ しかし全国民を逃がすのもできないし・・・」
「リチャード ・・・ いっそのこと新しい土地に国を造ったらどうだ それとも・・・」
「それとも?」
「一国の国王としての責任を果たすかだ」
「ふむ で一国の国王としての責任を果たした場合はどうなる」
「普通なら王家は全滅だな」
「うっ・・・・・」
「しかし ラオリスの人間が考えていることさえ分かれば・・・あるいは」
 ピピピーーーーーーーーー
 ユウロスのポケットの中のインコムがなる 彼は急いでインコムを被った
 大変です バベルに何物かが攻撃を行っています
「なに? 相手は?」
 はあ 黒い戦艦です
「そうか・・・」
 今のところシールドの状態が安定していますのでここしばらくは持ちこたえられますが・・・
「 フリーナに連絡を入れろ それからUAI04によろしくと」
 了解
 ユウロスはインコムを外し
「奴らの目的は何だ・・・」
「そんな事分かるわけないだろ」
 リチャード3世が答えた
「バベルにはシールド以外の武装はついていない・・・ グラメダ及びイトスには遺跡がある」
「文明の破壊か? ユウロス」
「そうかもしれない !そういえばこの国には魔王がいたな」
「ああ とりあえずギア公爵と呼んでいるが・・・」
「あいつに相談しろ そのほうが確実だ」
「いやしかし ・・・ 」
 ユウロスはリチャードに近寄り小声で
「怖い?」
「うん」
 真面目に返事するリチャード
「大丈夫 すっかり角が取れて丸くなっているから ・・・ いいか お前個人が行くんだ」
 リチャードはため息を一つ
「分かった 突然召喚してすまなかったな」
「じゃあ 帰るぞ」
「ああ」

 バベルの地下の第3ハンガー
のラーディアの艦橋の艦長用のシートに突然ユウロスの姿が戻った
「ディー いるか?」
「ええ」
 ナビゲーターのブースにいるフリールが答えた
「すぐにバベルのメインジェネレーターの所に行けと伝えろ」
「はい」
「ソナー」
 ユウロスが怒鳴った
 一瞬の沈黙
「お前さんの事だよ ラルド・ミディー」
「はい?」
「ソナーのブースに座っているだろ?」
「ええ」
「次 パイロット」
「俺か?ユウロス」
「ああ たのむよアレイム」
「次 ファイアコントロール」
「僕ですね」
「そーだ ロックお前さんだよ」
「あとは艦橋から降りてくれ ディーが降りてから確認後 海に出る」
「ディーは先程降りましたが・・・」
 フリールが言った
「よし ロック装備の確認を・・・」
「了解した」
 ユウロスは目の前のパネルを艦内情報に切り替え確認する
「食料が無いな・・・」全く無い・・・
 ユウロスはおもむろにポケットから7テラハードディスクとインコムとケーブルを取り出した そのままその7テラハードディスクとインコムとコンソールをケーブルで繋ぎ暫く時間を待つ・・・
 突然ユウロスの目の前のコンソールのパネルが一瞬消えパネルに
new U.A.I.No.?
と 表示される ユウロスは05とインコムに向かって言った
 「私はUAI05このラーディアのメインシステム 現在システムの再構築中暫くお待ちください」
 艦橋に怠惰な時間が流れる
 「システムの再構築終了」
「まず食料を供給してくれ」
 「了解 インカムとハードディスクを外してください」
「はいはい」
 ユウロスは思わず返事をしながらインコムとハードディスクを外す
 突然パネルに例のUAI04の女性の姿が映り
 「UAI04です 現在高度240k 戦艦を捕捉しました」
「そうか メーザーカノンを使用してみてくれ」
 「了解 Maser cannon−charge」
「ふむ 今頃フリーナの奴驚いているだろーなー」
「charge over Fire」

 数秒前 バベル攻撃中の飛行戦艦
の艦橋
「艦長 バベルの塔のシールド 反応に変化ありません」
 メーザーカノンのエネルギーはホワイトバードMark3から離れた それは飛行戦艦のほぼ中心を側面から捕らえる
「どうしたものか・・・」
 鈍い響きが伝わる
「艦左舷中央被弾」
「なに」
 艦長は目を疑った
「爆弾庫に引火 誘爆が始まっています」
「くそっ」
「浮力消失 落ちます」
 飛行戦艦は黒煙を吹き上げ浮力を失い墜落する 数秒後閃光と共に核爆発に似た爆発で自らを灰にした

 ラーディアの艦橋
 「UAI04は黒い戦艦の破壊に成功した模様」
「了解 ・・・ さて 間に合うかな?」
「何に?」
「フリーナがくる前に食料を補給して出港するこができるかどうか・・・」
 ユウロスはフリールの問いかけに答え艦長の椅子に深く腰を下ろした

 ホワイトバードMark3
 「降下軌道確認及び誤差修正終了 対圧力バリア展開 7%減速 間もなく対流圏に入ります」
「ユウロスのいる座標への近道は?」
「暫しお待ちを・・・
  バベル地上部分レベル5にある航空機用のカタパルトデッキから侵入可能です」
「分かった」
 事務的に受け取るとフリーナは目の前のメインパネルから目を離し 物思いにふける・・・・・

 ラーディアの艦橋
 ピピッ ピピッ
「何だ?」
 ユウロスが目の前のパネルに目をやる
 「このままですと 食料供給が間に合いません」
「どの位だ?」
 「約2時間程」
「全然間に合わないのか・・・」
「残念ながら 頑張ってくい止めて下さい」
「むっ 無責任な ・・・ よし食料供給をキャンセルし緊急発進だ」
 「いいんですか?」
「仕方あるまい」
 「どの座標へ行きますか?」
「へっ?」
 「だからワープさせますから座標を指定して下さい」
「うーーーーーんっ そーだな イトスの付近に・・・」
「は?・・・」
「イトスの付近の海面に・・・」
 「イトスってどこです?」
「UAI01から資料をもらってくれ」
「はぁ」
「大丈夫かなぁーーー」
 そんな事をやっている頃

 ラオリス王宮
 空軍総司令官ミノス・ラングーンは数人の兵士を引き連れ王宮の衛兵を蹴散らしながら国王のいる謁見の間にその足を踏み入れ 数人の近衛兵を自らの手で射殺し国王にその銃口を向け
「国王陛下をお連れしろ」
と 部下を指揮した
「きっ 貴様っ・・・」
 ミノス・ラングーンは国王の言葉を聞きもせずに
「魔法兵団の指揮権は既に私の手中にある これからは私が王の座に着く」
 高らかに笑うミノスの前で国王ラオリス36世は今や完全にその権力を失いつつあった
 そのころ 度重なる戦闘により組織だけ残っていた海軍の司令部及び陸軍の司令部は飛行戦艦の攻撃を受け既に瓦礫と化していた
 この時点でラオリスと世界の命運を賭けた戦争はゆっくりとある方向へ向かって行くのである

 ホワイトバードMark3
「ちょっと どう言う事よ?」
 「いや つい先程 ワープした模様で・・・」
 丁度今バベルの地下の第3ハンガーに着いたフリーナはユウロスのいない事に対する激怒をAUI04にぶつけている 最中でして・・・
「ちょっと あたしは忙しい中 時間を割いて ユウロスを連れ戻しに来てやってるんですからね 少々の時間の配慮ぐらいしていてくれてもいいじゃないの・・・」

 数時間後のラオリス
 ミノス・ラングーンは地下の魔導戦艦ドックで昨夜完成した新型の魔導戦艦の艦橋にいた
「魔導戦艦 ・・・ 発進」
 ミノスの命令によりゆっくりと浮上する魔導戦艦はゆっくりとその白い船体に朝日を浴び ラオリス王都と民間人にその姿を見せた
「第5・第6・第7主砲塔へ 照準王宮 発射用意」
 魔導戦艦の下部に設置されている2つの砲門をもつ3つの主砲塔が回転その砲口を王宮に合わせた
 発射準備完了の知らせを受けたミノスは言った
「撃て」
 6つの砲門がほぼ同時に轟音を上げ 時をおかずしてラオリス王国の栄華の象徴である荘厳なラオリス王宮は瓦礫と化した

 ラーディアの船室
リーナ「!」

 ラーディアの艦橋
ユウロス「しっ 死んだか ・・・」しかし 死因は・・・
 夜のイトス沖の海面に浮かんでいるラーディアの暗い艦橋でユウロスは静かに艦長のいすに座っている
 突然ユウロスの目の前のパネルにUAI01の姿が
 「チーフ UAI01です」
「ん 感度良好 御用は?」
 「御用は?じゃありません 先程核の火を観測しました 急いで原因を調べてださい」
「そうか 座標は?」
 「ラオリス王国王都から東へ約220kの地点です」
「了解 UAI2DNを解放してこのラーディアの指揮をさせてくれ」
 「しかし UAI2DNは危険かと」
「そういえばお前さんとは相性が悪かったよな」
 「はい」
「じゃあ エイル・テラフィードをフル装備で射出 射出後ワープして上空にくるよう伝えてくれ 10分以内にだ おっと ・・・ 私専用のアーマーがホワイトバードmark2にあるそれをトランクに入れてくれ」
 「了解」
「なあ ・・・ UAI01」
 「はい」
「また国を滅ぼすかもしれん」
 「・・・・・・・」
 ブン と鈍い音がしてパネルの映像が消えたのを見て ユウロスは静かに船外へ出た
 今にも落ちて来そうな空は星々をちりばめるように蓄え静かに夜の闇にたたずんでいた
 しばらくしてユウロスの頭上の眩い光と共にエイル・テラフィードが飛行形態で姿を現した それは高度を降ろしながら ゆっくりとフロントノーズの下に操縦席を出し ユウロスの目の前で停止した
 ユウロスがその操縦席に座ると 操縦席が元のとうりに機体へと収納されてゆく 完全に収納されるとコンソールが次々と明かりを放つ
「エイル・テラフィード UAI2DN 状況を報告」
「エネルギー残率99% 全ウェポンを搭載 破損故障箇所皆無」
 計器やモニターなどに照らされるユウロスは操縦桿を軽く握りしめ
「弾道コース845 距離17000」
 「了解 シールド展開 方位修正 エンジン出力64%」
「Go」
 人知を越えた加速度で弾道コースに入るエイル・テラフィードの球形のシールドの表面は大気との摩擦によってほんのり赤くなっていた
 夕方から朝日の方向へ ラオリスの東220キロの方角へと跳ぶエイル・テラフィード
 この日 多数の船で驚くほど赤く明るい流星が観測されたらしい・・・

 ラオリス軍事開発研究所
 のとある一室
「いやあ 成功ですな」
「全くだ ただの石かと思っていたが あのような凄まじい力となるとは思いもしなかった」
「全てはこの本と魔法のお陰ですな」
「やっぱり 学者の本分はどんな破壊兵器であろうとも考え始めたら最後まで製作しなくては」
「まったくですな ハッハッハ・・・」
 数人のラオリスの学者に交じってグラメダ学者団12班班長の姿がそこにあった
 彼らは己らの造り出した兵器の影に気づきもせず 成功という事実に酔いしれていた
 幾度となくこの星の生物を壊滅状態に叩き落としたあの 兵器のことを

 数分後エイル・テラフィード
 「減速する」
「M3.3まで減速」
 「了解 前方に微弱な異常放射線感知 偏光シールド展開」
「システム2&3オープン」
 「了解 セミオート戦闘体制に移行 全武装再チェック終了」
「よーし 行くぞ」
「Yeah」

 ラオリス東方空軍基地
 の目 レーダー室に勤務している兵士は真っすぐに軍事開発研究所に向かっている飛行物体の存在を上官に伝えた
 その上官はレーダーに目をやる
「速い・・・ 軍事開発研究所に伝えろ」
 突然メモを片手に入って来た兵士がそのレーダーをのぞき込んでいる上官に駆け寄り
「隊長 奴はクレイバラーズに残る伝説の魔神と・・・」
 兵士の言葉を聞き流しその隊長は言う
「ふん 全対空砲及び対空ミサイル発射用意」
「了解」

 エイル・テラフィード
 「前方34kにミサイル基地」
「全速力で蹂躙しろ」
 「了解 全シールド出力レベル7 全エンジン出力105%へ」
「高度100mへ降下」
 「了解」
 機体の前方に衝撃波の壁が見える程の衝撃波を地面にぶちまけ 全てを破壊し 壊し尽くし 荒野にし 長い尾を引き空気を裂くエイル・テラフィード

 ラオリス東方空軍基地
「レーダーから消えました」
「なに・・・」
 その横で軍事開発研究所への通信が行われていた
「一機だ ああ推定M9〜の速度でそちらに・・・」

 ラオリス軍事開発研究所
「・・・そうか他には どーぞ」
 ・・・静かで怠惰な時間・・・
「了解 !おい どうした おい くそう切れちまいやがった」
「どうした」
「少佐 推定速度M9〜の未確認飛行物体がこちらに向かって来ています」
「よし 結界をはれ」
「了解 魔法兵団第3特殊部隊は直ちに中央魔法陣室に集合 結界を展開せよ 繰り返す・・・」
「ところで 東方空軍基地はどうなった」
「はぁ 私の察するところもうだめかと・・・」
「そうか」

 エイル・テラフィード
 「前方に正体不明のバリアーが・・・」
「結界か 全ウェポン発射後減速 回避運動を取れ」
 「了解 減速開始」
 2対の光線と多数のミサイルが前方の薄明るい球面に向かって直進する その直後
 「全弾命中 効果なし」
「速力全力制御 ここで降ろしてくれ」
 「よろしいのですか? 放射線が検出されていますので・・・」
「分かっている とりあえず衛星軌道上で待機してくれ」
「了解 アーマーも降ろします」
「ああ」
 暗い中エイル・テラフィードはフロントノーズの下に操縦席を出した
 降りるユウロス 彼は自分のあの漆黒のアーマーを纏った 上半身だけを覆う漆黒の金属製のアーマーと黒いマントがユウロスの姿を隠す
 「健闘を祈る」
「行け」
 ユウロスは冷たく エイル・テラフィード UAI2DNに言った あっと言う間に白い光を放ち暗い空に消えるエイル・テラフィード
 ユウロスを中心とする球体が薄く淡く青白い光を放つ
「この程度の放射線はあまり危険とは言えはしないな」
 ユウロスは紫に薄くオーロラの様に淡い光を放つ結界へと ゆっくりと歩きだす
「さてどうやって通り抜けようかな?」
と思いきや 突然目の前の結界が消えた
「おいおい・・・」
 ゆっくりと歩いてラオリス軍事開発研究所へと歩くユウロス まだその建物の明かりが遠くの点にしか見えない
「遠い」
 嘆くユウロス
 暗いがこの辺りはあの軍事開発研究所を中心とする窪地になっているらしい
「案外 ずさんな警備だな」いや・・・
 目の前に広がるかなりの高さのある塀 その周りには誰もいない
 塀のすぐそばまで来たユウロスは塀の高さを確認し無造作にその塀を飛び越える
 音もなく着地し 平然と目標に向かって歩き出す
 そして
「誰だ」
 ユウロスの耳にその言葉が入るやいなや
「死ね」
 直後にユウロスの周囲を爆音と肉片と瓦礫が支配した
 そして軍事開発研究所の中をゆっくりと沈黙をもって歩くユウロス
「ふっふっふ やっと会えたなユウロス・ノジール」
 ディアス・エピックはユウロスの目の前にその姿を現す
「ディアス か・・・ 去るがいい ・・・ それとも」
 ユウロスはディアスの横を通り過ぎた
「それとも?」
 注意深く慎重に質問するディアス
「ふんっ」
 ユウロスは一歩 また進み始めた
「待てユウロス」
 ディアスははっきりとした意志をもった声が沈黙に響く
「なんだ 私は忙しいのでね」
 冷たいユウロスの声が響く
「国王は・・・」
「無事だ 命はな・・・ もう消えろ 間もなくこの施設を破壊する」
「・・・むう さらばだ」
 その座標から一陣の風と共に消えるディアス・エピック
 元グラメダ学者団12班班長アレックス・スーウィンのもとへ戦慄をもってユウロスは進む
「大変です 侵入者が施設を破壊しながらこちらへ向かって来ています」
 一人の兵士の言葉は成功に喜ぶパーティー会場を一気に混乱に陥れた
 そして爆発による鈍い振動がさらに混乱をあおる
 逃げ出し会場を出たアレックスの目の前にユウロスがいた
「ユウ・・」

 ガルスブリーズ
 ここはリディアの寝室現在UAI01とチェスで交戦中
 「β地表で閃光を確認」
「何の光?」
 ポーンを動かしUAI01に尋ねるリディア
 「分かりません 以前に観測をした事のある光なのですが・・・」
「そう じゃぁきっとユウロスだよ」
 沈黙するUAI01
「あなたの番ですよUAI01・・・」
 「失礼」

 新型魔導戦艦
 現在 軍事開発局へのコースを飛行中
 ミノス・ラングーンは艦橋にいた
「ミノス様 軍事開発局の応答が途絶えました」
「なに・・・ 軍事開発局へ急げ全速力だ」
「軍事開発局の方向に閃光を確認」

 エイル・テラフィード
 「ユウロス 早く乗ってください 砂塵が入って来て気密が保てません」
「分かったよ」
 ユウロスはシートに座り機体の中へ
「とりあえずあの潜水艇の上に止まってくれ」
 「了解」

 数時間後のラーディアの艦橋
「ユウロスは?」
 上がって来たリネはうつ伏せになって寝ていたフリールを起こして再び
「ユウロスは?」
「外にいない?」
 うつ伏せのまま答えるフリール
「見てくる」
 リネは艦橋から降りて行った
 ユウロスはエイル・テラフィードを甲板上に着艦させ甲板に降りた
 リネがハッチを開た 暗い・・・
 ユウロスが足を進め 不意に
 ぐにっ
「ぐにっ?」いやな予感が・・・・
「くっ・・・・・」頭を踏まれて怒りに震えるリネ
「げっ」
 ユウロスは甲板を舳先へと走りだす
「ユウロスっ」
 ユウロスを追うリネ
 潜水艦の舳先と言うものは水に沈んでいる訳で・・・
 ユウロスはもじどうり背水の陣な訳で・・・
「いや・・あの・・・・・これは・・・・不幸な事故で・・・ちょっと・・・・たすけてぇー」
「うらぁー」
「ぐぅうああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」
「ふん」
 船室へ戻るリネ
 プスプスと その後ろで燃え尽きたユウロス

 新型魔導戦艦
 ミノス・ラングーンの乗る新型魔導戦艦は現在クレーターとなったラオリス軍事開発局の上空にいた
「凄まじい破壊力だな・・・」
「しかし 地下の兵器倉庫は無事でございます」
「そうか 兵器の積み込みが終わり次第メルギアへ向かう」
「はっ 了解しました」
 参謀をさがらせミノスはつぶやく
「この世に魔法など必要はないのだ・・・」

 ラーディアの艦橋
 ユウロスが目を覚まし エイル・テラフィードをガルフブリーズへと飛び立たせ 再び艦長のブースに着く頃には空が白み始めていた
「オケアノスの位置は把握できているか?」
 「はい」
「リヴァイアサンは?」
 「リヴァイアサン ・・・ ・・・ 存在が確認できません」
「リヴァイアサンのデータはあるよな?」
 「はい」
「オケアノスと連絡を取れるか?」
 「やってみます」
「頼む」
 静けさの中ユウロスはだれもいない艦橋内を見渡した 遠距離外視システムのモニターが明るくなりつつある夜空を映し出している
 「オケアノス通信出ます 映像はありません」
「こちらグラメダ所属潜行艇オケアノス・・・」
 相手の言葉の確認半ばで切り出すユウロス
「そこにマイク艦長はおいでかな?」
「私がマイク艦長だが・・・」
「ユウロス・ノジールだ」
「おお ユウロス無事だったか」
「おかげさまでな・・・ それより戦況を知りたい」
「まあ こっちに来い誘導する」
「分かった 通信終わる」
「通信終わります 移動はお任せください」
「ああ」
 しばらくして朝焼けの中ラーディアはゆっくりと海上を進み始める
「なあ ・・・」
 UAIからの返事はない
「おい」
 「怒鳴らないでください 聞こえてますから」
「はぁ・・・ ところでライジングアローのUAIには防御プログラムは入ってなかったのか?」
 「 ・・・ そうですAD690362年に一度は組み込んだのですが 不都合が多く・・・」
「そうか ・・・ ・・・ 楽しいと感じる時間というものは短いものだな」
 「・・・」

 数分の沈黙
 「オケアノス浮上します」
「うむ・・・ 甲板にでる 後は頼む」
 「了解」
 朝焼けの中ユウロスは浮上して来たオケアノスの姿を見ながら甲板に出た
「でかいな・・・」
 浮上しきったオケアノスの甲板はラーディアの甲板よりかなり高い
「・・・・・・ 遅い・・・」
 風の音を聞き春の寒さの中しばらく立っているユウロス
「待たせたなユウロス」
 ユウロスはマイク・リバートンの声に反応しうつむいていた頭を声の方向に向け
「今 板をかける もう少し待っていてくれユウロス」
「ああ」
 オケアノスの甲板の一部が迫り出し板状にずーっと伸び途中から折れるようにゆっくりと曲がり その板の先端がラーディアの甲板に着くと同時に止まった
 オケアノスのマイク艦長はその上をゆっくりと歩いてユウロスの目の前に止まった
「戦況の説明をしてくれ」
 ユウロスは話を切り出す
「分かった ・・・ 四週間前我々を含めた連合国の部隊はラオリスの王都の周辺まで戦線を押していたのだが・・・ 飛行 いや魔導戦艦と言う強力な戦闘艦が突然出現し 戦線は一瞬にして崩壊 グラメダ艦隊は旗艦リヴァイアサンほか数隻が沈没 現在このオケアノス他潜水艦2隻が残っているだけだ」
「そうか それで・・・」
「それでとは?」
「その魔導戦艦はどうなった?」
「情報では全部で4隻あって数日前にイトス上空で何者かによる攻撃で1隻が消えた・・・」
「・・・ ・・・ ・・・」うっ・・・
「どうした?ユウロス」
「いっ ・・・ いや なんでもない」魔法を使った とは言えないよなぁー・・・
「マイク グラメダに戻れ」
「なに 正気か?」
「あのドックならば見つかることはないし 第一もう満足なラオリスの軍がいるとは言えない」
「うむ・・・ 検討してみよう」
「分かった」
「じぁなユウロス」
「ああ」
 マイクはオケアノスに戻って行った
「さて ・・・ 寝るか・・・」
 ユウロスは大きなあくびを一つラーディアの艦橋へと入って行った

 数時間後 新型魔導戦艦 艦橋
「射出」
 ミノス・ラングーンの声が静かに艦橋に響き
 一発の爆弾がメルギアの地へ落ちる
 数秒後 暗闇の閃光にこの国の王都である世界最大の商業都市が完全消滅した
 艦橋ではミノスがその様子を見て
「うむ・・・ いい武器だな何という名前だ」
「はっ 過重力弾と呼ばれております」
「そうか 覚えておこう 」

 さらに数時間後 ラーディア 艦橋
 ユウロスは数分前に目を覚ましこの艦橋で世界地図を広げて考えていた
 「あの・・・」
「何だ?」
 「先程からお伝えしようかと考えていたのですが」
「何をだ? 言ってくれ」
 「はぁ メルギアが消滅致しました」
「はぁーーーーー?」
「ですから メルギアが消滅したと・・・」
「原因は?」
 「負のエネルギーに因る一時的な軽度の空間崩壊です」
「その原因は?」
 「はぁ 人工的なものでして それ以上は」
「兵器か・・・」
「恐らくは・・・」
「分かった また何かあったら頼む」
 「承知致しました でわ・・・」

 クレイバラーズ王国ギア公爵統治領
 この辺りは神々の大地と呼ばれ標高差数千メートルのテーブルマウンテンが数多く乱立する クレイバラーズ王国の北西に位置し王都クレイムランドからも比較的近い距離にあるが 他の統治領との交易が地形の都合上少ないためあまり知られていない
 ここを治めるギア公爵は かつて魔王と呼ばれ 現在では信頼のおける者である
 そして ここはヘル・テーブルと呼ばれるテーブルマウンテンでこの統治領最大のアラリスクの町がある ちょうど今この国の国王リチャード3世の一行が息を切らせながらこのヘル・テーブルの頂上に出た所であった
「お待ちしておりました 陛下 領主のルービッツ・ギア・ファーエンでございます」
「おおう」
 魔王の姿を一目見て驚く国王リチャード
「いかがなされましたかな? とにかく馬車を用意いたしましたので そちらへ・・・」
「助かる」
「こちらにはどのくらいの滞在予定で?」・・・
 リチャードははっきり言って粗末で丈夫な馬車に乗り一路貴賓客宿泊用のサードキャッスルへ

 十数分後
「着いたか・・・」
 国王リチャード3世は馬車を降り 実は王宮と肩を並べる程荘厳な造りのサードキャッスルの正面の扉を眺め
「すごい・・・」
「陛下 ・・・ 国王陛下っ」
「!あっ ああ なんだ?」
「ここの一切を任せている・・・」
と 魔王はその隣にいる女性を紹介した
「シアネス・コアールです」
と 一礼をしリチャードを見上げ・・・
シアネス&リチャード「・・・あーーーーーーーーっ ・・・っ」
リチャード「おまえ ユウロスと一緒にいた・・・」
シアネス「いつの間に国王に・・・」
「4週間前に・・・」
「では あの先王は」
「ラオリスの魔導戦艦に・・・」
「そうですか・・・ とりあえずは中へ・・・」
「ああ・・・」
 サードキャッスルに入って行く二人とそれを追う残りの王の一行
「さて 一度戻っていようか」
「はい」
 魔王とその執事は粗末で丈夫な馬車に乗り込み 執事が手綱を操り馬車を進めた

 イトス沖の海中
 ラオリス海軍第8艦隊旗艦の潜水艦ノーストーゼは海上での魔導戦艦への補給任務を終え帰路についていた この艦の後方には二隻の輸送潜水艇がついて来ている
「現在深度300 艦隊速度55ノットで航行中です 艦長」
 睡眠から覚め発令所に姿を現した艦長にそばにいた航海長が伝えた
 艦長はひとつ欠伸をし
「そうか・・・ ご苦労」
 しばらく何をする訳でもなく暇をつぶす艦長・・・
「んっ?・・・ 高速推進音?・・・」
 音を聞きながら首をひねる
「どうした?」
「艦長・・・ 高速推進音らしきものが聞こえるのですが・・・」
「ふむ 距離は?」
「まだかなり遠方かと・・・」
「あのレーダーがあれば何かすぐ分かるのだが・・・」
「無い物ねだりは・・・」
「すまん・・・ が どうだ?」
「少しずつ音が大きくなりつつあるようです 方向は・・・ほぼ真後ろです」
「全艦に通達 散開して各個に対応っ」
「高速推進音の推定速度100ノット以上」
「魚雷か?」
「いえ もっと大きなものです」
「両舷全発射管に魚雷装填 注水っ」
「距離400を切りました 高速推進音は艦の上方を抜けます」
「流れに巻き込まれるなよ」
 数秒後この艦に直接音が響いてくる 少しずつ大きくなる音は兵の緊張感を煽る
「注水完了っ」
 あざ笑うかのように高速推進音はこの艦に響き渡る
「大きいっ・・・」
 高速推進音が通り過ぎようとしたそのとき艦長は魚雷発射の指示を出した
 魚雷はこの艦の両舷を離れ高速推進音の音源へと進む
 しかし高速推進音は遠のき 艦は元の静けさを取り戻しつつあった
「何だったのだ?」
「分かりません ただ・・・」
「 ・・・ 全艦に通達 隊形を整え本土へ向かうと・・・」
 高速推進音は嫌な雰囲気を残して去って行った

 その音源
 「後方の魚雷は失速 燃料切れの模様・・・」
「そうか まあ300ノット前後で進んでりゃー追いつけんよなぁー」
 「しかし こんなに大きな音を出していてはすぐに見つかります・・・」
「それもそうだが 今は急がなければならない」
 「はい 後40分程で射程距離に入ります」
「分かった コースそのまま 何かあったら知らせてくれ」
 ユウロスは狭い発令所のわきにある階段で艦橋に上がる
「ユウロス ディナーは如何?」
と リネがバスケットに入ったサンドイッチをユウロスに差し出す
「はぁ ・・・ !いつの間に積み込んだんだ?」
「なにを?」
「食料」
「オケアノスから一週間分もらったの」
と ここでラルドが答えた
「ふむ 分かった ・・・」
 ユウロスはリネからサンドイッチをもらい口へ
「なぁ ユウロス 現在速度304ノットと出でいるがどうやったらこんな速度が出るんだ?」
「それはなロック・・・ !・・・っ」
「どうした?」
 ユウロスの背中に突き刺さるフリールの視線
「あーーーうーーー それはーーーー」
「・・・・」
 途切れる会話・・・
 ロックがそのフリールの視線に気づく
「まあ 深くは追求しないほうがいいかもな」
「・・・・」助かった・・・
 ユウロスはチラリとフリールの方に目をやる
 まだ睨みを効かせるフリール
 背筋が凍る思いのするユウロス

 オケアノス
 艦長のマイク・リバートンは艦内放送用のマイクを片手に
「各員そのままでよーく聞け 今回の航海はグラメダ付近の情報を集めることだ 場合によっては家に帰ることが可能になる 以上だ何か質問は?」
 誰もが誰もを見つめる 情報が混乱し誰一人として正しい情報をもっていないため質問が質問にならないからだ
「よし 各員出港準備にかかれ」
「エンジン始動 効率86%へ」
 鈍い音が徐々に高まる
「準備完了しました」
「発進する 微速前進っ」
 指示の声が伝わる

 オケアノス内第2倉庫
 会議の終わりに議長役を務めた首長のガイ・バダールが言った
「さて皆さん 今回の決定事項について私はユウロス・ノジールが何か知っているような気がするのだがどうだろうか?」
「その件は後で本人を呼び出して聞いてみては?」
「いや 何か知っていると言うのならば直接聞くのはどうかと思うが?」
「もう少し調べてみる必要が・・・」
「うむ」
「ではこのことは士気にかかわりますので極秘事項という事に」

 新型魔導戦艦
 現在スイツア上空
「この都市を破壊し次第エルフヤードの探索に入る」
「はっ 過重力弾射出用意」
「目標都市中央」
「射出準備完了致しました」
「うむ 落とせ」
「射出っ」

 UAI00中枢
 スイツア消滅
人口 8%減 8億7600万人へ
 01〜05へ
 人工的な負のエネルギーに因る一時的な軽度の空間崩壊によりスイツアが消滅
なおこの座標付近に大気圏内飛行能力のある戦艦を発見
 出力及び攻撃力は今のところ不明だが
人工的に負のエネルギーに因る一時的な軽度の空間崩壊を起こす兵器が確認さている
なおこれ以上の人口の減少はあまり望ましくない・・・

 ガルスブリーズ
 自室のデスクで通信していたフリーナ・ノーベルはそのままの姿勢でUAI01から伝達事項を受けた
「分かった チーフを・・・」
 「はい しばらくお待ちを ・・・ 回線つながります」
「チーフ スイツアの消滅は?」
「ああ 今聞いた所だ ・・・ ドラゴンフライを射出衛生軌道を回して対処してくれ」
「了解」
「なぁ」
「はい?」
 ユウロスは笑みを浮かべ回線を切った
「んーーーーー ・・・ げっ もしかして・・・」もしかすると  もしかするかも・・・
 「そのとうりです 先程の銀河系への通信回線はユウロスに・・・」
「もういい その先は言わなくて」ああー 一生の不覚

 数分後ラーディア艦橋
 「魔導戦艦を射程内に捕らえました」
「分かった 斜口射出セル内弾道ミサイルの照準を魔導戦艦に・・・」
「了解」
 ロックはコンソールのキーボードに情報を入力する
「現在深度は?」
「382」
 ラルドが答える
「よし」
「魔導戦艦までの距離は?」
「0時の方向プラス21度 距離42600」
 フリールが答える
「ふむ ・・・ 弾道ミサイルの照準入力は?」
「・・・ OK」
「仕掛ける 全速力 アップトリム40°へ」
 アレイムはジェネレーターの出力を一時的に130%に上げ船体周辺の海水の粘度を急激に下げスロットルレバーを100%の位置へもって行き
 船体は徐々に傾く
「現在深度320・・・ 250・・・ 120・・・ 海面に出ます」

 魔導戦艦艦橋
「艦長 左舷42度の海面上に潜水艦らしきものが浮上して来ました」
「なに?どこのものだ」
「国籍不明です」
「沈めろ」
「はっ 第4・5・6主砲塔へ 左舷42度の海面上の潜水艦を撃沈せよ 繰り返す・・・」

 ラーディア艦橋
「射出口開きました」
「ぅてぇーっ」
 気合の入るユウロス
 1〜6番全ての射出スイッチを押すディーロック・アンヴァースト
 白色円筒形の中型弾道弾が青いラーディアの甲板から離れ軌跡も描かず空中静止している魔導戦艦に襲い掛かる

 魔導戦艦艦橋
「緊急回避ぃーーーっ」
 叫ぶ艦長
 鈍い衝撃が6度伝わり 6度の激しい爆発が艦を駆け抜け 4回目の誘爆でメインリアクターが爆発 総員3400余名を道連れに光の破片と化し洋上に消えた

 ラーディア艦橋
 フリールは目の前のパネルを確認し
「ユウロス 目標を破壊したわ」
「そうか・・・ UAI」
 「はい」
「グラメダへ」
 ユウロスは疲れたように艦長のブースを離れ艦橋を降りた
 「了解 ・・・ フリール・ノジールそこにいますか?」
「ここに いるわ」
 ナビゲーターのブースで返事をしたフリール
ユウロスに異常が見られます
 フリールの目の前 ナビゲーターのブースのパネルに地球の言葉で表示された
「・・・ そう・・・」
心拍平均・質量・密度の低下
 エネルギー維持度及びエネルギー純度が4000年前の状態にあります
 フリールは地球の言葉でUAIと話し始めた
「それで?」
 それでとは?
「現在における彼の存在定義は?」
この星系の管理
「違うわ 彼の・・・ いいえ 私の兄の存在定義は・・・ マジカルエナジーの統治者」
 ・・・私には理解できません
「そうかもね でも大丈夫心配は要らないわ」
 「そうですね・・・ でわ失礼・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」兄さん か
 フリールは目の前のパネルから遠距離外視システムのパネルへと視線を動かし 思い出すように声を出した
「時のかけらを踏みし者よ 汝に時は流れない 時のかけらを探す者よ 汝の瞳は奪われよう 時のかけらを崇めるものよ 汝に神の姿はない 時のかけらを手にする者よ 汝は永遠をさまようであろう メビウスリングの開く時間 時のかけらは泡となる メビウスリングの閉じる時 泡は全てを否定する か」
「何の詩だい?」
 隣のパイロットのブースにいるアレイムが聞いてきた
「そうね・・・ 古い古い詩 まだ生まれる前の兄に贈られた詩」
「・・・ 意味は?」
「知らないの 兄しか・・・ この詩にはまだ続きが でもこれ以上は覚えてないわ」
「 そうか あのユウロスが・・・」
 アレイムは物静かに考え出すのであった
 ユウロスは空いている船室に入り戸を閉め 床にへたりこんだ
と そのときユウロスの背後の戸が開き リネ エレナ ラエル バリアスがユウロスを無視して順番に部屋に入り込み カードゲームを始めた
「さぁー 配るよぉー」
 リネがカードを5人に配る
 それを見たラエルが指摘する
「リネ 一組多いぞ」
「そこに一人いるでしょ?」
「げっ」さっき踏んずけちまった・・・
「ユウちゃん」
ユウロス「・・・・・・・・」
エレナ「動かないね ・・・」
 バリアスはユウロスをしばらく眺める
「おい こいつ死んだんじゃないか?」
 一瞬の沈黙・・・・・・・・・・
 の後 笑い声が響く
「そんなわけないでしょうが」
と笑いの続く中ユウロスの姿が すぅーーーーーーっと 消える
 笑い声は悲鳴に変わり 響き渡った

 エルフヤード
 超文明を持ちながら世界に君臨する事なく その存在をほとんど知られる事のないエルフの国
 その歴史は一万数千年に及び・・・ 全世界に8カ所存在・・・

 新型魔導戦艦 艦橋
 メカメカしい白い船体は夕日を浴び 空の果てへと影を落としていた
「まだ 見つからんのか?」
「はぁ 全てのデータを用いて捜索しておりますが まだなにも・・・」
「そうか まあよい ・・・ そう易々と見つかっては面白みがないからな」

 エルフヤード ハニンガム
「この者が?」
「そうだ・・・」
「信じられない」
「無理もない この中の大部分の者はまだ生まれてはおらなかった」
「しかし・・・」
「だれが何と言おうと この者が」・・・
「気がついたぞ」
 ユウロスはうつ伏せの体を起き上げその場に立ち上がり自分の回りにシールドを張った
「ここは?」
 ユウロスの問いかけに最も年を取った者が落ち着いて答える
「ここは 第3都市ハニンガム 北の塔17階の第1魔法陣室だ ・・・ 警戒しなくともよい 我々は貴方を攻撃する根拠がない ユウロス・ノジール殿」
 ユウロスはシールドを解きながら
「なぜ 私の名前を?」
「旧第5都市のデータバンクに貴方の名前があった あの都市で唯一の帰化した人間として」
「そうか・・・ で?」
「で とは?」
「私を呼ぶとは 何らかのトラブルでもあったのか?」
 ユウロスは体をほぐすように動かした
「まずはこちらへ」
 その最年長の者がユウロスを案内した その後 他の者たちがユウロスの後に続く
「貴方は 白い魔導戦艦の存在を知っておるかな?」
「白い魔導戦艦? 黒いのならば・・・」
「ふんむ 白い魔導戦艦は メルギア・スイツアの両都市を一瞬にして葬った恐るべき兵器をもっている それが今このハニンガム付近の上空におるのだ」
「ステルスシステムは万全なんだろ」
「確かに・・・ しかし もしメルギアを葬った兵器が使われると メルギアと同じ運命に・・・」
「 ・・・ 助けてくれと?」
「お願い致す・・・」
「条件がある」
「・・・・・」静まり返る面々
「飯・・・ 食わせてくれない?」

・・・・・・・・・・鹿脅しの響き・・・・・・・・・・

「そっ ・・・・ そのようなことでしたら 早速最高級の・・・」
「いや 家庭料理で・・・」
「では最高級の家庭料理を」
「帰る・・・」
「ああっ 分かりました分かりましたからぁー」

 数時間後 新型魔導戦艦 艦橋
 樹齢数千年の針葉樹林が地平線となるこの樹海の上空 静かに白い巨体が浮いている
「ほんとにこんな所にエルフヤードがあるのかよ」
と 一人の兵士がシートにふんぞりかえった
「おい でもなぁ・・・」
「こらぁ 貴様らたるんどるぞぉ」
「しかし いくら探しても何の反応も出て来ないんです ここには・・・
 ピピピッ
 何っ」
「どうした」
「真下に魔法力反応 約48億ウェル ±0ファクト」
「0ファクトだと どういうことだ?」

 エルフヤード ハニンガム
 ハニンガム中央塔の最上階 ユウロスがVTOL機から降りた時点でパイロットが告げた
「たった今 魔法力中和システムを切ったそうです」
 緊迫した声にユウロスは指示を出す
「よし 分かった 塔から離れろ」
「了解」
 ユウロスの眼下にはハニンガムの夜景が広がっていた

 新型魔導戦艦 艦橋
「艦長 見つけましたエルフヤードです」
「よし 重力子弾を装填 射出せよ」
「了解 重力子弾装填します」
 艦長は眠そうにあくびをすると椅子に深くかけた

 エルフヤード ハニンガム
「見えた ・・・ ごめん みんなを いや 敵を葬るために 許して くれるよね」
 腕輪をポケットにしまい込みユウロスは 敵 の位置を確認し深呼吸をした

 新型魔導戦艦 艦橋
「んっ? 魔法力反応に変化 ±0ファクトからマイナス方向へ強烈に増大」
「シールドを展開」
「了解」

 エルフヤード ハニンガム
「落ちるがいい・・・・ 」
 数秒後 一本の光線と爆発が真夜中の暗い夜空を焦がし 新型魔導戦艦はその存在状態を光球へと転じた
 ハニンガムの住人達は窓の外から差し込む光りに我を忘れ この様子を脳に写す

 UAI00中枢
 β地表付近で光線を観測
ユウロス・ノジールのE・d・Bと判明
ユウロス・ノジールのエネルギー激減 危険領域に侵入 エネルギーの補充が必要
リディア・フェイルに救援要請
 人工的に負のエネルギーに因る一時的な軽度の空間崩壊を起こす兵器を搭載する
 大気圏内飛行能力のある戦艦が消滅

 01〜05へ
 リディア・フェイルにユウロスの救援要請
 β地表付近で閃光を観測
人工的に負のエネルギーに因る一時的な軽度の空間崩壊を起こす兵器を搭載する
 大気圏内飛行能力のある戦艦が消滅

 エルフヤード ハニンガム
「! うぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお・・・っ」
 断末魔のような絶叫が空を切りユウロスは片膝を着き地に伏した
「力が」重い
 息が荒く脈拍も上がり全身が重く鉛のように感じる
「・・・」なんだ どうしたというのだ?
 時間が経つにつれて脈拍が徐々に落ち着き息づかいも少しずつ回復するが 体は一向に動かない
「・・・」くそっ なんてざまだ・・・
 轟音が先に 先程のVTOL機が姿を現し塔の屋上に着陸した
 キャノピーが開きパイロットがユウロスに駆け寄る
 ユウロスは強風にあおられその身を横たえた

 数時間後
「・・・・・・・・・・・・・」なんだ 目の前が真っ暗だ・・・
「・・・データが残っていて良かった・・・・・・・・・混合液注入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・正常・・・・・よしっ・・・・何とかなりそうだ・・・・・・・誰だ貴様・・・・・武器を捨てよ 私はユウロスの主治医リディア・フェイルだ・・・・・・・おお・・・助かるぞ・・・・・・・・・ユウロス・・・・・・・あなたは・・・・・あなたにここまでさせるものはいったい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くっ・大丈夫かリディア殿・・・・・ええ」・・・

「・・・・・・・」誰だそこにいるのは ああっ
ユウロスは見た一人の男性が赤ん坊を抱いて こう語りかけたのを・・・

メビウスリングのその中に 時のかけらは砂のよう 時のかけらを踏みし者よ 汝に時は流れない 時のかけらを探す者よ 汝の瞳は奪われよう 時のかけらを崇めるものよ 汝に神の姿はない 時のかけらを手にする者よ 汝は永遠をさまようであろう メビウスリングの開く時 時のかけらは泡となる 時のかけらの内側で すべてのものが生まれ行く メビウスリングの閉じる時 泡は全てを否定する 時のかけらの内側で すべてのものは無に消える 時のすべてを見るものに 時のかけらは語り出す すべては夢か幻か メビウスリングの意のままに 願わくば 時を与えよ 願わくば 死を与えよ この者の行く手にヴァルハラのあらんことを

父さん ・・・ 何も見えない
!「私は死んだのか?・・体が軽い・・・ここは何処だ 地獄かそれとも・・・」
「ユウロス 貴方を死なせはしないわ 私の命にかえても」
「リディアの声が聞こえたが気のせいだろうか・・・」
「ユウロス 貴方・・・」
「私は死んではいなかったのか」・・・
「ええ 生きているわ」
「そうか・・・」

 ラーディア
「ああーーーーーっ 全くユウロスはどこへ行ったのよぉー」
 艦橋ではラルド・ミディーが行き場のない怒りをぶちまけていた
「ミディー 少しは落ち着けよ」
 ロックがなだめようとするが
「これが落ち着かずにいられるか 艦長が無断で一度ならず二度までも・・・」
「はいはい 分かった分かりました まずレモンティーでも飲んで落ち着いて・・・」
 リネがミディーにレモンティーの入ったカップを渡す
 ・・・ 「ああーーー 砂糖が入ってるぅ・・・」
「砂糖  入れないの?」
「うん」
 リネにカップを返すミディー
 一瞬の沈黙をUAI05が破る
 「フリール」
「はいっ」
 慌てて返事を返すフリール
 「01から伝言です 貴方に頼まれた 貴方の破壊した事になっている ライジングアローの製造を終えました」
「本当に?」
 「はい 製造年月日以外はだいたい前ライジングアローと同じです」
「やったぁー  ・・・  今すぐ本船の真横にワープアウトさせて」
 「了解 空間衝撃波消去システムを併用します ワープ ・・・ アウト 空間衝撃波消去システム解除」
一同の歓声「おおーーっ」
 艦橋の遠距離外視システムのパネルがライジングアローを映し出す
「ユウロスの船・・・」
 「船体の外装をガーディガネット合金の一枚板で製造
  燃料及び電源は常温万能核融合路より船体各部のバッテリー及びタンクへ
  非常電源は各エンジンに付けられた発電機より
  メインエンジンは二重半燃焼式及びタキオン・ハード・ジェット式併用機関
  サブエンジンにキャタピラー推進装置
  3rdエンジンに収納型スクリュー
  4thエンジンに波動歪曲式空間駆動システム
  次に前部上甲板に誘導エネルギー砲1基12門 高速重力子砲1基2問
  後甲板両端に誘導エネルギー砲1基2門 計2基4問
  同箇所下部に高速重力子砲1基1問 計2基2問
  中央両舷にHoレーザー1基 計2基
  船首・コクピット上部・船中央部両舷・船底及び船尾に光学照準装置及びレーダー
  船首・中央両舷及び船尾に偏光シールド・エネルギーフィールド及び対圧力バリアの発生発振装置
  船首付近及び船尾上部両舷に停泊用ワイヤー及び下部に係留用ワイヤー
  船首付近両舷及び船尾下部両舷にスタビライザー
  船尾下部に舵
  居住区全域に重力コントロール装置 空調管理システムetc.・・・」
 目を白黒させて聞いているのはグラメダの学者達
フリール「はっ ・・・」しまったぁー ほとんどがシークレットものだぁーーー
・・・・・・空白・・・・・・
 にどっぷりと浸かるフリールと
 内心笑っているリネ
「しかし 戦争が始まってからユウロスに振り回されているような気がするなぁー」
 「5時38分12秒の方向 距離34キロ
  推定深度203 42ノットでサイノース級重潜水艇1隻接近中
  UAI02の判断により指揮をUAI2DNに任せます」
 一気に空気が張り詰める
フリール「敵の所属は?」
 「旧ヴィーイベリズ王国の・・・
その後方6キロの位置にラオリス王国のエビル級潜水艦 54ノットで同じく接近中」
「サイノース級重潜水艇エンジントラブルの模様 速度急速に低下 急速浮上を始めました」
 「エビル級潜水艦 全8門に注水音
  同敵 射出口オープン 全弾スイムアウト完了 通常魚雷です」
「ライジングアローの空間駆動システム作動 サイノース級重潜水艇を艦左舷に移動・・・ どうやらこれは間に合わせ物だったらしいな・・・」私のマスターらしい考えだ
「どう言うことだ? ミディー」
「私が指揮を執る エビル級か・・・ 深度600まで急速潜航した場合の時間は?」
 「予定深度まで13.061秒」
「では 敵魚雷の到達時間は?」
 「魚雷は届きません」
「そうか UAI2DNにあの艦の防衛を要請 サイノース級重潜水艇への通信回線を確保してくれ」
 「了解 UAI2DNは要請を受諾しました
  サイノース級重潜水艇への通信回線を確保しました」
「回路を開け そのまま通信に移る」
 「つながります 音声のみです」
「 ・・・ こちらヴィーイベリズ王国所属の・・・ いや旧ヴィーイベリズ王国第1艦隊所属 サイノース級重潜水艇ノーチラスだ 貴艦はどこの所属だ?」
「ガルスブリーズ所属 特務艦ラーディア 私は艦長代理ラルド・ミディーだ 救援要請あらばそれなりの対処をするが・・・」
「ガルスブリーズ? そんな国は聞いたことがないぞ へ 陛下 わぁ  私は旧ヴィーイベリズ王国のサーラ・ファーマス・ヴィーイベリズと言う者です そこにユウロス様はおいでですか?」
 突然女性の声が入る ミディー微動だにせず
「UAI ユウロスへの通信回線を確保 すぐつなげ」
 「しかし・・・」
「口答えは 許さん」
 取り仕切るミディーを前にフリール他全員が我を忘れていた
「サーラ殿でよろしいかな?」
 落ち着いた優しい声で語りかけるミディー
「はい」
「今しばらくお待ちを」
「分かりました」
 「ミディー殿 ユウロス殿は今は発声できる状態ではありません」
「そんなに・・・ サーラ殿 もし私で良ければ話していただけますか?」
「 ・・・ ・・・ 分かりました でも・・・ できれば貴方だけに・・・」
 ミディーは手元の受話器を手に取り
「分かりました UAIこの受話器に回線を回せ」
「了解 他への回線を切ります」
「サーラ殿どうぞ・・・」
 しばらくの間 皆の視線を浴びる中ミディーはサーラ・ファーマス・ヴィーイベリズの言葉を静かに聞いていた
「貴方には 平和がどのような状態であるか説明できますか?」
 この言葉のあとまたミディーの沈黙が続き
「全て了解した 今は航海の無事と安全を祈る UAI通信回線を切れ 敵艦の撃沈は?」
「通信回線を切りました 敵艦は先程撃沈を確認」
「私だけライジングアローに移るUAI00のファイルD−672800DA コードはファード・ファー・ファーディア・バルキリー・ディ・アード 以後我が名はバルキリー・ディ・ハルシオーネ 間違いのなきよう」
 「 ・・・ 了解しました 行きます」
 残像を残しミディーの姿が消えた
「彼女が・・・ あの・・・ バルキリー」
 漠然と事の成り行きに気づいたフリールはただそこに立ち尽くしていた
 「ライジングアローがUAI2DNの指揮を離れました」
「行こう グラメダへ」
「ああ」・・・
 ラーディアは再びグラメダへと進路を取った

 UAI00中枢
不明中のバルキリー・ディ・ハルシオーネを確認
 未だ休暇中

 エルフヤード ハニンガム
の中央病院のある個室のベッドにユウロスが その隣でリディアがうたた寝をしている
 窓からは夜の人工の淡い光がカーテンを照らしていた
 トントン
「失礼する あっ・・・」
 リディアはっとして 眠い目をこすりつつ
「何か?」
「はぁ おやすみのところを失礼ですが 先程から報道関係者が当病院周辺を取り囲んでおりまして」
「報道関係者が・・・ 敷地内に入れないように頼みます」
「分かりました」
 戸が閉まり部屋を見渡すリディア
「・・・ルキリー だめだ・・・」
 うなされるようなユウロスの声が病室に響く
「 寝言?・・・」
 リディアが振り向くとユウロスが汗びっしょりでうなされていた
「いつの間に・・・」

 グーレーン高原
 高原の湖のほとりに建つ あの往年の女性の丸太小屋の中にラルド・ミディーがの姿があった
 往年の女性は玄関の前で立ち去ろうとするミディーを引き留めるように話しかけている
「ユウロスが悲しむよ いいのかい?」
「でも もう隠し続けるのは 辛いの・・・」
「そうかい」
「もう 行くわ・・・」
「待ちなさい」
 往年の女性は部屋の奥の壁に掛けてある機械仕掛けの弦のない弓を手に取りミディーに手渡した
「わたしの年ではもう耐え切れないのでな」
「これは?」
「ユウロスの物だよ 最もあいつは一度も使わなかったがね」
「そう・・・ じゃあ さよなら」
 ミディーの背中に純白の4枚の翼が実態化し それをいっぱいに広げ静かに落ちるように飛び立った 往年の女性もまた 何もなかったように丸太小屋の中に入り戸を閉めた

 十数日後グラメダ
 静かな遅い春を待ちながら グラメダでは街の周囲を囲む城壁の修理が行われていた
 ここはグラメダの商店街にある唯一の魔法書店の二階
「ねえ お祖父さんユウロスは・・・」
「最近そればかりだの」
「・・・・」だって突然消えたのに みんな心配してるのに
「さては惚れたなリネ」
「なっ なんて事言うの あたしは別に・・・」
「だがな ユウロスはお前の直系の血族なんだぞ・・・」
「血族ってなに?」
「早い話が ユウロスはお前の御先祖様」
「ふーん ・・・ ? ・・・ ! ええーーーーーーーーっ」
「因に ラオリス王家もそうなんだな」
 絶句のリネ
「どうも いいお湯でした」
 ホコホコと暖まったフリールが二人の前にリネのお古を着て現れた
「いつ見てもよく似合っとるのぉ」
「いえいえ あら リネどうしたんです?」
「いや・・・ ユウロスが御先祖様と話したら・・・」
「は 話したのですか?」うそっ
「ああ どうかしたか?」
「こ こ この・・・ こんのくそじじい」天誅ー
「ああっ」暴力反対
 フリールは握り締めた拳を振り下ろした
 ボカッ
「うーん」バタンきゅー
 フリールが殴って気絶したチャール・エピック 放心状態のリネ・エピック
「うーん 困った ・・・ 寝よ」
 フリールは考えるのを止め ここ数日使っているハンモックの上で横になった

 同時刻ガルフブリーズ
 静かな静かな要塞内
「なぁーんで みんな出はらっちゃうのよぉー」
 静かに響き渡るフリーナの叫び声
「! 誰?」
「お久しぶり」
「バッ・・ バルキリー・・・」
 振り返ったフリーナの眼前にはラルド・ミディーいやバルキリー・ディ・ハルシオーネの姿があった
「お久しぶり」
「あなた 今まで何処に」
 バルキリーの背中の4枚の翼が空気に溶けるように消えた
「私はユウロス様の為に造られたサポートウェポン マスターが危機に瀕したとき助けるのが本来の務めフリーナ・ノーベル貴方のサードエネルギー貰い受ける」
 じりじりとフリーナに近づくバルキリー
「ちょっ ちょっとぉ 大量のサードエネルギーの受け渡しが危険なのも サードエネルギーの減少のしすぎが危険なのも知ってるでしょー」
 後ずさりするフリーナ
「もちろん だが私は務めを果たすだけ・・・ 空間を固定した もう逃げられませんよ」
 逃げようとするフリーナの周囲を見えない壁が阻む
「やっ やめてぇー」
 涙ぐむフリーナ そのフリーナを光球が包み混みフリーナと光球の間に激しいスパークが それはガルフブリーズの広い通路を明るく照らす
「やぁああああ 死んじゃう 死んじゃうーー」
 十数秒後 バルキリーは光球を手元に転送圧縮し両手の間に漂わせている
「確かに・・・」
 バルキリーがテレポートした直後フリーナが気を失って倒れた

 エルフヤード ハニンガム
の中央病院のユウロスの個室
うたた寝をしているリディアが不意に目を覚ました
「んっ・・・ ・・・ !空間の歪み  だれっ?」
 突然現れ光球を両手で抱え静かにユウロスに近寄るバルキリー
「マスター・・・ タイプ確認 リアクター作動 転送 ・・・ 開始」
 バルキリーの両手から光が霧の様にユウロスに流れ込み つられるように光球を構成する光が静かにユウロスに流れ込む
「やめなさいバルキリー 私ならいざ知らずあなたのようなキャパの少ない者がサードエネルギーの放射をすれば命はっ」
 バルキリーの姿が足元の影が少しずつ薄くなる
「バルキリー くっ」
 リディアの翼が淡い光を発し崩れバルキリーを包み混む 翼を失ったリディアがバルキリーを前に静かに立ち尽くす
「・・・・」もう 誰も死なせやしないんだから・・・
 リディアは強い意志と自信をもってバルキリーを取り囲む光と化した自分の翼とバルキリーを見つめる
 数分が経過した頃 ユウロスの全身が静かに光り出した
「転送中止 リアクター停止 サードエネルギー ・・・ 解放」
 一瞬 部屋全体が強く照らされ静かに暗くなり バルキリーはベッドのユウロスの上に倒れ込んだ
「やれやれ しばらくは翼が大きくなるのを待たなきゃ」
 翼を失ったリディアはインコムを取り出し
「転送して」
 数秒後リディアの姿が煙のように消える
 後には外からの柔らかい朝焼けの光がカーテンを通して差し込んでいた

 数時間後
 ユウロスは朝の光を浴びていつもの様に目を覚ました
「重い・・・ ミディー」
 バルキリーは突然目を覚まし
「マスター・・・」
「マスター?」
 二人の間に一瞬の空白がよぎる
「忘れたんですか?」
「はぁ?」
 再び空白の時間
「お忘れに なったんですか?」
「だからミディーだろ」

・・・・・・・・・・空白・・・・・・・・・・

「バカぁー」
「ひぇー」
 バキッ
「だぁーかぁーらぁー 宿直室だろここは」

・・・・・・・・・・無・・・・・・・・・・

 バルキリーは頭を押さえ
「マスター ここはエルフヤード ハニンガムの中央病院ですよ」
「またまた だめだよそんなこと言ってもわたしの目はごまかせないよぉ」
バキッ
「マスタぁあああ 怒りますよ」り 「うううっ なぜ」ミディーが2回も殴った
 バルキリーが手を打ち
「これでお分かりでしょ?」
と 背中に4枚の純白の翼が現れ 両足がエメラルドグリーンの鱗に覆われたしなやかな尾の先に2対の細い鰭 マリンブルー瞳の長い髪にロバにも似た耳・・・

・・・・・・・・・・ユウロスの崩れた顔の白黒の自画像・・・・・・・・・・

「おーおーおー 誰だっけ?」
 バルキリーの脳裏

・・・・・・・・・・無色透明の自画像・・・・・・・・・・

「ひどい ひどすぎる わぁあああああああ・・」
 泣き崩れるバルキリー
とそんなところへ入ってくる院長
 泣いているバルキリー
「あの・・・ ユウロス君 知り合い?」
「うーん そのはずなのだが いかんせん記憶にないものでなぁー」
「とりあえず 検診します」
「はい」
 微動だにせず検診する院長と後から入って来た助手
 まだ泣いているバルキリー
 困るユウロス
 しばらくこの状態が続き やがてこの混沌を振り切るように
「うん ・・・ どうやらもう退院しても大丈夫なようだね」
「そうですか・・・」
 ユウロスはベッドの上に起き上がり服装を正す
「ところでユウロス君 報道陣が病院を取り囲んでいるのだが・・・ 記者会見でもするかね」
「それは無理な相談だな」
「うむ・・・」
「先生」
「どうした ユウロス君」
「一言だけ伝えてください」
「分かった メモしよう ・・・ どうぞ」
「神は微笑まなかった と」
「ふむ 分かった 」
「では・・・ ありがとう」
 ユウロスはバルキリーの腕をつかみ二人とも消えた
「やれやれ 孫のような奴だな」
「院長 いいんですか?」
「何が?」
「報道陣はどうします?」
「それは 君の努めだよ」
「えっ」
「君は我が病院のスポークスマンだからさ」
「しまったぁーー」

 ライジングアロー
「ここは?」
 勢いでテレポートしたユウロスがライジングアローの倉庫の中で途方に暮れる
 その側で泣き止んだバルキリーが
「ここは ライジングアローの後部倉庫」
「しかし ライジングアローは・・・」
「修理 いえ再製造したものです」
「そうか」
 ユウロスはブリッジへと足を進める バルキリーは羽根を消し下半身を足に変えユウロスの後を追った
「・・・・・・」
ユウロスはコクピット=ブリッジ=操舵室を見回し言葉がこぼれる
「コピーか?」
   「いいえ おおかた同じですが・・・」
「・・・ UAI?」
 「Yes No.02」
「UAI2DNから防御に関するシステムをもらっておくように」
 「分かりました 今度は本体ですから悪しからず」
「うむ しかし・・・ 随分 子供っぽい声だな」
 「そうですか?」
「ああ」
 「ところで私のイメージグラフィクもあるんですが・・・」
「また今度な」
 「はい」
「現在位置を」
 「ラグランジュβ2です」
「なに 宇宙空間?」
 「はい」
「そうか・・・ UAI2DNをガルフブリーズへ帰投させるよう」
 「了解」
 バルキリーがユウロスの側に寄り添う
「マスター・・・」
「分かった グラメダへ・・・」
「了解・・・ おや バルキリーお久しぶりです」
「ええ」
 ユウロスははっとした表情で
「そうか バルキリーか うんうん バルキリー・ディ・ハルシオーネだな」
 バルキリーは拳を振り上げ
「いまさらっ」
 バキッ
 「あちゃぁー」

 クレイバラーズ王国ギア公爵統治領
 ここはその迎賓館として建てられたサードキャッスル 内装外観共に王宮に引けを取らない程の荘厳な造りをもつ 地上2階地下1階の歴史ある建築物である その2階のある部屋で朝食をとり静かに物思いにふけるリチャード そこへ・・・
「陛下」
「わぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 突然目の前に現れたここの領主ルービッツ・ギア・ファーエンに驚く若年の国王リチャード3世
「とっ 突然現れるなぁ・・・ で どうした?」
「戦争が消滅致しました」
「はぁー?」
 顔が歪むリチャード
「正確には ラオリス軍の主戦力だった魔導戦艦5隻のうち4隻が撃沈 残りの1隻は・・・」
「まて 魔導戦艦は4隻だったのでは?」
「報告が前後致したようですな 魔導戦艦のうち4隻はラオリス本土での戦闘時に姿を現したもので 残り1隻はその後で確認されたものです こちらのほうが性能が上でした さて残りの1隻はラオリス王都に着陸艦長以外のクルーはすべて王宮及び都市の復興に従事しているもよう」
「凄まじい報告だな」
「そろそろ 我が国でも復興を始めなければならないものかと存じますが?」
「全くだ だがその前にうちの国の状況は?」
「現在の人口は戦争前に比べ64%に激減 これは都市部に人口が集中した為と思われます また人口減少数が最も著しかったのは直轄領クレイムランド・直轄領ムーバ 次に農作物の生産量も40%に これについては述べる必要はないと思われます さて立て直しの方法ですがまず交通機関の整備・都市の再開発・等々 の前に陛下が王宮へお戻りになる必要がございます」
「分かった 早速支度をしよう ・・・しかし こんなときに国王とは不幸な限りだな」
「しかし 努力は報われましょう」
「努力すればな」

 グラメダ
 夕刻 グラメダのもともとユウロスのライジングアローが停泊していた位置に現在はラーディアがその身を横たえていた その船内にリーナが俯いて何かを考えている そのリーナの視界にきちんと折り畳んである衣服が入った
「はい 着替え」
 リーナはその衣服を受け取り
「ありがとう・・・ なぁアレイム そちは何故色々と私に気を使ってくれるのだ?」
「そうだなユウロスでも移ったかな まあ 俺は奴のあの性格が気に入っていたからな こんな不測の事態でも対応できるようになったのかもな・・・ しかしこの年で女物の服を買うとは思っても見なかったがな」
「不測の事態か」
「いやいや 迷惑と言う訳じゃない 君がいる限りユウロスは戻ってくるよ」
「そうか そうだよね」
「ああ・・・ しかしよかったな俺達の宿舎が城壁と一緒に吹っ飛んでくれて・・・」
 笑う3人 3人?
 「お二人さん ユウロスから言付けを・・・」
 突然二人の目の前の空中に平面の画像が現れた
「どんな?」
 「はい・・・」
 平面の画像にユウロスの姿とミディーの姿が映り ユウロスの声で・・・
「一度 クレイバラーズに寄るのでグラメダに到着するのが少し遅れる細かい事はまたその時に でわ」
 平面の画像が元に戻った
「ここまでか?」
 「はい」
「ラルド・ミディーについて何か知っていることは?」
 「・・・・・・・・・・」
「言わないと壊すぞ」
 「い いや しかし でも・・・」
「大丈夫だ 秘密は守るさ なリーナ」
「ええ」
 「わかりました
  本名はバルキリー・ディ・ハルシオーネ
正式にはユウロス所属のサポートデヴァイスユニット
  過去にユウロスから不定期限の有休をもらい現在に至る
標準装備として原子再構成システムと分子再構成システムを装備
現在は人型 なお形態のバリエーションは豊富である」
「そんな技術の塊が近くにいたとは・・・」不覚っ
 「秘密は守ってくださいよ」
「分かった 分かった」なんだかなぁー・・・

 ライジングアロー
のブリッジ シートに深く腰掛けたユウロスは
「UAI クレイバラーズ王国ギア公爵統治領へ」
 「ヘル・テーブルですか?」
「そうだ」
「連絡を入れます」

 クレイバラーズ王国ギア公爵統治領 ヘルテーブル空港
 ここはその空港の管制塔の最上階
「暇だなぁー」
 現在一人の女性がここで仕事を・・・ 彼女は欠伸をしけだるそうに滑走路を眺めた
 「クレイバラーズ王国ギア公爵統治領 ヘル・テーブル空港 応答願います」
 スピーカからの音声に反応し彼女は急いでマイクをとり
「はい こちらヘル・テーブル空港」
 「ライジングアローです 着陸のスペースは空いてますか?」
「こちらヘル・テーブル空港 現在着陸機及び着陸許可機無し」
 「ワープします 着陸許可を」
「へっ」
 彼女の目が点になる・・・
「あの 着陸許可を・・・」
「はい・・・ どーぞご自由に・・・」
 間の抜けた声だ
 数秒後彼女の視界にライジングアローの姿が突然入り 支離滅裂呆然自失自我崩壊状態に陥る

 ライジングアロー
 「到着しました 着陸します」
「いや 着陸せず 近くにある大きいほうの湖に着水してくれ」
 「大きいほうですか?」
「そうだ 小さいほうは水源なんでな」
「了解」
 ライジングアローの船体が落ちるように静かに加速する ゆっくりと高度を上げ上空から二つの湖を望み やがて大きいほうの湖へと放物運動をとりはじめた 水面付近へ近づくと静かに速度を落としゆっくりと着水した
 「着水完了」
「近くに桟橋があっただろ そこへつけてくれ」
「了解」

 ウスチィリムスク城
 クレイバラーズ王国ギア公爵統治領の領主ルービッツ・ギア・ファーエンの居城である 周囲を断崖絶壁で囲まれ高く険しい頂にそびえ立ち美しく不気味な雰囲気をもつ ここはその城内 領主の書斎
「なに ユウロスが到着したとな」
「はい」
 整った服装の執事が響きのよい返事をする
「すぐに会いに行こう」
「では 失礼します」
「うむ」
 領主の顔に笑みが浮かぶ

 サードキャスル
 ここも同じくユウロス到着の情報を入手した輩がいた シアネス・コアールである 世に言う女性型アンドロイドであるが分子再構成型修復装置を組み込む事により半永久的に作動が可能である さて彼女はサードキャッスルの正面玄関上のテラスにて大きいほうの湖に浮かんだライジングアローを眺めている
 その視界にユウロスとバルキリーの姿が目に入る
「この先に私の造った者がいるんだ」
 ユウロスはバルキリーに説明するように得意げに話す
「だれか来るわ」
 バルキリーがユウロスに向かって駆け寄って来る紺に白のエプロンドレスを着たシアネスを指さす
 シアネスはそのままユウロスに飛び着いた
「わぁあああ」
 悲鳴と同時に倒れたユウロス と押し倒したシアネス
「ちょっと 何これ」
 バルキリーは険しい表情で軽々とシアネスをつまみあげ倒れているユウロスに聞いた
「それがさっき言った・・・」
「ふーん」
 シアネスを上から下までつまみあげたまま眺めるバルキリー
「何よ」
 つまみあげられた状態でバルキリーを睨むシアネス
「放しなさいよ」
 シアネスがバタバタと暴れた状態でバルキリーは手を放した
「ところでリチャードは」
 ユウロスの質問に刺のある声が
「昨日14時の飛行機で王宮に戻りました それが・・・」
「そうか・・・ とりあえずお茶にしよう」
「はい では2階正面側のテラスで?」
「ああ それでいい」
 シアネスはそそくさとサードキャスル内部へ入って行った
 ユウロスはその後を追うようにサードキャスルの正面の扉を開ける
「ねえ・・・」
「どうした バルキリー」
「 ・・・ 待って」
「はいはい」
 二人は一路サードキャスル2階正面側のテラスへ
「しかし ここはまるで博物館だな」
 ユウロスはあちらこちらにある展示品や絵画を見回しながら階段を上がる
 バルキリーもその後をついて行く
 換気はよいほうなのだろうが 空気が足音を敏感に堅く重く捕らえる
 やがて二人はテラスに出た 白いテーブルクロスを広げたそのテーブルの側にシアネスが向こうを眺めている
「どれどれ 長年の成果を味わうかな」
 ユウロスはテーブルに着く 気づいたシアネスがこの地方特産の紅茶を注ぐ
「何ですか?これは」
 バルキリーは紅茶を指さして問う
「紅茶と言うものだ 多分・・・」
 ユウロスは紅茶をすする
「多分?」
 意味深長に聞くバルキリー
「うむ おいしい」
 一口飲んで小さな幸福に浸かるユウロス
「本当?」
 バルキリーはテーブルに着き紅茶を口の中へ・・・
「!っ ぶはぁっ」げっ 苦っ? 何か入ってる
 吐き出したバルキリーにシアネスが
「庶民の口には合わないようね」
と言い捨て紅茶をすする
「な なんですってぇー」
「あら 気にさわった?」
「こっ この・・・」
「なに 言いたいことがあるのなら言ってごらんなさい」
「このロボット三等兵」
「いったわねぇー たかが人魚モドキのくせにぃー」
「なにおぉー この洗濯板女っ」
「せっ・・・・」洗濯板女 洗濯板女 洗濯板女
 見比べるシアネス
「ああーーーーーーーん マスタぁー」
 ユウロスに泣きつくシアネス 困るユウロス
 バルキリーの背後から登場する領主のルービッツ・ギア・ファーエン宜しく魔王
 直後に硬直し気絶するバルキリー
 ユウロスはシアネスをなだめている
「ところで ここへはなにしに?」
 質問をし魔王は空いているいすに腰掛けた
「ああ リチャードがいると思ったのだが・・・」
「今頃はもう王宮だ」
「そうか ・・・ しかし上手いこと作ったな この紅茶」
「それはそれは・・・ 今ではこの地方の特産物になっているぐらいだからな」
「さて」
 立ち上がるユウロス
「もう行くのか?」
「ああ・・・ シアネス」
「はい」
「また来るよ」
 ユウロスはバルキリーを抱き抱えると この2階の正面側のテラスから飛び降り ライジングアローの停泊位置へ足を進めた
 シアネスはユウロスを見失うと深くため息をつき 自室へ戻った

 同国 直轄領クレイムランド 王宮
「だれか居らぬか」
 しんと静まり返る王宮の午後
と後ろから・・・
「陛下」
「うわああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーっーーーーー」
 危うく気絶しかける国王リチャード3世
「陛下 このような所に居ては危のうございます」
「じい・・・」
「はい」
「市民を含め全員を広い所へ招集しろ全力でだ これは命令である」
「ははぁっ」
 実質上お目つけ役の老人は王宮の廊下の奥へ消えた
「うむぅー  さて 何を話すべきか・・・」
 考えるなリチャード

 ライジングアロー
のコクピット シートに深く掛けたユウロスは静かに右手をT字型の操縦桿を握った そのまま左手でキーボードに触れる
 「どうしました?」
「フォースエンジンで上空へ そのままクレイムランドへの弾道コースを」
 「了解」
「 ・・・それから ラーディアへの通信を」
「回線つながります」
「早いな」
「画面出ますよ」
「はい はい・・・」
 ユウロスの目の前の空間に平面の画像が現れる そこにはアレイムとリーナとロックの姿が
「どうしたユウロス」
「いや 少し遅れる事になるから連絡を・・・」
「そうか リーナが寂しがっているぞ」
「だっ 誰が寂しいって?」
 強がるリーナ
「でわ またなアレイム・・・」
「ああ」
「ちょっ ちょっと」・・・
 「通信切れました」
「分かった」
 「あの・・・」
「どうした?」
 「さっきの通信の最後にフリールの姿が・・・」
「うっ・・・ 見なかった事に・・・」
 「はいはい じきクレイムランドです」
「分かった」
 ユウロスはコクピットを出た その彼の目の前には いや 彼の脳裏は・・・

・・・・・・・・・・ムンクの叫び・・・・・・・・・・

 そのまま卒倒したユウロス 何を見たかは本人にも定かではない
 さてそのころ

ガルフブリーズ
 どこまでも長く続く通路の上で倒れたまま全く身動きの取れないフリーナがくさっていた
「うーーーーーっ 畜生ぉーー 仕事全部ユウロスに回してやるぅー」
「どうしたの」
「どうしたの じゃないわ ・・・って翼は?リディア」
「あるわ ほらっ」
 リディアは背中の小さな翼をフリールに見せる
「と言うことは・・・」
 全身に斬新な悪寒の走るフリール
「まあ10年は動けないから とりあえずはベッド行きね」
 白黒逆転呆然自失のフリール

・・・・・・・・・・続 ムンクの叫び・・・・・・・・・・

 さて 固まったフリールを運ぶべく
 リディアは微笑を浮かべ車椅子を取りに行くべくその場を離れたのであった

 クレイムランド 王宮
 その正面ゲート前の広場には大勢の市民・軍人・役人等が集まりつつあった 国王であるリチャード3世は門柱によじ登り その上に立ち様子を観察した
 手持ちのスピーカーを渡され次第に硬直するリチャード
 取るものも取り敢えず大きく深呼吸をするのであった
 さて これから
・・・と 言う所にライジングアローの純白の船体がリチャードを含めた大衆の前に姿を現した
「あの バカっ」
 思わず言葉がこぼれるリチャード
 ほどなくバルキリーがその4枚の翼を羽ばたかせユウロスを抱えてリチャードの近くに降り立った 衛兵が二人を取り囲む
「敵ではない下がれ」
 王の言葉におずおずと引き下がる衛兵達
「気絶しているのか こいつ」
「そうです でわ」
 バルキリーは気絶しているユウロスをリチャードに預けると再びライジングアローへと飛び上がった
「しかし・・・ どうしようか なぁ?」
 視線をバルキリーからユウロスに移したリチャードはこの状態の処理方法を最も近くにいる実質上お目つけ役の老人に押し付ける
「お任せください」
 数十分後その老人は種々の覚醒魔法を用いるが一向にユウロスに変化はない
 リチャードは密かに門柱から降り老人に気づかれないように水を用意させる
 さらに数十分後その老人は全ての覚醒魔法を用いたがユウロスにはがんとして変化はない
 その呆然とした老人の目の前でリチャードはバケツ1杯の水をユウロスの口目がけてかけた
 その数秒後・・・
「げっほっ・・ ごっほ ぐはぁあっ ごほっ」・・・
 激しく咳き込みながらユウロスは立ち上がった
 反対に立場が無いのがこの実質上お目つけ役の老人であった事は言うまでもない
 ここでリチャードは再び門柱に昇りスピーカーに向かって
「ちょっと時間を取ったが ・・・ 戦争は終わった だが我々は勝った訳ではない」・・・
 リチャードの口から次々と出る言葉を演説を ユウロスは濡れた衣服と髪の毛をタオルで拭きながら静かにその門柱の下で聞いている
 演説を終えたリチャードはユウロスの側に門柱より飛び降りスピーカーを手渡す
 ユウロスは視線をリチャードに戻し
「おい 私に話せと?」
「そうだよ」
 笑顔のリチャード
「後悔しないな リチャード」
「いや・・・ 責任は持てないよ」
 苦笑のリチャード
 ユウロスは不器用に門柱に昇り
「私がユウロス・ノジール 本人だ もう5万年は生きている さてその私から言わせてもらう 民あっての国王だ 国王に先導される民衆ではだめだ 国王を先導する民衆でなければならない 理想を求めろ 理想なき国民など国民ではない そんな奴は死ね 以上だ」
 民衆のどよめきを聞きながらユウロスは門柱から飛び降り
「リチャードついでに法律の再構築だ」
「なにぃー」
 顔の歪むリチャード
「どうした? 君にはその権限があるだろ?」
「確かに あるにはあるが・・・」
 口ごもるリチャード
「じゃあ 王宮に私の部屋を用意しておいてくれ」
 ユウロスは上空のライジングアローへと飛び上がった リチャードはその様子を見上げ
「なんで 俺はこんな時に 国王になったんだぁー」
 力いっぱい叫ぶリチャードであった

 ライジングアロー コクピット
 暗がりのコクピットのシートにバルキリーが座っている
 「ねえ バルキリー」
「何?」
 「・・・ なんでもない」
「変なの」
 ユウロスがコクピットに入ってくるなり
「グラメダへ行くぞ」
「了解 弾道コースに入ります」
「分かった」
 ユウロスはコクピットを後にし紅茶を飲むべくキッチンへ足を進めるのであった
 コクピットを密室にしたUAIは
 「バルキリー 貴方はユウロスをどう思っているの?」
「そっ それは」・・・

 グラメダ リネの家
 市場の中にあるその魔法書店の1階でリネが店番をしている 何でも祖父のチャールは復旧工事の手伝いに出掛けているという事だ
「・・・ ・・・ ・・・ ・・・ うーーーーん」ユウロスがねぇー
 物思いにふけるリネの死角でフリールは本を読みはじめた 因に本の題名は『魔法史第1巻』である
「よう いるか?」
 本棚の陰からディーロック・アンヴァーストが姿を現す
「ここには私達しかいませんよ」
 フリールは本を読みながら答えた
「ようロック」
 ディーロックが振り返るとそこには新しい服装のリーナとアレイムがいた
 リーナはメンバーを見渡し
「バリアスはどうした?」
「今 肉体労働してるよ」
 答えるアレイム
「に 肉体労働?」
「ああ 何でもいい金になるとかで 復旧作業を・・・」
「・・・ あやつらしいのう」・・・
「ところで・・・」
 アレイムはポケットからカードを取り出し
「ご一緒しません?」
 皆に問う 無論この後全員がカードゲームに興じる事は至極当然で あった

 ライジンクアロー
は既に減速着水し微速にてグラメダ港内を進んでいた
 そのコクピット
 「ねえ バルキリー ユウロス呼んで来てくれる?」
「分かった」
 十数秒後ユウロスと共にバルキリーは再びコクピットに入ってくる
「どうした?」
 「いつもの停泊場所に・・・」
「? パネルを」
 「了解」
 いつもライジングアローが停泊していた桟橋の横に大きく場所を取る青い船体のラーディア
「うーん あの横につけて・・・」
 後悔の念を抱くユウロス
 「よろしいのですか?」
「しかたあるまい」・・・
「わかりました 潜舵及びスタビライザー収納 ・・・ スクリュー反転 速度0へ
 アンカー放出 ・・・ 停船しました」
「thanks」
 コクピットを後にするユウロス
 バルキリーは船外に出ようとするユウロスに
「私 もう戻りたくない」
 静かに告げた
 ユウロスは足を止め
「そうか・・・ 休暇最後の後始末はつけて来いよ」
「うん」・・・
 バルキリーの暗い返事を聞き
「そうだ ラーディアの中の荷物をこっちに積み込んでおいてね・・・ じゃあ 先に行ってるから」
 ユウロスは無責任に言い捨て前甲板に出るとラーディアの甲板に飛び降り桟橋をよじ登り町の中へ消えた
「もう」
 複雑な心境のバルキリー

 翌日
 朝早くユウロスはラーディアの艦橋の艦長のブースにて・・・
「UAI05」
 「はい」
「遠距離外視システムの詳細をUAI02へ送ってくれ」
「了解 ・・・ 終了しました」
「き 記憶データを 全てUAI00に送れ」
「分かりました ・・・ ・・・ 終了です」
「全エネルギー カットオフ」
 「お別れですね 永遠に・・・」
「 すまん 」・・・
 「さようなら」
 ブンッ
 静かになったラーディアの艦橋 ユウロスはそこから離れライジングアローに戻り コクピットにてUAI02にガルフブリーズのディーのスペースにワープさせるよう通達し前甲板に出た しばらくしてラーディアがその姿を消し去る 数秒後冷たい風に吹かれた彼は深く苛立ちを覚えた

 夕方
 黄昏の時 ユウロスはライジングアロー前甲板の桟橋とは反対側に座り静かに港の景色を眺めている 戻って来たバルキリーがユウロスの後ろで立ち止まり
「ねえ ユウロスあなたも退職を?」
「いや・・・」
 静かな答えだ
「そう」
 バルキリーは船内へと入って行った
 静かに波の音を聞き 風の流れを感じる ゆっくりと季節がゆき過ぐのを感じる
 ああ 日が暮れる そう思いつつ船内へ入った
「ユウロス 飯はまだか?」
 テーブルにてリーナが騒ぐ
「飯々言うな はしたない」
「だからと言って ディナーと言える食事でもあるまい」
「・・・まあな とりあえず夕食と言えるあたりだろう」
「ところでユウロス メニューはなんじゃ?」
「なあリーナ」
「はい?」
「外に行きません?」
「おお 外食か?」
「Year」
「うむ そういえば外食は初めてかもしれん」・・・
と そんなところへバルキリーが階段を上がって来た
「ねえ夕食まだでしょ?」
「ああ」
「近くの酒場で12班の残りのメンバーで騒ぐんだけど来ない?」
「酒場ぁーーっ そりぁ 君は飲めるからいいようなものの・・・」
 いやだと言わんばかりのユウロス
「そうだったわね じゃあロザンドって言う酒場だから」
 バルキリーは桟橋に降りグラメダの町中へ
「一口ならまだなんとかなるものの ・・・ リーナとりあえず支度して」
「はぁい」
 いい返事をして階段を降りるリーナ
 しばらくしてテーブルにうつ伏せになったユウロスの背後に気配が忍び寄る
「だれだ?」
「その節はよくやってくれたな ユウロス・ノジール 私はディアス・エピックと言う者だ」
 ユウロスは振り向きながら
「そのせつとは?」
「イトスで魔導戦艦を撃ち落としただろう?」
「ああ そうだが・・・ 用件は何だ?」
「うむ 我が国王の命を受け 唯一の王位継承者リーナ姫の探索をしている 貴様ならばなにか知っていようかと思ってな」
「ふむ ・・・ ディアス 君の娘には会わないのか」
「リネの事か?」
「ああ」
「何分・・・ いや ・・・ やめておこう」
「そうか(良心が咎めているだけ)まあ よしとするか」
「なにか 知っていることはないのか?」
「知らなくもない・・・」
 そんな所へ戻って来たリーナ
「ユウロス支度が出来たぞ 行こうではないか・・・ ん?誰じゃ」
「と 言う訳だディアス 詳しいことは食後にでも話そう」
「そうか ではまた後程・・・」
 ディアスは船から出て行った
「あらあら」なんだかなぁ
「行くぞユウロス ぐずぐずせずに ほらほらっ」
 急き立てられたユウロスは船に鍵を掛けリーナと共に町の中へ・・・

 約1時間後 リネの家
 ユウロスとリーナは食事を終えた後ここに足を運んだのである
 現在リネとフリールを含めた四人でカードゲームに興じているのであった
「お先に」上がったぁー
 ユウロスは手持ち最後のカードを出した
 リネが数枚のカードを出し
「はい16枚引いてね」
「ひぃよぇええええーーーーっ」
 叫ぶユウロス
「もう報復は来ないね」
 フリールが最後の一纏まりのカードを出した
「甘ぁーい」
 リネが一枚のカードを出した
「う 嘘ぉー」
 落胆の表情でカードを山から36枚引くフリール
 ・・・さて しばらくして ゲームの結果は表情に出るのであった
「あれだけ報復したのに・・・」あああっ
 落胆のリネ
「戦術 戦術」
 勝ち誇るフリール
「チャール遅いな」
 待っているユウロス
「次は・・・」
 上機嫌のリーナ
「今帰ったぞ」
 年寄りの声が聞こえる
「遅かったな チャール」
「珍しいのぅ お前さんが直接ここへくるとは」
 ユウロスはチャールのいる店先へ行き耳元で囁き数通の手紙を他人には分からないように渡した
「リーナ・フリール行くよ」
 そう言い残しユウロスはライジングアローへの帰路についた

 居酒屋ロザンド
 そのころにはもうアレイムとミディーとロックの三人がこの店に入ってから2時間程経っていた
「なぁ 辞めちまうのかぁ?ミディー」
 半ば酔ったロックがコップ越しにミディーの顔を見ている
「ええ」
 ほろ酔いのミディー(バルキリー)は答える
「ユウロスは来ないよな?」
 全然酔ってないアレイムがミディーに問う
「来ないわ 多分」
「そうだよなぁー」こんなアルコールの凄い所へ来るとは思えんからなぁ
 考えつつ店の入り口に目をやったアレイム
 無論ユウロスが来るはずはない
「そろそろ 出ようか?」
「そうね ロック出るわよ」
「はいはい」
 ロックはどうやら ろれつがまわらなくなってきたらしい・・・
 居酒屋を出た三人に冷たい夜の空気が触れる
 ロックはその中をふらふらと漂っている
「ねえアレイム」
「んっ?」
「出来れば 戦争なんて起こってほしくはなかった」・・・
「そうだな俺も もうユウロスと会う事もないかもしれない」
「さよなら」
「いや また会おう バルキリー・ディ・ハルシオーネ」
「知ってたの」
「ああ 随分前にユウロスから全てを聞いたから 多分君の事だろうと思って・・・」
「そう・・・ じゃぁ また会いましょうアレイム・ルーマン」私に良い友人が・・・
「ああ そのうちな」
 バルキリーは振り返る事もなく もう冬の訪れる白夜の町を港へ消えた
 アレイムはしばらく考えた後 ロックを背負って仮設の住居へ

 数時間後 ライジングアロー
「遅かったな 君で最後だフリール」
「そう・・・」
 フリールは荷物を抱え船内へ
 その後ユウロスは船内に入りハッチを閉じテーブルに着いているリーナに告げる
「さて リーナ・・・」
「姫 お迎えに上がりました」
 そう言いながら階段を昇りこのデッキのリーナの目の前に姿を現したのは 先ほども訪れたディアス・エピックであった
 ディアスの容姿を見るなり
「何者だ?ユウロス」
「君の国の使いの者だ おっとフリールとバルキリーは外してくれ」
「ええ・・・」
 二人とも階段を降りて行った その様子を確認してリーナは
「帰らない」
「しかし 姫」
「それに私はもう姫ではない 一介の一個人リーナ・フィン・ラオリスだ」
 全滅するユウロスとディアス
「どうした?」
 ディアスは説明を始めた
「姫 リーナ・フィン・ラオリスと言うのはラオリス王国の正当な王位継承者リーナという意味をそれ自体が持っているのです 最も簡略化はされていますが・・・ ですから一介の一個人を指す場合に姫はリーナだけで結構です」
「ふむ そうか しかしリーナだけと言うのは少し寂しいものがあるのぅ」
 考え込むリーナ
「私が何か考えてあげようか リーナ」
「うん お願い」・・・
 ユウロスは悩みながら
「しかし 名字まで考えることになるとは・・・」
つぶやいた
 聞いていたディアス
「ほう?」
「ユウロスは私の名付け親だ」
 説明したリーナ ディアスはそのままユウロスに聞く
「ああ そうだよ」
 衝撃のディアスの脳裏から自動的に言葉が漏れる
「なんと・・・」
「うーーーーーんーーーーー」
 悩むユウロス
 沈黙しユウロスを見つめるディアスとリーナ
「うーーーーーーーーーんーーーーーーーあーーーーーーーー」
 さらに悩むユウロス
 若干期待の薄くなったリーナ
「よし ノーウェルムと言うのはどうだ?」
「ノーウェルム?」
「リーナと同じウァルフィス語だ 昔の友人の名だ・・・」
 遠い目をするユウロス
「ノーウェルム 私の姓・・・ リーナ・ノーウェルムかぁ」
 リーナは自分の名字を覚えようとし その横でディアスは弱っている
「諦めるのだな ディアス」
「ふむ 機会があればまた後程 姫様・・・」
 船外に出たディアスは桟橋に降り立つとグラメダの夜空を悲しそうに見上げ 一陣の風と共に姿を消した

 翌朝
 ユウロス リーナ フリール ヴァルキリーの4人がそれぞれに朝食を取り終え一息ついていた ユウロスは不意に立ち上がりコクピットへ 彼はドアをロックし
「UAI」
 「はい」
「行路計算は?」
「完了しています」
「いいな」
 「はい」
「私は出る 3人を頼むぞ」
 「Master 気をつけて・・・」
「ああ」
ユウロスはコクピット側面のハッチから桟橋に飛び降りグラメダの朝の町並みへと足を進める

 船内
 「システム機動 これよりクレイムランドへ向け出港致します 到着は11月7日の予定です なお食料は3名分約2ケ月です」
「 ! 3名 UAIどう言う事?」
 フリールが強い口調で尋ねた
 「・・・・。」
「命令を変更します 今すぐに・・・」
 「命令の変更は不可能です Masterはクレイムランドで待っていろと・・・」
 バルキリーは取り乱さず窓の外に町へと向かうユウロスの姿を見た

 グラメダ城塞2号舎4階12班専用ルーム
 現在この部屋にはディーロック・アンヴァーストとアレイム・ルーマンの二人があの坑道のおくの金庫から出て来た設計図を解析している
 ディーロックは資料を見ているアレイムに訪ねる
「なんだいこの記号は?」
「ええと・・・それは・・・」
 アレイムが資料から該等するものを探す
「それは君たちには早すぎる技術だ」
 部屋に入ってきたユウロスは燃え盛る暖炉の火に目をやった
「ユウロスいい所に来た・・・」
 二人がユウロスを迎える
 ユウロスは側に寄った二人をかき分け設計図や資料をすべてを鷲づかみにし
 すべてを燃え盛る暖炉の中へ投じた
ディーロック「なっ ・・・」
アレイム「ユウロスお前」
「二人とも聞いてくれ・・・ この惑星で人類は3度この技術によって壊滅した まだそんなに人口も文明の安定していないこの時期にこの力は大きすぎるんだ」
 ディーロックはユウロスを睨み付け
「貴様」
「これでは不十分か?・・・ ならばいいことを教えてやろう班長はいやアレックス・スーウィンは私が始末した 危険な存在なのでな」
アレイム「・・・・」
「もう一つ教えてやろう 本来ならばこの都市も消滅させる必要があったのだ だがこれ以上の人口の減少はこちらとしても困るのでね」
 ユウロスがいい終えた瞬間ディーロックの拳がユウロスの顔面を捕らえた 吹っ飛ぶユウロス
「やめろ ディー」
「止めるなアレイム」
「俺達は知り過ぎたんだ・・・ ディー・・・」
 ディーロックは怒りと勢いに任せてユウロスをめった打ちにする・・・
 しばらくして 騒ぎを嗅ぎ付けた総務課の面々がディーロックの行為を止めた
ディーロック「そいつはなぁー 殺人犯なんだ 班長を殺した」
「仕方のないことだったんだ」
「うるせぇー」
 ユウロスはほどなく逮捕された その際にディーロック・アンバーストはこう言っていた
「何でお前みたいな奴の血も 赤いんだよ・・・」

 翌日
 グラメダ城塞内牢獄
「面会人だ ユウロス」
「そんな物好きは誰だい」
「ユウロス・・・」
「バルキリー いや・・・ ミディー どうやってここへ・・・」
 ユウロスは鉄格子の側による
「マスター・・・」
 バルキリーはユウロスの手を握り締める
「すまないな だがここの法律は私の加担した法だ・・・ 私はこの裁きを受ける義務がある 終わるまで船で待っていてくれるね」
「はい」
「ありがとう」
「どうして・・・ どうして貴方は人を義務で殺めなければならないの」
 バルキリーは自分に言い聞かせるように言い残しこの場から離れた
「・・・ふっ・・・」
 バルキリーの後ろ姿に視線を向けながら 笑みを浮かべるユウロス

 数日後法廷
「判決 ・・・ 人を人とも思わぬ行為は誠に許しがたい よって グラメダからの追放を申し渡す なお追放の期限は10日の正午までとする
以上 閉廷」
「いい結果だ・・・・。」
 ユウロスの言葉にざわつく法廷内

 同日 夕刻
 暗い石造りの壁に鉄格子で通路と隔離された部屋の並ぶ牢獄の一室に彼は静かにたたずんでいた
「面会人だ ユウロス」
 ユウロスの目の前 鉄格子の向こうにアレイムの姿があった
「アレイム どうした?」
「ユウロス 俺がいながら・・・」
「いや 気にするな」
「これでお別れか」
「ああ・・・」
「リネやラエルには事の一部始終を説明した手紙を渡してある 心配はいらない」
「そうか ・・・ アレイム ・・・」
「なんだ」
「迷惑かけたな」
「気にするな それから 差し入れを持って来た 後で受け取ってほしい」
「分かった」
「じゃあ」
「ああ」
 アレイムが立ち去った後しばらくして看守から差し入れを受け取った その中に
「ローブと帽子と杖か・・・」仮装パーティーに使った物だな・・・

 翌日 早朝
 ユウロスは朝焼けの鮮やかな早朝に看守をたたき起こしアレイムの差し入れを着てグラメダの町の西にある門まで来た 付き添いの看守の一人は言った
「本当にここでいいのか? この永久凍土の氷原は誰一人として」
 ユウロスは看取の言葉を遮り
「悪いな 私は死にに行く訳ではないんでな・・・ 開門」
 ゆっくりと扉は開いて行く
「我が名はユウロス・ノジール 魔法の統治者にして 最大・最強・そして 最悪の力を持つ 破壊神」
 ユウロスは開き切った門をくぐり抜け外の景色を見渡す
 無風の・・・ 一面の銀世界が 永久凍土の大地がその視界に入る
「閉めるぞ」
 また扉はゆっくりと閉まってゆく
 ユウロスは看守に見えるように
 杖を大きく振りかざして舞い
 その空間から姿を消した・・・

 UAI中枢
β上にてユウロスをロスト
01へ ユウロスを見失った模様

 同時刻 ガルフブリーズ
 「ユウロスを見失いました」
「なっ なんですってぇー ・・・・・・ チーフの ばかぁー」
 怒りのフリーナであった

 リネの家
 日もだいぶ昇り リネとチャールが開店の準備をしている チャールは昨晩届いた本を抱え本棚の空きを探している その本棚を挟んではたきをかけるリネ
 数分後 この書店は開店した
 不意にポケットに手を入れたチャールの手が紙の感触を捕らえる 彼はそれを取り出した
「・・・ リネ ユウロスからだ」
 言いながらリネに渡したチャール
「ユウロスから?」あのユウロスが手紙を? 悪寒が・・・
 リネはその手紙の封を切り 読み始めた・・・

『さて この話は此処で終わります でもユウロスはまだまだいろんな経験を私に語ってくれます 今宵はそんな ユウロスの経験の一部をお話ししました でわ皆様 一先ずは ごきげんやう』

製作・著作 しまぷう

つづき(すたっふ)へ

Ende