Original Release : June 1970 (UK) / Apr 1970 (USA) / July 1970 (JAPAN)
Producer : Heaven Reserch Unlimited Mixing : Jimi Hendrix / Eddie Kramer
Live Recording : Wally Heider (Remaster : Eddie Kramer / George Marino)
ジミ生前にリリースされた唯一のライヴ・アルバム。また、バンド・オヴ・ジプシーズ名義での唯一のアルバムでもあります。
●発売時の状況
1969年は、6月のエクスペリエンスの活動停止、8月のウッドストックでのジプシー・サンズ・アンド・レインボウズを経て、10月にバンド・オヴ・ジプシーズ結成、とジミを取り巻く環境はめまぐるしく変化しました。
そして、この年の12月31日と翌1月1日の2日間、ニューヨークのフィルモア・イーストで”ニュー・イヤーズ・コンサート”が行われ、バンド・オヴ・ジプシーズがデビューしました。このアルバムはそのコンサートから収録されたものです。
両日とも2ステージが行われていますが、アルバムに収録されているのは、すべて1月1日からになっています。エクスペリエンス時代の曲も演奏されていましたが、アルバムに収録された曲はいずれも、未発表曲が選ばれています。
●バンド・オヴ・ジプシーズとは
ドラムスにエレクトリック・フラッグのバディ・マイルス、ベースに軍隊時代の友人であったビリー・コックスを迎えてのトリオで、全員アフリカン・アメリカ人となっています。
バンド・オヴ・ジプシーズはフィルモア・イーストでデビューしていますが、その約1ヶ月後、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでライヴを行いました。
しかし、このライヴでは2曲を演奏し終わったところでジミは突然演奏を止め、コンサートは中止。アシッドとアルコールでラリラリになっていた(陰謀説もある)ジミはとても演奏できる状態ではなかったそうです。
この時点でバンド・オヴ・ジプシーズは消滅してしまいました。結局、活動期間はデビューして1ヶ月ほどの超短命ユニットに終わっています。
●全体の印象
バックを固めるメンバーが総入れ替えになり、よりファンク、ブラック色が強くなっています。手数の多いミッチ・ミッチェルとは違うバディ・マイルスのシンプルな重量級のドラミングも印象的。リード・ヴォーカルも取っていたりするので、存在感があります。スライ&ザ・ファミリー・ストーンに通じるものを感じるときがあります。 ジミはユニ・ヴァイブやオクタヴィアを使ったりして、演奏面の変化を感じます。
この時のライヴの未発表音源は、気合いの入ったものがまだたくさんあるはずだし、そのうち満足のゆく形でリリースされるのではないでしょうか。できれば完全版で出して欲しいものです。そして映像も。
●その他
プロデューサーにクレジットされている "Heaven Reserch Unlimited" とは、ジミが考え出した名前で、ヘンドリクス自身と、アーサー、アルバートのアレン兄弟(ゲットー・ファイターズ)、ユマ・サルタン(パーカッション)のことです。
- 1.Who Knows
- January 1, 1970 (1st show)
リード・ヴォーカルが2人になったこともあり、ヴォーカルの掛け合いも聞かれます。エクスペリエンス時代とは雰囲気がかなり違っています。途中で聞かれるバディ・マイルスのちょっと危ない感じのファルセット・スキャットが好みの分かれるところ。後半からのオクタヴィアを使ったヒステリックなギター・ソロはジミの気持ちを表しているようにも感じられます。
- 2.Machine Gun
- January 1, 1970 (1st show)
曲紹介のおしゃべりのところで、ジミは「この曲をシカゴやミルウォーキー、ニューヨークでがんばっている兵士に捧げる」とかなんとか言っています。(たぶんこれはジョークでしょうけど)そして、ベトナムの兵士に捧げられています。全面的にユニ・ヴァイブが使われていて、曲がふわふわしている感じ。後半になるとフィードバック音が常にヒュルヒュルと出てきて、幽霊みたいな感じ。飛行機の爆撃音をイメージさせるギターの音でいきなりエンディング。
- 3.Changes
- January 1, 1970 (2nd show)
ジミによる曲紹介に続いて、バディ・マイルスがリード・ヴォーカルをとります。ちょっとフラット気味なのがご愛敬。歌いながらのドラム・プレイだけど、きっちりとしたエイト・ビートで刻むハイハット・シンバルが僕は好きです。曲の途中、バディがオーディエンスを煽って手拍子を要求するところも、エクスペリエンスのライヴでは見られなかったところ。
- 4.Power To Love
- January 1, 1970 (2nd show)
ビリー・コックスのベースがヘヴィにうねりまくっていて、このノリもエクスペリエンスでは聞かれなかったものです。ジミの曲としては珍しく変拍子が取り入れられています。最後にギターで「サンキュー」と言ったりしているところがおもしろい。
曲名表記ですが、初回リリースCD(人形ジャケット)では"Power Of Soul"、1991年のリマスター盤(+3)では "Power Of Love"、 そしてこのエクスペリエンス・ヘンドリクス・リリース盤では"Power To Love"になっています。また、CRASH LANDING に収録のスタジオ・テイクでは "With The Power"となっていたりして、ややこしいです。
- 5.Message To Love
- January 1, 1970 (2nd show)
この曲は 1991年にリリースされた LIVE ISLE OF WIGHT '70 でも聞くことができますが、僕はバンド・オヴ・ジプシーズの方が気に入っています。コーラスも決まっているし、ジミのギターも気合いの入り方が違います。
- 6.We Gotta Live Together
- January 1, 1970 (1st show)
バディ・マイルスの曲。イントロではバディが「手を叩いて一緒に歌ってくれ」と、ここでもオーディエンスを煽っています。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの "Sing A Simple Song" みたいなフレーズが出てきたりして、ニヤリ。その後、すぐにバディのリード・ヴォーカルで曲が始まります。オクタヴィアを使っていると思われるギター・ソロに鬼気迫るものを感じます。
●ジャケット・内容違い
1.初回リリースCD
|
POLYDOR P33P 25022 1986 POLYDOR P20P 22006 1989 |
このジャケットは 'Puppet Cover'(ドール・ジャケット)とも言われていて、英国オリジナルLPのジャケットはこれでした。CDにおいては日本盤のみこの仕様になっていました。ちなみにジミの他の人形はボブ・ディラン、ブライアン・ジョーンズ、ジョン・ピール( Radio OneのDJ)です。
- Who Knows
- Machine Gun
- Changes
- Power Of Soul
- Message To Love
- We Gotta Live Together
|
2.1991年リマスター盤 (+3)
|
POLYDOR POCP-2022 1991 |
今までの6曲に加え、新たに3曲が追加されています。追加された3曲は1986年に発表された BAND OF GYPSYS 2 のA面3曲と同じものです。また、ジャケットのロゴが現在発売中のものと異なっています。
- 1.Who Knows
- 2.Machine Gun
- 3.Them Changes
- 4.Power Of Love
- 曲名表記が "Power Of Soul" から "Power Of Love" になっています。確かに、バディ・マイルスが曲を紹介するところでは "Power Of Love" と言っているようにも聞こえるけど。
- 5.Message To Love
- 6.We Gotta Live Together
- 7.Hear My Train
- December 31, 1969 (1st show)
このアルバム収録曲中、唯一12月31日の曲。曲紹介でジミが 「スロー・ブルーズをやります。"Lonsome Train"という曲です」と言って、曲が始まります。
曲名は他に "Getting My Heart Back Together Again" とも呼ばれています。ちなみに、ジャケットには "Hear My Train" と書かれています。
ストラトのハーフトーンを使ってプレイされていますが、実にいい音をしています。ビリー・コックスのベースの音がかなりソリッドな音になっていて、僕好みの音です。ひたすら我慢のベース。
- 8.Foxy Lady
- January 1, 1970 (1st show)
ほかのトラックに比べて音質が格段に悪く、それにモノラルになっています。まるでブートレグを聞いているみたいな感じ。それと、バディ・マイルスのドラムがなんかもっちゃりしていて、ミッチのようにジミと一緒にイッてしまうこともなく、マイペースでプレイしています。また、リズムの取り方もなんか違和感あります。
- 9.Stop
- January 1, 1970 (1st show)
バディ・マイルスの曲。この曲も同じように音質が良くありません。初期のジェフ・ベック・グループやB.B.A.がこんな感じの曲をやっていたのを思い出します。まだ歌が続いているのにフェイドアウトされてしまいます。CD収録時間はまだあるのだから最後まで聞きたかった。
|
●フィルモア・イーストでのセット・リスト
太字はアルバム収録曲、( )内の数字はアルバム収録の曲順です。
December 31 (1st show)
December 31 (2nd show) …実際の演奏時は、日付が変わっていたと思われるので、厳密には1月1日になります。
January 1 (1st show)
January 1 (2nd show)
|