独り言5



僕と本館の歴史-美央さん事件
('99年11月23日)
初代「くすぐりの館」が、個人的なサーバーを使ってコソ~っと運営されていたことは、前にも書いた通りです。本館は以前、海外のサイトからのみリンクを張ってもらい、アクセスにパスワード制限が必要、という特殊な環境下に存在していました。

こんな面倒くさい仕掛けがあったにも関わらず、僕は色んな同志と知り合うことが出来た訳なのですが、公開してから半年も経つと、さすがに新しく本館を発見してくれる人がガクっと減ったような気がしました。
やはり一度海外サイトを経ないといけないので、それだけバイタリティーのある日本のマニアは、そろそろ打ち止めなのかもしれない・・・そう思えるほど、新しく僕にメールを送ってくれる人が、ぱたっといなくなったのです。

くすぐりネットワーク拡張計画は、早くも伸び悩みか・・・?
ちょっとした危機感が生まれてきました。何とかしなきゃ!!

そう思っていた折、たまたまネットサーフィン中に「アブノーマル伝言板」というHPを発見します。ここは、SM関係のパートナー募集や情報交換を目的とした掲示板でした。
こういうアングラな掲示板がインターネット上にあることは知っていたのですが、僕は大学のメールアドレスしか持っていなかったので、それを「利用しよう」とは考えてもいませんでした。しかしこの「アブ伝」を見た瞬間、なぜかひらめいたのです!

そうだ、こういう掲示板に、本館への案内を書き込めばいいのだ!!

僕のメールアドレスや、館のURLを公開しなくとも、
「この海外サイトのリンクを調べて下さい」という書き方をすれば、
くすぐりに興味のある人だけを、安全に、本館へと導くことが出来るだろう!

我ながらとても良い案だと思ったので、早速アブ伝の管理者に連絡。本当はここ、HPの広告などは載せてはいけないのですが、それを特別に許可してもらいました。アブ伝は、記事内容が定期的にgooなどのロボット型のサーチエンジンに補足されているので、その分宣伝効果も高いだろうという思惑もありました。

早速、本館へのご案内の記事を書いてみます。
すると・・・・まさにこれが大ヒットだったんですね!

新しい日本のドメインから、どんどん人がのぞきに来てくれるようになりました。本館を発見し、メールを送ってくれる人も定期的に現れるようになりました。僕の記事を読んでTickle Centralにアクセスしたものの、簡単な英語が解読出来ずにパスワード制限に引っかかり、アブ伝でまごまごしているという、ちょっとおマヌケな人も出てきたくらいです(笑)

とにかくこの作戦は大成功! 当時、国内でくすぐりに関する記事が載っているHPがほとんどなかったことを考えると、この掲示板への書き込みが、一般ネットにおけるくすぐりネタ発信の出発点になったと言えるのかも知れません。


さて、前置きが長くなりましたが・・・
そうやって、アブ伝で本館を宣伝しているうちに、ちょっとした事件が起こります。
僕の宣伝を見たのかどうか分かりませんが、ある時次のような記事がアブ伝に掲載されたのです。

====================
 題:くすぐってください

 私は26歳のOLです。
 くすぐられることに興味があります。

 投稿者:美央
====================

もう二年以上も前の事なので、こんな文面だったのかどうかはサッパリ忘れてしまったのですが、とにかく、こういう簡単な内容の投稿があったのです。

OLと言えば当然、女だろう。
と言うことは、この人は、「くすぐられたい」という願望のある「女性」ということになる!

くすぐりの松下氏によれば、今まで撮影してきたモデルの中で「拷問されるシチュエーション」が好きだという女性はいても、くすぐりそのものが好きだという女性はいなかったとのこと。そう言う話を聞いていたので、くすぐられるのが好きな女性というのは、本当にいないのかも知れないと、半分あきらめていたのかも知れません。
しかし、くすぐりたい男にとって、くすぐられたいという女性は、まさに絶好の相手。心のどこかで「そう言う願望を抱く女性は、探せばどこかに必ずいるはずだ!」と、あきらめきれないでいたのでした。

でも今、「くすぐられたい願望」を持つ女性が、目の前にいるのです!

もの凄い衝撃でした。待ちに待った瞬間。
僕はこの時のために、本館を開いていたのかも知れないとさえ思いました。
その投稿を、何度も何度も読み返しました。

僕は、どうしたらよいのだろう・・・

・・・と、それまでは興奮していて気がつかなかったのですが、よくよく見てみると、その「美央さん」の投稿には、返信用のメールアドレスがちゃんと出ていたのですね。

そりゃぁもう、早速メールを書きましたよ~

   私はくすぐりの館というホームページを開いています。
   興味がありましたらご覧になって下さい。
   女性の意見を聞かせていただけると、とても嬉しく思います。

こんな内容だったかどうか、よ~く考えて、HPの管理者としてきわめて紳士的なメールに仕上げたのですが・・・・果たして、このメールが美央さんに届くことはありませんでした。書かれていたアドレスに送信しても、宛先不明で返ってきてしまったのです。

一瞬にして・・・・・・・・冷めました。
なんだ、イタズラか・・・・

こういうイタズラをして、何になるんだろうという疑問はありましたが、とにかく向こうは、本気でくすぐりの相手を求めているのではなく、ただ単に、そう言うやりとりを掲示板の上で楽しみたいだけなのだと思いました。たちの悪いネカマな同志かも知れない。どんなレスが返ってくるのだろうと、モニターの前でにやにやしながら待ちかまえているのだ!
ちょっと期待してしまった自分が馬鹿みたいに思えました。

それでもまぁ、もしかしたらこの人はパソコン初心者で、ただメールアドレスの入力を間違えたのかも知れない。そういう可能性も考えられたので、本館へ案内する無難な返事を掲示板に残すことにしました。
僕と同様に、彼女にメールを出してみた人がいたのでしょう、「メアド間違ってたよ」と指摘するコメントが、その後いくつか付け足されました。しかし、この美央という女性からは結局、掲示板上でも個人的にもレスはなく、いつしかこの記事は追い出されることとなったのです。以来、美央さんのことはすっかり忘れていました。


それからしばらく経ってのこと。
いつもと違う検索エンジンを使って、「くすぐり」というキーワードでネット検索していた時、偶然にも、僕は再び美央さんと巡り会うことになったのです。

そこは、「羞恥の館」というホームページでした。
簡単に言ってしまうと、メールでM女を調教してそのやりとりをホームページで公開する、という様なサイトです(後にパソコン雑誌に特集されたこともあるし、その内容が単行本にもなっている、非常に有名なサイトです)。
この「羞恥の館」に、美央という女性の告白が書かれていたのでした。
その美央と、アブ伝に投稿した美央が同一人物であること、それは、「くすぐられたい願望がある」という共通点を見ただけで、もうそれ以上の説明は不用でした。これは紛れもない、あの美央さんだったのです。


美央さんの告白と、その後のご主人様との調教レポートはものすごい量になっており、順を追って読んで行くと、彼女が調教されて行く様子が事細かに分かりました。
これはネカマには出来ない事だな・・・ここで僕は、この美央という人物が紛れもない女性であることを思い知らされるのです。しかも彼女は、小学生の時の体験がトラウマとなり、くすぐられたいという願望を抱き続けてきたというではないか。。。
アブ伝への投稿は、メアドは間違っていた訳だけれども、全くのイタズラと言うわけでもなかったのです。

美央さんと接触できていれば・・・
とても悔しく思いました。
悔しく思う・・・? そうです。彼女は今、ご主人様を絶対的に信頼している一人の奴隷となり、くすぐりとは遠く離れて、SMの責めと快楽の世界に新しい悦びを見いだしているのです。僕には入り込めない、二人の世界がそこには広がっているのでした。

負けたな・・・
向こうはハナっから、僕など相手にしている筈もない訳なのですが、なぜだかそう思えました。とても切なく、やりきれない気持ちでした。
そこで、僕はアブ伝に帰り、ささやかながら、美央さんへのお別れのメッセージを残してきたのです。彼女はそれに気付いたのかどうか・・・誰も知る由もありません。


まぁネット上でのことですから、羞恥の館で繰り広げられていたあの調教の世界がどこまで本当なのか、そう言うことは分かりませんし、考えてもムダなことだと思います。しかし、くすぐられたいという願望があったことは本当でしょうし、話半分にその後の告白を読んでみても、彼女がM性にその身をゆだねていった経緯は、非常に興味深いものに思えるのでした。

彼女の願望って、一体なんだったのだろう?
くすぐりとMの快楽とは、どこで結びついているのだろう?
そもそも、女性にとってのくすぐりって、どういうものなのだろう?

しばらくの間僕は、そんなことをあれこれと考えていました。

美央さんはもしかしたら、僕のレスを見て本館を訪れたのかも知れない。彼女がアブ伝へ投稿したのは、彼女が調教をされている最中ということになるのだから、それは大いにあり得ることでした。しかし、それでも彼女からの連絡はなかった。これはひょっとすると、本館の雰囲気が良くなかったからなのかも知れない。そんなことも考えました。

くすぐりがこれから先もっとメジャーになって、くすぐりプレイもSMなどと同じくらいの市民権を得るためには、男性だけでコミュニティーを作っていても仕方がないのです。くすぐりは、相手がいて初めて成り立つもの。フェチの発展には、女性の参入が絶対に必要だと思いました。

どうしても女性の意見を聞きたい!
どうやったら、くすぐりに興味をもっている女性と巡り会うことが出来るのだろうか・・・
そのためには、本館はどのような方向性で運営して行くべきなのだろうか・・・



美央さんとは結局、すれ違いに終わってしまった訳ですが、このようなことを考えるチャンスを与えてくれたと言うことで、彼女という存在を知ったことの意義は、僕の中では非常に大きなものでした。

ファンタジーの世界を中心とした妄想、それと、くすぐりたい! という男の欲望で凝り固まっていた当時の本館。女性の意見を聞きたい!という僕の欲望(?)を満たすために、その後、本館は様々な試行錯誤の時代へと突入することになるのです。


(これを書いている今現在もまた、試行錯誤の段階であることには変わりはないのですが(笑))




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