月斗筆跡集 

その八 

 

松本正氣宛て句葉書集 その四

(昭和19年〜21年)

千機とや何ぞ怯まむ梅凛々  月斗


大紅蓮に包まれ残る冴返る
醜の火が大阪焼きぬ彼岸寒む

 

秋陰と秋霖人を腐らする
天陰惨人遍哲に莫の秋
風雨の天いつ迄つづく暮の秋

 

  

行秋を君の五十句待ちにけり     心ゆるく翰墨談に火桶かな

 

ごうごうと山鳴らす風雪飛ばす
水は渓へ汲みに下るや径の凍

 

  

山中居雪中居夜は狐鳴く  月斗     三井寺の鐘に寒さのゆるび哉
水汲みに雪の階段ころびけり  女々      初春や氷魚滑かに舌の上  月斗

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