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問題1
やはり多い回答としては、子供の動作、状態、或いは場所を表したものであろうと思います。
出題の原句は、
絵によりて本を読む子や春の雨
でした。これはまだ字が読めない幼児が、彩色の、川上から桃が流れてくる絵本を見ながら、「どんぶらこ、どんぶらこ」と声を出して読んで居るのでしょう。片時もじっとしては居れない年頃の、春雨で外で遊べない日の情景が浮かびますね。
問題2
解答としては、「雨」を意識したものと、「土産店」に主体を置いたものとがあったと思います。
出題の原句は、
春雨や酔ひどれが居る土産店
でした。観光地か温泉街かの光景が浮かびますね。静止画のような表現で、傍観的な口調なので、それほどの差し迫ったことではなく、賑やかにクドクドと怪気焔を上げている、というようにイメージが広がります。夏の雨でも秋雨でもない。まさに春雨の情緒です。
問題3
以下の3問は、少し難しかったかなと思います。一つだけ作りっきりにするのではなく、幾つか作ってその中から自分で選び出すようにして下さい。
出題の原句は、
菖蒲湯に蛙の如き子供かな
でした。如何でしょうか。「蛙」はただ単に形の形容にとどまってはいません。そんな子供なのです。そして、菖蒲の束の緑が、あたかも田んぼを見て居るように鮮やかに、ぷかぷか浮かんでいる様子が見えますね。
問題4
どんな「男」と「薔薇」の組み合わせになったでしょうか。
出題の原句は、
薔薇の香に腹へらしゐる男かな
でした。こういう男性像も有ったのです。「ロッキー」のシルベスタ・スタローンかな。現実派、肉体派のようですが、、案外女性には受けるタイプかもしれません。これも「香」という実体の無いものが、よく働いています。
問題5
これら3句の例句はどれも戦前の句ですので、半世紀以上昔の子供、男、女のことというわけです。さて、
出題の原句は、
夏痩せの捨てられたりし女かな
でした。男に「捨てられた女」も、現代では通用しないと思いますが、その時代を描いた日本映画を思い出して下さい。少し言葉の高等技術ですが、「捨てられし」ではなくて「捨てられたりし」の「たり」がミソで、前から引き続いての動作や作用の継続をさす「たり」に、男に捨てられたままで居る、この女性の経た歳月が滲んできます。
以上の3問、現代の人の解答には、きっと面白い観点が有ると出題したのでしたが。