崩壊の予感がときどき私を襲います。世界を知りすぎてしまった私たちは、伝統的な神話や宗教が約束した永遠の地を素朴に信じることはもはやできないのですが、それを求める気持ちを依然否定することもできません。時間は容赦なく過ぎていきます。このような時代には、一人一人が自分のための神話をもつことで、生の苦しみと死の哀しみから癒されるのだと私は考えています。今回の個展の作品もそうした癒しのための神話世界を描いたものです。

・・・・(97年個展コメントより)

 春の夕暮れ近く、丘の上の木々の向こうから斜めに射し込む光が、田舎道の傍らに立つ木立の輪郭をきらきらと輝かせている光景に、幾度か強い感動を覚えました。その光に包まれていると、肉体と心の重さから解放され、浄化された存在として再生されるのを感じるのです。時間は思いがけない早さで過ぎ去っていきますが、堆積した記憶の断片を再構築し、怖さと懐かしさが渾然となった癒しの世界を描きたいと思っています。

 ・・・・(99年個展コメントより)

 
 
1.HOME PAGE&新作の頁に戻る