◆IVH(中心静脈カテーテル)あいぶいえいち
点滴の手法。通常の点滴は腕から入れられるが、腕の血管は比較的細く、長期間の点滴には耐えられない。その為、鎖骨下や首筋の静脈から10数cmのフレキシブルなチューブを挿管して、皮膚に縫いつけて固定。上大静脈などに直接薬剤を点滴する。抗ガン剤や高カロリー輸液など、強力な薬剤を大量長期間に渡って入れる場合にもってこいの技法。実際、私は腕から5日間抗ガン剤を入れたらその血管が固まってしまい、元に戻るのに数ヶ月かかった。
IVHは非常に効率のいい点滴だが、身体の中心近くに直接挿管する為、細菌感染の危険性は高くなる。抗ガン剤注入が終わり、身体の抵抗力が弱ってくると感染しやすくなるが、一方で感染治療の抗生剤点滴、造血能力の弱体化によって減少した血球を輸血する為にはIVHが入れてある方がよく、いつ抜くかは医師の判断による。
腕の点滴は看護婦がさくっと入れてくれるが、IVH挿入は医師が行う。挿入部位に麻酔をかけ、血管の中を手探りでチューブを入れ進めていくのだ。かなりの職人芸で、しかも血管の状態は患者毎に異なるので経験とカンが物を言う。運が悪いと一時間近くああでもないこうでもないと出し入れされて痛い思いをした揚句、いつのまにかチューブが耳の方に走っていたとか、うまく入らないからまた明日やりますと言われてガッカリ、な場合もある。
更に医師がヘタだと運が悪いと、肺を傷つけられたとか、ミスって胸部に空気が入って、脇腹にチューブを刺して排気したとか、挿管時に神経に当たってつま先まで痺れるように痛かったとか、場合によっては血管を傷つけて出血死に至ったとか、悲惨な話には事欠かない。実際、挿入後にはレントゲンでうまく入ったかどうかを確認するほど。骨髄穿刺と並んで患者には嫌われている医療行為。ただし私は運が良く、入院中に四回入れたがほとんど痛みも無く、20分程で終了。日頃の行いだな、えっへん(注:違います。担当の先生の腕です【爆】)
◆イソジンいそじん
消毒薬。筆者の入院先では消毒薬全般の代名詞みたいに使われていたが、特定の製薬会社の製品らしい。ウォークマン、マジック、セロテープみたいな、商品名が製品ジャンル名みたいになった例かな? カバがうがいをしているCMでお馴染みのアレと、同じシリーズ。うがい薬と、あとは注射やマルク跡などの消毒薬としてしょっちゅうお目にかかる。
◆腕ベルトうでべると
入院患者の腕に、腕時計のように巻かれる薄いビニールの帯。患者の氏名、患者番号、入院している病室などが記されていて、本人確認に使われる。普通はレントゲンやMRIなど、別室で検査を受ける時に確認されるが、患者の中には徘徊しちゃうような人もいて、その際にも確認に使われる。
◆HLA(human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原)えいちえるえー
白血球や体細胞のほとんどに存在するタンパク質で、これの遺伝的な性質がいわゆる「白血球の型」。ドナーと患者同士でこの型がある程度一致しないと移植は行えない。ところがこの型はものすごい多様性をもっている。骨髄バンクには約30万人の登録があるが、これでカバー出来る範囲は日本人の約80%だと言う。完全一致と言う点では、日本に1人しかいない型を持つ人もいる可能性まである。
なお、HLA型の一致可能性がもっとも高いのは同じ両親から生まれた兄弟間だが、それでもドナーになれる可能性は1/4。少子化の進む現在ではかなり低い可能性と言わざるを得ない。私の場合、1人だけの弟がドナー適合してくれた。これは、運がいいとしか言えない。骨髄バンクの充実は、国内だけではなくアジア全域で進めるべき課題と言える。
◆FAB分類,
えふえーびーぶんるい
急性白血病の分類法。FABとはFrench-American-Britishの略で、要するに仏米英分類だな。この三国の専門家により提唱された為につけられた分類名。
急性骨髄性白血病をM0〜M7の8種類、急性リンパ性白血病をL1〜L3の3種類に分類している。ちなみに私が罹ったのはM2型。
◆塩酸モルヒネえんさんもるひね
鎮痛剤。名前からわかるように、
麻薬でもある。私の場合、入院の初期に芽球による背中痛がひどく強かったので、これをぶちこまれた。効果は劇的で、それまで痛みでほとんど眠れなかったのが、入院初日からバタンQでぐうすか眠ってしまった(^_^;)。
これだけ強力な薬なんで、量が多いと
幻覚や妄想が見えてくる。私が見た幻覚は、天井の模様が人の顔に見えてきて、その表情が刻々と変わる物。あと、個室(無菌室)に入っている時、隣のベッドで人が動いたり眠ったりしている気配をしょっちゅう感じた。が、個室なので、当然「隣のベッド」なんぞは存在しないのだ。やはり入院中なので、どことなく「死」とか「霊」を意識していたのかも知れない。
あと、夢と現実の区別がつかなくなった。ある夜、妙にリアルに仕事をしてる夢から目が覚めた。普通ならその時点で「ああ夢か」と思うんだけど、その時は夢から引き続いて仕事をしようとして、「資料作成は俺の担当だったよな」と枕元のノートパソコンを起動、Wordまで立ち上げた後しばらくぼんやりしてから「ああ、夢か」と思い至った。
他には発熱(39.5℃まで上がった)と便秘。胃腸の動きが悪くなるとかで、一週間ため込んだ。これはこれでつらいもんだった(^_^;)。
◆化学療法かがくりょうほう
抗ガン剤を使って体内のガン細胞をぶっ叩いて減らしていく治療。飲み薬もあるらしいが、私は全て点滴で行った。何せ強力な薬剤なので、この薬自体の
副作用と、化学療法後に身体が弱って起こる様々な症状や
感染症が、大きな苦痛を伴うストレスになる。使用する薬品や期間は患者によって異なるが、だいたい数日〜一週間くらい行う。幾つかのフェーズに分けられるが、まず白血病細胞の大部分を削る寛解導入療法、その後に残った白血病細胞を掃討する地固め療法、更によりよい寛解状態に持っていく為の強化・維持療法などがある。
◆芽球(ブラスト)がきゅう
白血病やMDSで造血幹細胞の異常により生まれた、悪性の未熟細胞。ガン細胞そのものではないが、
ガンのせいで現れるゴミ細胞といったところか。これが末梢血に現れ始めると、病気の重篤度はかなり上がったと判断される。
◆加熱食かねつしょく
生禁の間に出される食事。文字通り、全ての食事に一度は熱を通して滅菌してある食事のコト。刺身や生フルーツが出ないのは当たり前、野菜も全て温野菜なのもまあ仕方ないが、大根オロシをレンジでチンしてあったのにはまいった(^_^;)。
◆寛解かんかい
発病の因子は残ってる可能性はあるが、症状自体は出ていない状態。寛解状態では造血も正常に行われるので、外見的には完治と変わらない。発病状態を活火山、完治を死火山とするなら、
寛解状態は休火山と言えるかもしれない。一般的にはあまり馴染みがないけど、白血病治療では非常に頻繁に耳にする言葉。
白血病は、現在の技術で白血病細胞が確認できなくても実はわずかに残っていて、これが再発の原因となる場合がある。よって、まずは各種の治療で寛解状態にもっていき、その後数年間の経過観察で再発が無ければ「完治」と見做されるのが一般的。悪性の病巣がまったく確認できないのが完全寛解、病状は改善されても一部に腫瘍が残っているのが部分寛解。
◆寛解導入かんかいどうにゅう
各種治療によって、発病状態を寛解状態に持っていく事。白血病の発病時には体内に10^12個のガン細胞があるのを、治療によって10^9個程度まで減らしていく。1/1000にするんだから、まあ大雑把に言って1kgのガン細胞を1gにまで削る割合だ。
一般の固形ガン治療での、腫瘍の外科切除に相当するフェーズともいえるかも。
◆強化・維持療法きょうか・いじりょうほう
地固めの後、更に白血病細胞を減少させて寛解状態をレベルアップするのが強化療法。維持療法はそれを保つ為に行われる。寛解導入〜地固めまでは入院して一気に行われるが、強化・維持療法は患者の病状に応じて通院または短期入院で行われる。2002年12月現在、筆者は行わない予定。
◆グリペックぐりぺっく
慢性白血病の治療に使われる薬。筆者は急性白血病なので使った事はないが、慢性白血病の闘病サイトなどを見ると頻繁に登場する。異常な遺伝子を減らす働きがあるらしいが、詳細は不知。
◆血小板けっしょうばん
血液中にある血球の一種で、
出血を止める働きをもつ。骨髄抑制や病気の症状で数が減ると、何でもない事で内出血を起こしたり、ちょっとしたキズの血がいつまでも止まらなかったりする。極端な場合は眼底出血、脳内出血にもつながりかねないので、数が不足してきたら血小板輸血で補う。血液そのものではなく血小板成分を分離したものなので、輸血の色はグレープフルーツジュースに近いオレンジ色。人によってはこれの輸血で、発疹や痒みが起こる場合もあるとか。
人によってはこの輸血でアレルギーが出たり発疹が出来たりするらしいが、筆者は幸い何も出なかった。
◆検温けんおん
看護婦さんによる、患者の状況確認。筆者の居る病院では、朝イチ、午後、夜と一日三回行われた。体温測定と、排泄・食事状況、その他異変が無いかの問診など、これに、必要に応じて血圧測定、血中酸素濃度測定、採血などのオプションが加わる。無菌室入りで孤独なときなど、結構貴重なコミュニケーションの時間だったりする。
◆抗ガン剤こうがんざい
白血病との闘いのメインウェポン。骨髄内、血液内にある白血病細胞を死滅させる為の薬。様々な種類が開発され、現在も日々改良進化しているが、それでも現在ある抗ガン剤が効くのは、全てのガンの20%でしかないとも言われている。頑張れ製薬会社。
強靱な生命力を持つガン細胞を殺す薬だから、
薬自体が劇薬とも言え、強烈な副作用を引き起こす。吐き気、悪寒、食欲不振程度から脱毛、発熱、内臓障害などまである。幸い私はこれらの症状はかなり軽めだったが、中には
副作用のせいで治療に耐えられない場合もある。
また、もっとも大きな副作用の一つに
骨髄抑制がある。血液の働きがにぶってしまうので、輸血や無菌室入り必須となるこの副作用は、
抗ガン剤治療の最大課題じゃなかろうか。実際、私自身は白血病そのものの苦痛より、抗ガン剤の副作用による苦痛の方がはるかに大きかった。「これは身体がよくなるための苦痛なんだ」と思えなければ耐えられないかもしれない。
まるっきり余談だが、各地の闘病サイトを読んでいると「抗ガン剤は毒々しいまでのカラフルさだ」と言うような記述が目に付く。赤とか青とか黄色とか、何だか居酒屋のサワーみたいな色合いだが、筆者が受けた点滴は、抗ガン剤を含めてほとんどが無色透明か、ごく淡い色。濃い色が付いてたのは赤血球輸血と血小板輸血(当たり前だ(^_^;))、あと解熱剤が乳白色だったくらいしか覚えが無い。筆者の治療法が、JALSGのプロトコールからは外れてたからかな?
◆骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplact syndrome)こつずいいけいせいしょうこうぐん
骨髄不全症の一種で、血球の減少による貧血症状、疲労感、細菌感染のしやすさ、発熱などを伴う。以前は白血病の前段階とか特殊な貧血とかされていたが、1982年に「症候群」としてまとめられた。
症状により5つのステージ(段階)に分類され、慢性の貧血程度からほとんど白血病状態まで重篤度は様々。治療もまた、その重篤度に合わせて「無治療の経過観察」から「骨髄移植」まで様々。実際、急性白血病に移行するケースもあり、その場合は化学療法がひどく効きにくいので、骨髄移植を勧められる事が多い。
◆骨髄移植こつずいいしょく
患者のガン化した骨髄を抗ガン剤や放射線で一旦完全に消滅させた後、ドナーの健康な骨髄を移植する事。正確には、骨髄にある
造血幹細胞を移植するのが目的。骨の真ん中にある骨髄をどうやって移植するかと言うと、これがドナー(提供者)の骨髄液を、患者の静脈に
点滴で注入するのだ。すると血管を通して全身の骨の中に生着して、造血を開始する。切開やら切除やらは一切無いので、実は「手術」のイメージとはだいぶ異なる。むろん、ドナー側にも切開は無く、麻酔で寝ている間に骨髄液の採取が行われる。ただし、患者にかかる負担は軽くはない。どころか、非常に重い。
一般の固形ガンと異なり、全身の骨髄にガン細胞が存在する
白血病では「切除」で一気にガン細胞を除去するのは不可能だ。その点、骨髄移植は患者の骨髄を一度完全に無くすので、ガン細胞の撲滅と言う点では白血病治療の切り札である。が、それでも再発の可能性はあるし、大量の抗ガン剤や放射線を使う事で大きな負担を患者にかける。不妊や他のガンを誘発したり、GVHRで長い間苦しみ、生命を喪う危険性もある。それ以前に、患者とドナーのHLAがある程度一致しないと移植そのものが行えない。近親者(兄弟)にドナーになれる人がいれば運がよい方で、骨髄バンクでドナーを捜しているうちに亡くなってしまう患者も少なくない。それでも、現在はバンクの充実や、ミニ移植、自家移植、さい帯血バンクなどで治療環境は改善されつつある。
◆骨髄穿刺(マルク:mark)こつずいせんし
患者の骨髄液を検査の為に採取する事。どうやって採るかと言うと、
直接骨から吸い出すのだ。
イタい話がイヤな人は、これ以下は読まない方がいいかも(^_^;)。
採取場所は、肋骨の真ん中(みぞおちの少し上あたり)、または骨盤の前部か後部が多い。まず周囲に麻酔をかけ、精密ドライバーのような中太の針を骨の中心部まで突き刺す。その針は中空の二重構造になっていて、中の針を抜いた後に注射針を通し、注射器で骨髄液を吸い上げて採取するのだ。
まずは精密ドライバーを打つ近辺に注射で麻酔をかける。が、この注射が案外痛い。ヘタするとこの麻酔が全工程で一番痛かったりして、「本末転倒じゃないか?」と八つ当たりをしたくなる事もある。
麻酔があるから精密ドライバーを刺すのに痛みはあまりない。痛みは骨の表面を針がつついた時が一番大きいが、巧い医師なら慎重に進めてくれるので、そこで痛がると麻酔を追加して痛みを抑えてくれる。が、骨に達した針がゴリゴリと骨髄に侵入する感覚は何ともイヤなもの。また、骨髄液を吸い出す瞬間の力が抜けるような痛いような感じも慣れることはない。皮膚や肉や骨表面(骨膜)には麻酔が効くが、骨髄には効かないのだ。
歯の治療で削ったり神経に障ったりする感覚が、比較的近いかもしれない。患者の間ではイヤな医療行為のワースト3に入るであろう。が、各種治療の前後に結構頻繁に行われる。まあ、骨髄を検査せん事には診断も進まないから、仕方がないのだが。
◆骨髄抑制こつずいよくせい
抗ガン剤の副作用で、骨髄での造血機能が抑制される事。具体的には、血液中の白血球、赤血球、血小板の減少などによって判明する。白血球が減ると、普段は何でもない細菌が原因で粘膜が荒れたり発熱したり肺炎になったりするので、それを防ぐために無菌室に入る事になる。赤血球が不足すると身体や脳に酸素が充分行き渡らず、ひどい貧血症状を引き起こしたりする。血小板が足りないと出血が止まりにくく、最悪の場合眼底出血、脳内出血などに繋がるケースもある。
この時期の衛生と体調の管理は、白血病治療の手間暇の、半分以上を費やしてると思う。
この時期は、ともかく怪我やらしないように無理に動き回らず、また手洗いとうがいを頻繁に行う。私は手洗いは起床時、毎食前とトイレの後、イソジンのうがいは起床時、毎食後、トイレの後、寝る前に行った。それぞれ毎日10回弱くらいか。無菌室に入っていてこれである。検査などで外に出る時は必ずマスクをして、戻ると当然うがいと手洗いだ。他の副作用はともかく、骨髄抑制の無いよく効く抗ガン剤が出来たら、ノーベル賞ものだと思う。がんばれ製薬会社、会社の研究でもノーベル賞は貰える時代だ【笑】。
◆臍帯血さいたいけつ
赤ちゃんと母親を繋ぐへその緒、胎盤などに含まれている血液。TVのCMで、「赤ちゃんもへその緒も元気ですよ」というのを見た事がある人も多いと思う。この臍帯血には造血幹細胞が多く含まれている為、冷凍保存、バンク化して移植治療に使おうというもの。通常の骨髄移植に比べればドナーの負荷は無いに等しいので、新たな治療法として注目されている。
比較的新しい治療法で、骨髄移植、末梢血幹細胞移植に比べて一長一短はあるが、確実に成果を上げつつある治療法。筆者の同室患者にも、この移植を受けている人がいた。
◆自家移植じかいしょく
白血病寛解時に患者自身の造血幹細胞を採取、凍結保存しておき、大量化学療法や放射線療法の後に骨髄に移植し、ガンを治療する事。現在は、末梢血からの幹細胞移植が一般的。
ドナーからの移植に比べ、患者自身の細胞を使うのでGVHRが起こらず負担が少ない。逆に、ガン細胞や発生因子が残っている可能性はあるので、再発の危険性はより高くなる。かなりレベルの高い寛解状態でないと使えない(というか意味がない)。
◆地固めじがため
治療の一環で、寛解後に更にガン細胞を減らして再発を抑えるフェーズ。寛解導入後、3〜4回ほど行うが、病状次第でもっと
増える事もある。この地固めでは、ガン細胞を寛解導入後の更に1/1000〜1/100程度まで減らすのが目標。
◆G-CSF(顆粒コロニー刺激因子)じーしーえふえす
白血球の中でも主に好中球の分化を刺激促進する薬品。白血球を増やす働きがあるので、骨髄抑制が長期に渡った場合などに使用する。また、末梢血に大量の造血幹細胞を流し出す効果があるので、末梢血幹細胞の採取目的で投薬される場合もある。
◆GVHR(graft versus host reaction:移植片対宿主反応)じーぶいえいちあーる
骨髄移植で、ドナーから移植された白血球(Tリンパ球)が、患者(宿主)を異物とみなして攻撃してしまい、その結果、体調不良などの様々な不具合が起こる事。「versus(バーサス)」と言う単語が示すように、まさに「対決」である。
Tリンパ球は、自分の身体に入ってきた異物を「敵」として攻撃する。これによってウイルス感染などを防ぐが、臓器移植などでの拒絶反応もこの攻撃による弊害だ。ところが、骨髄移植によって他人の身体に入れられたTリンパ球にとっては、いきなり「敵陣」に放り込まれたような物。その為、
普通の拒絶反応とは逆に、患者の本体自体を攻撃してしまう現象だ。
粘膜や内臓などに影響が出て、重篤な場合には命にもかかわる。またそれほど激烈な反応でなくても、慢性化して後々の日常生活に影響が出る事も多い。ただ、この反応によって患者本体に残った白血病細胞を殺す効果もあるので、GVHRがまったく出ないのも弊害ではある。
◆GVHD(graft versus host disease:移植片対宿主病)じーぶいえいちでぃー
GVHRと同義。正確には、GVHRは攻撃の反応で、GVHDがその反応によって起こる各種症状。
◆JALSG(Japan Adult Leukemia Study Group:日本成人白血病治療グループ)じゃるえすじー
国内の医療機関や研究機関による、白血病の治療研究組織。最初、担当医師が「ジャルエスジー」と連呼するのを聞いて、鎮痛剤でぼけた頭で「飛行機?」と思ったのを覚えている(^_^;)。医療機関から症例を集め、よりよい治療法を求め、治療の手順(プロトコール)を提示している。白血病の治療方法は日進月歩なので、常に最新の情報対応が求められるそうだ。
◆シリンジポンプしりんじぽんぷ
極微量の薬剤を、一定速度で注入する電動ポンプ。輸液ポンプと異なり、ポンプ自体にとりつけたシリンジ(注射器の針を取った部分)に薬品を入れ、これをゆっくりゆっくりモーターで押していく。私は鎮痛剤の塩酸モルヒネを入れる時にこれを使った。一時間に0.1mlなどと言う、微調整も可能。バッテリの弱さは輸液ポンプと同じ【爆】。
◆髄注ずいちゅう
ルンバールともいう。点滴による抗ガン剤注入では、脊髄や脳髄などの中枢神経には抗ガン剤が入りにくい。その為、ある程度化学治療が進んだ段階で、
脊髄に直接抗ガン剤を注射で入れる治療。かなり痛いというかイヤな汗をかくタイプの医療行為らしい。が、筆者は未経験。闘病サイトや参考資料を読んでいると、どうやら二回目と三回目の地固め療法間あたりに行われるらしいので主治医に聞いてみたら、「Ara-c大量療法では髄注はやらないんですよ」だそう。患者や病気の状態にもよるんだろうが、いやほっとした(^_^;)。
◆清拭せいしき
入院中の患者を、蒸しタオルで拭いて清潔を保つ事。タオルは置き場から患者が自由に持ってきていつでも使える場合と、定期的に配られる場合があって、病院によるみたい。ある程度身体の自由が利けば患者本人や家族が行うが、無理な場合は看護婦さんが介助してくれる。筆者はほとんど自分でやったが、一度くらいは介助されてみたいと思うことしきり【殴蹴】。
病気や怪我にもよるだろうが、入院中の入浴は何かと制限が多い。白血病の場合は、よく入っているIVHが邪魔だったり、抵抗力が落ちていると許可そのものが出ないコトもしょっちゅう。筆者の場合で最大二ヶ月入浴できなかったから、最近はやりの汚ギャルもびっくりである。汚ギャルと違って好きで入らない訳ではないから、せめて清拭でもしないとやっとれんわ、ほんま(^_^;)。
◆セカンド・オピニオンせかんどおぴにおん
現在の主治医とは別の病院、医師に診断や治療方針の説明を受け、両者を比較検討して患者自身が治療のやり方を決める参考にすること。血液腫瘍は専門医でも判断が難しい場合もあるし、治療のメリット・デメリットの考え方は医師によっても異なるので、複数の意見を聞いてみる訳。意見の比較検討には患者自身が病気や治療についてそれなりに勉強しなくてはならないから、結果的に自分の為にもなるし、セカンド・オピニオンはできるだけとってみる方がいい。何となく今の主治医に申し訳ないような気になるが、それでむっとするような医師にはこっちからおさらばで構わないと思う。
◆赤血球せっけっきゅう
血液中にある血球の一種で、肺から取り込んだ酸素を身体全体に配る役割。ヘモグロビンが主成分。名前通り赤い血球で、血液が赤く見えるのもこの赤血球のせい。赤血球は、ヘモグロビン内の鉄分を酸化させて酸素を運び、その鉄分から酸素を分離して身体各所の細胞に渡している。要するに、血液の赤は赤サビの赤と同じ原理だったりする。
これが不足すると身体に酸素が行き渡らず、ふらふらの貧血状態に陥る。こんな状態の時期は、たいてい白血球も血小板も激減しているので、立ちくらみでひっくり返りでもしたら大怪我でもしかねない。そのため、ある程度減ったら赤血球輸血で補う。
◆造血幹細胞ぞうけつかんさいぼう
骨髄中に存在し、赤血球、白血球、血小板のおおもとになる細胞。これが各血球に変化(分化)していく過程のどっかでガン化して、真っ当な血球にならなくなるのが白血病だ。各種の移植治療は、要はこの細胞を健康な物に入れ替えよう、という治療法。
◆蓄尿ちくにょう
おしっこを溜める事。化学療法では内臓(特に腎臓)の機能低下が起こる場合があるので、それらの経過観察などの為、排尿時にトイレに流さず溜めておく事。尿は患者状態のバロメーターなので、血液疾患以外でもよく行われる。たいてい、トイレの中かすぐ近くに尿を溜める機械とか袋とかがあって、ビーカーや溲瓶に入れた尿をそっちに溜める。簡単な作業だが毎回となると相当鬱陶しいし、おしっこがしたくて目覚めた時なんかはせっぱ詰まっているので更に鬱陶しい。なんか、病院つう所は患者が弱ってる時に限って、やらなきゃいけない手間が増えるような気がする。健康ならほっといても大丈夫なんだから当たり前か(^_^;)。
◆生禁なまきん
白血球が減って抵抗力が下がっている時期、生野菜やフレッシュの果物が禁止される事。私は「レバ刺しが食いたいなあ」と言って、病気に詳しい友人に馬鹿者と言われた。当然、生の食品にはばい菌が多くついているからだ。一度、生禁の食事に大根オロシが入っていて、看護婦に「生禁にこれは大丈夫なの?」と尋ねたら、「レンジでチンしてるから大丈夫」だと。うーん、冷めてはいたけどねえ。結局残してしまった(^_^;)。
◆白血球はっけっきゅう
血液中にある血球の一種で、体内に入ってきた他者(病原体)を迎撃、殲滅する役割。好中球、Tリンパ球、マクロファージなどの総称。
白血病の治療では、この白血球の数が非常に生活に影響する。特に骨髄移植の前処置や、抗ガン剤の副作用では大きく数が減り、その為細菌感染が非常に起こりやすくなる。端的に言うと、白血球が極端に少ない時期は、普通に繁華街を歩くだけで命に関わるかもしれないのだ。健康な人でおおむね4000〜8000/μl。2000を切ると日常生活は可能だけど感染に要注意、1000を切ると無菌室入りとなる。ただし、これらの数値は病院によっても多少は考え方が異なる場合もある。
◆分化誘導療法,ぶんかゆうどうりょうほう,
FAB分類でM3型のAMLに行われる治療法。M3型は、正常な白血球に戻りやすいガン細胞なので、薬によって正常状態に誘導する方法。化学療法のような骨髄の機能低下が無いのが利点。
◆末梢血まっしょうけつ
血管を流れている血液。血液病では、血液の生産過程を監視するから、最終的な生産結果としての血液に「末梢」とつける……んだと思う(^_^;)。
◆末梢血幹細胞移植(PBSCT:peripheral bloodstem
cell transplantation)まっしょうけつかんさいぼういしょく
通常は骨髄から採る造血幹細胞を、末梢血から採取し、移植するやり方。通常、造血幹細胞は末梢血にはほとんど存在しないが、抗ガン剤によって起こる骨髄抑制の回復時やG-CSF投入時などの、白血球が増えてくる時期には大量に現れる。これを採取して、骨髄に移植しようというもの。
現在のところは自家移植の場合に主に行われる。患者自身は治療の一環として抗ガン剤やG-CSFを投与されるんだから、せっかく出てきた幹細胞なら採取しようということ。従来の、骨髄液からの採取に比べてより大量の幹細胞が採取でき、また採取にあたって全身麻酔の必要がない。更に、採取は成分献血と同じ方法で行われるのでダメージも少ない。自家移植時については圧倒的に骨髄からの採取に勝るので、既にほぼこの方法に切り替わっている。
ただし、ドナーから採取する場合にはいくつか弱点もある。一つは健常なドナーに、本来必要のないG-CSFを投与しなければならない点。今のところ大きな弊害は見つかっていないが一過性の副作用はあり、やはりリスクではある。もう一つは、骨髄からの採取に比べてリンパ球の数も増える為、移植後のGVHRがひどくなる可能性がある点。これらの利点と弱点を総合的に医師が判断する。現在は保険容認もされているので、「認められた手法の一つ」には間違いない。
◆無菌室むきんしつ
骨髄抑制、移植前処置などで白血球数が減る時期に、細菌感染を予防する為に入る部屋。大型の空気清浄機が備えられ、一般の部屋より密閉度が高く、面会はもちろん医師や看護婦の入室も制限される。厳重な所では、ベッド周辺に透明ビニールのカーテンがおかれ、スタッフとすら一切接触が無いようになっている。患者は入室時には薬液の風呂に入って殺菌されて、雑誌などの持ち込みも消毒されたものに限られる。モニターカメラが設置されていて、患者の状態は常にチェックされているところもあるらしい。クリーンルームなども、名称は違うが考え方は同じ。
ただ、この厳重さは医療機関によってさまざまな考え方があるようだ。制限を弛めれば、当然室内に細菌が入る可能性は上がるが、例えば医学知識が乏しく、また副作用でフラフラの患者自身が掃除とかをすれば、別の事故の可能性もある。また、肉体的にも精神的にも弱っている患者のストレスも重要な要素になるだろう。それぞれのリスクとメリットの解釈が、医療機関によって異なるようだ。
私が入院した病院では、「準無菌室」「低菌管理」という内容ではないかと思う。部屋は当然ドアが閉まっていて患者は原則出る事はできず、室内には大型のクリーナーがあった。また、面会も制限されて入室時にはマスク着用が義務だったが、医師や看護婦などの医療スタッフは出入りしていたし、売店で買った物も普通に持ち込まれていた。透明カーテンも無く、医療行為は全てスタッフが行っている。この状態でも結構ストレスにはなったから、もっと厳重な無菌室に入った患者さん、ほんとに大変だったろうなあと思う。
幸い私は、無菌室では発熱と口内炎程度の感染症で乗り切る事が出来た。
◆ムンテラむんてら
医師から患者や家族に対する「説明」。説明するのは、病名とか病状とか治療方針とか、更には各種リスクとか。どちらかというと古い用語らしい。
患者の中には、自分の経験から別の患者に自主ムンテラしてしまう困ったちゃんも居る。あんたの病気と他人の病気は違うっつーの。おまけに、さっき告知されたばかりの人に、この病気の生存率を語って不安を煽ってどうするよ。テメエのベッドでおとなしく寝とけ馬鹿。
◆輸液ポンプゆえきぽんぷ
薬によっては点滴で入れる速度を一定に保つ必要がある。その為、点滴のライン(チューブ)の途中に電動のポンプをかまして速度を制御する。点滴台に取り付けられ、バッテリも搭載してるのでコンセントを抜いてもある程度歩き回れる。
ところがこのバッテリが貧弱で。トイレくらいなら問題ないが、検査や買い物で30分もすると切れかけてアラームがなってしまう。おまけに一旦充電がゼロ近くなると、一晩くらいかけないとフル充電にならない。通常の点滴だけでも動き回るには鬱陶しいのに、ポンプが付くとそれが数倍だ。
詳しい仕組みとかは知らんけど、せいぜい制御用のマイコンと、駆動用の小型モーターくらいだろうに。CPUと液晶バックライトとHDDをぶんまわしつつ数時間は持つノートパソコンから比べると、ちょいっと手ぇ抜きすぎじゃないかとか思うぞ。まあ、コストとか重量とかの制限はあるんだろうけどさ。
たまに、これの設定ミスでの医療事故が起こる。私の入院中、埼玉かどこかの病院で、老人に強心剤を入れる際に通常の何十倍の速度に設定してしまい、結局患者が死亡する事故があった。まったく、頼むよおい。患者は何もできないんだから……。
