Original Release : Oct 1968 (UK/USA) / Mar 1969 (JAPAN)
Producer : Jimi Hendrix
Engineers : Eddie Kramer / Gary Kellgren
(Remaster: Eddie Kramer / George Marino)
●発売時の状況
1968年10月に2枚組としてリリースされ、アメリカではビルボードのトップに輝いています。1968年といえば、8月にクリームの WHEELS OF FIRE (クリームの素晴らしき世界)、11月にビートルズの THE BEATLES (ホワイト・アルバム)と、いずれも2枚組で歴史的に重要なアルバムが発売された年でもありました。
この時期あたりから、ノエル・レディングとの不協和音が目立つようになっいて、ここではノエルの存在感が、以前に比べて少なくなっています。
また、このアルバムは2度目のアメリカ・ツアーの合間をぬって録音されていて、レコーディングに集中するのに結構プレッシャーがあったと思われます。
レコーディング・セッションでは、ジミがファンや取り巻きをスタジオに連れてくるようになり、それに対して嫌気がさしたプロデューサーのチャス・チャンドラーは、レコーディング途中から手を引いています。
●全体の印象
曲作りにおいて、前2作ではプロデューサーであるチャス・チャンドラーの影響もあって、コンパクトにまとめられた曲が多かったのですが、レコーディング途中からチャスが抜けたこともあって、長めの曲が以前よりも多く収録されています。
ジミ自身が初めてプロデュースをすることになり、また、いろいろなゲスト・ミュージシャンを招いてレコーディングされたりして、これまでのアルバムに比べると、音楽の振幅が広がったというか、なんでもありの感じがして、ジミのいろいろな世界が表現されています。
その反面、他の作品に比べるとなんだか統一感が少なくて、ビートルズのアルバムにたとえるならば、「ホワイト・アルバム」に似ていると思います。
●その他
ミキシングの段階までは、ジミのイメージするサウンドが出来上がっていました。しかし、レコード会社がプレスする時点で、意図していたようなサウンドが得られていなかったということで、ジミはその仕上がりに不満を持っていました。とはいっても、いままでのアルバムよりグレードは格段に上がっています。
また、アメリカ、イギリス、日本ではジャケットや曲順が異なっていて、ジミの代表アルバムと言われている割には、リリースに対する扱いがいい加減でしたが、最新のエクスペリエンス・ヘンドリクスからのリリース以降、これがスタンダードとなることでしょう。
- 1....And The Gods Made Love
- 回転を落としたバスドラムのような音に続いて、シュワシュワ〜っという音のサウンド・コラージュの嵐で頭の中をかきまわされます。前作と同じようなパターンでアルバムがスタートします。
- 2.Have You Ever Been (To Electric Ladyland)
- ジミとしては珍しい、ファルセットをつかったソウルバラード。歌に関しては自信がなかったといわれていたジミですが、そんなことは少しも感じさせない曲です。プリンスやカーティス・メイフィールドに通じるものがあります。
= CORNERSOTNES
- 3.Crosstown Traffic
- ギター・フレーズと一緒にスキャットする印象的なイントロで始まるソウルフルな曲です。サビのところの「クロ〜スタウン・トゥラフィ〜」というコーラス部分では、文字通りトラフィックのデイヴ・メイスンが歌ってるそうです。ピアノはジミが弾いています。この歌では、ジミの周りにいる多くのグルーピー達のことを、街の交通渋滞にたとえて歌っているとのこと。
= THE SINGLES ALBUM / KISS THE SKY / CORNERSOTNES / THE ULTIMATE EXPERIENCE / EXPERIENCE HENDRIX / VOODOO CHILD
- 4.Voodoo Chile
- ベースにジェファーソン・エアプレインのジャック・キャサディ、キーボードにトラフィックのスティーヴ・ウィンウッドを迎えてのジャム・セッションです。
CDでは演奏時間が15分もあり、アルバム中では1番長い曲になっていますが、実際は30分以上も続いてたらしく、編集されて15分となっています。
ほとんどがアドリブによるプレイで、スリリングなスティーヴ・ウィンウッドとの絡みを聞くことができます。
歓声や拍手はあとからダビングされていて、最後に誰かが何かしゃべる声がして終わります。
= (Alternate mix) :BLUES
- 5.Little Miss Strange
- ノエル・レディングの曲で彼がリード・ヴォーカルをとっています。
適度にサイケデリックで、ポップないい曲だけど、このアルバムの中ではちょっと浮いていて、分が悪いかな。ワウ・ワウを使ったギター・ソロがなんか取って付けたみたい。
この当時、ノエルはエクスペリエンスと並行して「ファット・マットレス」というバンドを結成していましたが、こんな感じの曲をやっていたのでしょうか。
- 6.Long Hot Summer Night
- イントロに続く「ズン・ズン・チャッ」という太い音のリズム・ギターが実にいい音を出しています。ちょこっと聞こえるピアノはアル・クーパー(ボブ・ディランのアルバムに参加したり、BS&Tともやっていました)が弾いているらしい。
= THE SINGLES ALBUM / THE ULTIMATE EXPERIENCE
- 7.Come On (Let The Good Times Roll)
- ニューオーリンズのギタリスト、アール・キングの曲。このアルバムの中では一番最後の録音となっていて、全くダビングなしです。シンプルな曲ですが、途中の延々と続くギター・ソロでこの曲に表情を付けています。続きをもっと聞きたいと思いつつ、フェイドアウトしてで終わるのが残念。
- 8.Gypsy Eyes
- 母のことを歌った曲は何曲かあるのですが、これはそのうちのひとつで、いままでそばにいたかと思うと、次はいつのまにかいなくなってしまっているという、気ままな母のことをジプシーに例えています。
昔、ウリ・ロート(元スコーピオンズのギタリスト)が、これとそっくりな曲(曲名はちょっと忘れましたが)をやっていたのを覚えています。
= THE SINGLES ALBUM / THE ULTIMATE EXPERIENCE
- 9.Burning Of The Midnight Lamp
- ジミが弾くイントロのハープシコードがとても印象的です。バック・コーラスはアレサ・フランクリンのバックをしていたスイート・インスピレーションズがやっています。
この曲だけが他の曲に先立って録音されていて、AXIS : BOLD AS LOVE がリリースされる以前の、1967年8月にシングルとして先に発表されていました。
= SMASH HITS / THE SINGLES ALBUM / LIVE AND UNRELEASED / LIFELINES / THE ULTIMATE EXPERIENCE / VOODOO CHILD
- 10.Rainy Day, Dream Away
- この曲はミッチ・ミッチェルもノエル・レディングも参加しておらず、ゲスト・ミュージシャンをバックにレコーディングされています。
ジミが咳をして鼻をすする音からスタート。次に繰り広げられるギターとサックスの掛け合いがとてもスリリングです。サックスをプレイしているのはフレディ・スミスという黒人のプレイヤーで、ドラムはバディ・マイルス。手数の多いミッチと違い、シンプルなドラミングで、得意のシャッフル・ビートが延々と続きます。ベースが入っていないのですが、マイク・フィニガンが弾くオルガンにて代用されています。
- 11.1983 ... (A Merman I Should Turn To Be)
- ヒュルヒュルと言うギターの音から始まる、ロマンチックな曲です。同じ泣かせ系の曲でも、"Little Wing" や "Angel" とはまた違う繊細さを感じます。次の曲でも出てくるテーマ・メロディが印象的。トラフィックのクリス・ウッドがフルートで参加しています。
この曲のギター弾き語りヴァージョン(デモ)があるのですが、スタジオ・エフェクトがかかっていない分、リアルにジミが伝わってきて、誰にも聞かせたくない気持ちになります。
- 12.Moon, Turn The Tides ... Gently Gently Away
- スタジオで作り出された効果音がいろいろ聞こえますが、その幻想的な音世界に吸い込まれて行きます。ネプチューン……とかいう歌詞が出てくるので、宇宙をイメージしているのでしょうか。でも、海の中にいるような気もするけど。最後で前曲のテーマ・フレーズが再び出てきます。
この曲は前の曲とメドレーになっていますが、1997年リマスターCDでは曲の区切りが変更されていて、ダイレクトにこの曲へ飛ぶと、最後の1分しか聞くことが出来ません。
- 13.Still Raining, Still Dreaming
- 全面的にワウ・ワウを使っていて、しゃべるようなギター。ほんと、これでもかって言うくらいにワウ・ワウを使っています。この曲もバディ・マイルスとマイク・フィニガンが参加しています。
- 14.House Burning Down
- ドラムとギターのコンビネーションが作り出すヘヴィなビートで心地よくなります。昔、フランク・マリノ・アンド・マホガニー・ラッシュというバンドがこんな感じの曲をやっていた覚えがあります。
- 15.All Along The Watchtower
- レコーディングでは、当時トラフィックを一時脱退していたデイヴ・メイスン(後に自分のソロ・アルバムでもこの曲をカヴァーして歌っています)が、イントロの生ギターを弾いています。ベースのパートは、ジミがノエルのベースを借り、そのまま左に持ち替えて弾いたらしい。8弦ベースを弾いているという可能性もありますが。
オリジナルはボブ・ディラン。
= THE SINGLES ALBUM / KISS THE SKY / LIVE AND UNRELEASED / LIFELINES / CORNERSOTNES / THE ULTIMATE EXPERIENCE / EXPERIENCE HENDRIX
→(Alternate mix) SOUTH SATURN DELTA / VOODOO CHILD
- 16.Voodoo Child (Slight Return)
- ワウ・ワウを使った印象的なイントロ。そして、次に出てくる、開放弦をうまく使った豪快なリフが大音量のライヴを予想させます。Slight Return=わずかな報酬?ちょっとの間の帰国?
= THE SINGLES ALBUM / KISS THE SKY / CORNERSOTNES / THE ULTIMATE EXPERIENCE / EXPERIENCE HENDRIX / VOODOO CHILD
●曲別チェック表
| |
Black度 |
サイケ度 |
ライヴ頻度 |
1. | ...And The Gods Made Love |
★ | ★★★★★ | − |
2. | Have You Ever Been (To Electric Ladyland) |
★★★★★ | ★★★ | − |
3. | Crosstown Traffic |
★★★ | ★★★ | − |
4. | Voodoo Chile |
★★★★ | ★★ | − |
5. | Little Miss Strange |
★ | ★★★★ | − |
6. | Long Hot Summer Night |
★★★★ | ★★★ | − |
7. | Come On (Let The Good Times Roll) |
★★★★ | ★★ | ★ |
8. | Gypsy Eyes |
★★★★ | ★★★ | − |
9. | Burning Of The Midnight Lamp |
★★★ | ★★★ | ★ |
10. | Rainy Day, Dream Away |
★★★★ | ★★★★ | − |
11. | 1983 ... (A Merman I Should Turn To Be) |
★★ | ★★★★ | − |
12. | Moon, Turn The Tides ... Gently Gently Away |
★★ | ★★★★ | − |
13. | Still Raining, Still Dreaming |
★★★ | ★★★★ | − |
14. | House Burning Down |
★★★ | ★★★ | − |
15. | All Along The Watchtower |
★★★ | ★★ | ★★★ |
16. | Voodoo Child (Slight Return) |
★★★★ | ★★★★ | ★★★★★ |
ライヴ頻度の「−」印は一度も演奏されなかったという意味です。
●ジャケット・内容違い
1.初回リリースCD
|
POLYDOR P58P 25001/2 1986 POLYDOR P36P 22004/5 1989 |
オリジナル英国盤のジャケットは、ジミが指示していた内容が無視されて、勝手にこのヌード・ジャケットになっていました。また、イギリスでは1枚づつ違うジャケットで、バラ売りされていたこともあります。
日本でのアナログ盤は英国オリジナル盤と曲順が異なっていて、CD化されたときも曲順はそのままでした。アナログ盤でいう side B と side D が入れ替わった状態になっています。この他細かいところでは、ディスク2の "Gypsy Eyes" の綴りが "Gipsy Eyes" になっていたり、 "Crosstown Traffic" が "Cross Town Traffic" となっていたりと、アナログ盤時代の表記を受け継いでいます。
アナログ盤ジャケット |
POLYDOR SMP9301/2 (LP) POLYDOR MPZ8111/2 (LP) |
アナログ日本盤といえば1970年代は右のようなジャケットでしたが、1970年代後半に英国オリジナル仕様のヌード・ジャケットで再発売されています。僕は、ELECTRIC LADYLAND といえば、ジミが煙の中でこちらを見つめているこのジャケットが一番なじみがあります。
DISC 1 |
| 1. |
| And The Gods Made Love |
| 愛の神々 |
| (1:21) |
| 2. |
| Have You Ever Been (To Electric Ladyland) |
| エレクトリック・レディランド |
| (2:12) |
| 3. |
| Cross Town Traffic |
| クロス・タウン・トラフィック |
| (2:26) |
| 4. |
| Voodoo Chile |
| ヴードゥー・チャイル |
| (15:00) |
| 5. |
| Still Raining, Still Dreaming |
| 静かな雨、静かな夢 |
| (4:24) |
| 6. |
| House Burning Down |
| 焼け落ちた家 |
| (4:33) |
| 7. |
| All Along The Watchtower |
| ウォッチタワー |
| (3:59) |
| 8. |
| Voodoo Chile (Slight Return) |
| ヴードゥー・チャイル |
| (5:13) |
|
DISC 2 |
| 1. |
| Little Miss Strange |
| リトル・ミス・ストレンジ |
| (2:50) |
| 2. |
| Long Hot Summer Night |
| 長く暑い夏の夜 |
| (3:26) |
| 3. |
| Come On (Part 1) |
| カム・オン |
| (4:08) |
| 4. |
| Gipsy Eyes |
| ジプシー・アイズ |
| (3:43) |
| 5. |
| The Burning Of The Midnight Lamp |
| 真夜中のランプ |
| (3:40) |
| 6. |
| Rainy Day, Dream Away |
| 雨の日に夢去りぬ |
| (3:41) |
| 7. |
| 1983...(A Merman I Should Turn To Be) |
| 1983 |
| (4:48) |
| 8. |
| Moon, Turn The Tides... Gently, Gently Away |
| 月夜の潮路 |
| (9:55) |
2.1991年リマスター盤
|
POLYDOR POCP-2021 1991 |
CD2枚組だったものが1枚になり、曲順や曲表記も現在発売中のものと同等にに変更されました。ジャケットも変更されて、アメリカ盤LPと同じデザインになっています。
| 1. |
| ...And The Gods Made Love |
| 愛の神々 |
| (1:22) |
| 2. |
| Have You Ever Been (To Electric Ladyland) |
| エレクトリック・レディランド |
| (2:08) |
| 3. |
| Crosstown Traffic |
| クロスタウン・トラフィック |
| (2:24) |
| 4. |
| Voodoo Chile |
| ヴードゥー・チャイル |
| (15:00) |
| 5. |
| Little Miss Strange |
| リトル・ミス・ストレンジ |
| (2:52) |
| 6. |
| Long Hot Summer Night |
| 長く暑い夏の夜 |
| (3:27) |
| 7. |
| Come On (Part 1) |
| カム・オン |
| (4:09) |
| 8. |
| Gypsy Eyes |
| ジプシー・アイズ |
| (3:45) |
| 9. |
| Burning Of The Midnight Lamp |
| 真夜中のランプ |
| (3:39) |
| 10. |
| Rainy Day, Dream Away |
| 雨の日に夢去りぬ |
| (3:41) |
| 11. |
| 1983 ... (A Merman I Should Turn To Be) |
| 1983 |
| (5:47) |
| 12. |
| Moon, Turn The Tides ... Gently Gently Away |
| 月夜の潮路 |
| (8:53) |
| 13. |
| Still Raining, Still Dreaming |
| 静かな雨、静かな夢 |
| (4:26) |
| 14. |
| House Burning Down |
| 焼け落ちた家 |
| (4:32) |
| 15. |
| All Along The Watchtower |
| ウォッチタワー |
| (4:01) |
| 16. |
| Voodoo Child (Slight Return) |
| ヴードゥー・チャイル (スライト・リターン) |
| (5:11) |
※各曲の演奏時間はパッケージに表示がなかったので、プレイヤー表示のトラック時間を書いています。
3.1993年MCAリマスター盤
|
MCA MCAD-10895 1993 |
|
ピクチャーディスク |
|
ブックレットに付いている 切手シート風ステッカー |
アラン・ダグラスの下でリマスターを施され、ジャケットも新装になってリリースされたものです。日本未発売。7曲目の "Come On (Part 1)" が "Come On (Let The Good Times Roll)" と変更されました。(現行盤もこの表記)
11曲目と12曲目の区切りがパッケージに書いてある演奏時間と異なっていて、12曲目は実際には9分ほどあります。
マイケル・フェアチャイルドによる解説を含む24ページのブックレットが付いています。それと、切手シート風になっているステッカーも付いています。
| 1. |
| ...And The Gods Made Love |
| (1:21) |
| 2. |
| Have You Ever Been (To Electric Ladyland) |
| (2:12) |
| 3. |
| Crosstown Traffic |
| (2:25) |
| 4. |
| Voodoo Chile |
| (15:05) |
| 5. |
| Little Miss Strange |
| (2:50) |
| 6. |
| Long Hot Summer Night |
| (3:30) |
| 7. |
| Come On (Let The Good Times Roll) |
| (4:10) |
| 8. |
| Gypsy Eyes |
| (3:46) |
| 9. |
| Burning Of The Midnight Lamp |
| (3:44) |
| 10. |
| Rainy Day, Dream Away |
| (3:43) |
| 11. |
| 1983 ... (A Merman I Should Turn To Be) |
| (13:46) |
| 12. |
| Moon, Turn The Tides ... Gently Gently Away |
| (1:01) |
| 13. |
| Still Raining, Still Dreaming |
| (4:24) |
| 14. |
| House Burning Down |
| (4:35) |
| 15. |
| All Along The Watchtower |
| (4:01) |
| 16. |
| Voodoo Child (Slight Return) |
| (5:14) |
|