島春句

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平成271月号

島春句

読み初めんモロッコ革を額に当て

鉢の土とスコップ置場花八手

道沿ひが立退き花八手が露出

踏み固められしに沿ひし虫すがれ

汲みこぼす井水が土の秋日消す

昼光でメッキの碑面紅葉越し

紅葉且つ散るうちは靴を憚りつ

(吟行)秋高しその萬分の一登攀

菊展の解説者居て迂回する

思ひ入り鳥居をくぐる秋冷ぞ

 

平成272月号

島春句

万華鏡みたいに配置シクラメン

シクラメン置いて瀕死の映画館

油差ペコンと晴らす年の錆

吸引し噴射し煤箒の句をば

しぐれ印す史跡探訪メモノート

猪撃ちが早口で過ぎ松籟す

路地奥に鉢植いくつも木枯す

潮風をテントで蔽ひ牡蠣食はす

見上げるに改年の頸軋みたり

四国は積ったとお降の待合室

 

 

平成273月号

島春句

太郎月あちこち向ふ梅が枝

初背伸びして然る後句に没す

羊羹と茶と四日まだ午後三時

鏡開きに切れ物捜す毎年ぞ

寒の雨鳩も鴉も真面目なり

新聞紙緩からず巻く寒椿

胼割れて何度も折らぬ札数へ

皹にパリッとしたる花活ける

雪深々テレビのシネマ白黒で

二階への踊り場におや雪兎

 

 

平成274月号

島春句

しぶしぶ歩きの子とふた親と梅の花

船が見えてゐる安心や東風の海

犬猫の病気ばなしや風光る

前へ進めといふ春風や耳を貸す

はばかりを拝借雛の間通り抜け

雛の間に叱られどおし男の子

引越してきてシーソーに一人増え

あかぎれの血に違いない詩集かな

流水を追ふだけの目に霙れけり

立ち食いのうどんに雲形季外れな

 

 

平成275月号

島春句

桜は蕾の会場みなが枝つかむ

極量の光が桜の園に降り

庭土の照りと落花に降り立ちぬ

花の道車輪つぎつぎ馳せ参ず

窓の飛花片目時々つむっても

大囀り当今とんと忘語して

山茱萸が吸ひ居し光霽れて吐く

抹茶喫するかに鉢植の菫持つ

手折った馬酔木以上にふらふらで下山

半回転しては摘草つづけけり

 

 

平成276月号

島春句

双幅の熊は鯉より黒が濃い

武者飾るに戦艦大和の置き処

餡パンが朝餉昭和の日は過ぎて

霞まれて海抜一メートルに住み

霞めるに朝から蚊の鳴くような声

初っぱなに雉が発ったるピクニック

指に掛かる程の古草ゆえに抜く

花見んと病院を過ぎ寺に入る

ボタニカルアートに囀り入り込めぬ

春の鳥少女雑誌の口絵かな

 

 

平成277月号

島春句

植込みの皐月に日当たりめいて花

主いま卯月曇りに禁煙中

空き校舎となり斑猫が飛び上がる

抽斗の奥に昔が玉虫も

若葉にも触って建売り展示場

藤棚に年寄りの連れまた一人

山藤へ杖持ち替へて目を決める

岩間潜りつつじを分けて声の糸

目くばせを受けて春雨傘を差す

春雨に大声でいふことでなし

 

 

平成278月号

島春句

ムームーとアロハでレコードに籠り

耳にはさむ開襟シャツといふ語感

ステテコで勿論電話にも出ない

紫陽花を切る二の腕が窓よりす

長靴で紫陽花の首起こしけり

海峡をバスで越えるや缶ビール

たまさかの帰郷にずかと虹の脚

黙々と構へ風鎮梅雨の中

テンポ良き風が二三度梅雨萎えし

草々は穂を上げ梅雨を仕立てけり

 

平成279月号

島春句

一軒分空き向日葵ら路地に照る

島はいいな向日葵の下蟹が這ひ

胡瓜一本バトンの如く呉れにけり

蜜豆を食はされ食ひこぼしを言はれ

総退却せんとすサイダーの泡も

ラムネ飲み干したる次は力瘤

日傘僕へ舞はす母上客観す

虹へ振り上げしステッキ下すのみ

虹消えたままで立木にスクワット

梅雨明けす空も港もがらんどう

 

平成2710月号

島春句

秋立つや朱卓に置いた肘あたり

一山ちょいと越えて踊ってさて戻る

盆は去に庭木に古葉又見ゆる

日焼け止め塗って疎遠のご挨拶

ゴーグルをしたまま林檎齧るのよせ

土用丑とや焼鮎を以てせんか

土用も寅で梅干と茶漬がいい

滑り台ととんぼと層を異にする

夕焼や昨日生まれた豚の子は

銀やんま光源のごと宙に留め

 

平成2711月号

島春句

観月のピザ等分に切らんとす

露けさも慣れっこ来ないかもしれぬ

秋風や橋では下を覗く癖

色なき風寄る駅裏のマンションら

舌打ちばかりの帰るさ初月夜

すぐに来いと言はれ月白早足に

秋日焼のまま庇ふ人もうゐない

軒端いつも何か吊られて残炎に

英雄にならないままに積乱雲

金ぶん一匹飼はる哲学者のごとき

 

平成2712月号

島春句

頷ける鳩にの日舂きつ

秋平ら十三夜より月が充ち

抽象の彫刻の露まみれの具体

草の露落ちそう頚の体操し

論煮詰まりしとせん熟柿を想ふ

熟柿呉れる春秋き人ばかり

我が家また干し柿といふ身上を

生きものが見えない時間月天心

露草よ年寄せかせか午前中

昼の虫立木が韻文的となる

 

 

 

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