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突発ショートショートL4「ある文化祭に」




 カチューシャにつけられた大きな兎耳が頭の上で揺れ、ストレートにおろされた長い黒髪で本来の耳を隠し。
 カラーコンタクトによる紅い瞳が涼しげに辺りを映し、首には鈴をあしらったチョーカーが揺れる。
 自然なスタイルで背筋をピンと伸ばしたスレンダーなボディーを、シャープにアレンジされた空色のエプロンドレスに身を包み。
 ティーセットを入れたバスケットを、両手で抱えるようにして持っている。
 それらの様相と所作を含めて、凛としたウサミミメイド姿の人物が、学園祭の準備でにぎわう学園内を一路漫研の部室へと歩いていた。

「お待たせしました」
 その言葉と仕草に、綾芽は思わず息をのんだ。
 紅いカラーコンタクトの瞳に、その音の主を写してスマイルを浮かべた希亜は、慣れた手つきでバスケットの中からティーセットを配置して行く。
 そこにいるのが女装した希亜だと、少なくとも知識としては分かってはいるのだ。だがその人物には、いつもの希亜ののほほんとした雰囲気は微塵もなかっ た。
 音もなく、そして迷い無く配置されたティーセットに、今度はポットから紅茶が注がれる。
「どうぞ」
「…あ、うん」
 綾芽は希亜の様子に戸惑いながらも、促されるままにカップに手を伸ばした。
 鼻腔をくすぐる香りを感じながら、口に含む。
 希亜は綾芽のその様子を見て、向かい側の席に優雅に座る。
 綾芽の味覚や嗅覚が、いつもの希亜の紅茶だと告げると、ようやく目の前の女装した彼が希亜であると安心できた。
「そんな格好しているから、飲むまで不安だったんだよ?」
「ちょっと、驚かせたかった物ですからぁ」
 口をとがらせる彼女に、彼はいつもののんびりとした口調に戻して答えた。
「それにしても良く化けたよねー、衣装あわせの時は普通のメイドさんだと思ってたのに」
「もちろん、魔法は使ってないんですよ〜。でも悪ノリする知人の協力で、このクオリティーのコスになりましたぁ」
「…凄すぎると思うよ?」
 彼女の目から見ても、彼のコスプレ… と言うよりは変装の域に達しているそれは堂に入っていた。
 確かに化粧等、彼女自身もレクチャーしたりしたが、大きなウサミミに朱い瞳、そしてシャープにアレンジされたエプロンドレスという装いを、凛とした所作 で全て纏め上げているのである。
 まぁ、普通に凛とした女性に見えてしまう辺りは、彼自身衣装あわせの時に、床に両手を着いてかなりのショックを受けていたのだが…
 現在の化けきった希亜を見ると、流石に漫研部員だよねーと変に納得してしまう。
 さて、希亜のメイドスタイルに対して、綾芽はいつもの和装ではなく三揃えのスーツ姿である。ステッキとシルクハットも用意されており、丁度二人で主と従 者という構図が成り立つようになっていた。
「些か安直ではあるんですけどね〜」
「でも。これってコスプレと言うには、良い生地を使ってない?」
「折角ですから少し良い物を選んでみました。コスプレでなくとも普段着として着ていられるようにして貰ってますよ〜。 …あ、クリーニングには出せるので 安心してください」
 さらりととんでもない事を言う希亜に、綾芽は思わず着ている物へと視線を落とす。
 確かにいつも着慣れている袴ほどではないが、動きにストレスを感じさせる物はない。
 どんな仮装をするかを決めた直後。Rising Arrowにてひとっ飛びし、希亜の行きつけのお店に連れて行かれて、そのまま採寸に応じたのは覚えているが…
「まさか、こんな事になるなんて、思わなかったよー」
 先日一通り着てみて、姿見に映った自分がまるでタラカヅカみたいと思ってしまった辺り、随分希亜に感化されたかなと笑ってしまった事を思い出す。
「でも、これで明日のコンテストの準備は完璧だね」
「はい旦那様」
「もー」
「でもぉ… この年でこのコスが完璧に変装の域に達するというのは… 流石に… ちょっと… ショックですよぉ〜」
 また衣装合わせを思い出してブルーに沈む希亜に、綾芽は慰みの言葉をかける。
 全校あげて準備に勤しんでいる学園祭。このお祭りに際し、何かしようと言い出したのは綾芽で、希亜はそれに対して幾つかの選択肢を提供したのだ。
 だが、まさか希亜自身が女装するハメになるとは思わなかった訳で…
「ここまで来たら優勝を目指してがんばるのみだよ」
「そですね」
 お互いに微笑み合う、明日は学園祭本番なのだ。


 天候は晴れ、風も穏やか。
 学園内には様々な出店や出し物が並ぶ。
 生徒達や関係者達はそれぞれに装い、このお祭りが始まるのを待っていた。
 やがて放送が入り、開始へのカウントダウンが始まる。
 正式な名称は学園祭ではないのだが、たいして気にとめることも無いのか、大半の参加者は学園祭と呼んでいる。
 カウントダウンの声は、一桁代に入って全校を包み込むようなどよめきとなり、ゼロへと向かう。
 全校で一斉に告げられたゼロを合図に、特設のゲートが開き学園祭会場へと来客者がなだれ込んで行く。
 その一般の来客に混じってキア・ユーナの姿があった。
 本革のブーツに黒のタイツ、グレーのスカートに、所属する部隊のエンブレムが施された青いブレザーを着た彼、キアも来客の一人としてこのお祭りの喧噪の 中へと紛れて行く。
 彼の性別は男なのだが、周りの誰もが彼を不審に思うことなく、彼を少女として認識していた。
 人の流れに乗ってキアも進み、入り口の案内付近で配られている学園祭のパンフレットを受け取る。
「ありがとう」
 生徒の一人からパンフレットをもらい、丁寧にそう返す。
「さて、会えると良いんですが」
「ご来場の皆様に申し上げます。こちらは学園祭実行委員会です…」
 全校に向けて放送されるのは、今回の学園祭における各コンテストの案内だ。
 パンフレットにも案内と投票用紙が挟んであり、その説明も兼ねておよそ30分毎に案内を流すことになっている。
 キアはその放送の内容を聞き流しながら、パンフレットのページをめくって行く。
 そして五月雨堂の出店を見つけると、真っ直ぐにその場へと足を進めた。


 中庭に設けられたスペースには、関係社会人達の出店が並ぶ。
 その中の一件。比較的小物のアンティークの中から、学園祭向けの比較的安い物を選んで陳列してあるのが、五月雨堂の学園祭参加の出店である。
 特に迷うことなく到着したキアは、お目当ての人物がいない事に気付き、五月雨堂のエプロンを掛けた男性店員に尋ねてみた。
「ああ、あの二人なら今日はコンテストに出るから、そっちの方に行っているよ」
 宮田健太郎は開始直後に来た少女にそう答える。
 もちろん少女とは女装したキアの事である。
「仮装コンテストだったかな、そのパンフレットに乗ってると思うけど」
 キアは健太郎に言われるままにパンフレットのページをめくり、仮装コンテストのページにたどり着く。
 書かれている説明を読んで…
「…なお出場者はシングルまたはペアで行動し、黄色いワッペンを胸に付けています。最も良いと思われるペアの番号を投票用紙にご記入下さい?」
 キアは最後まで読んで、とりあえず一呼吸して健太郎へと視線を上げる。
「こんなのに参加なさっておられるのですか!?」
 思わず声を上げるキアに、キョトンとしてしまった健太郎だが、ぽんと手を打って。
「やっぱり、スフィーの世界の人かぁ」
「な、なっ…」
「俺は宮田健太郎、こっちのスフィーの保護者だ」
 慌てるキアに健太郎はそう告げる。
「も、申し遅れました。姫様宛の手紙を預かっております、キアと申します。つきましては手紙を直接届けるよう厳命されておりますので、ご協力をいただけな いでしょうか」
 急に畏ったキアの申し出に、健太郎は今日は学園祭だからかな、等と思いつつ言葉を返す。
「それは参ったな…、俺はここで店番をしなきゃならないから離れられない。戻ってきたら伝えて置くけど、探しに行った方が早いと思うよ」
「そうですか、では一回り探してみます」
「気をつけてー」
 キアが行ってしばらくして、ふと健太郎は、本当にあの世界から来たのかと思い直し。
 同時に、スフィーの件は迷子の呼び出しをしてもらったら早かったかなと、スフィーに対してやや不謹慎なことを考えるのだった。
 因みに希亜と名前が同じだと不思議に思うのは、さらに小一時間ほど先の、客の波が一段落してからの事であった。


「どうよ、このコスプレ!!」
 学園の一角、廊下に何気なく設けられている姿見の前で、自信満々に言い切るスフィー。
 彼女は子供向けテレビアニメの、お子さまは魔女、通称お小魔女の格好をしている。
 胸にはコンテスト出場者を表す黄色いワッペン、手には市販のステッキを持ってご満悦だ。
 ただ、どう見てもお子様が変身セットに身を包んでいるようにしか見えないという、微笑ましさはぬぐいきれなかったが…
 それとは対照的に、リアンは少し恥ずかしそうに制服を着て歩いている。
 彼女は高等部の在籍ではないのだが、会場はコスプレOKと言う事で、制服を借りているのだ。
 こちらはエントリーしてはいないので、別段ワッペンを付けているわけでもなく、スフィーのお守りとして一緒について回っているのだった。


 中庭を一回りして、校舎の中へ入る。
 パンフレットの地図のページを開いたまま、一筆書きの要領で通路を回ることにした。
 デフォルメされた校舎の地図が分かり易く書かれてはいるが、既に大勢の来賓と生徒で人の流れに乗らないと進めないところも出てきていた。
「ふー」
 人混みから逃れるように、休憩用に設けられた教室に入る。
 教室の真ん中に用意された休憩用の椅子に座り、一息ついてキアは辺りを見渡す。
 その教室の壁にはいくつもの絵が並べられており、端の方に協力美術部&漫研&有志一同と掲示してあった。
 どの絵も暖かみのある絵であり、いつのまにかキアはそれら絵を一つずつ見て回っていた。
「この絵って…」
「はい」
 丁度今、キアが見ている絵について話しているのが耳に入った。どうやら一人はこの絵の作者で、もう一人はこの絵のモデルらしい。
 夕焼けに映える草原で、ゆったりと風に身を任せている、こちらの世界の民族衣装を着た女性の絵だ。
 キアには色遣いや構図が、モデルへの暖かみ溢れる心情を描いているように感じた。
 こんな絵を描く人とはどんな人なのだろうと、半ば感動と、半ば興味本位で隣の絵へと動きながら、後ろで仲むつまじく話している二人を視界に入れた…

 思考停止。

 そう表現するのがもっとも適当だったと、後日キアは笑いながら思い返すことになる。
 スーツでしっかりと決めた男装の女生徒と、飾り物だろうウサギ耳を付けた紅い目のメイドが、周りからは別次元的な世界を醸し出している様子をはっきりと 視認した…
 したのだが、そのあまりの周りからのかけ離れ具合に、思考停止に陥ってしまったのだ。
 メイドの方から何度か「大丈夫ですか?」と声をかけられたところで何とか気を持ち直したが、心の奥まで見透かすような紅い瞳と視線が合うと、脱兎の如く 教室から飛び出した。
「な、な、な…」
 先程の教室から少し離れた場所で、落ち着こうと必死になる。
 事前に得ていた情報と照らし合わせ、仮装コンテストが開かれていることを思い出すと、あの二人も胸元に黄色いワッペンがあったこともあわせて、気持ちは あっさりと落ち着いた。
 またキアが事前に得ていた情報の中に、コスプレという項目があったのも幸いしていた、同じく情報にこの学園の特色も関わっていた。
 同時に、自分はああいうのが苦手ではないだろうかと、あのコスプレを思い出して考えてしまうのだった。

 自分の女装の事は完全に棚の上に上げて…

 気をひき締め直して、キアは当初の目的に戻ることにした。
 幾つかの出店や展示を経て、またふらりと教室に入る。
 今度の展示はいくつものパネルとその説明が掲げられていた。
 パンフレットに目を落とし、ここがミステリ研の物だと確認する。
 大陸毎に発見地や目撃地などが分かり易く示されており、内容自体も一般的に知られている物やマイナーな物まで、様々な物が示されている。
 勿論キアにとってはそれら全てが新鮮な情報であり、自分の世界とは違う世界でのミステリーに興味を持ったのか、キアは閲覧者の中へと混じってゆく。
「勿体ないですねー」
 今なお燃え続ける、北米の廃棄された石炭鉱山の紹介を呼んだキアはそう感想を述べた。
 これらの掲示されている内容は、とても一般的であるが、それ以上に多岐にわたる。その広く深い情報量に圧倒された。
 同時に、嫌でもここが別世界なんだと再認させられる。
 そうして閲覧していると、ふと声をかけられた。
「もしかして、キアさん?」
 振り返ると、AIAUS逃亡事件の際の現地の協力者の一人がいた。
「カリン久しぶりです」
 短かったとは言え、戦友の記憶とは忘れづらい物である。
「今日も、女装なんだね」
 花梨はキアの服をまじまじと見つめて、疲れたようにそう言った。
「こちらの世界で怪しまれないような装束を選びましたので」
「ふーん、やっぱりそっちの人なんだ。それじゃあ…」
 出来るだけ一般人を装うキアに、花梨の矢継ぎ早な質問が怒濤の勢いで投げかけられる。もっとも花梨はキアを逸般人としてとらえているので、質問の方もそ れだけ容赦がなかった。
 防戦一方のキアがまじめに撤退を考え始めた頃になって、もう一人の戦友の姿が希亜の視界に入ってきた。
「おっ?」
「タカアキ」
「久しぶりだな、ってずいぶん疲れた顔してるけど大丈夫か?」
「ちょっとカリンの質問責めにあって」
 げっそりとした表情を隠しつつそう言ったつもりのキア、対照的にご満悦な花梨。
 その二人の様子に貴明は笑い出さずに入られなかった。


 貴明に案内されながら、キアは学園祭の中を進んでゆく。無論、スフィーの姿を探す事も平行してである。
 ただ、屋台の味や、各種催し物に翻弄されるのは、仕方のないことかもしれない。
 いか焼きの生地に包まれたプリプリとした烏賊の食感を楽しみながら、貴明の隣を歩くキア。その表情はご満悦の少女のそれであり、何も知らなければドキリ とさせられる物があっただろう。
 だが貴明にしても花梨にしても、キアが女装している事を知っている。さらに貴明は女性に対して苦手意識があり、花梨は興味の対象としてしかキアを見てい ない。これではせっかくの女装したキアの容姿も全く意味をなさないのである。二人にとっては、せいぜい上手く化けた物だと思う程度だった。
 だからこそ、この際は余計な思考に惑わされることなく、純粋にこのお祭りを楽しむことが出来るのだろう。
 結局、一回りして貴明達と別れ、五月雨堂の出店に戻ってきた時には、学園祭もたけなわになっていた。
「ああ、戻って来た」
 店先に近づくキアに気づいた健太郎が、店の奥へと呼びかける。出てきたスフィー… と思わしき人物の姿を見て…
 姿を見て、キアは頭を抱えたくなった。
 やはり、こう言うのは苦手なんだなと再認識するキア。

 当然、自分の事は因果地平の彼方である。

「深く考えないでやってくれ、今日はお祭りなんだ」
 健太郎の慰めに幾分か納得したキアは、スフィーの前で跪く。
「スフィー様」
「何よ」
 お祭りの場を白けさせるような畏まった挨拶、その様子にスフィーは不機嫌に答える。
「王国軍特務部隊所属のキア・ユーナと申します。国王陛下よりのお手紙をお届けに参りました」
 そう言ってキアは封された手紙を差し出す。
「世界を越えて来るのに、いったいどれだけの労力が必要なのか、分からない訳でもないでしょうに…」
 手紙という言葉に若干の違和感を覚えつつ、ぶつぶつと文句を言いながら、スフィーは手紙を受け取り、魔法によって認証を済ませて開封する。
 そのコスプレに似合わぬほどに百面相を浮かべ、最後まで読み切ると黙って店の奥へと消えた。
 キアも健太郎も、手紙に一体何が書いてあったのだろうかと思うが、二人が思考に沈む前に、奥からリアンの驚く声が聞こえた。


 宮田家リビング。
「少しかかるようだから、飯食っていくと良いよ」
 エプロン姿の健太郎がそう言って食事の支度に入る。
 彼が冷蔵庫から材料を取り出したところで、再び声がかけられた。
「そう言えば、知り合いに同じ名前の人物がいるんだけど。知り合いかい?」
「同じ名前ですか?」
「ああ、希亜っていうグエンディーナとこちらの魔法使いの合いの子みたいな奴」
「確かに同じ名前ですね。その方はグエンディーナの人間なのですか?」
「いや、生まれは関西だって言ってたから、こっちの人間だな」
「そうですか」
 それから希亜のこと、こちらでのスフィーとリアンのこと。
 等々話をしていて、ふと健太郎の料理するその分量が多いことに気づいた。少なくともキアの基準で八人分近い量はある。
「つかぬ事をお聞きしますが、今日は誰か来られるのですか?」
「いや、今家にいる四人分だけだけど。 …ああ、スフィーが人間ディスポーザーかって位によく食べるからな」
「ちょっと、誰が人間ディスポーザーよ! せめて人間ブラックホール位にしてよ」
「スフィー、それだと対数ベースで悪化しているぞ?」
「そっちの方が強力でしょう?」
 無い胸を張り自信満々でそう答えるちびっ子スフィーに、健太郎は吹き出す。
 一方キアは敬愛する彼女の屈託のない姿に安心する反面、このやりとりに一抹の不安を覚えないでもなかった。

 食事の用意が終わったところでリアンもキッチンに入ってきた。手にはこちらではありふれた便せんを持っている。
「姉さん、封をするけど忘れ物はありませんか?」
「大丈夫だよー」
 スフィーの返事を確認して、リアンは魔法による封をする。
 そうして、便せんをキアに差し出した。
「ではお願いしますね」
「はっ! 確かにお預かりいたしました、必ず陛下にお届けいたします」
 居住まいを正し、キアは大仰に便せんを受け取ると、それを胸元へしまい込んだ。
「さぁ、食べようぜ」
 特に気にしていないのか、この状況に慣れたのか、健太郎はそう言ってご飯をよそおう。

 健太郎の厚意を受けて、食事に着いたキアは後悔した。
 主に目の前の食欲魔人に対してである。
 キア自身、スフィーの人となりを全く知らない訳ではないが、目の前で次々と消えて行くおかずとご飯の前に、胸焼けがしそうになってくる。
 軍隊生活で大食いや早食いは気にならないキアではあったが、目の前で次々と消えて行くおかずとご飯という現実に、それらはあっさりと吹き飛ばされた。
 ちらりと健太郎とリアンの様子をうかがうが、そこには平然と食事を続ける健太郎とリアンの姿があるだけだった。
 半ば諦めるようにして、これがここの日常なのだと受け入れ、彼自身も食事に手を着け始めた。
 口の中に広がる味を、どこか懐かしく感じながら、キアも何時しか食事の輪の中に溶け込んでいた。


 後日の放課後、カフェテラス。
「写真が出来ましたよ〜」
 相変わらずののんびりとした口調でそう言って、希亜は木製の写真たてを綾芽に渡す。
 受け取った写真たての中には、セピア色に写る男装紳士の姿の綾芽と、ウサミミメイド姿の希亜があった。
「半世紀ぐらい昔の写真みたいだね」
「はい、カラーのもありますよぉ」
 今度は封筒の中からカラーの写真を渡す。
「うわぁ、今見てもこれって女の子に見えるね」
「うぅ〜、良く化けたという事にしておいてください」
「…やっぱり恥ずかしかった?」
「当たり前です!」
 珍しく強く言う希亜をなだめる綾芽が、ふとこちらに歩いてくるスフィーとリアンの姿に気付く。
「ねえ、あれ希亜君のお師匠さんだよ」
「え? ほんとだ」
 指摘されて振り返り、希亜は二人に手を振る。
「こんにちわ〜、この前の学園祭の写真出来たんですよぉ」
 そう言って、四人で写真を見ながら話に花を咲かせる。
 スフィーのお子魔女や綾芽の男装、希亜の女装ウサミミメイドやリアンの制服姿。
 そして、グエンディーナからやってきたキアの事を…

 最後にコンテストの結果は、そこそこ一般受けしたスフィーが23組中8位、趣味に走った綾芽・希亜組が13位の結果に終わっているのを追記しておく。




キャスト(登場順)
悠 綾芽
キア・ユーナ
宮田 健太郎
スフィー
リアン
笹森 花梨
河野 貴明



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Ende