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突発ショートショートL3「ある満月の晩に」


 夜、23時22分、男子寮管理人室前。
「由宇さん、中庭のゴミの後始末終わりました」
「ご苦労さん」
「今日のお月見会、結構盛り上がりましたね」
「そやな…」
 お月見会、そう言う名目で中秋の名月の下、夜の宴会が寮の中庭で催された、企画は南さんである。 ほんの一時間前まで、男子寮・女子寮及び関係者や飛び 入り参加者がそれぞれに楽しんでいた。
 最後まで片づけをしていた希亜の作業も終わり、丁度引き上げてきたところだった。
「…ところで軍畑は?」
 そう言った猪名川に希亜はため息を付き。
「お月見会の隠し芸大会の時に、由宇さんがハリセンでのしたんじゃないですかぁ? 今も部屋で気を失っていると思いますよぉ?」
「だらしないなぁ。 ってそう言えば、何で希亜のハリセンでどついた時には何ともないんや?」
「私のハリセンは、音質最重視ですから」
 由宇は「そんなもんかいな?」とでも言いたげな表情になるが。
「ふぁーーーーーっ…」
 大きくあくびをすると。
「希亜も今日はもうええから、早う寝えや」
「はい、ではお休みなさい」
「ほな、お休み」
 管理人室の戸が閉められる。
 希亜も自室へとその場を後にした。

 部屋に戻ると、机に向かって何かしたためているルームメイトで一年先輩の軍畑の姿があった。
「軍畑さん、起きても大丈夫ですか?」
「あ、弥雨那ちゃん。 …いつもいつもすまないッス」
「そいつは言いっこなしだよおとっつぁん」
 毎度お約束の台詞がかわされる。
 希亜は着替えを取り出すと。
「じゃあ、お風呂に行って来ますね」
 そう言って、部屋を出ていった。
「さて、やっぱりラブレターは王道ッスよね! 理緒ちゃーん!」
 どうやら、恋文をしたためているようだ…
 
 
 

 良く暖まった体を、宙に浮かせながら、ふよふよと寮の廊下を自分の部屋に向かう希亜。
 ふと窓から差す月明かりに目を奪われる。
「吸い込まれそうな月…」
 呟いて部屋に入る。
「違うッス、オイラの想いはこんなモノじゃ無いッス!」
「どうしたんですか?」
「あ、弥雨那ちゃん。 理緒ちゃんにラブレターを書いているところなんだけど…」
 軍畑の声のトーンが落ちる。
「上手く行ってないんですね」
「そうなんスよぉ」
「残念ながら、私ラブレター書いたこと無いですから。 でも、思いの全てをぶつけるよりも、一番強い思いをしたためて見るというのはどうでしょうか? で も成功の保証はないですけどね」
「そうッスよねぇ」
 成功の保証はないとの希亜の言葉にうなだれる軍畑、だが。
「当たって砕けろッス! やるッス! 理緒ちゃんのハートをゲットするッス!!」
「がんばって下さいね」
 そう言って、筆を進め始めた軍畑の後ろを通って希亜はベランダに出る。
「良い月、静かな明かり、吸い込まれそうな…」
 胸元からペンダントになっているRising Arrowを取り出し、魔力を精神を集中する。
「……Kras……Dio……Nylv…… Rising Arrow!」
 目の前に浮かぶグエンディーナ製の空飛ぶ箒 Rising Arrowにふわりと腰掛け、月夜の空へと飛んでいった。
「ベランダの鍵は、開けておくよ弥雨那ちゃん」
 希亜の飛び立って行ったベランダに視線を走らせた軍畑は、そう呟き再び筆を進めるのだった。
 
 
 

 寮の上空 800M。
「みんなで騒ぐのも楽しいけど、静かに月を愛でながら飲む酒もまた、いいものやねぇ」
 そう言って、チビリと灘の酒を口の中に含む。
「今日の自分に、お疲れさま」
 再び、チビリと灘の酒を口の中に含み、その味を堪能する希亜。
 視線の先の月は、静かにその月明かりで街を照らしている。
 
 
 

キャスト(登場順)

猪名川 由宇
軍畑 鋼
 
 


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Ende