大津市のだんじり
天孫神社 秋季祭礼報告


 1999年10月10日の日曜日、滋賀県大津市の曳山巡行を見に行ってきました。
 「曳山巡行」ってなんだか祇園祭山鉾巡行のようですが、 実際よく似た雰囲気の祭です。違うところは、鉾ではなくすべてが山ということです。
 鉾と山の違いは、簡単に言うと屋根に鉾が立っているかどうかです。 大津の曳山は上が舞台になっていて、そこにからくり人形があります。 からくりの山・屋台というと、中部から飛騨にかけての祭が有名ですが、 からくりのない曳山やだんじりが中心の関西において、 めすらしくからくりのある曳山です。

 形は京都祇園祭の山鉾と同じように3方を緋毛氈で覆い、 後ろには大きな見送りをかけ、囃子方が乗りこみ、ゆっくりと曳かれます。 彫り物中心のだんじりとちがい、掛け物中心の祇園祭風です。
 あと、ほとんどが切妻で、少し唐破風屋根が混じる祇園祭の山鉾とちがい、 切妻、唐破風はもちろん、入母屋まで山の屋根の種類は多岐にわたります (ちなみに、だんじりの屋根は唐破風です)。

 大津の曳山は決してだんじりのように激しく動くことはありません。 京都の祇園祭の山鉾と同じようにゆっくりと動きます。
 見た目の祇園祭の山鉾との大きな違いは、車輪が3輪であること、 だんじりのように前に曳棒がついていること、 それから、山の下から乗り込むことです。
 祇園祭の山鉾は町屋の2階からはしごをかけて乗り込むか、 はしごをかけて乗り降りします。
 この3輪のため、方向修正は曳棒を担ぎ、前輪持ち上げて左右に振ります。

 巡行は天孫神社の前で始まります。
 大津の曳山祭のきっかけとなった籤取らずの西行桜狸山を除き、 籤検めの後、からくりの奉納があって巡行が始まります。
 しかし、籤検めに神主は立ち会いますが、一切の神事はありません。 近世に成立した都市祭礼によくある神の関与が小さい祭です。

 その後、所々で曳山は止まり、からくりの奉納があります。 それは、どこでも適当にするのではなく、場所が決まっています。 家の軒に先が赤く染められた御幣がつけられた場所で行うのです。
 それから町屋、商店街のアーケードをくぐり、広い中央大通りで整列して 午前の巡行は終わります。 中央分離帯をはさんで、13基の曳山が並ぶ姿は祇園祭でも見れない壮観です。
 午前中で巡行が終わる祇園祭とちがい、1時間ほどの休憩後 夕方まで巡行は続きます。

 祇園祭と比べるとどうしても洗練されず、田舎っぽさを感じる祭ですが、 厳しい規制で巡行終了の新町通りでしか動く山鉾に近寄れない祇園祭とちがい、 常に目の前を山が動いていく大津の曳山祭は祭が身近に感じられる祭でした。
 今ではほとんど山鉾から粽を撒かなくなった祇園祭に対して、 いたるところで粽や手ぬぐいを撒く様子は、昔の祇園祭の姿と同じでしょう。
 現代都市化と観光化し、現代祭礼化した祇園祭に対して、 今だ近世祭礼の雰囲気を残す大津祭曳山巡行はとても面白い祭でした。

山車のいろいろ


  1999年10月21日 出力


    水龍〈shuilong〉