BACK TO THE 帝劇
〜サクラ大戦4〜
(11)



銀座、大帝国劇場。
地下でネメシスとセトが落語と腹話術の練習をしていた。
「え〜、毎度馬鹿馬鹿しいお話を一席…」
「コンニチワ、ボクタローデス!」
「……なぁ、ネメシス。」
「なんだ?」
「なんで我々がこのようなことをせねばならんのだ?」
「仕方なかろう…来週の宴会で我々も含め全員が芸を一つせねばならないんだ。」
「まったく、人間どもの考えることは分からんな……」
「文句を言ってもしょうがなかろう…なに、たまにはこういうのもいいではないか。」
「そうだろうか……」



事の起こりは三十分前である。
『デモンハザード』の打ち上げで一人一つの芸を披露することになった。
帝国歌劇団の面々はレストランで打ち上げをすることとなり、結局エレメンタルフォースのみで行われることとなった。
場所は楽屋、明日の五時に行われることになった。



「やれやれ、明日までに完成できるだろうか…。」
「そう力まないほうがいい。リラックスして望めばいいんだ。失敗してどうなるわけでもあるまい。」
「そうだな…じゃ、練習を再開するか…」
「そうだな…え〜昔から……」
「ニンギョウニモシュウキュウフツカセイヲテキヨウサセロヨ!」
「馬鹿言うな、働いてもいなくせに!」
「オマエダッテハタライテナイダロ!」




そして、打ち上げ当日。
楽屋にはメンバー達が勢ぞろいしていた。
「うまいな、このボルシチ!」
「どうだ、マリア直伝のロシア料理だぜ!」
「甘いな。俺の飲茶の味には勝てまい!」
「そんな口を聞くのはこのビスケットを食べてからになさい!」
すでに料理対決に突入している。
「さて、ここらで芸の披露といくか!」
「よ、待ってました!」
「まずはネメシスからだな。」
「では、落語を…」
「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」
意外過ぎる演目だったが、なかなか面白い。
「お後がよろしいようで…。」
「よ、大統領!」
「日本一!」
「いや〜、それほどでも…」
「さ、次はセトだな。」
「私は腹話術をやろう。」
「「「「「「「「「「腹話術!?」」」」」」」」」」
これまた意外な芸だったが人形のタローとの掛け合いが絶妙だ。
「すてきー!」
「サイコ−!」
「苦労した甲斐があった…。」
その後も朱夏と炎の夫婦漫才、春子とシュトロハイムの社交ダンス、忠義と白秋のどじょうすくい、玄冬と北斗のパントマイムと楽しい時間を過ごした。
特筆すべきは龍ともみじのミュージカル漫才である。
ネタはもちろんのこと、龍の弾くギターともみじのダンスには楽屋が笑いの渦に巻き込まれた。
と、すべての演目が終了したとき、
『非常召集、非常召集。直ちに作戦司令室に集合せよ。繰り返す、直ちに作戦司令室に集合せよ。』
「支配人だわ。一体どうしたのかしら?」
「とにかく、急いだほうがよさそうだな。」



「ようやく集まったか。」
「司令、一体どうしたんですか?」
「うむ…さきほどゴッドから通信が入った…」
「なんですって!?」
「まぁ、これを見てくれ…。」


『我はゴッド。イレイザーの首領である。』
『さて、さっそくだが用件に移ろう。』
『帝国華撃団は我が捕らえた。黄昏の三騎士、そして黒ノ巣会の手によってな!』
『返してほしくば宇宙まで来い!待っておるぞ。ハッハッハッハッハ……』


「……と、ここで通信が切れた。」
「うかつだったわ…」
「すんだことを嘆いても仕方ない。問題はこれからどうするかだ。そうだろう、卓哉!」
「その通り。すでに手は打ってある。」
「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」
「我々が極秘裏に開発した巨大兵器、その名も『スペースフェニックス』!」
「「「「「「「「「「スペースフェニックス!?」」」」」」」」」」
「そうだ。この日のために着々と準備が行われた。そして今日、最終決戦のために作られたのだ!」
「そうと決まれば、早速出撃だ!」
「よし!スペースフェニックス、発進!」


この日、東京銀座を中心とし、半径二キロメートルに及ぶ巨大な穴が開いた。
そして、その中心から発進したスペースフェニックスは宇宙にいるゴッドを倒すべく出撃したのだった…。

「さて、ゴッドのいるのはどの辺りか……」
「司令!レーダーに反応が!場所はここから二十キロほどです!」
「よし、全速前進!」
「「「了解!」」」



「あれがゴッドのアジトか…」
「待てよ?じゃあ俺達がいたところは…」
「おそらくは…カモフラージュであろう。」
「キング様!」
「本体はあの小惑星の中にいる。私には分かる、本能で分かるのだ。」
「よし!主砲、発射準備!」
「了解!装填開始…完了!」
「ターゲットロック…完了!」
「発射まであと五秒…四…三…二…一…発射!」



「すごい…大穴が開いちまった…」
「よし、全速前進!このままあの穴に突っ込むぞ!」
「え?ちょっとま…」
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


「む…無茶だ……無茶にもほどがある…」
「よっしゃ、成功だ!」
「へへっ、さすがは俺の子孫だ!」
「このままサンダ−モールを打ち出す!早く乗り込め!」
「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」
「マリアさん…今行きます!」
「レニ…死ぬんじゃないわよ!」
「すみれ…あんたは俺が!」
「織姫…絶対に守る!」
「さくらさん…待っていて下さい!」
「カンナ…きっと助けてみせる!」
「紅蘭…死なせない、絶対に!」
「アイリス…私達を信じて!」
「じっちゃん…」
「大神さん…」
「「今行くから待っていてくれ(下さい)!」」
「エレメンタルフォース、出撃!」
「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」



「ここが…敵の本拠地か。」
「まったく、ゴッドの奴も手が込んだまねを…」
「みんな、ここからは敵がいつ襲ってくるかも分からない。」
「ええ、なるべく離れないほうがいいわ。少なくとも二人以上になって行動して。」
「「「「「「「「了解!」」」」」」」」
『ぐははははは…』
『ケケケケケケ…』
『ホホホホホホ…』
「な…誰だ!」

「猪!」
「鹿!」
「蝶!」
「「「我等、黄昏の三騎士!」」」
「誰かと思えば…華撃団に一度、いや二度も負けた雑魚じゃないか。」
「おのれー、よくも侮辱してくれたなぁ!俺様の炎に焼かれて死ねぇぇぇ!!!」
「あら、あんたも炎使い?だったら私達の炎と比べてみない?」
「おいおい、こんな雑魚と比べる必要なんざないんじゃないのか?」
「かも、ね…」
「き、貴様らぁぁぁぁぁ…焼け死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「朱夏!」
が、猪の炎を受けても二人には何のダメージも無い。
「なに、これで終わり?シケてるわねぇ。」
「まったくだぜ、こんなんだったらガキでも我慢できるぜ?」
「な…俺様の炎が効かないだと!?」
「今度はこっちの番よ!」
「おうっ!」

「朱雀…」
「バーニングぅ…」
「獄炎乱舞ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
「クラッシャぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…ゴッド様…お許しを…」


「馬鹿な…猪が!」
「さ、次はあんた達の番よ!」
「おのれぇ…我が吹雪の前で凍てつけぇぇぇ!」
「あら、今度は氷?私の十八番をパクるなんざ、いい度胸ね?」
「パクりじゃないでしょうけど…あんたのが数倍上であることは間違いないわね。」
「おだてたってなにも出さないわよ?」
「いい気になるのも今のうちだ!最強の降魔の妖力、受けてみよ!」
が、同じくなんのダメージも無い。
「この程度?最強が聞いてあきれるわ!」
「氷ってのはね…こういうのをいうのよ!」

「青龍…」
「ポセイドン…」
「虚氷(きょひょう)斬けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!!!」
「カッタぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「な…俺様は…最強…の…降魔…な…の……」

「鹿までも…おのれぇ…」
「ほんっと、あんた達って弱いわねぇ…それでも降魔?」
「だまれ!私は二人のようにはいかん!」
「うるせぇぞこのチビ!」
「いきがるのもいい加減にしろ…死を早めるだけだ。」
「ふっ…わが雷を受けてあの世で後悔するがよい!」
が、今度もなんの効果も無い。
「おいおい…静電気でももう少ししびれるぜ?」
「な…なんだと!?」
「今度はこちらからいくぞ!」

「白虎…」
「ペガサスぅ…」
「風撃旋とぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉつ!!!!!!!!」
「ラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁンス!!!!!!!!」

「いや…いや…ゴッドさまぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ふぅ…雑魚にこんな技はもったいなかったかもね。」
「時間の浪費は出来ない。さあ、先を急ぐぞ!」
「「「「「「「「了解!」」」」」」」」


『黄昏の三騎士がこうも簡単に敗れるとは…』
『これでは黒ノ巣会も信用できぬな…』
『まぁよい…我にはまだ切り札がある』
『エレメンタルフォースよ…絶望の果てに落ちるがよい…』
『ふふふふ…ははははははははははーはっはっはっはっはっは!!』


          続く




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