「夏の終わり」
今日の6時間目は音楽。
あたしたちの学校の音楽の先生って、とてもすてき。
白井雅代先生、23歳。学園で一番の美人先生です。
だれもが先生を、自分のお姉さんにしたいっていいます。
そのことは雅代先生も意識しているみたい。
あたしには素敵なお姉ちゃんが2人もいる。
家庭教師の智美さんと香織さん。3歳年上の大学生。
2人ともきれいだし、とってもやさしいから、あたし大好き。
でもお姉さんは何人いてもいい。
雅代先生は年の離れたお姉さまって感じかしら。
この休み時間中、あたしたちは友達と罰ゲーム遊びをしていました。
じゃんけんで負けた人を休み時間中ずっとこちょこちょするのです。
この日はあたしが負けて、机の上に押さえつけられました。
楽しみだけどちょっと不安。あたしは目を閉じ、体を固くする。
腋の下とおなか、足の裏を中心に、くすぐりの刑が始まりました。
あたしは体を痙攣させて笑い声を上げ、必死に逃げようとします。
女の子だけでくすぐりっこしてると、だんだんエスカレートする。
だれかがあたしのくつ下をとって、足の裏をこちょこちょしています。
他の手が、ブラウスの中に入ってきました。
やあだ、胸触らないで!
でもあたしは抵抗できません。両手ともしっかり捕まれています。
あたしはただ体をくねらせて笑っているしかありませんでした。
じゃんけんしていない人まで加わって、数え切れないほどの手が、
腋の下や足の裏をくすぐったり、エッチなところ触ったり。
授業の開始を告げるチャイムの音。
雅代先生が入ってきてもまだ、くすぐりは続いていました。
先生までこちょこちょに加わったら、どうしよう。
でも雅代先生の言葉に、あたしたちの楽しみは終わっちゃった。
はいはい、そこまで。続きはあとでしてね。
みんなあたしから手を離して席につきました。
救われたような、少しがっかりした感じ。
こちょこちょされてたのを見られて、なんか恥ずかしいけど、
心のどこかで、あたしは先生にくすぐられる自分を想像していました。
あたしは起き上がり、息を整えながら潤んだ目を雅代先生にむけると、
雅代先生はあたしを見て、そのきれいな顔に笑みを浮かべたのです。
あたしは乱れたブラウスをなおして席につきました。
暑いので素足のまま。脱がされたくつ下は丸めていすの下。
窓の外は、残暑のきびしい秋空。
見慣れた景色は夏の名残を見せる日差しに包まれている。
雅代先生の横顔は傾きかけたお日様の光に照らされて、
ビーナスのように美しく輝いていました。
あたしは先生の足元に目を落とします。先生も素足です。白くて長い足。
サンダルの先から見える爪は赤くペディキュアされています。
歩いている時、たまに白い足の裏が見えます。
座っている時は足を組んでいます。素足を見せびらかすようにして。
爪先に掛けたサンダルがぶらぶらと揺れるのを、
あたしは飽きることなく眺めるのでした。
音楽の時間が終わって教室に戻ったとき、
くつ下を置き忘れてきたことに気づきました。
音楽室に戻らないと。雅代先生、いるかな?いるようです。
ドアの前にいくと、中からピアノの音が聞こえてくる。
あたしは軽く頭を下げて中に入り、自分が座っていた席を見ます。
でもそこに置き忘れたはずのくつ下がありません。
先生、あたしのくつ下、見ませんでした?
見てないわ。
だれか持ってったのかしら。あちこち探してみたけどありませんでした。
あたしはがっかりして、そこに立ったまま、
なんとなくピアノを弾いている先生の手を眺めていました。
先生はあたしにかまわず、素敵な曲を奏でつづけています。
なんていう曲か知らないけど、とってもロマンチック。
ウットリしちゃう。
恵理子さん、そんなところに立ってないで、こっちにきたら?
先生がきれいな笑顔をあたしに向けます。
あたしはいわれるままに、ピアノの側にいきます。
そばによると、ふわふわと鼻をくすぐる香水の匂い。
先生は鍵盤にきれいな手を走らせています。
ピアノを弾く時の指の動きって、女の子の脇腹をくすぐっているみたい。
あたしの二人のお姉さまはいつもあたしをくすぐります。
夏休み中はいっしょに別荘で過ごし、
その間ずっとこちょこちょされていました。
くすぐられるのは好き。甘いような苦しいような、変な感覚。
あたしは夏休みのことを思い出しながら、
雅代先生にくすぐられたらどうなるだろうって考えています。
ピアノの上でほおづえをついて、先生の顔を見つめる。
ときどき先生は、あたしの顔を見て微笑んでくれるのです。
胸の奥がきゅっとなるような思い。
あたし、きっと恋に落ちちゃったんだ。先生もあたしのこと、好きかしら?
恵理子さん、肩を揉んでくださらない?
ふっとあたしは我に返って、顔を上げました。
雅代先生があたしに向かって微笑みます。
ドキドキしちゃう。
雅代先生は背中を向け、髪をアップにして白いうなじを見せました。
いつもママの肩を揉んであげるので、あたしは肩揉みが得意です。
あたしは肩に触ってみると、そんなに凝ってないみたい。
雅代先生の体温が、てのひらを通して伝わってきます。
あたしは肩を揉まれると、くすぐったくて笑っちゃいます。
それを知っている智美お姉さんは、いつも肩を揉んでくる。
あたしもそれが楽しみだけど。
雅代先生はくすぐったらどんな反応するかしら。
考えただけでもう体がむずむずしてくる。
でも叱られるのがこわいので、なかなか実行に移せません。
そこであたしは、雅代先生の首に手を移動させました。
あたしだったら、首を触られただけで笑いが爆発しちゃう。
雅子先生にもためしてみよう。首なら言い訳できるし。
あたしの手が首に触ると、先生はつっと首を縮めて、
くすくすと笑いはじめました。
やっぱり先生も、首を触られるの弱いんだ。
先生が怒らないのを確認して、あたしは首筋を揉んであげる。
すると雅代先生は足をばたばたさせて笑います。
サンダルが飛んで、きれいな素足があらわれました。
反応はちょっとおおげさだけど、それはあたしも同じ。
くすぐったがると、香織さんや智美さんは喜んでくれるから。
そしてもっと、こちょこちょしてくるから。
雅代先生の笑っている姿は、まるで女子高生みたい。先生というよりも、
友達かお姉さんとふざけているような気分になってきちゃう。
雅代先生、くすぐったがってるけど、本気で逃げようとしていません。
きゃははっとかわいい声をあげて、体をもじもじさせています。
あたしは先生の反応がおもしろくて、首筋をくすぐりつつげました。
智美さんと香織さんの気持ち、わかるような気がする。
くすぐったがって笑う先生の姿を見るだけで、
あたしも楽しくなってきちゃいました。
でも、そろそろやめてあげようかな。そう思った時、
先生が突然振り向いたかと思うと、
両手をあたしの腋の下に潜り込ませてきました。
あたしは、きゃっと悲鳴をあげて逃げました。
今度は雅代先生があたしをこちょこちょする番。
あたしは壁に追いつめられて、雅代先生に腋の下をくすぐられました。
くすぐる手を握り合ったり、抱きついたり。
またくすぐられて、そしてくすぐり返す。
あたしたちは幼い女の子たちのように歓声をあげました。
ずっとふざけあっていたので、雅代先生もあたしも息を切らしちゃった。
椅子に座って、息を弾ませながら乱れた髪と服装を直しました。
そとはもう夕闇に包まれています。時計を見ると、5時半を過ぎています。
すっかり疲れていたので、あたしたちは向かい合って座り、
おたがいに突き出した足の裏をくすぐりあいながらお話していました。
先生の足は細長くて、やわらかくて、かわいい。
ね、恵理子ちゃん。先生が言いました。今度の連休、あいてる?
あたしはちょっととまどったけど、うなずきました。
この日はパパとママが親戚の家に出かけるので、あたし一人なのです。
智美さんや香織さんとは何の約束もしていません。
よかったら、私の家に来ない?
先生の誘いに、あたしは思わずうつむいてしまいました。
お願い、私の家に来て欲しいの。
そういいながら、先生は細い指であたしの足の裏を撫でています。
なんて返事をすればいいのかわからなくて、あたしは黙っていました。
それよりも足の裏がくすぐったくて、耐えられなくなっているのです。
あたしはうつむいてくすくすと笑いながら必死に我慢する。
そして先生の足の裏をくすぐり返す。でも、負けそう……
もうダメエ。
あたしは笑いだして足を引っ込めてしまいました。
恵理子ちゃんの負けよ。じゃ、あたしのいうこときいてくれる?
とうとうあたしは連休中、先生と過ごすことになっちゃった。
今日は楽しかったわ。この続きは、私の家でね。
雅代先生はあたしの手を取りました。
細長い指があたしの手を包みこみました。
あたしは微笑み返して、先生の手を握ってあげる。
先生はあたしを抱き寄せて、あたしのほっぺにキスをしてきました。
あたしは首筋まで真っ赤になって、
あいさつもしないで、音楽室から逃げ出しちゃいました。
朝からうきうきしています。雅代先生のおうちに泊りにいくのです。
昼間は夏の続きで、歩いているだけで汗が噴き出てきます。
遠くには入道雲が太陽の光を浴びて銀色に輝いています。
雅代先生の家はあたしの家から2キロくらい。
マンションにお姉さんと暮らしているそうです。
でも、連休中は姉がいないから、淋しいの。
雅代先生はこの前そういった。
先生に甘えられてるみたいで、なんかくすぐったい気分。
ちょっとドキドキしながらベルを押すと、すぐにドアは開きました。
よく来たわね。さ、あがってちょうだい。
雅代先生に手をひかれるようにして、あたしは中に入りました。
薄暗い廊下を歩く先生の足は、今日は白いソックスに包まれています。
先生の部屋は素敵な洋間。ふかふかのじゅうたんが、足の裏に心地いい。
あたしは勧められるままにじゅうたんの上に足を伸ばしました。
先生は冷えたジュースを持ってきて、あたしと向かい合って座りました。
あたしも先生におみやげ。
かばんの中からスナックを出して、一緒に食べました。
西向きの窓から金管楽器に反射したような黄色い光が射し込みはじめます。
輝きを失っていく空を見ながら、
あたしたちは夏休みの思い出などを話しました。
夕方になって、気温が少し下がったみたい。
夏はこれで終わりかしら。
とりとめのないおしゃべりが途切れて、沈黙が訪れる。
なにかを待つような心持ち。
恋人同士が無言で見つめ合っている時のように、
あたしの心は、不思議な波のざわめきを感じていました。
雅代先生はあたしの素足に目を落とします。
足の甲には、サンダルのひもの模様が白く残っています。
この日焼けのあとは、楽しかった夏休みの名残。
お姉さんたちにこちょこちょされた日のことを思い出すと、
懐かしさで胸がつぶれそうになります。
あれはこの前の7月のこと。でももう何年も前のことだったみたい。
あたしはその足をひらひらと動かしてみせました。
先生はあたしの足を手にとってひざの上に抱いて、
日焼けのあとを、指先でそっとなぞりはじめます。
くすぐったくて、ぞくぞくしちゃう。体中に鳥肌が立つのを感じました。
くくっと笑いそうになるのを、あたしはやっとこらえました。
恵理子ちゃん、この前私の足をずっと見てたでしょ。
突然の言葉に、あたしは赤くなって目を伏せました。
いやだ、知ってたの?
うん。私もね、あなたの素足をずっと見てたの。気づいてた?
雅代先生のあたたかい唇が、あたしの足の指に触れました。
足から体全体に電気が流れてくるようでした。
全身がしびれて、女の子の部分が燃えてくるようです。
それにくすぐられてた時の恵理子ちゃんの声、とても可愛かったわ。
あたしは無言。なんて言えばいいのか、わからないのです。
先生は濡れた唇を、何度もあたしの足に押しつけました。
その間もずっと、足の裏をたくさんの指先が動き回っています。
逃げちゃいけない。そう思うけど、くすぐったい。
逃げたり笑ったりしたら、ロマンチックなムードを壊しちゃう。
でももう我慢できない。……あたしが足を引っ込めると、
先生はあたしの足を捕まえて、またひざの上に抱く。
恵理子ちゃん、だめよ。逃げないで。
意地悪。あたしだって好きで逃げてるんじゃないよ。
雅代先生の指がまた足の裏を撫ではじめました。
足の裏のしわに沿って細い指先を動かすのです。
あたしは必死にくすぐったさを我慢する。くすくすと笑い声を立てて。
そして先生のくつ下をはいている足の裏をくすぐり返しました。
でもこのくすぐりっこは、最初からあたしに不利。
もともとあたしのほうがこちょこちょに弱いし。それに素足だし。
すぐに耐えられなくなって、また笑っちゃった。
恵理子ちゃんの負け。罰として、こちょこちょの刑。
もう、いつそんなルール決めたのよ。あたしはわざと拗ねてみせました。
雅代先生は何も言わないでにっこりと笑い、
あたしの体に後ろから抱きつきました。おなかのところに手があります。
指がピアノを弾く時のように、むにゅむにゅと動きはじめました。
押さえ切れない笑いが、あたしののどの奥から込み上げる。
体が勝手に反応して、それが背中から先生の胸のあたりに伝わり、
先生からはお返しにくすぐりの嵐が送られてきました。
身を捩っても、先生の腕から逃げることはできません。
甘い拷問に支配されて、あたしは悲鳴をあげるのでした。
あたしの顔は、涙と汗とよだれとで濡れています。
体がふわふわです。笑い声もかすれていました。
ぐったりしたあたしのほおに、雅代先生は何度もキスしました。
おもしろかったわ。ありがとう。お風呂に入らない?
雅代先生が立ち上がり、あたしも疲れきった体を起こします。
あたしは立ち上がる力もなく、先生にすがりつきました。
ふたりで手をつないで、お風呂場に向かいます。
今胸がドキドキしているのは、笑いすぎたから?
脱衣場で、あたしは汗に濡れたTシャツを脱ぎました。
雅代先生も着替えるところ。
くつ下を脱いで素足を見せるのを、あたしはぼんやりと眺めていました。
あれ?あたしは先生のはいていたくつ下を見ました。
どうしたの?
これ、あたしの……。そう、あの日忘れていって、なくなったくつ下。
わかっちゃった?先生は楽しそうに笑いました。ごめんね。返すわ。
ううん、いいの。
あたしはにっこりして、イタズラっぽい目を先生に向けました。
記念に、先生にあげる。でもそのかわりに……
雅代先生は背中をこちらに向けて、シャワーの栓をひねります。
またたくまにたち込める白い湯気の中で、
あたしは先生に後ろから抱きつくと、耳元に、熱い息をふきこみました。
今夜、好きなだけこちょこちょさせてね。
先生の首筋にキスをして、あたしは顔を上げました。
振り返った雅代先生の目は、期待と不安に満ちていました。
一緒にシャワーを浴びています。あたしは先生の体を洗ってあげる。
手のひらに石鹸を塗り、先生の体の上でつるつると滑らせました。
はい、腋の下洗ってあげます。バンザイして。
雅代先生は、おそるおそる両手を挙げています。
あたしの指が腋の下に触れると、
先生はびくっとして、笑い声とともに腋の下を閉じるのでした。
だめよ、先生。ずっとバンザイするの。
先生はあたしに笑いながら謝るのでした。
まだまだ、許さないわ。今夜一晩、こちょこちょしてあげるんだから。
また腋の下に手を伸ばして、くすぐるように石鹸をぬってあげる。
あたしの手がつるつると動いて、
先生の笑い声は、お風呂場の中で反響しつづけました。
雅代先生のピンク色の肌は、シャワーから流れ出る熱いお湯をはじく。
あたしは先生の濡れた体を、あますところなく愛撫するのでした。
今、雅代先生はあたしのお人形。ベッドの中で磔の姿。
あたしがこちょこちょしても愛撫しても、身動き一つできないのです。
動けない足の裏を何分もくすぐってあげました。
少し寒くなったので、あたしは先生の毛布の下に潜ることにします。
中はまっくらです。あたたかい毛布の中は、先生の体の匂いがします。
暗闇の中で、あたしは手探りで先生の体中を歩き回りました。
やわらかい脇腹に触れ、先生の口から少女のような笑い声を出させる。
雅代先生の体が弓なりになったり、ぴくぴく震えたり。
子供みたいにもじもじして笑う姿、とってもかわいい。
あんまりかわいいから、あたしは意地悪したくなっちゃいました。
先生、笑ったら腋の下こちょこちょするよ。
そういって、指先をそろりそろりと脇腹やおなかに這わせる。
くくくっという、先生の押し殺した笑いが聞こえてきました。
指先で体中を撫で回すくすぐったい感覚に、先生は必死に耐えています。
なんかあたしまでむずむずしてきちゃう。
そのうちに我慢の限界が来て、雅代先生は激しく笑い出すのでした。
笑っちゃだめっていったのに。あたしは先生の腋の下をもみもみする。
先生のけたたましい笑い声が真っ暗な部屋中に響きます。
少し休ませてあげてから、またくすぐりの刑。
笑わなかったわ許してあげるわ。そういいながら、雅代先生の腋の下を、
あたしはやさしくくすぐってあげます。
いつまで?笑いをこらえたような声。
いつまでも。
先生の体が小刻みに震えています。そしてすぐに笑い出しました。
あーあ、笑っちゃだめっていったのに。許してあげない。
もちろん許す気なんか、はじめからあたしにはありません。
雅代先生の天使のような笑い声。
あたしはイタズラ好きの魔女になった気分でした。
そろそろ空が明るくなりはじめるころでしょう。
西向きの窓の外から薄明かりがさしてきます。
あたしは先生の唇に、うんと気持ちを込めてキスしてあげたあと、
涼しい朝の空気にふるえながら、先生の手足を自由にしてあげました。
あたしがベッドに戻った時、
雅代先生は長い腕であたしを抱擁し、何度もキスをしてくれた。
先生のあたたかい息があたしの耳元をくすぐる。
恵理子ちゃん、あとでたっぷり仕返しするわよ。
雅代先生の目は、今まで見た中で一番甘い目をしていました。
楽しみにしてるわ。
あたしたちは薄闇の中で顔を見合わせて笑いました。
完
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