大阪市のパレード
御堂筋パレード報告


 1999年10月10日の日曜日、は大阪の御堂筋パレードの日でした。
御堂筋パレードは大阪府や大阪市などの自治体と企業が一体となった 大阪21世紀協会が行う現代の祭礼です。

 パレードのスタートは2時。 1時過ぎの梅田の駅前はすでに交通規制です。
 国道1号線や駅前の道路など東西方向は規制はありませんが、 御堂筋をメインとした梅田(大阪)駅前から難波駅前まではすべて通行不可です。
 御堂筋というのは大阪の梅田と難波という大阪の中心部を結ぶ大きな道で、 南行きのみの一方通行です。
 車線は確か4つで、さらに緑地帯をはさんで左右に1車線づつの側道があります。 緑地にはイチョウが植えられ、ビルの高さも厳しく制限がされています。
 太平洋戦争で焼け野原になった大阪を復興するときに造られた道です。 当時は「飛行場でも作るのか」と揶揄されましたが、 今では大阪のシンボルのひとつになっています。

 現代祭礼は京都の時代祭や神戸祭のようにパレードが中心ですが、 御堂筋パレードの特徴はフロートと呼ばれる強大な車です。
 その多くはトラックをベースに舞台のように飾り立て、 その上でさまざまなパフォーマンスが行われます。
 もちろん、パレードはフローとだけではなく、マーチングバンドなどもあります。 ほかに、日本各地の郷土芸能も見ることができますので、 見て決して損はしないパレードです。
 今年も地方からは沖縄のエイサーや、長崎の龍踊り、青森のねぶた、 祇園山笠もありました。 ただし、山笠は有名な博多のではなく北九州でしたが。

 観客はスタート地点である淀屋橋から難波までの御堂筋の好きなところで見ます。 御堂筋の左右には人垣ができ、観客はかなりの人数になったでしょう。
 見ている人は老若男女様々ですが、やはり高齢者が目立ちます。 御堂筋の各ブロックごとに司会者がいて説明してくれるのは助かります。

 味気ない現代祭礼ですが、祇園祭やだんじりなどの近世祭礼との共通点は かなりあるようなきがします。
 たとえば、フロートは毎年ちがうものが登場しますが、 中世の山鉾などは毎年新しく造りなおされていました。 もちろん、その理由は違うものであることはわかりますが。
 それから単に車のパレードではなく、歩く人間のパレードもあること。 そして、それぞれが趣向を凝らしたパフォーマンスがあること。 参加するよりも、むしろ見る人のほうが多いこと。
 きっと演じる側の気持ちも、見る側の気持ちも昔と変わらないのでしょう。 もっとも、これは日本だけのことではありませんから 人間の普遍的な気持ちなのでしょう。

 しかし、祇園祭同様観客は「観」客で、祭に参加することはありえません。 さらに、パフォーマンスと観客の距離が離れています。 それにパフォーマンス自体が人間が行うので迫力に欠けること。 それが見ているほうの盛り上がりをさまたげます。
 派手なパフォーマンスを見せるだんじりや山鉾とちがい ただ移動するだけのフローとはいくら大きくてもつまらない存在です。
 日本人は常に感情を秘めていると思っている人もいるかもしれませんが、 そうでないことは博多祇園山笠や青森ねぶた祭を見ればわかります。 盛り上がるのが嫌いな民族でも盛り上がれない民族でもありません。
 伝統的な都市祭礼のように祭礼を行う側が出資するのではなく、 税金を消費する御堂筋パレードが大阪府民、大阪市民に指示され続けるためには 観客も盛り上がれる装置が必要になるでしょう。

 大阪という都会のメインストリートでありながら、 1日封鎖してパレードを行うことができる道であるというのは、 オフィスが集まる御堂筋周辺の様子をよく表していると思います。
 こと、道路と交通については東京はすでに都市としての限界を超えてますから、 おそらく、日本でこのような広い道で、 長距離をまっすぐにパレードできる都市というのは 大阪しかないのではないでしょうか。
 そう言う意味では、御堂筋パレードも後世に残るような祭礼に なってほしいと思います。

山車のいろいろ


  1999年10月21日 出力


    水龍〈shuilong〉