●ストラトキャスター
ジミがストラトキャスターを使い始めた1966年頃は、セミ・アコースティック・ギターが流行していて(ビートルズの影響あり)、ストラトキャスターを使っているロック・ギタリストはほとんどいませんでした。
当時は、生産本数も少なくなっていて、フェンダー社のカタログを見ても、ジャズマスターやジャガーの後ろの方で小さくなっていて、なんか隅の方に追いやられている感じがします。 もしも、ジミがストラトキャスターを使わなかったら、生産中止になっていたかもしれません。彼のおかげで現在でもストラトキャスターが存在しているようなものです。
何本ものストラトキャスターを使っていたと言われますが、メイン・ギターとしてよく使っていたのは、だいたい5〜6本位ではないでしょうか。どれも、ほぼノーマル状態で使っていたようです。
以下、ステージ写真などで見かけたものを分かる範囲であげてみました。デビュー後から順に。
1.スモール・ヘッド・タイプ
(1954〜1965)
- オリンピック・ホワイト/ローズウッド指板(1966〜1967年に使用)
- 最初のストラトキャスターは、66年夏、ジミー・ジェームス・アンド・ザ・ブルー・フレームズ時代に手に入れています。当時のガール・フレンドの援助を受け、ニューヨークのマニーズという楽器店にて購入。デビュー前、最初のフランス・ツアーの時の写真にはこれが写っています。デビュー直後はこのギターがメインだったようです。
当時、キース・リチャーズのガールフレンドだったリンダ・キースに買ってもらったという説や、元々はキース・リチャーズのギターで、リンダ・キースが無断で持ち出してきたという説もあります。書いてある本によって微妙に違っています。
- サンバースト/ローズウッド指板(1966〜1967年に使用)
- デビュー直後のロンドン時代に使用。マーキー・クラブでのライヴ写真でよく見かけます。ヘッド部のFender文字がスパゲティ・ロゴなので1963年か1964年製だと思われます。
サンバースト塗装を使っていたのはこの時期だけだと思います。
- ブラック/ローズウッド指板(1967年モンタレー・ポップ・フェスティヴァルで使用)
- モンタレー・ポップ・フェスティヴァルにて使用。1964年か1965年製。
- レッド/ローズウッド指板(1967年モンタレー・ポップ・フェスティヴァルで使用)
- 元々はレッドだったものをホワイトにした後、自分でペイントを加えています。モンタレー・ポップ・フェスティヴァルで壊されたことで有名です。たぶん1965年製。
- ブラック/メイプル指板(1967年頃使用)
- 68年頃までの写真では、ほとんどがローズウッド指板のストラトキャスターを弾いているのですが、67年の5月のヨーロッパ・ツアーの時の写真には、スモール・ヘッド/貼りメイプル指板タイプを弾いているのがあります。
モノクロなので色は分からないのですが、多分ブラック・フィニッシュだと思います。いや、赤のような気もするけど。
ロゴがトランジション・タイプなので、65年製あたりではないでしょうか。
60年代のストラトキャスターはすべてローズ指板だったのですが、メイプル指板(”貼りメイプル”と言われているもの)がオプションとして用意されていて、生産本数が少ないながらも存在していました。
”貼りメイプル”指板はジミが使用していたこともあって、ラージ・ヘッド・タイプにおいてはよく見るのですが、この”スモール・ヘッド/貼りメイプル指板”というスペックになると、ほとんど見たことがありません。
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スパゲティ・ロゴ (1954〜1964) |
トランジション・ロゴ (1964〜1967) |
2.ラージ・ヘッド・タイプ
(1965〜1979)
- オリンピック・ホワイト/ローズウッド指板(1967年後半〜1968年に使用)
- アメリカ・デビュー後のメイン・ギター。トランジション・ロゴなので多分66年型あたりでしょう。アメリカに行ったときに買ったのでしょうか。この他に、ブルー・メタリックなどのカスタム・カラーのものも使っていたようです。
この時期のストラトキャスターというと、フェンダー社がCBSに買収され(65年)、その翌年に、俗に言う『ラージ・ヘッド』仕様が出てきた頃になります。
- オリンピック・ホワイト/メイプル指板(1968年〜1970年に使用)
- 68年末頃からメイプル指板を使うようになりました。そして69年以降、ローズ指板はほとんど使わなくなっています。
ロゴは黒文字のモダン・ロゴになっています。
ウッドストック・ストラトキャスターとして有名。1968年製。
- ブラック/メイプル指板(1968年〜1970年に使用)
- 死ぬ直前まで身近に置いていたギター。ワイト島のライヴ・シーンが頭に浮かびます。ジミの死後は、当時恋人だったモニカ・ダネマンが所有していました。
余談ですが、昔々(70年代後半あたり)、『ヤング・ギター』誌に、このギターの写真が掲載されたことがありました。確かウリ・ロートの特集が組まれていて、その当時ウリの恋人であった、モニカ・ダネマン所有のギターとして、1ページに大写しされていたのを覚えています。
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Olympic White 1968 "Woodstock Stratocaster" |
Black 1968 |
3.そのほかのストラトキャスター
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ミッチのシンバルで少し隠れているけど わかるでしょ。 |
- オリンピック・ホワイト/メイプル指板/テレキャスター・ネック(69年6月のニュー・ポート・ポップ・フェスティヴァルで使用)
- ステージが始まる前にネックが折れたため、窮余の策としてストラトキャスターにテレキャスターのネックを付けて演奏をしていました。2ヶ月後のウッドストックのステージで使っていたストラトキャスターは、もしかするとこのギターのネックを付け替えたもののように思いますが、どうなのでしょうか。
おまけ:弦について
フェンダーの『ロックン・ロール』のライト・ゲージ( 010/013/015/026/032/038 )でした。ジミはこのセットの1弦を2弦にも使っていたようです。このため、2弦でのチョーキングがしやすかったと思われます。
ペグへの弦の巻き付け方なんですが、弦がナットから落ちるのを防ぐために、6弦(一番遠くのペグ)だけを逆に巻き付けていたこともあったようです。何枚かの写真で確認する事が出来ます。(67年初め頃のショットより)
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